落とされたAirPodsになって持ち主のもとまで帰ってみる

失くしやすいガジェット第1位・AirPods（エアーポッズ）。

まぁ、そんな統計は存在しないけど、僕の知人も先日AirPodsを片方失くしてしまったらしい。「あんなに高かったのに、もうほんとショックでしたよ～。きィ～」と嘆いていた。

ガジェット類を紛失したときのショックは、僕にも痛いほど分かる（自分も数か月前にスマホを紛失してしまったから）。そしてそんなとき、こう思ってしまう。

「失くしたガジェットのほうから、自分のもとに帰って来ないかなぁ…」と。

話は脱線するが、ニュース番組で、脱走してしまった飼い犬が数日経ってから主のもとに戻ってきた…といった内容が紹介されることがある。

ワンちゃんに備わる帰巣本能はもちろん、飼い主への愛がそんな奇跡を可能にさせているんだろう。

…AirPodsもそうだったらいいのに。

落とされたAirPods、徒歩で家まで帰る

さぁ、帰るぞ

改めまして、こんにちは。ライターのたかやです。この記事では、Air Podsの格好で家まで帰ってみます。それだけの記事。

もちろん、本物のAirPodsには自力で帰ってくる機能はない。足だって生えていない。

だが、AirPodsに扮した僕が自力で家までたどり着くことで、世界中のAirPodsを紛失してしまった人たちに「自分のAirPodsも帰ってくるかも…」と希望を与えることができるんじゃないだろうか。つまり非常に意義のある試みだ。

ちなみに今回は、

• 新宿駅付近の道路で、うっかり落とされてしまったAirPods（右）。
• 一向に見つけられる気配がないため、自力で持ち主の自宅（中野区野方）まで帰宅する。

さっそく通行人にめちゃくちゃ写真を撮られる

通行人にとっては、突如街に発生した異形（いぎょう）。頑張って制作した自分としては嬉しい。というかこれで目を引けなかったら、それはそれで怖い。

意外にも、この格好がAirPodsなことにすぐ気づいてくれる人は多かった。さすが世界のApple。圧倒的な認知度とブランド力。まぁ「えのきのコスプレ？」という声も多かったけど。それもわかる。

たくさんの人が「足、冷たくないですか？」「カイロいります？」など、あたたかく接してくれた。優しい…。東京という街でも、落ちてるAppleには優しい。

このホストクラブのお兄さんからは「来月、いっしょに店立ちましょうよ！ トップ取れますよ！」と勧誘も受けた。えぇ…？ それはどうなんだ？

ちなみに、メッシュ部分から外の様子を確認できる作りになっている。写真を撮るために近寄って来た人も、中に潜む僕に気づいた途端、「ヒッ…」と小さな悲鳴を上げていた（ごめんね）。

一番多く聞かれたのが「どうしてそんなことをしているんですか？」という質問。たしかに。せめてこの日がAppleの新製品発売日とかだったらまだ意味も伝わりやすいけど…。別に今日はただの平日。街中の人が不審がるのも無理はない。

「家まで帰るんですよ～」と毎回説明するとキリがなかったので、急きょ、自己紹介と目的を書いた紙を胴体に貼り付ける作戦に変更。で、その結果…

声をかけてくる人がいなくなった。なぜ…。しっかりと説明することによって「あっ、これ触れちゃいけないやつだ」と思われたんだろうか…。

こんなにも目立つ格好をしてるのに、その場にいないかのように扱われている。まさに、Air（空気）Pods。

あと、やる前まではまったく予想していなかったけど、この日は運悪く強風。風が吹くと前に進めない！

頭の部分（AirPods的にはドライバーの部分）の面積が大きいから、風をダイレクトに受け止めてしまう。ちょっと強めの風が吹くたびに、転倒しそうになる。風が怖い！

風が強くなってきたら、足をすっぽりと隠す技も身につけた。どんどん惨めに見えてきた…。

ひたすら歩き続ける。ようやく、中間地点までさしかかって来た。

視界の悪さ、段ボールを支える腕の疲労、強風、素足によるアスファルトの固さ、冷たさ……。あらゆる要因に体力が削られる。1時間歩いただけなのに、その何倍もの疲労が。

歌をくちずさんで、疲労感をごまかす。AirPodsはイヤホンなので、本来の在り方にどんどん近づいていることも含めてナイスな作戦（この時に歌った曲、斉藤和義「歩いて帰ろう」）。

一歩進むごとに、パーツのどこかが軋み、そして取れる。どんどんとジャンク品に。持ち主のもとに辿り着くころには、きっともうAirPodsとして使い物にならない。それでも、愛する主のもとへ…！

でももうほんとマジ無理！

ちょっと一回座らせて！ 足が…！ 腕が…！ マジでやばい！ ヤバーポッズ！

「24時間防犯カメラ作動中」だけどさ…！ ちょっと休憩させて！

ついに……

野方駅到着

やった～～～～～～～～～～～！ ついに、自宅の最寄りである「野方駅」に！

さまざまな苦しみがありながらも、無事にここまで辿りつけた。

自宅まであと数分！ ラストスパートだ！！！！

そして……

ヒタヒタヒタ……

╲ピンポーン／

「ん？ 誰だろう…」

「どちらさまで……」

「おかえりなさい！」

編集：ノオト