町内会役員選出

来年４月から新組長にバトンタッチする事になっている。
時期が近づき、次期組長を決めて自治会事務局へ届出のタイミングとなった。
建前は現組長が組員の中から選出すべしという事である、だが建前はあくまでも建前にしか過ぎない。
実態は組長とは名ばかりで、自治会の所謂パシリであり、地位も名誉も報酬も無く、勿論全く権限を持たない雑役係である。
従って誰もやりたがらない役目で、とても選出等という手続きは通用しない。
更には、この組は数十世帯で構成されており、揉めだしたらとても収拾が付けられるものではない。
案の定その昔揉めた事があったそうで、その時の折り合いで順番に担う事が決められたとの事である。

さて次期組長予定の世帯は、かみさんのネットワークによると、変人で協調性が無く町内会の役には着かないと公言している御仁との事である。
嫌々やっている身には少々重苦しい事前情報である。
しからばと最悪の場合も想定して対応策をじっくりと練る事にした。
怒らせない、興奮させない、荒立てない丁寧な応対で、しかし当番を引き受けて貰う事に付いては毅然とした態度で納得して貰う、その為の準備を進める。
想定ケース毎のQ＆Aに纏めて行った。

そろそろ届出締切日も近づいて来たので、実行に移す事にした。
気を静めて玄関のチャイムを押す、挨拶に続いて訪問の趣旨を伝える。
すると扉が開いて住人が顔を出してきた。
再度次期組長の当番になっている旨を伝えると、「やらないという事には出来ませんか」と来た。想定通りである。
理由は共働きでかつ休日も仕事をする事があるそうである。真面目そうな印象を受ける。
組長の仕事は誰もやりたく無いと思っていると伝えると、そうですよねという反応である。普通の感覚をお持ちである。
予備知識からすると、かなり偏屈で常識から外れている御仁であるという印象を持っていたが、話をしてみるとあにはからんや、穏やかで常識もわきまえて、かつ普通の感覚を持っておられると感じた。
組員の義務として順番に組長を務める事にはどうやら理解をしてくれたようで、関心事は組長の仕事に対する不安面に移って行った。
ここまで来ればまず大丈夫、最後は無事納得の上で承諾のサインを貰う事が出来た。

やれやれである。
近所の奥さん達と何があったのかは聞かなかった、触らぬカミに祟りなしである。