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辛い新卒時代を支えてくれた麹町の少年像。服を着せている人に会いたい!

辛い新卒時代を支えてくれた麹町の少年像。服を着せている人に会いたい!

吉玉サキ
ライター: 吉玉サキ
ライター・エッセイスト。北アルプスの山小屋で10年間働いた後、2018年からライターとして活動。アイドルと少女漫画が好き。夢は犬と暮らすこと。

はじめまして、ライターの吉玉サキです。
簡単に自己紹介をすると、現在はフリーライターをしていますが、その前は北アルプスの山小屋で10年間ほど働いていました。なぜ山小屋で働くことになったかというと、新卒で入社した会社が辛過ぎてすぐに辞めてしまったから。食いつなぐためにはじめた山小屋の仕事が意外と楽しくて10年続けたものの、夢だった文章を書く仕事を諦めきれず、下界でライターに転身したのでした。

今日は、東京メトロ有楽町線の「麹町」駅に来ています。というのも、皆さんが抱いている素朴な疑問やお悩みを解決する「マイネ王調査団」から、麹町駅に関するとある調査を依頼されたのです。

あぁ、「辛い新卒時代」という文字列を目にしただけでさまざまなことを思い出し、胸が詰まります。
それはさておき、依頼者のやまざきさんを癒していたという『夏の想い出』について調べたところ、この像は彫刻家の吉野毅さんによる作品。90年代に麹町駅前に設置され、長年、麹町の人たちに愛されているようです。
それにしても、「どんな方が、どんな目的でこの像に服を着せているのか」はたしかに気になります。私の地元でも、冬になるといつもお地蔵さんが帽子とマフラーを身に着けていて、前を通るたびに「誰がやっているんだろう?」と不思議に思っていました。帽子やマフラーくらいならご近所にお住まいの方が善意で着せていることもありそうですが、この像はもっと凝った衣装を着ているそう。

ご近所の方がやっているにしては、手が込みすぎているような……。
また、依頼者のやまざきさんの「この少年像に癒されていた」というお話も気になります。服を着た像やお地蔵さんはよく見かけるもの。だけど、それだけで仕事の辛さが癒されるものでしょうか? やまざきさんは、いったいどんな新卒時代を過ごしたのでしょう。よっぽど他に癒しがなかったのかな……。
そんなわけで、まずは依頼者のやまざきさんとお会いすることになりました。待ち合わせ場所はもちろん『夏の想い出』の前で!

麹町駅の1番出口を出るとすぐ目の前に、服を着た子どもの像が。これが『夏の想い出』かぁ。ビジネスパーソンが行き交うオフィス街の真ん中で、思っていたよりも目立っています。

今日はチェックのシャツにアンパンマンのセーター、フェルトの短パン、キルティングベストというコーデ。セーターと靴は手編み風、短パンも明らかに手作りです。他は既製品の子ども服でしょうか。
「私でも手編みのセーターなんてプレゼントされたことないのにな……」と思っていると、依頼者のやまざきさんがやってきました。

やまざきさん
どうも! 今日はよろしくお願いします!
吉玉サキ
こちらこそ、よろしくお願いします!

気さくな雰囲気のやまざきさん。写真撮影にもノリノリで、自分からポーズをとってくれました

やまざきさん
懐かしいなぁ。ほら、この像って足が土台にくっついてて普通のズボンを履かせられないじゃないですか。だからフェルトを巻いてズボンを手作りしてるんですよ。「愛されてるなぁ」って思います。

吉玉サキ
このポーズはなんなんでしょう?「こっち来いよ」みたいな?
やまざきさん
いえ、前は釣り竿を持っていたんですよ。今は持っていないのかな……。

目を細めて愛おしそうに少年像を眺めるやまざきさんに、新卒時代の思い出を伺いました。

灰色の新卒時代、この像を眺めるのがルーティンだった

吉玉サキ
やまざきさんは新卒時代を麹町で過ごしたんですね。
やまざきさん
そうです。今は転職して別の会社で働いているんですが、2010年に新卒で入社した証券会社はこの辺りにありました。当時は、駅から会社までの風景が灰色に見えていましたね。
吉玉サキ
わかります。私は新卒で入った会社が新橋にあったんですが、今でも新橋は灰色に見えます。新卒時代を過ごした街あるあるなんですかね……。ちなみに新卒時代、具体的には何が辛かったのでしょう?
やまざきさん
証券を売るための免許があるんですが、僕が勤めていた会社では、社員は入社後すぐにその免許を取るための試験を受けることになっていたんです。だけど、同期15人の中で僕だけ試験に落ちちゃって……。上司からはめちゃくちゃ怒られて、社長から直々に「このままだとクビだよ」と言われました。
吉玉サキ
それは辛い……!
やまざきさん
「試験に落ちたのは法律を知らないからだ」と言われて、法律の部署に配属されました。法律の部署は文章を書く機会が多いんですが、僕は文章を書くのが苦手すぎて、書類を上司に提出すると変更履歴だらけで返ってきて……かなり凹みましたね。
吉玉サキ
そんなとき、この像に癒されていたのでしょうか?

やまざきさん
はい。たいてい朝は6時くらいにこの像の前を通って出勤し、夜は日高屋かすき家で夕飯を食べてからこの像を見て、12時15分の電車で帰っていたんです。それがルーティンで。
吉玉サキ
朝6時から夜12時頃まで会社にいたんですか!?
やまざきさん
強制されていたわけではなく、自主的に早く出勤したり残業したりしていた部分も大きいんですけどね。朝は会社ですべての新聞を読んだり。
吉玉サキ
私の新卒時代よりよっぽど大変な思いをしてらっしゃる……。
やまざきさん
会社には窓がほとんどなかったから、ずっと会社にいると季節がわからなくなるんです。だから、像の服装で季節の移ろいを感じていました。服が変わるたび写真を撮って、当時付き合っていた恋人……今の妻なんですけど、彼女に送っていましたね。駅から会社までの灰色の風景の中で、この像にだけは色がついていました。

吉玉サキ
そんなに大変な日々を送っていたのに、会社は辞めなかったんですか?
やまざきさん
最初の1、2年は辞めたい辞めたいと思っていたんですが、そのうち仕事に慣れて、辞めたいとは思わなくなりました。結局、5年勤めたあと、スキルアップしたくて転職したんです。転職してからは麹町に来ることもなくなりました。
吉玉サキ
それでもこの像のことは忘れなかったんですね。どんなときにこの像のことを思い出しますか?

やまざきさん
いや、普段はそんなに思い出さないです。この前たまたまゴルフの練習で麹町に来たとき、相変わらず服を着ていたから、気になってマイネ王調査団に依頼してみました。
吉玉サキ
(思い出さないんかい!)ではなぜ、服を着せていた方にお礼を言いたいと思ったんですか?
やまざきさん
新卒時代にがむしゃらに頑張った経験があるから今の僕がある、と思っていて。新卒時代に頑張れたのはこの像のおかげ……ではないですけど、大切な思い出なんです。きっと僕以外にも癒されてる人がいるだろうし、代表してお礼を伝えたいと思いました。

依頼文を読んだときは「ずいぶん新卒時代が辛かったんだな」と感じましたが、その経験もやまざきさんの糧になっているようです。ちなみに、今はそこまで仕事を辛いとは思っていないそう。よかった!

像の着替えを担当している団体を発見!

さて、『夏の想い出』の像に服を着せているのは、いったい誰なのでしょうか? マイネ王調査団は、さっそくネット検索による調査を開始!
すると、わりとすんなり「麹町地区環境整備協議会の方が服を着せているらしい」という情報をゲットできました。
さっそく麹町地区環境整備協議会に問い合わせてみたところ、今現在、像に服を着せているのは事務局の原屋愛さんであることが判明!
やまざきさんが像に癒されていたのは2010~2015年です。当時も、原屋さんが服を着せていたのでしょうか?

吉玉サキ
やまざきさんが麹町の会社にいたのが8~13年前。けっこう時間が経っているので、服を着せる係が代替わりしている可能性もありますね。
やまざきさん
だとしても、今服を着せている方にお礼を言いたいです。この像に癒されている人がいることを知ってほしいし、服を着せる習慣がずっと続いてほしいから。お礼を言われたらきっと、やりがいに繋がると思うんです。

「普段はそんなに(像のことを)思い出さない」と言っていたわりに、熱い思いを語るやまざきさん。これは、なんとしても像に服を着せている人と会わせてあげたい!
像に服を着せているという原屋さんに、「あの像に癒されていた方がお礼を言いたいそうなんですが……」と連絡してみると、なんと記事への登場を快諾してくれました。そしていよいよ、『夏の想い出』の前でお会いすることに……!

ついに、像の着替えを担当している方と対面!

ドキドキしながらやまざきさんと像の前で待ちます。すると、黄色いブルゾンを着た女性が現れました。原屋さんだ!

麹町地区環境整備協議会・事務局の原屋愛さん

吉玉サキ
原屋さん、来てくださってありがとうございます! こちらが依頼者のやまざきさんです。
やまざきさん
はじめまして、やまざきといいます。僕は2010年から2015年までこの近くの会社に勤めていたんですが、新卒時代けっこう辛くて、この像の服がちょいちょい変わることが気分転換になっていました。ありがとうございます!!!

原屋さんに会うなりお礼を伝えるやまざきさん。長年の思いを伝えられてよかったですね!

原屋さん
そう言っていただけて嬉しいです。でも、私がこの像の着替え担当になったのは2年前で、やまざきさんが見ていた2010年から2015年は前任者が担当していました。
吉玉サキ
どんな方なんですか?
原屋さん
今は80歳を過ぎていて、活動的でこのお仕事が大好きな方です。像に服を着せはじめたのはその方なんですよ。この像のことをまるでお孫さんのように可愛がり、服を作ってあげていました。
やまざきさん
その方は、いつから像に服を着せはじめたんですか?

原屋さん
はっきりしたことはわかりませんが、私が子どもの頃からこの像は服を着ていました。私は麹町が地元なんです。
吉玉サキ
前任の方は、なぜこの像に服を着せはじめたのでしょう?
原屋さん
麹町大通りの周辺には、それぞれ違ったブロンズ像が5体設置されているんですが、この像だけが裸なんです。それで前任の方が「寒くて可哀想だ」と浴衣を作って着せたら、それが評判になったらしくて。
吉玉サキ
どうしてこの像だけ裸なんでしょうね。何か意図があるのかな……。この像の作者の吉野毅さんは、像が服を着せられていることを知っているんですか?
原屋さん
この像が建てられたのはすでに他界された前会長の時代で、今は詳しいことを知る人がいないんです。私も詳しいことは知らなくて……。ただ、服を着せているのは、私たち職員が趣味の範囲でやっていることです。

設置された当初の『夏の想い出』像。麹町地区環境整備協議会ご所有の資料より

吉玉サキ
どのくらいの頻度で着替えさせているんですか?
原屋さん
1ヶ月ごとに着替えさせています。前任者がそうしていたので、私もそれを引き継ぎました。
吉玉サキ
この子のお洋服は何着くらいあるんですか? 毎月着替えてるということは、12コーデはありますよね。
原屋さん
12コーデ以上あります。以前のコーデとかぶらないように、上と下の組み合わせを工夫したりしています。神社のお祭りがあるときははっぴ、火災予防週間は消防服、ハロウィン時期は仮装、クリスマス時期はサンタさんなど、季節感を意識した衣装もあります。
やまざきさん
まさに、衣装で季節を感じていました!

吉玉サキ
消防服、クオリティ高いですね!
原屋さん
消防服は大妻女子大学の学生さんが作ってくれました。本物の消防服と同じ素材を使っているんですよ。

やまざきさん
ところで、昔はこの像、釣り竿を持っていたと思うんですが……。
原屋さん
以前は木製の釣り竿を持っていたんですが、誰かが持っていったのか、何度かなくなってしまったんです。それで、今は持たせるのをやめました。
やまざきさん
そんなことが……。
原屋さん
オリンピックのときに五輪の旗を持たせたら、その旗が折られて捨てられていたこともありましたね……。そのときはしばらく服を着せることも控えたんですが、街の方から「裸だと可哀想」というお声があり、再び服を着せはじめたんです。
吉玉サキ
いろんな方がいらっしゃいますもんね……。でも、この像に癒されている人も多いと思います。

原屋さん
像の着替えをしているとき、「いつもこの像のお洋服を楽しみにしています」と声をかけていただくこともあります。そう言っていただけると、私も嬉しくなりますね。
やまざきさん
やっぱり僕のような人は他にもいるんですね。どうか、これからも続けてください!
原屋さん
はい。これからも、麹町に住む人、麹町で働く人たちのために、この街を盛り上げていきたいと思います。
やまざきさん
あと、僕のようになかなか麹町に来れない人のために、SNSに写真をアップしていただけると嬉しいです!
原屋さん
実は、麹町地区環境整備協議会のInstagramアカウントがあって、この像の写真をアップしています。よかったらぜひご覧ください。
やまざきさん
フォローします!

麹町地区環境整備協議会のInstagramアカウントはこちら

最後に、『夏の想い出』の前で記念撮影をしました。やまざきさん、原屋さん、ありがとうございました!

日常の中に「小さな楽しみ」を見つけて

新卒時代に限らず、仕事が辛いときって職場付近の景色が灰色に見えますよね。
そんな日々の中で、やまざきさんは『夏の想い出』の像に癒しと楽しみを見出しました。それは辛く憂鬱な日々をやり過ごすための、彼なりのライフハックだったのかもしれません。
幸いにも、やまざきさんは入社から2年ほどで辛い時期を脱しました。状況は一人ひとり違うので、誰もがやまざきさんのように辛い時期を乗り越えられるわけではないでしょう。本当に苦しければ、環境を変える選択もアリだと思います。
けれどもしも、灰色の日々をなんとかやり過ごしたいと考えているならば、毎日の中に「小さな楽しみ」を探してみてはどうでしょう? どんなに些細なことでもいいんです。やまざきさんにとっての像のような、目にするとふっと肩の力が抜けるようなもの。そんな存在に出合えれば、灰色の景色も少しだけ色づくと思います。
また、像の着替えをしている原屋さんにとっても、自分の行いが誰かの「小さな楽しみ」になっているのは嬉しいことでしょう。
私の記事も、読者さんにとっての「小さな楽しみ」になればいいな。そんなことを考えたのでした。

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企画・編集:人間編集部


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123 件のコメント
74 - 123 / 123
東京砂漠って歌にもうたわれている東京で、街の人々の営み『夏の想い出』ほっこりしますね。
こんな風に、街の小さな疑問を調査する事で色々なバックグラウンドが垣間見られて良かったです♪
詳しい情報にビックリ🫢
機会があれば是非行きたいです。
ほっこりします(*´∀`)
素敵なお話が聞けてほっこりしました。
こういうの地味に誰がやっているか気になっちゃいますよね〜。知れてスッキリです。
新卒就職時 月の半分は7時出勤 朝5時起床 洗顔 
歯磨き 暗いうちに家を出る 周りは何も見えなかったが 帰宅時 高田馬場駅のホームから ビルの屋上の若乃花(?)とマリリンモンロー(?)の相撲を見ていた
王国コインが欲しい
地域の人々に愛されてる像なのですね🌟
素敵なエピソードありがとうございます😊
こんな像があるんですね。早速Instagram見てきます!
知らん場所だった。梅田とかでオナシャス。
心を癒すって本当に大切。人生には辛い時期もありますよね。
先日久しぶり寄ったコンビニの店員さんに、「元気だった?しばらく見てないから心配したよ」と思いがけず話しかけられて心が和みました。
この近辺によく行きますが知らなかった
ほっこりするいい記事でした
癒しって大切ですね
アンパンマンセーターの子に萌えました
この像が無かったらと思うと…、ゾッとしますね😅
すごく興味深い話で、読んでみてなんだかじんとしました。前任者の方にもお会いしたいですね!
よく見てました。笑笑
興味深い話でした!
麹町、かつて働いていた街で懐かしくなりました
こういう調査すごくおもしろいですね
わたしも通勤中にこの像があったら見ちゃうしだろうし癒されるかも
面白い企画ですね。
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#マイネ王9周年おめでとう!
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