「行けたら行く」は便利だけど、もっと的確な返事を送りたい

▲今後のことは分からないけれど、
行けるなら行くという意思表示（行かなかった）

でも、行くよりの「行けたら行く」のときもたまにある。

以前、知人に「サイゼリヤで一番高いワインを飲もう」と、誘われた。絶対に行きたい。はちゃめちゃに行きたい。しかし、仕事が終わりそうになかったので、「行けたら行く」と返事をしたのだが、「その返事って、絶対に行かないってことじゃん」と言われてしまった。

▲顔がキリッとした人たちとの飲み会に
誘われたときの返事（行かなかった）

そんなことはないのに……。しかし、その後、初めて飲み会の幹事をやったのだが、「行けたら行く」と返事をした人は一人も来ず、そいつらの分のお通しを黙々と食べていた。涙でちょっとしょっぱかった。私がしてきた「行けたら行く」は、こんな残酷なことだったのか、とも思った。

▲朝早いお誘いがきたときに、起きれるか分からないけど
とにかく行くという強い意志のある返事（行った）

行くよりの「行けたら行く」と、行かないよりの「行けたら行く」がある。その複雑な感情をもっと言葉で表現できるデバイスがあったらいいのに。私が作るしかねえか……。

「行けたら行く」生成マシーンを作るぞ

初めてデジタルで設計図を描いてみたのだが、区役所に貼ってある掲示物のようになってしまった。

▲設計図

どういうことかというと、左端の「行かない」と、右端の「行く」の間を自由に動かせるバーがある。バーの位置にあわせて、「きっと行ける」「まあ行けるっちゃ行けるけど」などの適切な返答が自動生成され、LINEで送ってくれる。そういう仕組みを考えている。

この忙しい世の中で、自分の中にある複雑な「行けたら行く」を言葉にするのは難しい。そんな時間はない。なので、自分の曖昧な気持ちを機械が代弁してくれる。とても便利なマシーンなのだ。

今回使うのは、「M5STACK」というデバイス。液晶画面に小さなコンピューター的なものが入っているので、簡単に画像や文字を表示することができる。電子工作好きにはたまらないものだ。

これとスライドボリュームをピンでつなげてみる。

もう、これで見た目はほとんど完成だ。しかし、この後がとても大変。「バーの位置に応じて文字を変えて、その文字をLINEに送る」というプログラムを書かなければならない。

はっきりいって、すげえめんどくさい。でも、やるしかない。

いろいろ調べてみたところ、このデバイスは日本語に対応しておらず、日本語を液晶に表示させるにはかなりの努力が必要なようだった。

努力はあまりしたくない。もっと調べてみると、画像を液晶に表示させるのはとても簡単なようだ。簡単なのが好きだ。なので、文字を入れた画像を作って、それを表示させることにしよう。

▲スライドボリューム

インターネットで「M5STACK　画像　スライドボリューム」などと調べてみると、とても参考になる記事 がヒットした。

なんでも、子どもが帰宅・外出したとき、機械のスライドボリュームを動かすだけで親のLINEに通知が送られる。そんな仕組みを作ったそうだ。すごい。このほのぼのしたデバイスのプログラムを真似て作ってみることにした。

画像を表示させるためには、画像を入れたSDカードをM5STACK内に入れる必要がある。ふむふむ。書かれている手順通りに進めて行く。

しかし、一向に画像が表示されない。

SDカードに画像を入れ直したり、画像の拡張子を変えてみたり、プログラムを直したり。ファミコンやニンテンドー64のように、カードスロットに息を吹きかけて埃を飛ばしてみたり。

考えうる手を全て施し、5時間ほど経ったが全く画像が表示されない。なんか私、前世で悪いことでもしたのかな。

試行錯誤した後にわかったのは、単にSDカード自体が壊れていたということだった。……悔しい。

家にある浄水器にフィルターを入れるのを忘れて、しばらく使っていたときのように悔しい。「やっぱ浄水器の水はおいしいなあ」と、ただの水道水を飲みながら思っていたときのように悔しいよ。

SDカードの問題が解決して、秒で画像が表示できるようになった。スライドボリュームを止める位置によって違う画像が表示される。なんだか、これだけで満足感がでてきてしまったけれど、さまざまな文言を表示できるようにしなければならぬ。

そして、小難しげなプログラムをいろいろ変えたものの、一向にできない。

なので私は、一旦このことを考えるのをやめて、録画していたテレビを見たりNetflixを見たりしていました。

気づいたら3日くらい経っていた。そして、再びチャレンジしてみると、できました。

行けたら行く生成マシーンの完成

これが「行けたら行く」の度合いに応じたメッセージを生成してくれるマシーンだ。行くのか行かないのか。その曖昧な可能性を言葉にしてくれる。

バーを右側に動かすと「行く」、左側に動かすと「行かない」に近づく。そして、「これだ」という文言が表示されたら、素早く左に動かすことで「決定」となる。

ちなみに作る前は「その文言をLINEで相手に送る」と言っていたけれど、そんな難しいことは無理でした。

文言は、

「行く」
「行くような気もします」
「天気が良かったら行く」
「行けたら行く」
「行かないよりの行く」
「当日連絡します」
「死んでも行かない」

の7パターンを作ってみた。

「行くような気もします」や、「行かないよりの行く」とかは、「行けたら行く」よりも曖昧になっており、相手を混乱させるかもしれない。でも、微妙な誘いをしてくる人が悪いからいいんだ。そんなやつは混乱させてやれ。

「当日連絡します」は、「行けたら行く」よりも信用ならない言葉だし、「死んでも行かない」と相手に送ることで関係性にヒビが入るかもしれないが、それに関してもそんな誘いをしてくる人が悪いから……。

行くのか、行かないのか

さて、ここに微妙なお誘いがある。打ち合わせ、行きたくない。でも、行ったほうがいい気もする。でも、行きたくはない。

こういった絶妙な誘いの答えがこのマシーンのなかにある。

「行かないよりの行く」か……。

自分で打って相手に送る。この間にいろいろ考えてしまってはダメなので、無心で送る。

既読無視されてしまった。来れるなら来いよという感じだろうか。

このままだと人望を失う気がする……。

知人が個展をやるようなので、日程をこちらから聞いてみた。行きたいけれど、まだ先のことだから行けるか分からない。でも、「行けたら行く」よりかは、行きたい気持ちが強い。

「天気がよかったら行く」か……。せっかく個展を開催する人に対して「天気がよかったら行く」という返事は、かなりの嫌さだ。あと、屋内の展示なので天気は特に関係ないやつだ。

しかし、私はマシーンの言う通りにしか動けない愚かな生き物。

新着メッセージがきて、ドキドキしながら開いた。

大きなクッキーを食べたそうだ。「天気がよかったら行きます」よりも数段上の返信しづらいメッセージが届いたことにびっくりして、既読無視してしまった。

おっ。地元のマイルドヤンキーからだ。

死んでも行かない。

おわりに

「行かないよりの行く」「天気がよかったら行く」「死んでも行かない」この返事を送ったことによって、少しだけあった人望がゼロ、いやマイナスに食い込むまでになってしまった。「行けたら行く」という返事は、とても便利なものだと気付かされた。

今後、誘いには全て「行けたら行く」を使おう。行くときも「行けたら行く」。行かないときも「行けたら行く」。行かないことのほうが多いので、これもこれで人望がマイナスになりそうだ。なにか便利な言葉はないのだろうか……。

（編集：ノオト ）