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東芝、NEC、Dell、日立……スマホ・携帯電話から撤退したメーカーの「最後の機種」を使った
ローカルネタ・ガジェット・卓球が好きなライター。過去に番組リサーチャーとして秘密のケンミンSHOWなどを担当。
栄枯盛衰の、スマホ・ケータイ業界。
AppleやSamsung、Xiaomiなどの、ほんの一握りのメーカーが多くのシェアを占める中、数々の有名電機メーカーたちが苦戦の末に撤退を余儀なくされました。
そのメーカーが最後に出す機種は、あるものは起死回生を狙って社運をかけているものがあり、さらには結果的にそのメーカーの集大成的なものまであります。
この企画では、その「スマホ・ケータイ撤退前のラスト一機」にフォーカス。実際に使ってみてどんな一機なのかを見ていきます。各メーカーがラスト一機に込めたものは、何だったのでしょうか。
※OSのサポートが終了した古いスマホはセキュリティの脆弱性があり、ウイルスに狙われやすいため使用は控えましょう。今回は細心の注意を払いながら検証しています。
まずは東芝です。1994年、Tu-Ka向けに出た「TH341」を皮切りに数々の機種を発売。最初のスマホは2007年登場のソフトバンク向けの「X01T」でした。
しかし、商業的に失敗した「Windows Mobile」向けに出したスマホが多く、苦戦を強いられました。
そして2007年に総務省の主導で始まった「モバイルビジネス活性化プラン」。ユーザーが買い換えを控えることで日本の携帯電話市場が冷え込み、さらに海外市場での競争力低下も相まって、国内メーカーの経営統合が進みました。
その一環として富士通と共同で「富士通東芝モバイルコミュニケーションズ」が立ち上げられ、東芝ブランドとして最後に投入されたスマホが2011年9月発売の「REGZA Phone IS11T」です。
未使用品を5,900円で入手できました。
電池パックには、「富士通東芝モバイルコミュニケーションズ株式会社」とあり、「東芝」の文字に出合えました。
「強化ガラス(Gorillaガラス)採用のフルWVGA高精細ディスプレイ」とのこと。当時としては大きな4.0インチで、FWVGAとは480×854ピクセル。今考えると粗い解像度ですが、当時としては悪くない範囲だったようです。
ロック画面は、右下をページをめくるようにスライドして解除します。
Androidバージョンは2.3.4。今ではGoogleのアカウントや、Androidマーケット(現:Google Play)にもなぜかログインできないくらい、古いものです。
この機種の特徴と言えば、何といってもスライド型でQWERTY配列のフルキーボードです。PCのキーボードに近い感覚で打鍵でき、より速く文字を入力できます。
これを搭載したスマホは今や非常に稀少価値があるため、最近まで愛用していた人が幾人か散見されます。
アプリ一覧には、旧アイコンのTwitter(現:X)に加え、さらにmixiやMobage、GREEマーケットなどの一世を風靡したサービスが並びます。
ですが、何しろ13年経つので多くは動かず。その中でも数少ない、現在でも使えるものはMobageでした。
東芝のテレビ事業・REGZAのブランドを背負う「レグザフォン」ならではの、ワンセグやYouTubeの映像を自動補正して高画質化する「REGZA設定」も使えます。
そういえば、昔のスマホにはロッドアンテナがついていました。伸ばす作業すら懐かしい。
この最終機を出した翌年の2012年4月、富士通が「東芝からの技術移管は済んだ」と語り、東芝が開発会社株を富士通に売却して、東芝は携帯電話事業から撤退しました。
レグザフォンの元となっていた、東芝のテレビ事業「REGZA」自体も、2018年に中国のハイセンスグループに買収されています。
さらに、この東芝の携帯電話事業を吸収した富士通も、のちに同事業が独立して社名がFCNTとなり、2023年9月には中国のレノボグループに事業譲渡されました。
スマホ初! ラスト機で冷却用ヒートパイプを導入したNEC
1985年に発売された元祖携帯電話こと、ショルダーホン100型。その納入メーカーの一つであり、日本のケータイシーンを黎明期から彩ってきたNECも、消滅した携帯電話メーカーの一つです。
このNECも東芝同様、国内市場状況の悪化などにより、2010年4月に「NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社」となってカシオ計算機や日立製作所と経営統合しています。
そんなNECの最後のスマホとなったのが、2013年6月に登場した「MEDIAS X N-06E」。中古を2,100円で購入しました。
ディスプレイサイズは約4.7インチ、重量は約136g。720×1280ピクセルのHD相当の解像度です。
NECらしい「エレガントスリム」を追求し、スリムボディと片手での持ちやすさにこだわった一台。着信に気づきやすいよう、イヤホンジャックとオーロライルミネーションの2つのイルミネーションを搭載しています。
その「スリム」を実現したのが、スマホで世界初の試み「ヒートパイプ」。高性能化するCPUの熱を逃がす画期的な冷却システムで、細い円筒のパイプをさらに潰し、薄くしています。
筆者がかつて使っていた2012年発売のN-07Dは発熱がひどく動作も遅くなる印象でしたが、このN-06Eは問題なくサクサク使えました。ヒートパイプはその後、スマホの冷却システムとして広く使われています。
Androidバージョンは4.2.2。ここまで来ると、何とかGoogle Playが動きます。
X(旧:Twitter)やInstagramは難しかったものの、Facebook Liteを動かせました。
アプリ一覧を見ると、懐かしい名前が並びます。
例えば「NOTTV」はドコモが売り出したモバイル放送でしたが、4年でその歴史を終えました。MEDIASユーザー向けのポータルサイト、「MEDIAS NAVI」も今や動いていません。
11年前の端末は、現代ではなかなか活用法を見出しにくいですが、今でも通用する機能が、先ほどもチラッと登場した「ワンセグ」です。
現代のスマホにはつかなくなりましたが、当時のAndroidスマホには軒並みついていたワンセグ。この通り、今でも問題なく動作します。
テレビを見ながら、右の画面でTwitter(現:X)を使える機能まであります。
さらに、NECスマホならではの機能が、このT9入力でした。
入力したい文字が割り当てられているキーを1回ずつタップし、表示された予測候補の中から目的の文字を選択して入力します。
タップ数を減らせる画期的な入力方式だったものの、今ではとんと見なくなりましたが、NECは歴代の端末にこれを搭載していたのです。
他にも電話が鳴ったとき、カバンの中にあることを検知して着信音を大きくする機能など、使い勝手をよくする工夫が盛り込まれましたが、あえなくNECの最終機種となりました。
2013年7月31日、NECはスマートフォン事業からの撤退を発表。ガラケー(従来型の携帯電話)も、2014年11月のN-01Gが最終機種に。
NECはその理由を「出荷台数が減少傾向にあり、競争力を維持・強化するためのスケールメリットが出せず、業績の改善を見通すことが難しかった」と語っています。
あのPC超大手のDellもスマホを出していた
世界トップクラスのパソコンメーカー「Dell」。実はかつてスマホも出していました。
後発のDellは中国最大キャリアの中国移動から生まれたスマホOS「OPhone」に望みを託しましたが、OPhoneはわずか1年で終了。
同じく失敗した「Windows Phone」に手を出すなどの苦難続きで、売上的にも存在感を発揮できぬまま、Dellのスマホの歴史は終わりました。
その最後に出されたスマホが、2012年3月3日発売で、ソフトバンク向けに投入した「DELL Streak Pro 101DL」です。中古を2,480円で購入しました。
背面は今のスマホではそう見られないシリコンラバー仕上げで、傷が付きにくく、同時にすべりにくくなっています。
起動させるとこの画面に。ソフトバンクのプリインストールアプリが並びます。
なお、こちらはAndroidスマホで、バージョンは2.3.5。現代で使うのはちょっと厳しいでしょう。
触ってみると、Dell独自のプリインストールアプリがいくつかありました。
日本独自のワンセグアプリはついていませんでしたが、その代わりにFMラジオアプリがついていて、今も楽しめます。
そのほか、懐かしいロゴのままのTwitterアプリや、2017年に消滅したUstreamのアプリなどもありますが、現在は使えません。
ちなみにこのDELL Streak Pro 101DLですが、発売記念イベントで、「647人のロボットダンスで世界記録を樹立」するという、ワケのわからないことまでやっています。
これは元総合格闘家の須藤元気が率いるパフォーマンス集団「WORLD ORDER」の計7名と、640人のダンサーが5分以上、同じ振り付けでロボットダンスし続けるもの。
そんな大がかりなプロモーションを行ったものの、事業の継続に至るほどの成功は収められませんでした。
日立最後のガラケーは「キー」が着せ替えられた!
最後は日立製作所です。日立ブランドとして最後に発売された携帯電話が、2010年5月発売の「beskey」でした。中古を1,033円で購入。
このガラケーですが、なんとキーの形状が異なる3種類のキーパッドを付属し、選んで使える「セレクトキーパッド」が特長でした。
- 指にやさしくフィットする「フロートキー」
- しっかりとした押し心地の「ウォータードロップキー」
- 波のような立体形状でなめらかな「ウェーブキー」
この3種類が付属されており、お好みで使えたのです。
ちなみに筆者は、押し心地がいい「ウォータードロップキー」が気に入りました。
ここには、日立が力を入れてきた「使いやすいデザイン」が、他分野のノウハウも含めて結集しているのだとか。
他にも、電話ボタンを1秒長押しすると「フェイク着信」ができて、着信音が流れます。例えば夜道で不審者にからまれないように、かかってきた電話に出て話すふりをするといった使い方も可能でした。
この日立も、先述の「NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社」に参加しましたが、NECやカシオと同じく、2013年7月に事実上の撤退となりました。
唯一の日本のスマホメーカー、ソニーへ贈る言葉
今回、Dell以外はすべて日本メーカー。携帯電話からスマホが全盛になるにつれて、その流れについていけなかった多くの日本企業が携帯端末で生きる道をあきらめました。
それでもいくつかの日本メーカーが踏ん張っていましたが、京セラが個人用スマホから撤退を発表し、富士通から独立したFCNTが中国のレノボグループに事業承継されています。
現在AQUOS PHONEで人気のシャープも鴻海(ホンハイ)に買収されており、日本の一般向けのスマホメーカーは、Xperiaシリーズで知られるソニーのみとなってしまいました。
そのソニーも海外で一定数の携帯端末を売っていた時代は遠い過去となり、国内でもApple、Google、Samsungの後塵を拝すことが多くなっています。
時代に翻弄された各メーカー最後の機種たちを味わいつつ、ソニーの奮闘を願って、この記事を終わりたいと思います。
編集:ノオト
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私が初めて購入したスマホは東芝でした
とんでもないポンコツで、すごく苦労したのも今となってはいい思い出…というわけでもなく、それから国産スマホは避けるようになってしまいました
名前しか聞いたことない けれどおもしろいですね~
ついつい意味あるのか?運営事務側に10MBあげちゃいました!
ドコモのiモードがあればこそのスマートフォン。
ドコモに敬礼! (`・ω・´)ゞ
単なるインフラ屋に振り回されたメーカーも情けない
メーカーの作ったスマホに自社のクソダサいロゴを入れたがり、Appleに断られたdocomoは日本の恥
(偽寅次郎)
ソニーの奮闘期待しています。
またまたおもしろい企画!
最高です!
いつもありがとうございます!
そういえばワンセグ用のアンテナが付いていましたね、知り合いは☎のアンテナと勘違いして伸ばしてました😃
数年後に昔は折りたたみ式スマホが発売されていたと言う記事が出るかも知れませんね😃
タップしても直ぐには反応しない…(笑)
当時は『こんなんどーやって売れと!?』って思ってましたが、そんな癖強くてバクだらけのシステムが改善改良されて、『昔があって今』がありますよね!
当時には戻りたくないですが否定も出来ない…そんな懐かしい時を見せて頂いてありがとうございます!
ホント懐かしかったヽ(*゚∀゚*)ノ
ガラケー時代だと、三菱とかデンソーもありました。家電メーカーはどこも携帯作っていましたね。
栄枯盛衰を感じさせます。
もう繋がらないので、目覚ましとして使用してます♪
東芝製のガラケーを使っていたし
折りたたみ式のガラケーと言えば
NEC製が大人気だったし
こんな話をすると
歳がバレてしまう(^_^;)