失敗の予感
今日は月曜日。
俺は先週末のうちに宣言を済ませ、昼を過ぎれば宣言回数と達成回数が123回のキリ番になり、掲示板へそのスクショを貼れるだろうと無邪気に考えていた。
今日はシフトを外れて仕事はない。テレビは冷たい北風の吹く真冬の寒さを予報しているが、外を見れば、立春を過ぎた陽光が眩く街を照らしている。
mineoさんぽのミッションを背負った俺は、迷わず家を出た。
洪水対策のため高度成長期に掘削されたという直線的な川沿いを歩いたが、予想どおり、動いてさえいれば暖かい。たが、予期していなかった事態が俺を襲った。尿意だ。
そのとき俺は、土手下にある小高い丘と、それを跨ぐように通る、手入れの行き届いた小径を見つけた。公園だ。そこには必ず便所がある。
俺は丘へと急いだ。
冷静さを失いかけていた俺は丘の小径を一周する羽目になったが、その先に思い描いていたとおりの小屋を見つけた。便所だ。
俺は入口付近に半分隠れて設置されているはずのそれを探して、素早く小屋の中を見回した。見つけた。だが、またしても予期しない事態が俺を襲った。先客がいる。
大人しく時機を待つか、あるいは家庭用のそれに似たもうひとつのリソースに頼るべきか、俺は僅かに逡巡した。結局、冷えたそれに座ることを俺の直感は良しとしなかった。
小屋の横には暖かい陽を受けた木製のベンチがある。そこへ腰掛けて、俺はしばらくぶりに、長い長い時間を待つ感覚を味わうことになった。幸い、先客は程なく小屋の外へと姿を現した。俺のターンだ。
速やかに小屋の中へと姿を隠し、足もとの暖かさを保証する装備に手こずりながらも、俺は降って沸いたミッションを無事にコンプリートした。小屋から出ると、先客も余裕の表情を見せながら体操している。全く御同慶の至りだ。
俺はまた陽の差すベンチに座った。喉元過ぎればなんとやら、自販機を見つけた1分後には、俺の手には缶コーヒーが握られていた。
失敗はこの後に訪れた。再びの尿意ではない。人生で初めての失敗をしてしまったかもしれないと、俺は悟った。(つづく)



15時を過ぎないとカウントされなくないでしか(๑•̀ㅂ•́)و?
イヤここで待ってます!!
推理…
コーヒーでリラックスしたんが引き金〜??

(つづき)少し時間を戻そう。
自販機を見つけた俺は、公園に面した地の利のためか、相場よりかなり高い値をつけた缶コーヒーを買った。水道の水で冷えた手にはありがたい暖かさだ。
最近はキャッシュレスの生活に馴染んだ俺は、折り畳まれカード入れに忍ばせた千円札を時おり使う以外には、現金を必要としない生活を送っている。
たった250mlの甘ったるいコーヒーに130円も払うのは、使い道の減った小銭を処分する意味もあるが、空き缶入れを3個も従えた行儀のいい販売機を設置するオーナーへの敬意の表れでもあった。
ベンチに戻りコーヒーを飲みながら、俺は4年目に入ろうかという古いXperiaを手に取った。昨夜からタカヤさんが、俺のXperiaと同じくらい古いwebアプリの不具合を再検証している。
プロは報酬の出ない仕事はしない。特に古いエンターテイメント系アプリなど、誰にもメンテナンスの義務はない。タカヤさんもとんだお人好しだ。だが、この世界ではパケットと名誉だけが報酬だ。俺はこの検証を少しだけ手伝うことにし、未明からいくつかの粗い仮説を立て、状況証拠を集めていた。この程度の作業なら、公園のベンチでも続行できる。
情報によれば、最後に追加された白いウサギがときどき悪さをするらしい。あとから付け足された要素は、開発初期に作られた「暗黙のルール」を読み損ねてヘマをするものだ。最近この世界に入った俺にとっても他人事(ひとごと)じゃない。
半分程度の見込みがついたところで少しだけ画面から距離を置くと、まずいことに気付いた。現在時刻が「12:43」を示している。
今日は月曜日。123回目の宣言に123回目の達成を付け加えるはずの日だった。
43分間も禁域に食い込んだのは初めてだ。俺はフラフラと立ち上がり、Xperiaをポケットに突っ込んだ。行儀のいい自販機に戻り空き缶を捨てると、再び土手へ向かった。
(つづく)

続きを期待します。😀😀😀ゆずるね失敗、下書きぶっ飛び……(;´д`)トホホ…
画像はパタリロのマライヒ?
BGMはクックロビン音頭しかないでしょう!
高木彬光の、「一、二、三――死」
を思い出した(^^;)
続きは?

( ▔・ω・▔ )
土手をしばらく歩くと、川沿いに鳥たちが群れなしている。いい気なもんだ。ユリカモメにオシドリ、ムクドリにハト。ユリカモメが騒ぎ出したので振り返ると、カラスとネコが土手の上から群れを眺めている。「みやこどり」と優雅な異名を持つユリカモメだが、どちらかと言えば迷惑がっているのは騒がれたカラスとネコのようにも見える。
呆然と川を眺めていると、ようやく13時を過ぎた。失敗のショックで半分投げ出した不具合原因の仮説を荒っぽくコメント欄に書き込み、トボトボと家に向かって歩き始めた。
他人が原因の失敗は、他人を許せばそれで済む。だが自分が原因の失敗は、当てどころの無い悔しさだけが残る。まあ、誰にも迷惑が掛かっていないのが救いだ。
Xperiaに目を落とすと、マイページに通知がある。あなたがベテランLv.1になりました。このタイミングか。veteranという語には、経験豊富な人という以外に退役軍人という意味もある。ビギナーからまだ1年も経っていないのに、大した老成ぶりだ。新人王を獲得するスーパー グランド マスターもいる世界の話なので、それほど驚くことでもないのか。
少し落ち着いてから、禁域での通信データ量を推定してみた。43分間はネットに繋いだままだったが、マイネ王から外部には出ていない。掲示板のテキストだけなら問題ない。しかし、検証中のスクリーンショットもいくらか貼られていたな。しかし画像をタップしなければ1枚あたり数十kbだ。
ああ、一枚はタップして拡大画像を確認したか。それでもあれは1MB弱だろう。あっ、その前に小さなマップで王国ダンジョンを遊んでしまったか。あのローディングは容量が読めない。くそっ。
結局のところ、達成基準の「数MB」次第なので結果通知を待つしかない。帰宅するが、明らかに一万歩以上歩いてミッションをクリアしているはずなのに、mineoさんぽを開く気がしない。もう15時を過ぎたから、mineoアプリを開いた時点で結果を見てしまうだろう。その前に、まずは食い損ねた昼飯からだ。
(次回完結)
未達成を覚悟していた俺は動揺した。何か間違いは無いのか。あった。アプリに連携された回線が、家に置いたままのサブ回線のほうだった。恐る恐る、回線をメイン回線に切り替える。また、メッセージが浮かび上がる。
「本日のゆずるね。を達成しました。」
なんて日だ。結果だけ見れば良いことづくめに見えるだろうが、こっちは気が気じゃない、大変な休日になったんだ。まあいい。こういう経験を味わうのもベテランの仲間入りをするってことなんだろう。
ギネス ドラフトを飲み干し、俺の1日がようやく終わった。(完)
サスペンス投稿👍
達成おめでとうございます!😄
投稿時刻が、ゆずるね。時間帯なら脱落者が増えるかもね😎
私は、Wi-Fi環境(^^;)

ということで、首の皮一枚で連続記録を伸ばすことができました😆※この作品はフィクションです。実在の人物、電気通信事業者とは関係ありません。

(۶⊙∀⊙)۶マジ!(大ウソ🤣💦)

楽しく読ませて頂きました。「ゆずるね」123回達成おめでとうございます。
https://king.mineo.jp/game/dungeons/42134

ネウトリヌスさん♪傑作、読み応えありました!!!
この掲示板にコメントが増えて欲しい気持ちと、
ページが増える事で続きを読むスピードが変わってしまう不安の、
両方の気持ちがせめぎ合っております。
このコメントも1ページ目の埋没の片棒を担いでしまう後ろめたさを感じながらも、
この「作品」を激賞したい気持ちが上回りました!!!
私も本当は昨日「ゆずるね。」累計200達成を貼れる筈でしたが、
私用で時間が取れず、本日201回達成と云う、
嬉しいのに寂しい発表になってしまいました(;^_^A
ネウトリウスさんは累計達成123回の」連番投稿、
おめでとうございます\(*^∇^*)/