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iPhoneでもAndroidでもない。消えた第3のスマホOS『Windows Phone』 を2022年に使ってみた

iPhoneでもAndroidでもない。消えた第3のスマホOS『Windows Phone』 を2022年に使ってみた

辰井裕紀
ライター: 辰井裕紀
ローカルネタ・ガジェット・卓球が好きなライター。過去に番組リサーチャーとして秘密のケンミンSHOWなどを担当。

iOS、Android。それに次ぐ存在だった「Windows Phone」をご存じでしょうか。

3大キャリアであまり端末が出回らなかったので、知らない人ばかりかもしれません。あのMicrosoftにより開発され、2019年12月でサポートを終了。つい最近まで提供していたスマホOSなのです。

日本では無名ながらも、2013年ごろは世界全体の3.3%ほどのシェアがあり、イギリスでは12%、フランスでは10.8%ほどを占めていたとか。

1万円以下の端末もあり、アメリカの低所得者にも人気だったそう。

そのWindows Phoneの最後のOSバージョン・Windows 10 Mobileを搭載した、再末期のスマートフォンがこちら。

2016年11月11日発売の「SoftBank 503LV」です。Amazonにて4,380円で購入しました。

もしかしたら、日本で発売された中では最後の機種かもしれません。

3年前、ひそかに終了した第3のスマホOS。どうしても触りたくて、購入したのでした。

※OSのサポートが終了した古いスマホはセキュリティの脆弱性があり、ウイルスに狙われやすいため使用は控えましょう。今回は細心の注意を払いながら検証しています。

新品のSoftBank 503LV

 

Windows Phoneに今こそ触れてみよう

4,380円と安価ながら中古ではなく新品。正直に言うと「やっぱり使い物にならないの?」と怖い物見たさで買った向きもありました。ちなみに主なスペックはこちら。

ディスプレイサイズ:約 5.0インチ
ディスプレイ解像度:HD(1280 x 720ドット)
重さ:約143g
CPU:MSM8952 1.5GHz & 1.2GHz (オクタコア)
ROM:32GB
RAM:3GB


さっそく設定をしてみます。

日付を設定する画面が独特

Microsoftアカウントの作成 or サインインを尋ねられる

出た、オンラインストレージ「OneDrive」

さすがWindowsのスマートフォン。Microsoftアカウントを入れたり、OneDriveの使用をオススメしてきたりと、iOSやAndroidのセットアップとはひと味ちがいます。ちなみにあのCortana(音声アシスタント)も登場しました。

見覚えある画面が

初期設定画面を抜けて、いよいよ起動。と思ったら、何やら見たことのある画面が出てきました。そう、Windows 10とそっくりの起動画面です。

タイル画面

中に入ってみると、これまたWindows 10でおなじみのライブタイル画面です。

「Windows 10」の名前が付いているバージョンなので、どこか似ているとは思っていましたが、ここまで同じとは思いませんでした。

似ているのは見た目だけではなく、Windows 10と横断的に使いやすい設計になっています。

さぁ、いろいろ使ってみよう……と思っていたら、何やらどれもまともに使えません。アプリは表示すらできない様子。どうやら更新が必要なようで、数回の更新をいっぺんに行います。

タイルに画像や文字が表示されるのも楽しい

すると……どうでしょう。更新前まで使えなかったニュースやマップなどのアプリが使えるようになりました。ちょっと感動。

アプリがなくて悪戦苦闘!?

サポート終了から2年以上経ちますが、アプリストアはまだ使えました。試しにTwitterアプリでもダウンロードしてみましょう。

……と思ったのですが、まだサポートがあった時代に存在していたという公式アプリが見当たりません。

「Twitter」で検索しても公式アプリが見当たらない

「もともとアプリが少なかった」のもあってか、何やら怪しいアプリ(?)ばかりが並びます。怖いもの見たさ精神でインストールしてみました。くれぐれも自己責任で。

アプリを開くとこの画面になるが、「アプリに切り替え」を押しても進めない

普通にログインすると、使えた

結果から言うと、普通に使えました。ただ、非公式アプリばかりが並ぶ状況に、筆者のようにふだんから公式アプリ派の人はちょっとたじろぐかも。

これに乗じて、Facebookも使ってみました。これも公式アプリが見つからず、こちらを利用しています。

起動してみると、「お使いのブラウザはサポートされていません」なる警告が出ましたが、どうにかアプリのほうで対応してくれたようで、ちゃんと表示できました。

ちなみにInstagramやYouTubeが使えるアプリは、チラッとチェックした中には見当たりませんでした。ちゃんと探せばあるかも。あと筆者はYahoo!がらみのアプリを多く使いますが、こんな怪しげなものしか出てきません。

Instagramでストア検索。何やら有料アプリが出るも今回はスルー

ちなみに公式のニュースアプリはまだまだ生きており、読みやすいレイアウトそのままに楽しめそうです。

天気予報は何だか多機能。自分の街の天気をピンポイントに見る機能も使えるほか、こんな情報量の多いページも使えました。

「過去30年でこの日に雨が降った日数」などを調べられる

ちなみにWindows PhoneでウリだったのがプリインストールされているMicrosoft Office。PCのWindows 10との高い互換性が魅力でした。

Microsoft OfficeはPC版との互換性が高くカンタンな作業に重宝した

ちなみにフリック入力にはちょっとコツが必要。指を置いて少し待って十字の表示が出てから指を動かしたほうが確実かも

 

全体的には「使えなくもない」

外に出ました。あらためて持ってみるとさすが約143g。年々重くなる最近のハイエンドスマホとは一線を画した軽さです。

まずは外歩きには必須、マップアプリを使ってみました。

左上に大きく「東京」などと表示される迫力の設計

ライバル会社による「Googleマップ」を使えなかったそうで、他社製の地図が使われています。自分のいる場所を示すポインターが正確な位置を指すのに時間がかかりますが、これはこれで使えそうな感じ。

ついでにカメラも使ってみましょう。

メインカメラ:約800万画素/CMOS
サブカメラ:約500万画素/CMOS

オートフォーカス対応、手ブレ補正は動画のみ対応です。

昼間に撮った写真は現行のスマホとそう遜色ありません。しかし手ブレしやすく、ガッシリ構えないと夕方でも手ブレは必至。夜景はさらに大変です。

少し油断すると手ブレする

夜景だとどうしても手ブレしてしまう

少々の手ブレは覚悟して、記録用として撮影する格好になります。

ちなみに、筆者私物の最新スマホPixel 6で撮影したのがこちら。精細さがまるで違い、技術の進歩を思わされます。

Pixel 6のナイトモードで撮影。ぜんぜん違う

ひと通り触ってみましたが、どうにか工夫すればまだまだ使えそうでした。安い昔の機種だけあって、CPUなどの数値上の性能はあまりよくなく、緩慢な動作を覚悟しましたが、そこそこ快適に動いてくれた印象です。

安い中古のiPhoneやAndroidも出回っている中で、Windows Phoneを使う道理はまるでありませんが、少し感心してしまいました。ただ、アプリの少なさは否めませんが。

Windows Phoneが盛り上がった時代

さてこのWindows Phone。iOSとAndroidに大勝負を挑んだ歴史的スマホOSとも言えますが、いったいどんなものだったのでしょうか。

以前、Androidの良さを伝える記事にも登場してくれた、中古スマホ販売大手のイオシス から、アキバ中央通店の店長・石山祐輔さんに話を聞きました。

——当時、Windows Phoneは触っていましたか?

石山:仕事柄、もう本当にいやというほど触りましたね(笑)。いい機種もあって、スタッフの間でも人気でした。

——どんな機種の人気がありましたか?

石山:高級機種のノキアのLumiaシリーズは憧れの的でしたよ。920は端末のデザインも画面上のレイアウトなどもかっこよくて。あとカメラがすごいLumia1020とか。

Lumia1020(ノキア)は4,100万画素、1/1.5の巨大センサーサイズなど、飛び抜けたカメラ性能があった

——Windows Phoneが盛り上がった時期っていつですか?

石山:2015年にWindows 10 Mobileという現行バージョンが出たころですね。プラットフォームがWindows 10 と同じものに統一されて、「いよいよ第 3 の OS として本気で動き出したか」と。

——その熱狂は一般層に届かなかったかもしれません……。

石山:ただ、機種はいっぱい出ていました。NuAns NEO(トリニティ)っていう、背面パネルを自由に組み合わせられる、おしゃれなWindows Phoneもありましたよ。

——こんなスマホ見たことない。意欲的だったんですね。

グッドデザイン賞2016の特別賞を獲ったNuAns NEO

石山:WindowsPhoneってガジェットマニアには人気だったんです。新機種は海外端末の中で常に売れ筋上位だったほどで。

——へえ!

石山:とくにLumiaは、GalaxyやXperiaに負けないくらい人気がありました。

またたく間に熱狂は去る

——そんなWindows Phoneの熱狂が盛り下がったのはいつですか?

石山:終焉は早かったです。じつは2017年3月ごろからうちに大量のWindows Phoneが入ってきて。

——なるほど、そこでみなさん察するわけですね。

石山: Windows Phoneが終わることを覚悟しました。たとえばさっき言ったNuAns NEOも、メーカー側で「NuAns NEO [Reloaded]」って後継機をAndroidにして出したんですよ。

——……。

石山:人気ブランドVAIOの「VAIO Phone Biz」も、Android版の「VAIO Phone A」を出しました。

——一気に終わっていく……

石山:そのままで売れないよりはAndroidに変えた方がいいので。

イオシスで最後のWindows Phoneセールが、2020年3月ごろの「VAIO Phone Biz」特売。思い出のコレクション用として一瞬で売れた。VAIO本社の安曇野工場で厳格な最終検査を行なう“安曇野FINISH”の対象機種だった


どうしてもアプリが揃わなかった

——なぜ一般層には全然知られないくらい、売れなかったんでしょうか。

石山アプリが揃わなかったからです。

——それに尽きますかね。

石山:ええ。スマホのOSの違いって、画面上の操作性や見た目の好みの問題くらいで、電話やインターネットとかならたいした問題じゃないんですよ。結局アプリなんです。

——なぜアプリが揃わなかったんですか?

石山:AndroidとiOSで100%近いシェアがありますし、わざわざコストを余計にかけてWindows Phone対応のアプリは作りません。

——シェアの小さいOS向けにアプリを作るのが割に合わないと。

石山:だからMicrosoftはアプリ不足を補うため、「AndroidアプリをWindowsモバイル上で動かす」って発表していたんです。

——それが当時はできずじまいだったのか。Windows 11は次期アップデートで同機能の導入を予告していますから、ようやく実現しそうですね。

石山:時すでに遅しです(笑)。ただしタブレットにも対応予定なので、タブレットは売れるかもしれませんね。

「いいところ」は多かったが……

——Windows Phoneのいいところって何でしょうか?

石山:まず、安い機種の性能でも結構なめらかに動きました。

——たしかに、マシンの性能の割には悪くない動作でした。

石山:あと、よかったのはPC との親和性です。プラットフォームが Windows 10 と統一されているので、横断的に使えました。

——たしかにWin10ユーザーとしては惹かれました。

石山:あとContinuumっていう機能が目玉で。HDMIで外部ディスプレイにつなげれば、スマホをふつうのPCみたいに使えるんです。

——おお!

石山:うちも会議室でいまだに使います。Bluetoothキーボードなんかで操作できますし。

スマホの画面を外部ディスプレイに表示して操作できる。スマホと同時使用も可能

——Windows Phone、Microsoft Officeもタダで使えますし、仕事づかいにはよさそうですね。

石山:たしかにいい機能なんですが、結局アプリが少ないとユーザー数が伸びないんです。多くのゲームにも対応できませんでしたから。

——法人向けでも厳しいですか?

石山:ビジネスシーンに訴えかけても、すでにビジネスさえiOSとAndroidで動いていましたからね。

「最強にして最後の挑戦者」倒れる

——Windows Phoneはスマホ界でどんな存在でしたか?

石山「最強にして最後の挑戦者。そして夢の終わりを告げたスマホ」だと思います。

——iOSとAndroidに敵う存在は事実上なくなったわけですね。

石山:ちなみに、第三のOSになるようひそかに応援される存在でもありました。

——応援?

石山僕らもいわゆる出世物語をWindows Phoneに重ねたんです。2大OSに立ち向かい、どこまで行けるだろう……って。

——夢を託す存在だったんですね。

石山:良さそうなOSですし、Windowsユーザーはラクになりそうだったので。判官びいきもあったかもしれません。

透過タイル画面をオシャレにしたり、アニメキャラを入れて遊んだり。「2大OSにはない楽しみ方もあった」と石山さん(Photo by Enterely)

石山:でも……Microsoftですら本気でやっても勝てなかったので、もう新OS の参入は無理だとなって。

——iOSかAndroid、もう選択肢は完全に2つに絞られたわけですね。

石山:ちなみに2021年、インドを中心に展開していた、サムスンらによるTizenっていうOSも事実上終了しました。

インドの格安スマホのOSとして普及したTizen。2021年にGoogleのWear OSに統合された(Photo by Kārlis Dambrāns)

——HUAWEIのharmonyOSとか、内部事情でほかのOSを使わざるを得ない、中国くらいしか無理だと。

石山:あれも Androidのカスタマイズ版ですからね。

「ご利用ありがとうございました」

——そんなWindows Phoneが残したものって何でしょうか?

石山:「誰も使っていないものを使いたい」という承認欲求を満たせるものでした。ここからガジェットファンになった人を何人も知っています。

——WindowsPhoneからですか!?

石山:海外版でもがんばって使ってくれる人が増えて、海外端末の人気を高めてくれた端末です。

——海外のアイテムへの扉まで開いたわけですね。

石山:ちなみに……10 年後にはもうAndroidもiOSもなくなっている可能性がありますよ?

——え? どんな未来になるんでしょうか……?

石山:楽しみにしましょう!



このWindows Phone。電源を切るとき、何やらメッセージが流れる。まるでこんな日が来ることを予期していたような言葉だ。

一度でもWindows Phoneを触ったすべての人に、このフレーズが贈られているのかもしれない。

(編集:ノオト)


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328 件のコメント
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退会済みメンバー
退会済みメンバーさん
ビギナー
なるほど
ヤマダで投げ売りしてたなぁ
発売した時は少し興味かあったけど、スマホを買う時に他機種との比較検討の土台には乗らなかったのを思い出しました。
なんでだったんだろう…値段かな?機能かな?
Windowsタブレットを持っていますが、モバイル端末には使いずらい操作性などだと思います
わかりました。ありがとうございます
復活して市場を活性化してほしい。
こーゆう記事は面白い!!
ためになりましたー
そんなものがあったんですね!
全く知らなかったです
パソコンのシェアは大量に獲得出来たのに
スマホのシェアはほぼ獲得出来てないのは興味深いです
アプリがそろわなかったという、考察は、興味深かったです。
低所得者に人気で草
退会済みメンバー
退会済みメンバーさん
ビギナー
良いですね
こういう記事は面白いですね
いつの間にか淘汰されたwindowsスマホ、ちょっと気になりますよね。
知りませんでした
消えるものはやはり理由があるのですねー
興味深かったです。
unityやvisualstudioで開発出来るのにアプリが揃わなかったのはなぜなんでしょうね
Microsoftはsurface以外全くピンと来ませんが、surfaceは最高です。
退会済みメンバー
退会済みメンバーさん
ビギナー
昔windowsスマホをつかったことがあります
freetelです
windowもiOSもスマホがあるのに,Linuxで作られたスマホや携帯はないのでしょうか(と,ふと思いました)
そんな、スマホ?あったのですね😅
知りませんでした💦💦
アプリがないのは大変ですね。
winphoneとデスクトップのアプリ共用だった名残があるから、ときどき不具合あるんだよなー
ちょっとネット検索とかメールのやり取りしかしない人向け…?
外見とかはかっこいいんだけどねー
歴史を感じる企画
興味深い記事。存在を知らなかった・・・
マニアックですね。
どうして、もっと普及しなかったんでしょうね
「ご利用ありがとうございました」

>> すみっこくらし さん

「ある」の意味とは?
まぁこの世の何処かには存在してるだろうけど…w

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#マイネ王9周年おめでとう!
楽しい記事ありがとうございます。
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