- 199
- 13
- 79

思い出の携帯電話を物理破壊したら、森林に優しくなれた
大阪府出身。日々エッジの効いたネタを探し続けるフリーライター。得意ジャンルはサブカル、テレビ、音楽、現代アートなど。デイリーポータルZ 新人賞2017で佳作。自称・無料イベントマニア。
先日、部屋を片付けていたら、昔使っていた懐かしい携帯電話が出てきました。
ソニー・エリクソンのA1101Sという機種で、「着せ替えパネル」「ボディーが25色に光る背面イルミネーション」など、当時としてはおしゃれなデザインのガラケーです。
発売日を調べてみると、2002年10月とのこと。おそらくその時期から4~5年は使っていたと思います。
電源ボタンを押してみましたが、当然ながら起動しません。充電器がないため、中身を見ることは不可能。カメラが付いていない機種なので、もしデータが残っているとしてもメールのやり取りくらいでしょう。
なんとなく思い出の品として残していたけど、いっそのこと処分するか! とはいえ、どうやって捨てればいいんだろう? 一応、個人情報も入っているし……。
そこで思い出したのが、スマホや携帯電話を物理破壊してくれるサービス「スマホ処分ZAURUS」です。どのように破壊するのか、どれくらい需要があるのかなど、運営会社である株式会社ギアの山川さんに聞いてみました。最後に、僕のガラケーも物理破壊してもらいます。
修理や買取に加えて「物理破壊」をする理由
——物理破壊って、具体的にどのようなサービスなのでしょうか?
専用のシュレッダーを使ってスマホや携帯電話を物理破壊し、データを完全に消去するサービスです。お客様の目の前で破砕するため、データを盗まれたり悪用されたりする心配が一切ない、というのがポイントです。
——お店の前に修理や買取の看板がありましたが、そちらがメインの事業でしょうか?
はい。iPhone修理「アイサポ」がメインの事業で、その強みを生かしたサービスができないか、と考えていたところ、「退蔵スマホ」の処分に行き当たりました。
——退蔵スマホとは?
簡単にいうと、家庭の中で使用されないまま放置されているスマホですね。「埋蔵」スマホと言われることもありますが、弊社では「退蔵」スマホと呼んでいます。あくまで、使われずに保管されているものなので。
2022年の試算によると、日本国内の退蔵スマホ・携帯電話は約3億台もあるそうです。
——そんなにあるんですか!
仮にスマホや携帯電話を2年に1回買い替えるとすると、10年で5台所有することになります。6000万人が5台ずつ持っていれば、3億台の計算になりますよね。
——修理や買取などの選択肢もある中で、なぜ物理破壊なのでしょうか?
一番の理由は、個人情報の漏洩リスクです。スマホに入っているデータを消去するためには、起動させなければなりません。しかし、自宅に長期間置いてある退蔵スマホの場合、「バッテリーがゼロで使えない」「壊れている」といったケースが多いです。そうすると、起動させるためにバッテリーの交換や修理をする必要があります。中身を新しい機種に移すなど、すでにデータを取り出しているのであれば、「コスト的には物理破壊した方が安いな」となるわけです。
——たしかに、「最終的には手放すのに、わざわざバッテリーの交換や修理をするのもなあ……」となりますよね。もしかすると、「いっそ自分で破壊しちゃおう」と考える人もいるのでは?
それは大変危険なので、お控えください。スマホの中にはリチウムイオン電池が入っており、無理やり破壊しようとすると、爆発や発火など大きな事故につながる可能性があります。
頑丈なスマホやUSBメモリも破壊できる
——物理破壊を依頼する場合、どのような流れになりますか? 料金も教えてください。
そのまま捨ててしまうと不法投棄になってしまうので、あくまでも我々が買い取り、代金をいただいて処分する形にしています。古物扱いになるため、運転免許証など本人確認書類をご持参いただきます。
1台あたりの料金は、「破砕、データ消去、証明書の発行費用」が1,480円、「破砕物およびバッテリーの買取金額」が500円なので、1,480-500=980円となります。
——スマホや携帯電話以外も破壊できるのでしょうか?
はい。タブレットやSSD、USBメモリ、CD、DVDもOKです。ただしノートパソコンやHDDは対象外です。実際の依頼物は、ほとんどがスマホですね。タブレットやガラケー、USBメモリが数%程度です。
——「落としたり水没させたりしてもOK」など、“タフさ”を売りにしているスマホがありますよね。そういう頑丈なスマホも、問題なく破壊できるのでしょうか?
可能です。ただ、極端に硬いスマホをシュレッダーにかけると刃が摩耗してしまうので、データが入っている基板部分だけを破壊し、ボディー部分は別でリサイクルすることもあります。
物理破壊の台数は少しずつ増加傾向
——1年間で何台ぐらい、物理破壊をしているのでしょうか?
新宿本店では年間約5000台で、少しずつ増えています。目の前で破壊するのがウリなので、現状は店舗への持ち込みしか対応していませんが、今後は郵送や宅配便での受付を検討しているところです。
——どういう人が、どういう理由で物理破壊を依頼するのでしょうか?
メインの年齢層は30~50代ぐらいで、職業や性別はとくに偏りはありません。依頼理由は個人情報の保護と、「そもそも処分方法がわからない」とネットで調べて持って来られる方が多いですね。
——これまでの依頼の中で、印象に残っているものはありますか?
1人で20台持ち込まれた方がいました。法人の方かなと思ってお聞きしてみたら、「私物です」とおっしゃって。
ガラケーの時代から持っていた端末をずっと保管してあり、まとめて持ってこられたようです。
——個人で20台は多いですね。依頼者からは、どういう意見や感想が聞かれますか?
破壊される様子を見ることができるので、意見というより、感慨深く見つめている方が多いですね。動画や写真撮影も可能ですが、撮影する方は1割くらいでしょうか。そんなにバリバリと大きな音が出るわけでもなく、地味なので。
——バラバラに破砕されたものを持って帰りたい、という要望があった場合は?
見せてほしいという要望にはお応えできますが、リサイクル処理をする必要があるので、持ち帰りはお断りしています。端末を買い取る形にしているのは、そういう理由もあるんです。
1台処分すると、CO2を1kgオフセットできる?
——破壊された後は、どのようにリサイクルされるのでしょうか?
シュレッダーにかけて粉々になったものを大手精錬会社さんにお送りして、適切な方法で処理してもらっています。スマホの中にはパラジウムやコバルト、ニッケルなどのレアメタルが含まれているので、それを精錬・抽出して再資源化します。
——ニュースでよく見ますが、近年レアメタルの価値は上がっているのでは?
たしかに上がっています。ただ、スマホ1台から取れる量はわずかなので、正直それほど利益にはつながりません。逆に人件費などのコストも上昇しているので、相殺されて収支はトントンくらいですね。
物理破壊のサービスは、基本的には利益というより、再資源化で環境問題に貢献していきたいという趣旨で行っている事業なんです。
——ZAURUSさんのホームページに、「端末1台を処分するごとに、CO2を1kgオフセット」と書いてあったんですが、具体的にどういう仕組みなのでしょうか?
スマホは、原材料の採掘や製造だけでなく、使用する際にも温室効果ガスが排出されると言われています。当社はスマホを扱う企業なので、何か環境問題に貢献できないかと考え、カーボン・オフセット【※】に参加することにしました。
※ 企業活動等で排出されたCO2を再生可能エネルギーへの転換や森林のCO2吸収量によってオフセット(相殺)する、脱炭素社会の構築に向けた取り組みの1つ。
具体的には、音楽家の坂本龍一さんが創立した森林保全団体「一般社団法人more trees(モア・トゥリーズ)」が提供する森林由来のクレジットを活用して、CO2排出量のオフセットを行っています。お客様は当社の処分サービスを利用するだけで、間接的にCO2オフセットに貢献ができるという仕組みです。
——スマホを処分するだけで、SDGsに参加できるわけですね。最後に、物理破壊を検討している人へ、何か伝えておきたいことはありますか?
処分をする前に、改めて修理や買取も検討してもらいたいなと思います。というのも、「修理すればまだ十分使えるのに……」という端末を持ってこられる方が少なくありません。3年くらい前の機種なら中古買取の価格がつきますし、もう少し古い機種であれば、お子さんのカメラ用に使ったり家族にあげたりすることもできるでしょう。
村中さんのように、「処分するか!」と決心がついた端末は、ぜひ「スマホ処分ZAURUS」へお持ち込みください。
携帯電話が数秒で粉々に
ではいよいよ、僕の携帯電話を破壊してもらいましょう。まずは申込書に必要事項を記入し、本人確認書類を提示します。
——シュレッダーにかける前に、どういう作業を行うのでしょうか?
分解して、バッテリーを取り出します。スマホの場合は専用の工具などを使って分解しますが、これはガラケーなので、バッテリーパックを外すだけでOKです。
——バッテリーを外したら、そのままシュレッダーにかけちゃうんですね。
昔のガラケーは、自分でバッテリーを取り外しできました。でも今のスマホはバッテリーが本体の中に埋まっており、しかもかなり強い接着剤がついているので、うちのような専門店でないと分解できません。ご自身で分解するのは危険なので、できれば避けてください。
——よく見ると、バッテリーの真ん中あたりが膨張していますね。まったく使わずに保管しておくのも危険なのでしょうか?
充電しなければ、これ以上膨らむことはめったにありませんが、本体を起動させようとして充電をかけたり衝撃を与えたりすると危険です。
スマホの場合は、本体と画面でバッテリーを挟む構造なので、バッテリーが膨らむと画面が浮いてきます。最悪、破裂して有毒なガスが出たり発火したりすることもあるので、もし膨らんでいるようでしたら早めに対処することをおすすめします。
——では、いよいよシュレッダーですね。なんだか緊張してきました。
投入口に入れてスイッチを押すと、モーターおよび刃が動作します。


——あっけなく終わってしまいましたね……。
このガラケーは本体がプラスチックなので、2回転くらいで済みました。最近のスマホは本体の金属が硬くなっているので、もう少し時間がかかります。といってもせいぜい20秒ぐらいなので、あっという間に終わりますよ。
——仕組みとしては、紙のシュレッダーと同じような構造なんですね。
そうですね。破砕されたものが下に溜まっています。
——赤や黄緑の破砕物が見えますが、これは?
スマホ本体の塗装部分です。この中にいろんな金属が混ざっていますが、レアメタルは目で見える破砕物より、底に溜まっている粉の部分に多く含まれています。この後、精錬会社さんが仕分けをして、レアメタルを取り出します。
最後に「データ消去証明書」をお渡しして、終わりです。
物理破壊の前に修理や買取なども検討を
多少なりとも思い出の残っていた携帯電話なので、物理破壊をするかどうか少し迷ったのですが、結果としてはスッキリしました。しかも、処分することで1kgのCO2オフセットにつながるわけで、少し良いことをした気分も味わえました。
ただ、山川さんもおっしゃっていたように、まだ使えるようなスマホを物理破壊するのはもったいないし、SDGs の観点でもあまり良くないですよね。修理や買取なども検討したうえで、最終手段として物理破壊をするのがいいかもしれません。
取材協力・画像提供:株式会社ギア/スマホ処分 ZAURUS
編集:ノオト
- 153
- 6
- 71
リユース出来るものはリユースを。
リサイクル出来るものはリサイクルを。
地球環境に優しいリデュース>リユース>リサイクルを。
>> chikachan709 さん
古い機種は買取不可ではないかと思います。ネットの買取業者(例えばゲオなど)だと機種名で検索できますよ。
特に、リチウムイオン電池は処分に注意してください⚠️
指定場所に持ち込むこと
スマホも捨てるのに困るので、確かに目の前で物理破壊されると安心ですね!
恒久的に使えるスマホは
まだ実現していないんですね
回収と再利用をするのは大切だと思います。
メモリ情報も削除や初期化しても復元できてしまう!物理的にシュレッダーするのが確実なのかな?
続編としてシュレッダーされた後の事も知りたいですね❣
沢山の写真を掲載して頂き、夢中で拝読致しました。
続編として、シュレッダーされた粉砕物から、レアメタルの取出しの取材を期待してます。👋
希少金属(金)で小判1枚を造るとするとォーー
スマホ何台分必要なのかなぁ¿🙄¿
最終的に主に何に変身しているのかなぁ🍀🐰🌕🍀
色々知りたい〜。知らなくってもいいことカモ🦆🏳
西村雅彦のさよなら20世紀
https://ja.wikipedia.org/wiki/西村雅彦のさよなら20世紀
👋🗻📺
>> _カブ さん
【動画解説】どうする?リチウムイオン電池の回収https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250416/k10014780561000.html
スマホシュレッダーにびっくりですw
物理破壊が単純かつ安全ですね
リチウムイオン電池もニュースで各自治体で回収できるように通達あったそうですし、リサイクルにいい方向で行けばいいのですが。
個人的なデータを考えるとスマホの処分も難しいので業者さんにしてもらうのがよいかな
むしろ古いガラケーの方が処分するにも写真とかどうしようって感じです
でも、金とかレアメタル、レアアースを回収したら、結構儲かるんでしょうね。
破壊して欲しいなあ
物理破壊した後は、精錬・抽出してレメタルを取り出し、再資源化しているのは良い取り組みですね。
先日使えなくなったガラケー3個を電話会社に引き取ってもらいました。
あと1台ガラケーを持っていますが、目覚まし時計として使っています。
せっかく二酸化炭素オフセットとか取り組んでるのに、紙製の発行していたら、それが環境保護からズレてるような感じがします。
証明書を出すなら、デジタルで出せば良いのに
' ∧貝∧ ξ
( * ´ )ー・
/ ┃
(____⊃
いろいろな意味で納得できる記事でした
物理的に破壊するのは安心感もあっていいですよね
有り難うございます(^^)
>> Nao61 さん
ありがとうございます。検索してみます。保護フィルムで覆われていない部分に小石が当たったようで、スマホ画面にヒビが入るという体験を初めて味わいました。
マイネオで購入して半年の出来事でした。
幸いなのは、一応使用は出来る事です。
スマホ画面にヒビが入ったまま使い続ける人の気持ちが分かった気がします。
だけど、8月くらいになればファン得でマイネオコインが10枚になる予定なので割引きクーポンでモトローラg05を買おうと思います!
ラベンダー色のが可愛くて欲しいと思っていたので、どうか8月頃まで入荷しててほしい!
そしてヒビ入りのやつは家用スマホにして、現在の家用スマホは中古でマイネオアプリのバージョンアップに対応できなくなった上に電源が落ち始めている危うさがあるので其奴を物理破壊にすれば良いのかもなー、と思えた記事でした。
物理破壊の割引きクーポンとかもファン得でできたら尚良し。マイネオショップで物理破壊できれば更に良し。
そんなふうに思った、為になる記事でした。
買取扱いしたうえで目の前で破壊、後でまとめて金属の仕分けをするんですね。合理的ですね゚+。:.゚オォ(*゚O゚ *)ォオ゚.:。+゚