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オンラインツアーの魅力は? コロナ収束後も残る? HISに聞いた

オンラインツアーの魅力は? コロナ収束後も残る? HISに聞いた

村中貴士
ライター: 村中貴士
大阪府出身。日々エッジの効いたネタを探し続けるフリーライター。得意ジャンルはサブカル、テレビ、音楽、現代アートなど。デイリーポータルZ 新人賞2017で佳作。自称・無料イベントマニア。

コロナ禍によって、気軽に旅行できない状況が続いています。そんな中、自宅にいながら旅行体験ができる「オンラインツアー」が人気を集めているようです。

でも、ぶっちゃけ、オンラインで旅行を楽しめるのでしょうか? 筆者と同様、半信半疑の人もいるでしょう。

そこで今回は、オンラインツアーを数多く企画しているHISの八幡正昭さんに、参加方法や費用、人気ランキング、楽しみ方をお聞きしました。後半は「ケニア・ナイロビ国立公園サファリツアー」の体験レポートもお届けします(取材は2021年9月に行いました)。

▲株式会社エイチ・アイ・エス オンラインエクスペリエンス本部長 八幡正昭さん


14万人以上が利用 観光だけじゃない「オンラインツアー」のニーズ

——オンラインツアーはいつ頃、どういう経緯で始まったのでしょうか?

日本で1回目の緊急事態宣言が発出されたのは2020年4月でした。多くの人が「ゴールデンウイークに旅行したいのに、できない」という状況になりましたよね。でも、「旅行したい」というモチベーションが下がったわけではなかった。

一方、その頃アメリカではZoomが教育現場に浸透し、オンライン授業が始まっていました。そこで、Zoomを使えば新しいサービスを提供できるのではないか、と考えて企画したのがオンラインツアーです。ただ、開始当初は受け入れられるかどうかわからず、手探り状態だったので、まずは無料でサービスを開始しました。

▲現在もオンラインツアーの導入編として、時間が短いツアーを無料で提供している

——サービスを始めてみて、反響はどうでしたか?

予想を上回り、約1カ月半で6000人もご参加いただきました。しかも9割が高評価で、「旅行できない状況だけど楽しかった」「コロナが落ち着いたらアメリカに行きたい」などのご意見、ご感想をたくさんいただいたのです。「これは多くの人に受け入れられるはずだ」と確信しました。

ただ、旅行従事者の雇用を支える必要もあるため、ずっと無料で提供するわけにはいきません。反響も鑑みて、2020年6月から有料のツアーをスタートしました。

——そこから1年以上経ちましたが、利用者はどれくらいですか?

2021年9月末の時点で、14万人以上にご利用いただいています。開催ツアー数も累計4800を超えました。

▲オンライン体験ツアー 体験者数の推移(出典:HISニュースリリース)

——すごい数ですね! いま申し込みできるツアーは何種類でしょうか? また、どのようなジャンルがありますか?

ホームページに掲載しているツアー数は約1350です。ジャンルは大きく分けて「トラベル(観光)」「スキルシェア」「ライブコマース」の3つになります。

——「スキルシェア」「ライブコマース」というのは?

スキルシェアは、言語や料理、歴史など、知識および技術を参加者に伝えるツアーです。日本国内では、ワークショップ形式の「ものづくり体験」ツアーが人気ですね。

ライブコマースは、現地のHIS社員が人気店へ行き、ライブで商品をご案内します。いわば、双方向でやり取りできるバーチャルショッピングです。

開始当初は観光目的の利用者がほとんどでしたが、いまはスキルシェアとライブコマースが約3割のシェアを占めています。

——ツアーの代金、所要時間は?

無料から4万円のツアーまでありますが、平均は5,000円前後、時間は60~90分くらいです。

——4万円のツアー! どんな内容ですか?

ハワイのパワーストーンについて解説するプログラムです。参加者には現地のパワーストーンをお送りするため、その代金を含めた設定になっています。

 

その場で質問もOK 双方向のコミュニケーション

——オンラインツアーは、テレビの旅番組や観光DVDとどう違うのでしょうか?

私たちが心がけているのは、「ただの動画配信サービスになってはいけない」という点です。自宅など好きな場所で、かつ普段使っているデバイスで旅を楽しめる。時にはマイクやカメラ、チャットを使って双方向のコミュニケーションができる。これが大きな違いです。

——ただ見るだけじゃない、と。ガイドさんに話しかけることはできるのでしょうか?

はい。ただ参加人数が多いツアーでは、マイクで一斉に話しかけてしまうとガイドさんが対応できません。そのため質問は基本チャットで受け付けています。

——Zoomのチャット機能で話しかけるんですね。

そうです。スマートフォンの場合は、より深いコミュニケーションと没入感のある体験ができる「Port」というアプリを使ったツアーもあります。

Portが使えるツアーの一覧
https://www.his-j.com/oe/search/T19/


——Zoomと何が違うのでしょうか?

Portは、リモートでカメラを動かしたり、好きな角度で写真を撮影したりできます。ポインター機能もあり、「ここが見たい」とガイドに指示することも可能です。

▲Portの紹介動画

 

人気ツアーランキングBEST5は?

——人気のツアーBEST5を教えてください。

DEAN & DELUCAハワイ支店をご案内するツアーです。現地でしか手に入らない商品を紹介し、もし「これが欲しい」となれば、弊社スタッフが代理購入して送付します。購入は、事前にお送りした商品一覧表の中から商品ボタンを押すだけでOK。精算はクレジットカード決済です。

——普通のネットショッピングと違う点は?

ネット通販だと、商品を細かくチェックすることができないですよね。でもバーチャルショッピングであれば「バッグの内側は?」「マチは何センチ?」「中敷きの厚みは?」といった質問ができます。現地の日本人スタッフが画面上で応対するので、納得した上で購入できる。そこは従来のネット通販にないメリットです。

5万人以上を占っているインドの「ラブ先生」による占星術&手相占いです。占いは女性に人気ですよね。でも海外に特化した占いは少ないのではないでしょうか。

他にも文鳥占い、タロット占い、メキシコのシャーマンによる占いなど、約50種類を取り揃えています。

——占いはマンツーマンですか? 名前や生年月日を伝えるのでしょうか?

そうですね。占いによっては、事前に手相の写真を送っていただきます。もちろんプライバシー保護には十分配慮していますし、日本語を話せる通訳も参加するのでご安心ください。

リアルで世界一周しようとすると、最低でも2週間、航空券だけで40~50万円かかります。オンラインツアーであれば、世界5都市の最も美しい時間帯を90分で効率よく見られますよ。

ただ、1都市10~15分と短いので、ツアー終了後に15分程度の「ブレイクアウトルーム」を設けています。お好きな都市に分かれて、追加でガイドとやり取りが可能です。

世界一周ツアーは「王道編」「絶景編」など5種類あります。3位の絶景編は、イグアスの滝やパルテノン神殿など世界遺産を中心にまわるツアー、2位の王道編ではワイキキやイスタンブールなど人気の都市を周遊します。

▲世界一周ライブツアーの紹介動画

 

1位 ケニア・ナイロビ国立公園サファリライブツアー
ケニア・ナイロビ国立公園を周って、さまざまな動物を見ることができるツアーです。人気のポイントは、流暢な日本語で解説してくれるガイド。「ガイドさんが楽しいから」という理由で、リピートで参加されるお客様も増えています。

▲人気ガイドのフレッドさん

——ガイドさんに人気が集まるというのは意外ですね。どんな動物が見られるのでしょうか?

サファリツアーは動物園ではないので、シマウマが出てくる日もあれば、ライオンがハンティングしている日もあります。そこがライブ中継の面白さですね。

コロナ禍が落ち着いた後も、オンラインツアーの需要は残る

——ほかに変わったツアーなどあれば紹介してください。

先日、10カ国以上をつなぐ「24時間ライブツアー」を開催しました。このツアーでは、世界で新型コロナウイルスと戦う「国境なき医師団」に貢献できないかと考え、ツアー代金の50%を寄付しました。ツアーを楽しみながら医療従事者を応援できるということで、非常に好評でしたね。

あとは、「マグロのお寿司体験ツアー」などもあります。事前にご自宅へマグロを送り、当日はレクチャーを受けながら一緒に寿司を握ります。

▲「マグロ解体ショー」「デコ寿司作り体験」などグルメ系のツアーもある

——さまざまなツアーが用意されているんですね。コロナ禍が落ち着いた後は、オンラインツアーの需要が減るのではないかと思ったのですが、今後についてはどのように予測していますか?

従来どおりのリアルな旅行ができる状況になったとしても、尻つぼみになるとは一切考えていません。

日本市場でみると、海外旅行をした人数は2019年が最高で2000万人。つまり残り1億人は海外へ行っていないのです。オンラインツアーは、海外の現地へ行く前に、下見をするための手段にもなります。また、高齢者・障がいをお持ちの方など気軽に旅行できない人のニーズもあるのでは、と考えています。

最近では、アフリカの絶滅危惧種について学ぶツアーや、カンボジアを取り巻く問題について考えるツアーなど「SDGs」関連も注目されるようになりました。今後さらに、観光以外のニーズが高まっていくと予測しています。

オンラインのサファリツアーを体験してみた

ということで、筆者もランキング1位の「ケニア・ナイロビ国立公園サファリライブツアー」に参加してみました。(※通常、ツアーの録画・録音は禁止ですが、今回は特別に許可を得て掲載しています)

参加は申込後、メールで送られてくるZoomのURLをクリックするだけ。代金はクレジットカードで支払いました。

▲サファリツアーを楽しむべく、家にあった迷彩服&帽子で挑む筆者・村中

この日の参加者は筆者含め34人でした。机の上にあるのはスマホとスマホ用三脚、そしてツアーオリジナル特典のぬり絵。

はじめにケニアの場所、言語、通貨、国旗などの説明がありました。

続いて、案内してくれるガイド、オジュクさんが登場。日本語も堪能です。

サファリカーがナイロビ国立公園を走ります。カバやインパラ、ヌー、トムソンガゼルなど珍しい動物をたくさん見ることができました。

ツアー中、「ケニアにいるキリンは3種類」「角を狙った密猟により、サイが絶滅危惧種になっている」といった細かな解説が入ります。


ダチョウやハゲタカなどの鳥類も紹介。途中、回線が不安定になるタイミングもありましたが、そこは日本人のスタッフが場をつなぎ、うまくフォローしていました。

ツアー中は、チャットでコメントや質問ができます。「シマウマのおしりがかわいい!」と参加者からのコメントが。

最後にオジュクさんが挨拶。参加者からは「楽しかったです」「実際に行ってみたくなりました」などの感想が寄せられていました。

今回申し込みしたツアーは、ケニア紅茶とドライパイナップル、ギフトカードが付いた「ギフトセットプラン」。申込ページには「ツアー終了後2週間以内をめどに発送いたします」と書いてありましたが、筆者は早めに予約したため、ツアー前に届きました。料金は送料・消費税込みで7,673円、ツアーのみだと約4,000円です。

アフリカの原野と生で繋がる臨場感

正直、体験する前は「テレビの旅番組と同じようなものだろう」と思っていました。でも参加してみると「やっぱり生中継ってすごいな」と。ケニアにいるガイドと双方向でやり取りできるのもオンラインツアーならでは。やや回線が不安定で途切れるタイミングもありましたが、むしろ臨場感があり、現地と繋がっている迫力がありました。

ライブコマースやスキルシェアなど、観光以外のニーズも広がりつつあるオンラインツアー。なかなか旅行できない障がい者・高齢者など、新たな層へ広がっていく可能性を感じました。

<取材協力>
株式会社エイチ・アイ・エス

「オンライン体験ツアー」専用ホームページ
https://www.his-j.com/oe/

(編集:ノオト


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160 件のコメント
1 - 10 / 160
意外とあり?、通信量の問題はありそうだけど悪くなさそう

ギフトも3600円するけど国際便で届くなら高くないと思う
先日,ハワイのツアーに参加させていただきました(^o^)
5,6千円で手軽に楽しめるなら、
休日を過ごすのに、ありかもしれませんね。
他の方もおっしゃっているように、
国際便でギフトが贈られてくるなら、
お安いのではないでしょうか?
秘境ツアーとか、実際に行くのは躊躇われる
のは良いかも。。。
個人的には、リピーターになっている国のツアーに参加してみたいです。
うん、それそれ!懐かしい!ってひとり喜びたい。

行ったことがない国は、やはり直接行って見てみたいし、貧乏性なのかもったいない気持ちになってしまう(笑)
オンラインツアーですか‼️
やっぱり本当の旅行がいいです!
コロナが落ち着いたら、考えよ。
まだ九州に行ったことありません!
ちょっと調べてみますね!
個人旅行派なので、自分としては "ナシ" かな~。
ガイドさんの説明を聞くことに、余りありがたみを感じないから。

自分でネット検索して現地情報見たり、旅行記読んだり、旅行の動画見る方がいいな~?

でも、個人旅行が難しい国・地域なら、"アリ"かなぁ。
オンラインツアーも一度は、試してみたいです
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