スマートウォッチを試してみた（後編）

Apple Watch

Apple Watchは、今年の4月24日に一般発売が開始され、当日はTV等でも大々的に取り上げられ、大きな話題になりました。私も発売翌日にApple Watch取り扱いの大手家電量販店の様子を見に行きましたが、体験・商談ブースが大行列になっていました。

さて、そのApple WatchはWatchOS というOSを搭載したスマートウォッチで、iPhoneと同様、OSと機器の両方をAppleが開発・販売しているのが特徴です。

本体の大きさ、材質、ベルト種類などの異なる複数のモデルがラインナップされていますが、基本的にできることはすべてのモデルで同じです。外観の印象は、どちらかというと、デジタルガジェットというよりは、高級腕時計をイメージして開発されているのか、全般的に質感が高く高級感のある仕上がりです。

iPhoneとのペアリング専用

Apple Watch は iPhone とペアリングして使用します。iPadではペアリングに使用する「Apple Watch」アプリが対応していないので、今のところ利用できません。Apple Watch の発売直前に実施された iOS の 8.2 へのバージョンアップ時に、当然のように「Apple Watch」アプリが追加されたところは、ハード（端末）ソフト（OS)を一貫して提供しているAppleの強みを感じました。

ちょっと面白いのがペアリング方法で、AppleWatchに表示された画像をiPhoneのカメラで読み取るという方法でペアリングします。

ペアリング完了後はiPhoneの「通知」が Apple Watch にも通知されます。前編で紹介した Smart Watch 3 と同様、iPhoneを取り出さずに通知を確認できる、やはりこれが一番役に立つ機能であると感じました。

なお、Apple Watch も通知時本体をブルっと震わせてくれますが、肌に密着して利用する事を利用して軽くはじくような感覚など、凝った動きもしてくれます。

また、Apple Watchでも Android Wear デバイスと同様、原則通信は親機になる iPhone 経由の通信となり、iPhoneと離れてしまうと、Wi-Fi通信も併用する仕組みです。

音声入力について

Apple Watch でも 音声アシスタントSiri が搭載されており、Hey Siri! と呼びかけると反応して、簡単な操作などを行ってくれます。しかしながら今回の試用では、反応、認識率とも SmartWatch 3 の方が良好な印象でした。私と Siri の相性が悪く、心が通じ合ってなかっただけかもしれませんが、何度か呼びかけたにも関わらず、ラーメンのタイマーをセットするところまで到達できず、仕方なくiPhoneを取り出してセットしました…。

これは想像ですが、最初の呼びかけの時点で無視される事もあることから、聞き取る部分に課題があるのかもしれません。もちろん、ソフトウェアでも改善できる内容なので、今後のアップデートで改善される可能性はあります。

独自のユーザインタフェース

一方で、Apple Watch は、ほぼタッチパネルのみの SmartWatch 3 と異なり、デジタルクラウンと呼ばれる竜頭のような操作スイッチを装備しています。このスイッチの押し込みがiPhoneにおけるhomeボタンのような働きをすると共に、つまみを回す操作で、ズームや数字の設定などを直感的に行うことができます。

また、タッチパネル自体も、いわゆるフリック、タップだけでなく、Apple が フォースタッチ（Force touch）と呼ぶ、「強く押す」操作があります。このあたり、腕時計サイズという限られた条件の中で、新たなユーザインタフェースを開発、導入するAppleには素直にすごいと思います。

電源事情は？

Apple Watch の電源事情も見ていきます。こちらも Smart Watch 3 同様、1日は持つけれども、2日は心もとないという印象です。ただ、この Apple Watch の電源事情における一番の特徴は、専用の非接触充電ケーブルで充電するところです。非接触充電対応はメリットでもあるのですが、独自の充電規格かつ、USBなどの汎用的な有線充電に非対応という事実は、出先での急な充電がほぼ不可能であることを意味します。

汎用の Micro USB ケーブルで充電できる Smart Watch 3 は、いざとなれば100均ショップで売っているケーブルでも充電できるという安心感がありますが、こちらはそうはいきません。Apple製品なので、Micro USBは難しいかもしれませんが、たとえば iPhone のLightningケーブルでの充電が可能であれば安心感が段違いだったかと思います。

その他ちょっといいところ

Apple Watch は、腕にはめているのか、外されているのかをセンサーで認識しています。その情報を利用して、腕にはめた状態で一度パスコードでロックを解除したら、そのままロック解除を継続、腕から外すと即座にロックをしてくれます。これはセキュリティと煩わしさ防止を両立したうまい仕組みだと思います。

また交換用ベルトが多数用意されており、大胆にイメージチェンジが可能です。カラフルなスポーツモデルもシック革ベルトに付け替えると、フォーマルな場にもフィットするようなデザインになります。先進的でありながらあくまでも「腕時計」の延長線上にあるデザインからか、TPOにうまくフィットするのはさすがです。

Smart Watch 3 の記事では、LINEに音声で入力して返信可能と書きましたが、Apple Watch のLINEアプリは逆にスタンプのみ送ることができます。LINEスタンプによるコミュニケーションが活発な日本では、がんばって音声で文字入力するよりも、こちらの方がウケるかもしれません。

まとめ

～2機種を試用して～
今回 SONY Smart Watch 3と、Apple Watch の2機種を試用しました。事前に考えていた以上に、「使えるかも」というのが正直な感想です。その理由は、スマホの通知をすぐに確認できるというところに尽きます。そこにピピッと来た方は満足できる可能性があります。

ただ、そのほかの機能については、両機とも、まだまだ対応アプリが少しずつ揃ってきている段階で、ポテンシャルを生かしきれていない気がします。こちらはもう少し時間が経たないと判断は難しいと思います。

特に今秋にWatchOSのバージョンアップが予定されており、Apple Watch 単独で動作するアプリの提供が可能になります。ここで何かまた新しい「発明」があれば、機械式のアナログ時計のみだった時計の世界に、クオーツ時計やデジタル時計が増えたように、スマートウォッチも市民権を得られるかもしれません。


～ここが進化してほしい～
・電源問題
腕時計サイズでバッテリー大幅増は困難、また大幅な省電力化も難しいという現実では、いかに充電を気軽に行うかがポイントになります。常時は非接触充電（しかも規格化された方式）で、置くだけでスマートに充電し、非常時にはUSB等からの汎用的な充電ができるというようなものになれば、もっと気軽に使えるようになると思います。


・ディスプレイの表示
スマートウォッチは積極的にバックライトや表示を消去します。今回の両機種とも、腕の動きを検知して表示してくれますが、やはり思い通り表示されないことがあり、それがストレスになりました。また、前編でも書きましたが、チラ見ができないことも残念なポイントですので、そのあたりも併せて、なんとか改善してほしいポイントです。現在の使える技術の中では、 SONY Smart Watch 3 半透過型液晶は良く考えられていると感じました。


・プライバシーの問題
メール着信通知等で、思わぬところでディスプレイが表示され、届いたメールの件名や本文が周りにいる人にも見えてしまうという課題もありました。設定で内容を表示しないようにもできますが、利便性とのトレードオフになります。常時腕に着けているスマートウォッチは、他人に画面が見える状態でさまざまな場面に出くわしてしまうため、装着者が見たい時だけ、すばやく確実に表示する、という仕組みを実現する必要があります。

終わりに

前後編の2回に渡って、スマートウォッチの試用レポートをお送りしました。まだまだお伝えできてない事もたくさんあるとは思いますが、少しでもみなさんのご参考になれば幸せです。

ちなみに私DD個人としては、スマートウォッチ界の両メジャーについてはかなり理解できたので、メジャー陣営の更なる進化を期待しつつ、もっとマイナーな、たとえば通知に特化したタイプのデバイスなんかも含めもう少し模索してみたいと思います。

ところで今回の試用の副作用として、時計を見るときの腕の動きがやたらとオーバーアクションになってしまいました。まずはこれから矯正せねば…。

【追記】
Apple Watch をご利用いただくには、iOS8.2以上の iPhone が必要となりますが、au版の mineo では iOS 8 以降がご利用になれないため、Apple Watch はご利用になれません。
2015年7月7日（火）19時45分