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【徹底比較】iPhoneの急速充電器は何ワットが最適?デメリットやケーブルとの相性についても解説
PC・ガジェット・AV機器などの解説や評価を行なうフリーライター。趣味は旅行・キャンプ・登山・海の沖のほうで泳ぐこと。
フリーライターの湯浅です。いつも大量のデジタルガジェットを持ち歩いているので、USB充電器やモバイルバッテリーなど、充電のための機器にはとても気を使っています。特に旅行中はゆっくり充電できないこともあるため、充電速度も重要です。
またiPhoneシリーズは、「iPhone 12」から充電器(Appleでの商品名は「USB電源アダプタ」)が付属しなくなりました。そのため、手持ちの充電器を使用するか、別途購入しなければなりません。
充電器は製品によって充電速度が大きく異なり、価格も1000円台から1万円を超えるものまでさまざま。
そこで、いくつかの製品の充電速度を比較し、どんな充電器を選べばよいのかを検証してみました。
<目次>
まず、充電器を選ぶポイントについて説明しておきましょう。
充電の速さを決める要素は、充電器の「ワット(W)数」と「USB端子の種類」。「ワット(W)」とは電力の単位で、この値が大きいと速く充電できます。
「USB端子の種類」は、現在「タイプA」と「タイプC」の2種類があり、「タイプC」のほうが新しい規格で、より急速な充電が可能です。
今回は、この「ワット(W)数」と「USBの端子の種類」の異なる充電器を用意して、実際にiPhoneを充電して所要時間を測ります。
実際、急速充電器でどのくらい速く充電できるのか検証してみました!
1. 検証方法
今回、充電するスマホとして、「iPhone 15(無印)」を用意しました。基本的には購入直後の状態で、追加のアプリも導入していません。ただし、充電方法を調整する「バッテリー充電の最適化」はオフにして、100%まで充電されるようにしています。
バッテリー残量が0%の状態から計測を開始し、10%ごとに所要時間を記録していきました。なお80%からは充電速度が大幅に低下するので、その様子をチェックするため5%ごとに記録しています。
そしてそれぞれの時点で「1分間にバッテリー残量が何%増えたか(%/分)」を計算しました。この値が大きいほど、速く充電できているということになります。たとえば「3%/分」なら、残量10%が1分後には13%に増えるということです。
充電器はテーブルタップを使わずコンセントに直接差し込み、ケーブルでiPhoneと接続しました。ストップウォッチで時間を計りながら充電していきます。
検証に使用した商品
今回使用する充電器のワット(W)数は、「12W」「20W」「65W」の3通り。
- 12W:Apple「Apple 12W USB電源アダプタ」
- 20W:Anker「Anker Charger (20W, 2-Port)」
- 65W:ELECOM「USB Power Delivery 65W キューブAC充電器(C×2)」
充電に使うケーブルは「タイプA」と「タイプC」の2通りを用意しました。
- タイプA:Anker「Anker PowerLine II USB-C & USB-A 3.1(Gen2) ケーブル」
- タイプC:Anker「Anker 333 高耐久ナイロン USB-C & USB-C ケーブル 1.8m」
2. 検証結果1:20Wと65Wでは大差なし!20Wがコスパ最強
12W、20W、65Wの充電器でそれぞれの充電の様子は、以下の通りでした。
横軸が経過時間、縦軸が各時点での充電の速さ(1分間に何%充電されるか)です。
どの充電器でも、80%を超えると充電速度が急速に低下しているのがわかります。これはバッテリーの劣化を防ぐ保護機能が働いているためと考えられます。
結果として、所要時間は以下のようになりました。
結論、12Wと20Wでは20Wの圧勝!
まず12Wと20Wを見比べてみると、80%までは「0.78%/分」(12W)と「1.59%/分」(20W)なので、2倍以上の速さで充電できていることがわかります。これはワット(W)数の比率(約1.7倍)以上の速さです。
両者とも80%を超えると速度が低下しますが、低下の度合いは20Wのほうが大きいため、速度の比率は約1.6倍と、ワット(W)数なりの比率になってしまいました。それでも、100%までの所要時間は20Wのほうが圧倒的に速いということになります。
一方で、20Wと65Wは大差なしという結果に。
次に20Wと65Wを比較すると、80%まではほぼ大差ありません。一方で65Wのほうは80%を超えた際の速度低下が20Wの場合より大きかったため、100%までの所要時間は20Wよりむしろ長くかかっています。
つまり、20Wと65Wでは、ワット(W)数には大きな差があるものの、充電の所要時間はほとんど変わらないということになります。ただし、これは充電器の個体差や他の要因もあるため、すべての場合にこうなるとは限りません。
3. 検証結果2:80%まではタイプCのほうが2倍以上速い
次に、充電に使うUSB端子を変えて充電速度を比較してみました。
検証には20Wの充電器を使用し、「タイプA端子(18W)」、「タイプC端子(20W)」のそれぞれの所要時間を比較します。
タイプA端子での充電は、以下のようになりました。
結果を比較すると、次のようになります。
・結果、ワット(W)数は「18W」と「20W」で大差ないものの、80%まではタイプCのほうが2倍以上速く、ワット(W)数の比率以上の違いがでています。
80%を超えるとタイプCのほうが低下率が大きいものの、それでも最終的な所要時間はタイプCの圧勝となりました!
これは、iPhone 15ではタイプAの規格に準拠するため充電時のワット(W)数を7.5Wに制限しているためと考えられます。実際、タイプAでの充電時にUSBテスターでワット(W)数を計測してみると、7.2~7.4W程度で推移していました。一方、タイプCでの充電時には、スペック通り19W前後で充電できていました。
そのため、iPhone 15で急速充電したければ「タイプC」を利用することが必須といえます。
スマホを急速充電するには、「スマホ」「充電器」「ケーブル」のすべてが、急速充電に対応している必要があります。
急速充電には、おもに「USB Power Delivery(PD)」と「Quick Charge(QC)」という規格があり、利用するにはスマホ・充電器・ケーブルの規格が揃っていなければなりません。
iPhoneシリーズでは「iPhone 8」以降が「PD」に対応しています。そのため、「iPhone 7」以前の機種は急速充電できません。
一方、Androidには、「PD」対応機種と「QC」対応機種のいずれもが存在します。
充電器も、たとえばiPhoneに急速充電したいなら、PD対応である必要があるわけです。
見逃しがちなのがケーブルで、端子の形は一致していても、古い製品であるとか、他の機器の付属ケーブルなどで急速充電対応でなければ、充電速度は遅くなってしまいます。
また、スマホは機種ごとに「充電時のワット(W)数の上限」が決まっています。その上限を超えるワット(W)数の充電器を使用しても、上限のワット(W)数でしか充電することができません。上記の計測で、20Wの充電器と65Wの充電器で所要時間がほぼ変わらなかったのはそのためだと考えられます。
2.複数台の同時充電はワット(W)数が低下する
複数のUSB端子を持つ充電器では、複数の機器を接続すると出力ワット(W)数が下がります。これは、充電器のワット(W)数を複数台の機器で分け合うことになるからです。
複数台を同時充電するとそれぞれ何ワット(W)ずつになるかは、カタログや取扱説明書に記載されています。たとえば今回使用した「Anker Charger (20W, 2-Port)」の場合、1ポートだけを使用すると最大20Wですが、2ポートを同時に使用すると7.5W+7.5Wになるといった具合です。
そのため、急速充電したい場合には1台だけで充電するか、合計ワット(W)数の大きな充電器を使うといいでしょう。
急速充電でバッテリーは劣化する?
急速充電をするとバッテリーが劣化するのでは? という心配をしている人もいるかもしれません。しかしキャリアやメーカーからの情報を見ていると、急速充電によって特にバッテリーが劣化する、といった話は見当たりません。
ただし、急速充電を行なうとスマホ本体の温度が高くなります。このときに負荷の高いゲームやアプリを実行すると、さらに温度が高くなり、バッテリーが過熱状態になってしまうことがあります。するとバッテリーの劣化につながるため、特に気温の高い時期などは急速充電中のスマホの使用は避けたほうがいいでしょう。
また、100%までフル充電することもバッテリーの劣化につながります。充電はなるべく80%程度で中止するようにしましょう。iOS 13以降のiPhoneや一部のAndroidスマホでは、バッテリーが80%になったら自動的に充電を中止するような機能がありますので、そちらを利用するのも良い方法です。
まとめ
それでは、iPhone 15を急速充電するためのポイントをまとめておきましょう。
・iPhone1台のみを急速充電するなら20Wで十分
今回の計測では、20Wの充電器でも65Wの充電器でも所要時間は大差ありませんでした。そのため、価格差を考えると20Wの充電器で十分といえます。
ただし、「タブレットやノートパソコンのような消費電力の大きい機器にも使いたい」や「iPhone以外の機器も同時に充電したい」といった場合には、ワット(W)数の大きな製品が必要になるでしょう。
・USB端子は「タイプC」を使用する
タイプAを利用するとワット(W)数に制限がかかるため、同じようなワット(W)数でもタイプCのほうがはるかに速く充電できます。タイプC端子を備えた充電器と、両端がタイプCの充電ケーブルを使うようにしましょう。
・ケーブルは急速充電対応の製品を選ぶこと
ケーブルが急速充電に対応していないと、そこで充電が遅くなってしまうことがあります。ケーブルは充電器に合わせて両端が「タイプC」のものを使用し、iPhoneの場合には「PD」に対応したケーブルを、Androidの場合には、その機種が対応している「PD」や「QC」に対応したケーブルを使うようにしましょう。
・充電は80%までがおすすめ
残容量が80%を超えると、充電速度が急激に低下します。また、100%まで充電することはバッテリーの劣化にもつながるため、容量をフルに使う必要がある場合以外は80%で中断するといいでしょう。
・スペックを偽った製品に注意
ネット通販などで格安で売られている製品中には、実際とは異なるスペックの製品や、過熱などへの安全対策が不十分な製品もあります。信頼できるメーカーであればそういった心配はありませんが、そうした製品を見分ける自信がなければ、なんといっても純正品であるApple製の充電器にしておく、という選択肢もあるかもしれません。
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とても参考になりました。
今はiPadに付属している20Wの充電器(USB-C)をiPhone/iPadに使っています。最初の30分ぐらいで一気に充電されるし、端末の発熱もほとんど無いので安心して使っています。大容量の充電器は発熱を考えると二の足を踏んでいたのですが、この投稿を読んでこのままで良いと納得できました。
まああとは個体差かなぁ。
>> nagayan さん
ためになる検証結果でした私はアンドロイドですが
充電上限が85%に設定されています
・12W USB(PD) 充電器での充電結果と20W USB(PD) 充電器での充電結果はたぶん正しいでしょう。
他方、
・18W (QC) 充電器での結果と65W USB(PD) 充電器での結果は共に充電器の規格以下での充電が実行されている様です。【18W (QC) 充電器での充電結果は、おそらく12W規格での充電に成っていると思われます。65W USB(PD) 充電器での充電結果は、おそらく20W規格での充電に成っていると思われます。後者の原因は、使用したUSBケーブルのアンペア数規格が不十分ではないのかなと感じます。】
*筆者には、「USB Power Delivery(PD)」と「Quick Charge(QC)」の違いと、充電に使うケーブルが使っている「USB端子の種類」だけでなくケーブルの「許容アンペア数」をご確認頂きたいものです。
>> 呑気呆亭 さん
参考文献を上げておきます。充電器に最適なUSBケーブルは?種類や最新高速充電規格についても解説
https://www.elecom.co.jp/pickup/contents/00018/
これとは別の点に成りますが、急速充電は一般的に高電圧での充電になるので、『急速充電をするとバッテリーが劣化するのでは? という心配をしている人もいるかもしれません。しかしキャリアやメーカーからの情報を見ていると、急速充電によって特にバッテリーが劣化する、といった話は見当たりません。』という安易な判断は禁物です。一般に都合の悪い事実は書かれていないと判断する方が正しいのではありませんか?
また、急速充電器はバッテリーの寿命を縮める可能性があるため、急ぎでない場合は低速の充電器を使用したほうがよいでしょう。
うちで使ってるNEXUS7だったら、どれを使っても同じかなぁ(^^; 知らんけど
>> 呑気呆亭 さん
iPhone 15 の急速充電関して、別の引用をしておきます。iPhone 15を最速充電する方法は? USB Type-C+MagSafe充電を徹底テスト
https://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/2401/29/news150.html
・USB Type-A充電器からの供給できる電力が、標準規格に準拠したことで最大7.5W前後と少なくなっている
>> 呑気呆亭 さん
呑気呆亭さん情報ありがとうございました🙏
現在iPhone Xs Maxを使っていまして、充電は80%を目途にしていますが、いつも忘れていて80%を超えています。
今後は十分に気を付けたいと思います。
スマホもパソコンも、ディスプレイの点灯に多くの電力を消費するそうな。
なので、画面の点灯頻度や明るさなどにより、
計測結果にも違いが出ると思うので、
できるだけ画面は点灯せずに充電した方が良かったのではないかと思います。
また、電源をオンとオフ時に充電した場合の違いも調べてあると良かったのにと思いました。
が、Androidユーザーなので、あまり興味は持てませんでしたが…(苦笑)
20ワットと65ワットに大差ないのは、意外でしたね。これはどういう理屈からなのか?
メーカーなどの詳しい人に取材して調べて欲しかったです。
>> いぬみみ さん
比較記事で使ったソーラーパネル充電器の使用品をプレゼント!とあったら、もっと良かったんですけどね。(笑)次回の企画として期待しましょうか!?
>> 呑気呆亭 さん
はやく劣化して交換してくれた方が儲かりますし、日本のメーカーも、偽装やら不正が明るみに出て、ニュースになってる事も多々ありますし、
無いとは言いきれないですね。
そういえば、こないだAI講座なるものを某所で無料受講してから送られてくるようになったメルマガの先で、コメントを書き込むと、運営に不都合な内容だと判断されたらしく、削除されていました。
営業の妨げになると思うものは、皆の利益になることでも削除するようです。
せっかく皆が洗脳されかかってるのを解いてやろうとしたのに、さすがに相手の土俵上ではアンチコメントは消される運命のようです。
セミナーを主催するのが上手な奴の言う事は、
真に受けないで、話半分に聞いておいた方が身のためだと思いますよ。
関係ないココで、皆さんにお知らせしとこうと思います。(笑)
>> 呑気呆亭 さん
USB PDだと3A以上の電流を流すのは20V以上の電圧をかける場合だけで、ケーブルにeMarkerがない場合は許容アンペアは3Aと判断されるので、60W以下の場合では、(よほど怪しいケーブル出ない限りは)許容アンペア数は気にする必要はないです。USB PDは、給電側が給電できるパターンを提示して、その中から受電側が選んだものが給電されるので、65Wの充電器で20Wと結果が変わらないのは、iPhone15が20W(9V×2.2Aとか)を要求しているためです。
12Wと18Wが変わらないのは、給電側がUSB PDではない場合、iPhone15はUSB BC 1.2を守るので、7.5Wで充電されるためです。
急速充電気は何を買うべきか???
買っても、スマホ本体やケーブルなど、諸条件を満たさないと、必ずしも急速充電できないことなど、シンプルに解説いただけて、超タスカリました~~!!!
また、同じワット数の充電器でも、かなりの価格差があるので、不安でしたが、ちゃんとした知識なしに購入してはイケナイということも理解でけました!!!!
こんな、実用的な企画は超勉強になるので、タスカリました~~!!!
これからも、タメになる企画に期待しています~~!!!!
(ノζ _・ξ)
>> NAO*.TSU さん
適切なコメントと補足をありがとうございました。 著者の記事に、これらの充電で実現されている V✕A=W の情報が明記されていれば避けられる誤解がいくつかあるのであえてコメントした次第です。読み返せば、私のコメントの中にいくつかの間違いがあることは否定しません。しかし、間違った都市伝説を産みそうなこの記事には違和感を持ちました。
マイネオメンバーの方々で更に分析されて納得いくコメントあり、拍手です
65WはMacBookとかiPad用に使うのが良いかもですね。まぁ外出時に複数の充電器持ってないとそれらと共用になりますが…笑
せめて同じメーカーのものと比較して欲しい。
でも、興味のある実験だと思います。
参考にさせていただきます。