こんにちは。ライターのらむ屋敷です。
最近、メルカリなどのフリマアプリで物を売る人が増えているようですね。
私も利用したことがありますが、商品写真は特に何も考えずスマホでパシャパシャと撮っていました。何かコツや注意点はあるのでしょうか?
そこで今回は、プロカメラマンの栃久保さんにアドバイスをいただきたいと思います。
栃久保さんに撮影のコツや注意点などを教えてもらい、最終的に、
フリマで商品を閲覧された際に「いいじゃん!」と思ってもらえるような写真を撮影できるようになりたいと思います。
ただ、
フリマの写真は現実よりも美しく仕上げすぎると、実際に届いたものが劣って見え、結果、低評価を下されるような気がします。場合によってはコメント欄で「令和の大詐欺師」と書かれてしまうかもしれません。
商品のシワや汚れといった「見せたくない部分」を隠すような撮り方ではなく、
あるがままの姿をできるだけ綺麗に引き出す、そんな撮影ができるようになるのが目標です。
撮影条件
今回の撮影場所は、私が住んでいるシェアハウスの居間。1面採光の部屋で、家具や物にあふれています。
天気は、おおむね晴れ。
窓から太陽光が差し込んでいます。
使用する機種は、こちらのiPhone 6。
被写体は、こちらの6つのアイテム。
素人とプロカメラマンとで、どのくらい写真の出来栄えが変わるか比較したかったので、6つのアイテムはすべて事前に撮影しておきました。
撮影の様子
それでは、栃久保さんにダメ出ししてもらいつつ、プロカメラマンならどのように撮影するのか教えていただきましょう!
【アイテム1】グレーのパーカー
まずは、服からいきましょう。
撮影済みの写真を、栃久保さんに見てもらいます。
なるほど。全体がしっかり収まっていていい感じですね。どんなふうに撮ったんですか?
畳の上に広げて撮りました。茶色いテーブルの上の方が撮影に適してると思ったんですが、袖を広げるとテーブルの上にのり切らなかったので。
背景が畳だと“家感”が強くて少し気になりますね。畳の焼け具合や畳縁(たたみべり)の緑色の太い線に目がいってしまいます。
たしかに生活感が出てしまうかも。光の当たり方とかはどうでしょうか?
光の差し込む窓から近すぎない距離なので、距離感は悪くないです。
この部屋はカーテンがないので、窓の近くで撮ると光が強く当たりすぎて、部分的に真っ白になってしまう可能性が高いです。
あと、光にも色があるので、複数の光源があると色が混ざり美しくない写真になってしまいます。今日は晴れているので自然光のみで十分です。
昼なのに点けっぱなしにしてました。栃久保さんなら、どの場所で撮影しますか?
私なら、このフローリングマットの上で撮ります。光が強くなりすぎない距離ですし、フローリングマットは畳よりも生活感が出ません。
なるほど。ちなみにスマホの向きは縦と横、どちらが適していますか?
縦のほうがスマホの画面に大きく表示できるのでオススメです。
ためしに、パーカーの向きを変えてみました。肩のあたりに影ができているのが分かりますか?
肩やフードの上(奥)に影ができている
太陽や照明などの光は上から下に差しているので、影は下側(手前側)にあったほうが自然です。これだとちょっと不自然に見えてしまいます。
上(頭側)から光が差しているほうが、より自然な影になる
ちなみに、横から光が差しているサイド光でも自然な仕上がりになります。
あと基本的なことですが、室内で撮るときは基本ブレやすいので、毎回しっかり手首を固定して優しくシャッターを押しましょう。まっすぐ水平に撮ることも意識したほうがいいですね。
水平は意識してるつもりなんですけど、目視だと限界がありませんか?
画面に表示される格子状の線のことです。iPhone 6の標準のカメラにも搭載されている機能なので、ONにしてみましょう。
iPhone 6の設定画面。設定→カメラ→グリッドから設定を変更できる
グリッドをオンにすると、縦横に白い線が表示される
すごい! まっすぐです。あと、影も自然だし、背景も畳よりオシャレです。
背景のフローリングマットの横線に対して平行になるように意識しました。あと、好みの問題ですけど、私は着ている姿を想像させてあげたいので、あえてシワを入れます。
あえてのシワ! 他にも取り入れたほうがいいテクニックがあれば教えてほしいです。
「ピント合わせ」と「明るさの調節」は絶対にやったほうがいいです。
ピント合わせは、ピントを合わせたい部分をタップするだけですよね。明るさはどうやって調節するんですか?
簡単です。ピントを合わせたい部分を画面をタップすると、四角い枠と太陽のマークが出てきます。その太陽マークを上下にスライドさせると明るさを調節できます。
中央の太陽マークを上にスライドしたところ。簡単に明るくなった
この服を自分がメルカリに出品するなら、こんな感じですね。たくさん撮ってみました。
いいですね! えりや袖だけじゃなく、タグやチャックまで撮っていて親切です。
えりや袖は汚れがつきやすいので、しっかり撮っています。写っていない部分に汚れがあると、購入した方からクレームを言われかねませんからね。
たしかに。あるがままの姿を撮った方がトラブルが少なく済みそうです。
並べて見てみましょう。栃久保さんの撮影した写真のほうが断然カッコいい。
【アイテム2】アロハシャツ
続いても、服です。パーカーは長袖でしたが、今回は半袖のシャツで。
袖が短くて身幅が狭いので、テーブルの上に全体が載りました。なので、テーブルの上で撮影しています。
なるほど。ハンガーの素材はアルミ製や木製などありますけど、オススメはありますか?
服は木製ハンガーが一番しっくりきます。単純に見た目がいいので。あとは、肩がしっかりしたハンガーを選ぶとよいかと!
栃久保さんはアパレル業界で働いていただけあって、こだわりが感じられますね。
場所はテーブルの横の壁にします。光は横から当たるサイド光なので適していると思います。
グリッドを活用して、真っすぐを意識して、明るさも調節しながら撮ります。
服の劣化は特に、えり元に現れるので、本来はアイロンがけをして、えりをピシッと立たせた方がいいですね。
もし出品用の写真を撮るなら、こんな感じです。パーカーと同様、前や後ろ、えり、袖、タグなど、網羅的に撮っておきたいですね。
その差は歴然。栃久保さんの写真は、おしゃれな古着屋って感じがします。
【アイテム3】カプセルトイ
次は「小さなもの」を撮るコツが知りたいです。そこで、某キャラクターのカプセルトイの登場です。
撮影の様子。小さくて、ピントが合わせづらかった
う~ん……。そもそもこの茶色いテーブル、テカテカしていて木目もくっきり出てしまっているので、撮影には向いてないと思います。
そんな! このあと出てくる写真、ぜんぶこのテーブルで撮ってるのに。
この部屋で一番向いてるのは壁際の長机かも。窓の近くに移動させてもいいですか?
この長机は、茶色いテーブルと違って反射が少ないし、木目の色も薄めなので背景として適していると思います。
この配置で、サイド光で撮影したいところですが、このままだと光の当たらない逆サイドのほうが暗くなってしまいます。なので、光を反射するレフ板がほしいです。レフ板の代わりになる「白いもの」はありませんか?
白いもの……ミニサイズのホワイトボードがあります!
ちょうどいい大きさです! これをレフ板代わりにしつつ、カメラレンズが下にくるようにスマホをひっくり返して撮ります。
小さな被写体を正面から撮る場合は、レンズを下にしたほうが高さが合う
これで左から太陽光が差し込んで、レフ板にその光が反射するので、左右両方から照らせます。
あと、俯瞰で撮るときと同様に、正面から被写体を撮るときも背景に気をつけましょう。
でも、撮影場所はここがいいんですよね? どうしようもなくないですか?
実は、ズーム機能を活用することで、背景がイマイチな場所でもスッキリさせることができます。
ズーム? 画質が粗くなるイメージがあるので、あんまり使わないですね。
画質が粗くならない「光学ズーム」もありますが、標準のズームでもスマホで見るぶんには画質の劣化はそこまで気にしなくて大丈夫です。ただズームをすればするほど劣化はするので、ほどほどがよいかと!
では撮ってみましょう。まず被写体から少し離れた場所にカメラを置きます。
次に、画面に表示されている拡大・縮小のバーを+方向にスライドさせて……
ほどよい大きさになったら、被写体をタップしてピントを合わせます。すると……
これ本当に僕のiPhone 6で撮ったんですか? スゴいを通り越して、怖い。
いろんな角度から撮ってみました。小さな物を出品する場合は、大きさを分かりやすくするための比較として、見慣れた物を横に置いてあげるとよさそうですね。
同じスマホで撮ったとは思えない、衝撃的な変わりようです。
【アイテム4】イルカのおもちゃ
続いて、イルカのおもちゃです。
海面を泳ぐイルカを表現しました。撮影の技術では栃久保さんには勝てないと思ったので、創造性で勝負しようかと。
青い服をまるめて、イルカを立たせて撮影した
シャチです。イルカはシャチに襲われることがあるんです。その時イルカは、このように海面をすごい速度で何度もジャンプして走り抜けます。その一瞬を、写真に収めることに成功したのです。
世界観はなんとなく分かりましたが、テーブルの木目や畳がどうしても気になっちゃいます。先ほどの小さなカプセルトイと同じく、ズームを活用すれば背景がスッキリするので、今回は自分で撮ってみてください。
アドバイスを踏まえて撮り直した
背景がスッキリして、躍動感も出ましたね! 写真は被写体ばかりを気にしがちですけど、実は「背景」がめちゃくちゃ大事なんです。
でも「フリマアプリに出品する写真として合っているのか」一度自問してみたほうがいいかもしれませんね。
事前に撮った左の写真は、シャチにつかまってジタバタしていますが、栃久保さんのアドバイスを踏まえて撮った右の写真は、シャチから逃げ切って優雅にジャンプしているように見えます。
【アイテム5】スマートフォン
続いては、スマートフォン。
画面が黒くて反射が強いので、写真を撮る際の写り込みをどうやって防ぐかがポイントです。
よく見ると、画面には天井が写りこんでいる
どうやって撮っても、何かしら写り込んでしまうんですよね……。
先ほどレフ板の代わりにしたホワイトボードなど、白いものをあえて写り込ませることで、家具や天井などが写り込まなくなります。A4用紙でもいいですよ。
なるほど……。画面いっぱいに、白一面を写り込ませるんですね。
あとは初歩的なことですが、画面はできるだけ綺麗に拭いてから撮りましょう。指紋が付いてると気になる人がいるはずです。
画面の写り込みの有無に注目してください。綺麗な写真の裏側には、見えない努力があるんですね。
【アイテム6】ドクロのワイン入れ
いよいよ最後のアイテムです。
ワインを入れる容器です。でも私はワインを飲まないんで、しょうゆが入ってます
先ほどの黒いスマートフォンと同様に、真っ黒で写り込みが激しいので苦労しました。
たしかに、これは難しいですね。テーブルの右下に光が強く反射してしまってるのが惜しい。ただ、写り込みは少なく撮れてると思います。
これは雰囲気作りのためでもありますが、カメラの性質上、背景が明るいと被写体をより暗く撮ろうとする傾向があるんです。そうすると、ドクロがただの黒い塊となってしまう可能性があります。被写体と背景に明暗差がありすぎると失敗の原因になりやすいので注意しましょう。
なるほど! でも、栃久保さんのTシャツ白いですよね。写り込みしそうですけど大丈夫ですか?
じゃあ、僕の黒い服を使ってください。首元に巻いてさしあげます。
ドクロの怖い雰囲気を増長させたいので、もっと部屋が暗い状態で撮りたいですね。でもカーテンないんですもんね。
暗すぎても撮れないので、間接照明だけ使わせてもらいますね。
雰囲気がすごい! あえて暗い背景を選んだ理由が伝わってきます。
フリマアプリに出品することを考えると、しょうゆを抜いて撮った写真もつけたほうが親切ですね。
栃久保さんの写真は、ドクロのまがまがしい雰囲気が見事にあらわれています。まさか黒に黒を合わすとは、想像すらできませんでした。
撮影を終えて
いやぁ、初めて聞くテクニックばかりでタメになりました。フリマアプリで物を売るときにめちゃくちゃ参考にさせていただきます!
喜んでいただけるとカメラマン冥利に尽きます。あ、ちょっとトイレ借りますね。
こんな丁寧に教えてもらえたら、メル○リ攻略本とか不要な気がします。
勉強になりました!
出品写真の参考にさせていただきます。
実践してみます。
有難う御座居ました。
|・ω・`)フムフム
せっかく良い商品なのに、撮ると微妙なことが多かったので参考になりました!