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スマホを「置く」だけで充電できるワイヤレス充電器。まだまだ発展途上の製品でありながら、最近は充電時間の高速化や、使い勝手の向上が進んでいます。今回は注目のワイヤレス充電器の魅力や選び方、おすすめの商品を紹介します。
筆者は多くのスマホを所有しているため、充電の作業も煩雑になりがち。そこで、置くだけで充電できるワイヤレス充電器を複数使用してきました。
最近では新規格が登場して製品も増え、充電速度や使い勝手の進歩もめざましくなっています。
そこで、高速に充電できて使い勝手のいいワイヤレス充電器を探すため、いくつかの製品を検証してみることにしました。
まずは、ワイヤレス充電器の魅力について解説します。
ワイヤレス充電の最大の魅力は手軽さです。
ケーブル接続で充電する場合、まずケーブルのUSB端子を手に取り、それをスマホのUSB端子に差し込む必要があります。そして充電が終わったら、またスマホを手にとってUSBケーブルを抜き、抜いたケーブルのUSB端子を置かなければなければなりません。
それに対してワイヤレス充電なら、充電するときはワイヤレス充電器の上にスマホを置くだけ。充電が終わったらスマホを持ち上げるだけ。非常に簡単に充電を開始・終了できるため、ちょっとしたスキマ時間にも充電する気になれます。
iPhone 13以前とAndroidのスマホを併用している場合、充電ケーブルはLightningとUSBの2種類を用意しなければなりません。しかし、多くのワイヤレス充電器は、同じ充電器でどちらも充電可能なので、配線周りがスッキリするのもうれしいポイントです。
ケーブルで充電していると、その間はスマホのLightning端子やUSB端子が使えません。ワイヤレス充電なら、たとえば充電中でもLightning端子やUSB端子に接続するタイプのイヤホンを利用できます。
不良品のUSBケーブルを使ったり、どこかにぶつけたりするなどの原因で、スマホのUSB端子が歪んでしまうことがあります。
そうなった場合、USBケーブルを使った充電だと、ケーブルの角度を変えたり押したり引いたりしないと充電が開始されない、またはちょっとした振動で充電が止まるという状態になってしまうことも…。また、歪んだ端子に無理やり挿入すると抜けなくなってしまうというリスクもあります。
ワイヤレス充電を使えば、このようなスマホでも再び快適に充電できるようになります。もちろん、あまりにも安価なUSBケーブルは使わないようにするなどして、USB端子が歪まないように気をつけることも重要です。
ワイヤレス充電器でも、充電できないケースもあります。せっかく購入して、設置したのに充電できていなかった、ということがないように事前にチェックしましょう。
ワイヤレス充電を行なうには、スマホがワイヤレス充電に対応している必要があります。ワイヤレス充電は「Qi」(チー)という規格が主流で、スマホと充電器の双方がQiに対応していれば利用可能です。
手持ちのスマホが「Qi」に対応していない場合は、ワイヤレス充電器が使用できないため、必ず購入前に確認しましょう。
ワイヤレス充電に対応したスマホは、「充電器に触れさせる位置」が決まっています。この位置がズレていると、スマホは充電できません。
上の画像のようにスマホの設置位置をずらしてみると、接触しているものの充電はされませんでした。そのため、設置したら充電開始されていることを確認しておくと安心です。
スマホとワイヤレス充電器は、一定の距離以内に近づけておく必要があります。そのため、厚いスマホケースを使っているなどして、スマホとワイヤレス充電器が離れすぎていると充電できません。
ワイヤレス充電でもケーブル充電でも言えることですが、充電器やスマホ本体の温度が高すぎると、保護機能が働いて充電が停止したり、充電速度が低下したりすることがあります。
特に室温が高い場合には、扇風機の風を当てるなどして熱を逃がすようにしましょう。
とはいえ、保冷剤やクーラーの風を当てたり、冷蔵庫に入れたりすると内部に結露が発生して故障の原因になるため、絶対にやめましょう。
ワイヤレス充電器は、USB充電器に接続することで充電できるようになります(3.2.参照)。このとき、USB充電器がコンセントに刺さっていなかったり、ワイヤレス充電器とUSB充電器の間のケーブルが断線していたりすると充電できません。
充電する際の「強さ」のことを「電力」といい、その大きさを示す単位を「W(ワット)」といいます。つまり、スペックの「ワット数(W)」が大きい製品ほど、高速に充電できるわけです。
ただし、スマホ本体も機種によって「ワイヤレス充電時の最大ワット数(W)」が決まっています。充電の際には、充電器とスマホの最大ワット数(W)のうち、小さいほうが上限となります。
たとえば15Wの充電器を使っていても、スマホが5Wまでにしか対応していなければ、上限は5Wとなります。ただ、いずれスマホを買い替えることも視野に入れて、充電器はなるべくワット数(W)の大きいものを選ぶといいでしょう。
ワイヤレス充電器自体も、どこからか電力の供給を受けなければなりません。
その供給方法として、以下の3通りがあります。
(1)USB Type-CでUSB充電器に接続する
(2)USB Type-AでUSB充電器に接続する
(3)ACコンセントに接続する
このうち、(3)のACコンセントに接続する充電器は、現在はあまり見られません。Type-CとType-Aでは、Type-Cのほうが大きな電力に対応していること、端子をどちら向きでも挿入できること、今後はType-Cが主流になることなど、さまざまな理由でType-C接続のワイヤレス充電器が圧倒的におすすめといえます。
ワイヤレス充電器には、形状の違いで「スタンド型」と「パッド型」の2種類があります。
スマホスタンドの形状をしており、スマホを立てかけて充電します。スマホが固定され、画面が見やすくタッチ操作もしやすいため、充電しながらスマホで作業したい場合にはスタンド型が便利です。
平たい形状をしており、その上にスマホを載せて充電します。スマホを操作するとズレやすく、持ち上げての操作もし辛いため、充電しながら作業をするには向きません。
iPhone 12以降で採用されているワイヤレス規格が「Magsafe」(マグセーフ)。強力な磁石を装備しているため、いつのまにかズレてしまって充電できていなかった、ということが起こりにくくなっています。
またパッド型の場合も、スマホを持ち上げても充電器がスマホに貼り付いたままなので、むしろスタンド型より作業しやすいかもしれません。
Magsafeを元にして作られた「Qi2」(チーツー)という規格も同様に磁石を装備しており、今後はAndroidスマホもQi2対応の製品が増えていく見込みです。
先に書いたように、ワイヤレス充電をするにはスマホがワイヤレス充電に対応している必要があります。
iPhoneシリーズは「iPhone 8」以降の機種がQiに対応しています。そのため、Qiに対応したワイヤレス充電器であれば利用が可能です。
また、「iPhone 12」以降の製品(SEシリーズを除く)はMagSafeとQi2に対応しているため、MagSafeやQi2対応のワイヤレス充電器が利用可能です(Qi規格のワイヤレス充電器も利用可)。
Androidスマホは、メーカーも機種も非常に多く存在し、「◯◯年以降の製品」といった基準もありません。そのため、目的のAndroidスマホがワイヤレス充電に対応しているか調べるには、その機種名を検索してスペック表を確認するのが一番確実です。スペック表を表示したら「ワイヤレス充電」や「充電」で検索し、対応が書かれているかを確認しましょう。
MagsafeはiPhoneの規格なのでAndroidスマホには対応製品がなく、Qi2対応のAndroidスマホも2024年7月時点では発売されていません。そのため、現時点でワイヤレス充電対応のAndroidスマホは、Qi対応ということになります。
なおQi2のワイヤレス充電器はQiとの互換性もあるため、Qiにしか対応していないスマホでもQi2のワイヤレス充電器を利用することは可能です。ただし15Wでの高速充電や、マグネットでの位置固定はできません。
ワイヤレス充電器は、USB充電器から電力の供給を受けています。このUSB充電器の電力が低いと、ワイヤレス充電器の電力もそこが上限となってしまうのです。
多くのメーカーでは、15Wでのワイヤレス充電をするには30W以上のUSB充電器を推奨しています。
ワイヤレス充電は、ケーブル接続に比べると速度が遅くなりがち。
以前、iPhoneをUSBケーブル接続で高速充電する検証を行ないましたが、このとき最速の製品で1分間に1.5~2%(満充電を100%とする)ほど充電できていました。この時、ワット数(W)は最大で21Wほどでした。
一方、今回ワイヤレス充電器の充電速度の計測してみると、最速の製品でも1分間に0.6~0.7%(満充電を100%とする)ほど。ワット数(W)は最大9Wほどでした。
つまり、ケーブル接続に比べて所要時間が2倍程度かかります。詳しくは、「充電時間の比較」で解説しています。
関連記事:【徹底比較】iPhone の急速充電器は何ワットが最適?デメリットやケーブルとの相性についても解説
「2.」でも解説したように、ワイヤレス充電器は位置がズレていると充電されません。そのため、充電中に手が当たったりケーブルをひっかけたりして位置がズレていると、充電していたつもりがされていなかった、ということがあります。
ただし、MagsafeやQi2のワイヤレス充電器なら、磁石でしっかり固定されるため、ズレてしまうということはあまり起きないはずです。
パッド型の場合、MagSafeやQi2対応ならば、スマホを手に持って作業することができますが、パッドの分の重量が加わるため、片手で持つにはかなり重くなってしまいます。
そして、スタンド型の場合、手に持って作業するのは難しく、かといってスタンドに置いたままで激しい操作をするとスタンド自体がズレやすいというデメリットも。ゲームや素早い入力などはやりづらいかもしれません。
ここではワイヤレス充電器の人気機種を5製品取り上げ、充電時間の計測や使い勝手の検証を行ないます。
ワイヤレス充電の利用シーンは、0%から100%までしっかり充電するというよりは、ちょっとした合間に充電器に載せて小刻みに充電、ということが多いはず。
そこで、「そろそろ充電しないと…」と思いそうな「30%」の状態から、「これくらいあれば外出しても安心」と思える「75%」までの充電時間を測ることにしました。
さらにUSBテスターを用いて、充電中のワット数(W)も確認しています。この値はあくまで参考程度に考えてください。
USB充電器側のワット数が足を引っ張らないように、最大65Wの製品を利用しました。
ただしUSBケーブルは、製品付属のものを用いています。
出力 | 15W |
---|---|
対応機種 | iPhone 8以降/Apple Watch/Airpods Android(Qi対応機種) |
端子タイプ | Type-C |
サイズ | 直径60×H6.8mm / 59g |
通販サイトを中心にスマホのアクセサリを販売する「RORRY」の製品。パッド型ですがリングスタンドが装備されており、引き出すとスマホを立てることができるため、充電しながら動画を観たい場合などに便利です。
Magsafe対応なのでiPhoneには磁石で貼り付きます。または、パッドの保護シートを剥がすと粘着面になるため、MagSafe非対応のAndroidスマホにも貼り付けることができます。
パッドにはType-C端子があり、そこにUSBケーブルを接続するという構造。そのため付属するUSBケーブル以外にも、もっと長いケーブルに交換して使うといったことができます。
1時間31分15秒(1分間で0.49%) / 6.2~7.3W
4番目に遅い結果となってしまいましたが、約1時間30分で残量30%から70%まで充電できるのであれば、こまめに充電しやすいワイヤレス充電器としては十分かもしれません。
リングスタンドは2重になっており、1つのリングで横位置、2つのリングで縦位置など、設置できる角度の範囲が広めです。リングの開閉はやや固めですが、それだけに安定しています。
MagSafeでiPhoneに貼り付ける場合には角度を変えて貼り直せるので縦位置でも横位置でも使えますが、Androidの場合は粘着面で貼り付けるため、あまり何度も貼り直すということはできないでしょう。
出力 | 15W/10W/7.5W/5W |
---|---|
対応機種 | iPhone(Qi対応機種) Android(Qi対応機種) |
端子タイプ | Type-C |
サイズ | W70×H135×D100mm / 130g |
通販サイトを中心に充電器やヘッドホンなどを販売している中国のメーカー、NANAMIの製品。
スタンド形で、背面にUSB Type-C端子、前面下部にLEDが1つというシンプルな装備です。
USB Type-Cケーブルが付属しています。
2時間6分30秒 (1分間で0.36%) / 4.2~6.5W
もっとも遅い結果となってしまいましたが、価格に見合った結果といえるかもしれません。そしてスタンド型であるため、常に卓上でスタンドに置きっぱなしにするという使い方なら、遅さが苦になることもないでしょう。
縦置きでも横置きでも充電できます。Webページや文書を閲覧したいときは縦置きで、動画や写真のスライドショーを再生したいときは横置きで、と、充電しながらさまざま用途に使えるのは便利。
スマホの設置面やスタンドの底面には滑り止めが施されていますが、スタンドが軽いのでゲームのように激しい操作をするとズレてしまうかもしれません。
パソコン周辺機器やデジタル機器の大手メーカー「エレコム」の製品。
パッド型で、1.5mのUSB Type-Cケーブルが装着されています。
写真のブラックのほかホワイトもラインナップされており、独自キャラの「しろちゃん」があしらわれているのが特長です。
出力 | 15W/7.5W/5W |
---|---|
対応機種 | Qi2(MPP)15W規格のワイヤレス充電に対応した機器 |
端子タイプ | Type-C |
サイズ | 直径60×H9mm / 65g |
1時間12分49秒 (1分間で0.62%) / 6.8~9.0W
数値としては3番めですが、1番めとの差は8分ですから、誤差の範囲内といえるかもしれません。そして約70分で残量30%から75%まで充電できるなら、1日中充電器に乗せている必要もなさそうです。
わずか9mmと薄く、重量も65gと今回の中では最軽量。手に持ったまま操作しても苦になりません。
パッドの両面ともやや滑りやすいため、Androidで使う場合には振動などでいつのまにかズレていた、ということがないように気をつける必要があります。iPhoneにMagSafeで貼りつけるなら問題ありません。
スマホの充電器やハブなどを販売する米国の老舗メーカー「ベルキン」の製品です。
この製品の特徴は、なんといってもスタンド型としてもパッド型としても使えるということ。動画を観たいときはスタンドに設置し、手に持って操作したいときはパッドとして貼り付けるという2通りの使い方ができるのです。
出力 | 15W |
---|---|
対応機種 | iPhone またはその他の Qi2 互換機器 |
端子タイプ | Type-C |
サイズ | W65.6×H22.7×D86.6mm / 193g |
1時間4分10秒 (1分間で0.70%) / 7.2~9.0W
今回取り上げた5製品の中で最速の結果となりました。1時間ちょっとで残量30%から75%に充電できるというのは、Apple純正の12WのUSB充電器にも迫る速さです。
表面の質感には高級感があり、スタンド型とパッド型の切り替える際のアームの動きも非常にスムーズ。無段階で止められるので、角度を自在に調節できます。
スタンドは縦置きでも横置きでも充電可能。
やや重量はありますが、それはスマホを置いて充電する際の安定感にもつながっています。
ただし手に持って使うと、かなり重く感じるかもしれません。
モバイルバッテリーや充電器で知られる中国のメーカー「Anker」の製品。
パッド型で、1.5mのUSB Type-Cケーブルが装着されています。
充電関連機器を得意とするメーカーだけあって、充電器が高温になりにくい素材を採用するとともに、温度管理システムなどの保護機構も充実した製品です。
出力 | 15W |
---|---|
対応機種 | Qi2対応のiPhone専用(*) |
端子タイプ | Type-C |
サイズ | 直径60×H12mm / 104g |
1時間8分54秒 (1分間で0.65%) / 7.0~9.2W
時間としては2番めですが、その差は4分ほどなので誤差の範囲内といえるかもしれません。それでいて、価格的には1位のBelkin製品より大幅に安価です。
5.3.のエレコム製品よりはやや重めですが、スマホに貼り付けたまま使うときに手のひらにあたる部分が、フィットするように曲面加工されています。
装着されているUSB Type-Cケーブル(1.5m)は高耐久タイプで、1万回の折り曲げにも耐える仕様になっているため、頻繁に持ち運ぶような使い方でも安心です。
5製品の充電時間を比較すると、次のようになりました。
高速に充電できたのはBelkin、Anker、エレコムの製品。時間差は誤差の範囲内程度です。この3製品の中ではAnkerとエレコムが比較的安価ですが、Belkinはパッドでもスタンドでも使うことができ、質感の良さなどもあってコスパは同等といえます。
やや苦戦したのはRORRYとNANAMIの製品。しかしどちらも価格が非常に安いため、ワイヤレス充電を安く実現したい人には選択肢になるでしょう。
ワイヤレス充電器は、iPhoneやAndroidスマホを「置くだけ」で充電できるのが便利なところ。iPhoneとAndroidで別々のケーブルを用意する必要もありません。しかし、ケーブルでの充電に比べ、速度は半分程度になるものが多かったです。
ワイヤレス充電をするにもUSB充電器は持っている必要があるわけですから、残量の少ないバッテリーを急いで充電したいときにはケーブル接続で、スキマ時間にこまめに充電するときにはワイヤレス充電器で、といった使い分けをするといいでしょう。
時代遅れで、恥ずかしい限りです・・。
新たなことを、興味深い気持ちで、
読ませて頂きました。ためになる記事、
ありがとうございます。
電力効率の悪さです。ワイヤレス充電は給電ロスが大きいです。
15Wのワイヤレスなら30WのACアダプタが必要になるなど、およそ倍の電力が必要です。
家電の待機電力を気にする方は、その待機電力より無視できない消費電力ですね。
ワイヤレスの時代になりましたね😄
古い機種は対応してないのが困ります😂
家に帰ったらポイって置いたら済む楽さ
これからドンドン進歩して行きますよ
それから、「2.4 充電器やスマホが熱すぎる」ですが、逆に冷たすぎる(経験上温度が10°未満あるいは、零下環境で充電が中止される)
この記事だけ特別なの? それとも今後は目次ありでいくのかな。