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未開封の初代iPodが400万円？レトロガジェット鑑定のマニアな世界を垣間見た

ITガジェット

2025.04.30 11:00

ライター: 辰井裕紀
ガジェット・ローカルネタ・卓球が好きなライター。過去に番組リサーチャーとして秘密のケンミンSHOWなどを担当。

アメリカで未開封の初代iPhoneが19万372.8ドル（約2,850万円）で落札され、大きなニュースになりました。

日本でも発売された「iPhone 3G」ではなく、2007年にアメリカなどで登場したiPhone、通称iPhone 2G。発売当時の価格は499～599ドル（Photo by [https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Apple_iPhone_2G_8GB_(11).jpg?uselang=ja Sevela.p]）

日本でも発売された「iPhone 3G」ではなく、2007年にアメリカなどで登場したiPhone、通称iPhone 2G。発売当時の価格は499～599ドル（Photo by Sevela.p）

さらに、2001年に発売された初代iPodの未開封品が、2023年12月のテレビ東京「開運！なんでも鑑定団」に登場し、400万円と鑑定されて話題になりました。

なんでも鑑定団の鑑定士・柴田文彦さんに「これが日本に残っていたのは奇跡に近い」と言わしめた（photo by [https://www.flickr.com/photos/blakespot/52066067732 Blake Patterson]）

なんでも鑑定団の鑑定士・柴田文彦さんに「これが日本に残っていたのは奇跡に近い」と言わしめた（photo by Blake Patterson）

このように、今や歴史が長くなったガジェットの世界には、驚くほどの価値を持つ逸品が眠っているはず。くわしい人に聞いてみたくなりました。

しかし、実はレトロガジェットの鑑定を行っている例は少なく、取材を受けてくれる方を探すのにも一苦労でしたが、業界でも貴重な買取を行う店「BEEP」にお話を伺うことができました。

首都圏に3店ある中、今回お邪魔したのはBEEP秋葉原店。レトロPC、レトロゲームを中心に、古いガジェットなども幅広く扱っています。

階段を降りて店に入ると、そこには懐かしい別天地が広がっていました。

店内は、1980～90年代ごろの秋葉原がイメージされているとのこと。

ゲームプロデューサーでもある生き字引の丸山さん

まるで番人のように待ち構えていた、株式会社三月うさぎの森 BEEP通販部法人営業部の丸山満さんにお話を伺いました。

※以下、買取価格は取材当時のもので、基本的に最高値の額です。

「ファミコンテレビ」が100万円？

店を少し歩くだけで、面白そうなもの、高そうなものがありますね。

……これは！？

これは「ゲーム＆カーナビハイサターン（日立製作所）」です。

買取価格は32万円……！？　家庭用ゲーム機のセガサターンと名前が似ていますね。

これはセガサターンの互換機ですね。ビデオCDとフォトCD機能が装備されたハイサターンがまず発売され、さらに車のナビゲーション機能まで標準搭載した、この「ゲーム＆カーナビハイサターン」も後に発売されました。

ええぇ……！　これを車載する？

はい、車載している人は見たことありませんが……（笑）

レトロゲーム機の中でも、ファミコン（ファミリーコンピュータ）とテレビが一体となった「ファミコンテレビC1（シャープ）」が100万円というのに驚きました。めちゃくちゃ貴重なんですか？

はい。一体型で壊れやすく、現存するものが少ないんです。テレビが一家に一台の時代で、高くて買えませんでしたから。

製造元のシャープは当時任天堂の得意先で、他にもファミコンとディスクシステムが一体化した「ツインファミコン」などを世に出していた

ちなみに、ソフトでとくに高価なのが「キン肉マンマッスルタッグマッチゴールドカートリッジ」。なんと買取価格は120万円（BEEP公式サイトより）

あの日の「レトロフューチャー」が高値に

他に、どんなガジェットを高く買い取っていますか？

デジタル腕時計、ヒューレットパッカードの「HP-01」は8万円で買い取っています。

1977年発売で7桁の四則計算機能やアラーム、ストップウォッチに200年対応のカレンダーまで付き、「スマートウォッチの元祖的存在」とも語られる（Photo by [https://www.flickr.com/photos/eager/14893395312 準建築人手札網站]）

1977年発売で7桁の四則計算機能やアラーム、ストップウォッチに200年対応のカレンダーまで付き、「スマートウォッチの元祖的存在」とも語られる（Photo by 準建築人手札網站）

レトロフューチャーを感じる深遠なデザインですね。　

他にもポケコン【※1】（ポケットコンピュータ）は多く扱っていて、高価で買い取っています。
※1　ポケットにおさまる大きさの携帯用小型コンピュータ。1980年代、学生を中心に愛された

当時の少年たちがよくプログラミングしていたと聞きます。

1986年シャープから発売されたポケコン「PC 1262」。同社の一般向け最後の機種「PC-E650」は2万円で買い取る（Photo by [https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Pocket_Computer_SHARP_PC-1262.jpg Tamie49]）

1986年シャープから発売されたポケコン「PC 1262」。同社の一般向け最後の機種「PC-E650」は2万円で買い取る（Photo by Tamie49）

はい、2～3行くらいの液晶表示で頑張っていましたね。私が学生時代に持っていた機種はほぼ文字しか表示できませんでしたが、授業中にこっそり簡単なゲームを作ってました（笑）

ウォークマン（ソニー）も、1989年発売の「WM-DD9」を4万円という高値で買い取っていらっしゃいますね。

ソニーらしい最新技術で、2モーターディスクドライブ方式ですごくいい音だったので当時から憧れでしたし、ファンも多いですから。

こちらのWM-D6Cは買取価格2万円（Photo by [https://www.flickr.com/photos/35282948@N07/38070556665 hdboy88]）

こちらのWM-D6Cは買取価格2万円（Photo by hdboy88）

オーディオだと、他にどんなものが高額買取されますか？

もうプレーヤーが新しく発売される可能性が少ない「MD」などです。逆に「レコードプレーヤー」とかは一見高そうですが、今でも生産されているので、一部ハイエンド機以外は買取価格が落ち着いています。

小さなガジェットで言うと、90年代ごろから「小さなPC」も流行りましたよね？

はい、例えば1995年発売のIBMの「PC110」は3万円で買い取っています。

重さ630g？当時は革命的だったんじゃないですか？

Windows 95が出た年に手のひらサイズを実現したPC110。マイクとスピーカーがあり電話機にもなった（Photo by [https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:IBM_Palm_Top_PC_110_with_port_rep.jpg Ariga]）

Windows 95が出た年に手のひらサイズを実現したPC110。マイクとスピーカーがあり電話機にもなった（Photo by Ariga）

はい。ただし、当時はPCが高い時代で、もっと高かったからとにかく手が出ないんですよ。一式そろえたら車より高かったですし、買おうなんて気持ちになれませんでした。PCは小さければ小さいほど高かったですから。

今日私物を持ってきていただいていますが、かつてはこういう小さいPCに憧れましたよね……！

丸山さん所蔵の2001年発売、PCG-C1MRX（ソニー）。8.9インチのウルトラワイド液晶を搭載し、内蔵ビデオカメラで映像も撮れた

はい、東芝の「Libretto」とか、初期の「ThinkPad（当時はIBM）」などは比較的高額で取引されています。

1997年発売のLibretto リブレット 70。こちらも手のひらサイズで買取価格1万円（photo by [https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Libretto_70CT.jpg?uselang=ja Lorenzo Breda]）

1997年発売のLibretto リブレット 70。こちらも手のひらサイズで買取価格1万円（photo by Lorenzo Breda）

ちなみに、90年代末に人気だった「iMac」や「iBook（アップル）」はどうですか？

あまり高くないです、多く生産されたのもありますね。それより前のMacintosh（アップル）の方が高価です。

「ボンダイブルー」が印象的だったiMac（Photo by [https://www.flickr.com/photos/mwichary/2180218502 Marcin Wichary]）

「ボンダイブルー」が印象的だったiMac（Photo by Marcin Wichary）

レトロPCと「PCゲーム黄金時代」

いろいろなレトロPCが並んでいますが、なぜこれほどの種類が必要なんですか？

今ではWindows用、Mac用くらいなんですが、昔はそれぞれの会社が出すPC用に作られたゲームじゃないと、基本的にはプレーできなかったんです。

【かつてのPCシリーズの例】
・PC-98、PC-88、PC-60（NEC）
・X68000・X68030（シャープ）
・X1・MZ（シャープ）
・FM-TOWNS（富士通）
・FM-7・FM-77（AV）（富士通）
・Macintosh（アップル）など

また、同じ会社のものでも、機種が違えば原則的にはプレーできませんでした。

だからこそ取り扱うPCも増えるわけですね……当時すでにファミコンなどの家庭用ゲーム機はありましたが、なぜ高価なPCを買う必要のある「PCゲーム」が売れたんでしょうか？

ファミコンなどの家庭用ゲーム機だと、マシンパワーが足りなくてアーケードゲームを忠実に再現することが難しかったんですが、多くのPCはできたんです。

当時はゲームセンター黄金時代でしたからね。その中でも、とくに高額で買い取っているPCは何ですか？

映像と音楽の表現に優れていた「X68000シリーズ」です。ものによっては10万円以上で買い取る場合もありますし、壊れていても喜んで買い取ります。

ゲーム用途の他にはパソコン通信や音楽制作などにも使われた

昔のPCが、なぜそんなに値上がりするんですか？

長い時間が経って、満足に動作するものが市場に出回らないですし、部品が減っていて修理も大変ですから。

どんな人が買っていますか？

やはり、ゲームをプレーする方々です。かつてはひときわハイクオリティでゲームをプレーできましたし、ゲーム制作のツールとしても重宝されました。

中には、さらに古いPCもあるような……？

工場などで古くから使われているシステムだと、MS-DOS【※2】時代のPCが今も動いているケースもあるので、それでご購入なさる方も中にはいます。インターネットにつながらない状態なら、古いシステムも長く安定的に動かせますから。
※2　1981年にマイクロソフトから登場したOS

ちなみに、かつてひろゆきさんや堀江貴文さんらがPCへ最初に触れた入門機「MSX」というものがあったそうですが、高額買い取りされているものはありますか？

はい、10万円ほどになる機種もあります。安いもので当時2万円程度からありましたし、PCだったので、簡易的ですがワープロやプログラミングなどいろいろ使えました。ゲームも作れましたよ。

国内外の各社が参入した「MSX」規格。松下電器産業（現パナソニック）のFS-A1GTはMSX最後の機種と言われる。買取価格は8万円（Photo by [https://www.flickr.com/photos/telemax/5486995666 Tilemahos Efthimiadis]）

国内外の各社が参入した「MSX」規格。松下電器産業（現パナソニック）のFS-A1GTはMSX最後の機種と言われる。買取価格は8万円（Photo by Tilemahos Efthimiadis）

ファミコン末期の未開封品は貴重

「未開封品のガジェット」はいっそう高くなるようですが、「この未開封品があったら、すごい額になるぞ」というものはありますか？

例えばファミコン末期の1992年に出たゲームです。「サマーカーニバル’92烈火」「ギミック」とか。

サマーカーニバル’92烈火は75,000円という高額で買い取る[https://www.beep-shop.com/item_entry/58782/ （BEEP公式サイトより）]

サマーカーニバル’92烈火は75,000円という高額で買い取る（BEEP公式サイトより）

なぜファミコン後期に出たゲームは高いんですか？

ゲームの内容も評価されていますが、数が絶対的に少ないのも高騰している要因です。次世代機・スーパーファミコンの登場時期でしたし、おもちゃ屋さんの仕入れも少なくなっていましたね。

そうなんですか。当時私もスーパーファミコンを買うのが遅かったんですが、どんどんファミコンの肩身が狭くなってくるのを感じましたね。

ちなみに、最近熱いレトロガジェットはありますか。

「ゲームボーイ」です。日本人はもちろん、訪日客にも人気で「本国よりも程度がよく安いものを買えるから」だと思われます。かつて本体の買取価格が100円にもならなかった時代もありましたが、今は10万円近くするものもありますよ。

店内に並ぶゲームボーイ。中でもゲームボーイカラーのゲームボーイ10周年記念モデルは9万円という高値で買い取る

伝説の「Apple I」を買い取るのが夢

一度は買い取ってみたい「夢の貴重ガジェット」はありますか？

個人的には、アップルが最初に製作・販売したマイクロコンピュータ、「Apple I」を買い取りたいです。

2014年の時点で、販売当時のまま動くものはたった6台とも聞きますから、現存するものは相当少ないですよね……！？

はい、木の枠で作られた伝説の一台です。もしお客さんが売りに来られたら、触ってみたいですね……！

Apple Iが来たらもうみんなで拍手ですかね？

そのときはBEEPの店内が「博物館」と化しますね（笑）

今調べたら、過去に1億円超えで取引されたこともあるようですね……！　さすが伝説だ。

最後に、レトロガジェットを愛する人のためのメッセージをお願いします。

例えば、高校生のときに使っていたガジェットが壊れていても捨てないでほしいですね。一度BEEPに相談してください。大事にしていらっしゃるものは買取価格にも考慮しますし、実家にだってすごいものが眠っているかもしれませんので。

取材協力：BEEP秋葉原店（東京都千代田区外神田3-9-8 中栄ビル地下1階）
編集：ノオト