Windows 10サポート終了で「ChromeOS Flex」が救世主に？ 古いPCでも使えるか試してみた

2025年10月14日、Windows 10のサポート終了。古いPCを使っている人にとってはXデーとも言うべき日で、セキュリティ関係のアップデートが原則的にできなくなり、各種ソフトへも徐々に対応しなくなるため、安心して使うには、Windows 11を搭載するPCに乗り換える必要があります。

しかしWindows 11にアップグレードする主な最低限の要件として、以下の基準を満たす必要があるため、それに対応できないPCも多くあるのです。

しかし物価高騰の今、お金に余裕がない人も多いはず。「古いPCをどうにかして使い続けられたら……」と思うこともあるでしょう。

その救世主とも言われるのが、無料で使えるGoogleの「ChromeOS Flex」。同じくGoogleによる「Chromebook」に近く、ブラウザを使った作業であれば、Windowsとそう変わらない使い心地で利用できるとの評判です。

低スペックマシンでも快適に使えるのも魅力。必ずしもPCにインストールしなくても、USBから実行できます。

しかし、インストールして使うWindowsアプリに加え、Chromebookで使えるAndroidアプリストアも使えないなど、難点も見受けられる様子です。

今回は、ChromeOS FlexをWindows 10以前の古いPCにインストールを敢行。

「どれほど古いPCでも使えるの？」
「実際にどれだけ使えるの？」

を検証してみました。

導入前に把握しておきたいこと

ChromeOS Flexには「認定モデルリスト」があり、掲載されたPCはChromeOS Flexが正常に動作することが想定されていますが、実は大部分のノートPCはここに載っていません。

とくに日本メーカーのPCは認定モデルリストに載っていないことが多く、パナソニックは2台、シャープは1台のみです（2025年6月現在）。

ちなみに今回の記事では3台のPCが登場しますが、全て認定モデルリストには掲載されていませんでした。

しかし、認定モデルリストに載っていないPCも、有志のユーザーの手によって多くのマシンで動作が確認されています。なので、「やってみなくてはわからない」というのが現状です。導入する際は、あくまで自己責任で行ってください。

これだけ古いとさすがにムリ？　2007年製PC

まず用意したのは、筆者の家にあったPCの中で最も古い「Let's note Y7 CF-Y7AWCAXS」。2007年にパナソニックから発売された、Windows XP時代のノートPCです。

パソコンの心臓部ともいえるCPUには、懐かしのIntel Core Duo U2400が使われています。

そのほか、メモリは504MB（合計512MB）という少なさです。

果たして、こんな古いPCでもChromeOS Flexを載せられるのでしょうか？

それを確かめるため、まずはChromebookのリカバリユーティリティから、ChromeOS Flexを実行したり、インストールしたりするためのメディアを作成します。

例えば、家に使っていないUSBメモリがあれば作れます。しかしその代わり、USBメモリに入っていたデータは消えてしまうのでご注意を。メッセージに従って操作を進めてしばし待てば、ChromeOS Flex実行用ディスクの作成完了です。

PCに問題がなければ、この実行用ディスクをPCのUSB端子に差すことでChromeOS Flexを動かせるはず。

USB経由でChromeOS Flexを動かすために、PC起動時に特定のファンクションキーを押すなどしてBIOSに入ります。BIOSの起動方法はPCによって異なるので、くわしくは「自分のPCの型番＋BIOS＋起動方法」などで検索してみてください。

BIOSを開いたら、起動順位の1位を「USB KEY【※1】」に変更。これでPCの起動させるデバイスの順番が「USBドライブから」になりました。
※1　Let's note Y7 CF-Y7AWCAXSにおける表記

いよいよ、実行用ディスクをUSB端子に差したうえでPCを起動します。

うまくいけば、これでChromeOS Flexを実行用ディスクから動かせるはずなのですが……

警告メッセージが出てきました。これは「このマシンのCPUは32ビット（i686）なので、64ビット用のカーネル【※2】は動かせません」という意味で、対応不可ということを告げられてしまいます。
※2　Windowsなどの「オペレーティングシステム （OS）」 の中核となるソフトウェア

ちなみに、ChromeOS Flexを使うための最低限の主な要件は以下の通り。

ChromeOS FlexはWindows 11に比べて、CPUや内部ストレージなどの要件が軽減されており、Win11より多くのPCで使えます。

今回用意したPCの場合、USBドライブからの起動や内部ストレージの大きさはクリアしているのですが、メモリは504MBしかありません。さらに32ビット用のCPUしか積んでいないのでNGでした。

さすがに、2007年に出た手持ちのPCでは古すぎたのです。

2009年製のPCならいける？　

続いて押し入れから引っ張り出したのは、2009年に発売したノートPC「HP Pavilion dv6i（dv6-1200）」。Windows VISTA時代のマシンです。

しかしハイエンドのノートPCであり、当時としては最新鋭のIntel Core2 Duo P8700を積んでいました。

64ビットOSに対応するCPUで、2015年にリリースされたWindows 10までアップグレードされています。

先ほどの、ChromeOS Flexにアップグレードするための最低限の要件も満たしています。

これなら大丈夫……？　と期待しつつ、先ほどと同様にBIOSの設定を変更し、ChromeOS Flexのソフトが入った実行用ディスク（USBメモリ）を差してPCを立ち上げると……

待ちに待った「ようこそ ChromeOS Flexへ」という画面が登場しました。

しかし喜びもつかの間、セットアップの序盤でネットワークにつなげるところで、異変が起こりました。Windowsでは普通に動いていた無線LANが全く動作しなくなり、セットアップできなくなったのです。

どうやらこれは「ChromeOS Flexあるある」だそうで、Windowsで使えていたPC内蔵の機能が、突然使えなくなるのはよくあることなのだとか。この他、このPCでは内蔵スピーカーから音も出なくなることもありました。使うためには、外付けのアダプターやスピーカーを付けるなどの自衛が必要なようです。

仕方なく有線LANをつないで先に進み、セットアップを進めました。

なお、ChromeOS Flexには2つの導入方法があります。

いきなり未知のOSをインストールする勇気が無かったので、今回はChromeOS FlexをUSBから実行する「試してみる」を選びました。

しかし……遅い。「インストールをせずにメモリから使うと若干動作が遅くなる」とは聞いていたものの、予想以上に動作が遅いのです。

なぜなのか……無知なりに推理してみると、そういえば2009年に生まれたこのHP Pavilion dv6は、USB 2.0までしか対応していません。

USB 2.0は転送速度がかなり遅く、USB3.0の10分の1ほどと言われます。「これがUSBメモリ駆動において悪さをしているのかも？」と仮説を立てました。

2014年のノートPCならフル活用できる？

そこで、また押し入れから引っ張り出したのが「HP ProBook 430 G2」です。

2014年に登場し、第5世代のCore i5 CPUを搭載。メモリは8GBを積み、Windowsでもまだまだ使える即戦力級のマシンです。さらに、USB3.0ポートを搭載しています。

これなら、ChromeOS Flexを快適に使えるのでは？　初期セットアップはスムーズに済み、またUSBから実行する方法で使ってみました。

さすがUSB3.0、目に見えて早くなりました。ですが、まだブラウジング程度でも処理が遅れてしまいます。とくに画像を表示するときにワンテンポ、ツーテンポ遅れる感じ。さらに、「数秒～数十秒間のフリーズ」がなぜか頻発してしまいました。

この時点で、ChromeOS FlexをUSBから実行して使うのは実用上やや難しいことがわかりました。ならば、PCにインストールしてみるしかない。

※ChromeOS Flexをインストールすると、PCに入っていたWindowsは消えてしまうので自己責任で行ってください。

そこで、最悪Windowsにまた戻せるように、Windows上で「回復ドライブ」を作ったうえで、インストールしてみました。

インストールして使ってみると……どうでしょう、ChromeOS Flexが見違えるほどに軽快に動いたのです。USBから動作するのとは違い、ブラウジングやYouTubeまでサクサクの挙動です。

所有している低スペックのChromebookよりも、高スペックのPCにChromeOS Flexをインストールしたため、動作がずっと速く感じられます。

テキストワークの仕事で、MS Wordと並んで主流になりつつある、「Googleドキュメント」も軽快に使えます。実はこの記事も一部ChromeOS Flexで書いているのですが、そこまで違和感なく作業できました。

Geminiを呼び出すのもワンタッチで可能。メインで使うようなプリインストールアプリは、あらかじめ画面の下にアイコンとして並んでいるので、クリックですぐ使えます。

「ChromeOS Flex」はUSBから動作するより、インストールしたほうがずっと実用的にサクサク動くようです。

ならば、先ほどの2009年製のPCも、インストールすれば快適に動作するのでしょうか？　やってみました。

そうすると……先ほどのUSB駆動のときよりは明らかにいい感じ。さすがに古いPCなのでワンクッション待たされる感じは否めませんが、それなりに実用レベルには動いています。

YouTubeアプリの画面拡大・縮小時などでもたつくのに加え、マイネ王のスタッフブログ記事でもトップ画像が表示されるまで2秒ほど待ちましたが、使えなくもありません。

Web版のMicrosoft Wordも利用可能です。さすがに2009年製PCとなるとすごく快適とは言えませんが、何とか実用できる範囲内でした。

ChromeOS Flexではできないこと

ようやくChromeOS Flexがまともに使えるようになりましたが、できないことも多くあります。

まず、ソフトを原則的にインストールできませんし、プリインストールアプリもインターネットにつなぐことが使用の前提なので、オフラインでできることは少なめです。

なお、Chromebookは「Androidアプリ」も使えるのですが、ChromeOS Flexはそれもできません。

個人的には文字変換ソフトとして愛用するATOKがインストールできなかったり、マウスのホイールを回したときに、一気に一画面分遷移する設定ができなかったりするのが気になります。

ただし、従来インストールして使うものだったアプリが、オンラインアプリとしても使えるようになってきているのが時代の流れなので、今後は使い勝手がもう少し良くなるはず。

現状でも、あくまで「サブPC」として使うには悪くない感じもします。

ちなみに……それでも「あと少しWindows 10を使いたい」という人もいるでしょう。

そんな人にうってつけなのが、「拡張セキュリティ更新プログラム（ESU）」。

これは2025年10月15日から2026年10月13日まで重要な月次セキュリティ更新プログラムを受け取れる、マイクロソフト公式による延命処置的なサポートで、以下の3つの方法があります（2025年8月14日現在）。