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夏至に至る数週間——光の頂きと、その向こう側

昼が一番長く、夜が一番短い。それが夏至です。いつの間にか遅くなった夕暮れに、ある日突然気づき、季節の進みに感じ入る。誰しもそんな瞬間があるでしょう。

不思議なことに、昼が一番長いとなんだか得をしたような気分になる。ついつい寄り道して、外にいる時間も長くなる。夕方の六時でもまだ明るい——その事実が、なぜか心を軽くするのです。

しかし、その悦びは同時に、ある切なさを内包しています。太陽が頂点を迎えたということは、これから季節は冬至へと向かう道へと転じるということ。

12月の冬至を想うにはまだ気が早く遠い道のりではあるものの、太陽は少しずつ、少しずつ高度を下げていく。地上ではこれからが夏本番というのに、すでに天上のピークは過ぎ去ってしまう。

もう昼が短くなっていくなんて、なんとなく腑に落ちません。ピークを越えるのが嫌すぎます。この「夏至に至るまでの数週間」が永遠に続けばいい——毎年のようにそう願ってしまいます。

それでも、日本の夏至は梅雨の真っ最中。季節は少し足踏みをし、このあいまいな梅雨空のもやもや感の中で暮らすうちに、割り切れない気持ちもいつしか消えていきます。

古代中国から伝わる陰陽の考え方では、夏至は陰と陽がぶつかり合う不安定な時期。この節目には悪いものや災いなどを引き寄せやすいから、それを避けるための邪気払いや呪いがさまざまに見られます。

日本では夏至のことを「チュウ」と呼び、半夏生と合わせて田植えの時の目処とした地域がありました。

夏至に限定した行事や習わしは多くはないけれど、大切な田植えの前、あるいはお盆を迎える前に心身を整え、清める類の習わしが並びます。

一年の半分にあたる6月は、過ぎた半年を振り返り、やってくる新しい半年に備える——そんな役割の見えてくる月です。

一方、ヨーロッパの国々では夏至に盛大で明るい火祭りが行われます。北欧の人々もまた、夏至のピークを越える哀しさを知っているのでしょう。彼らの夏至と冬至は極端で、夏至を過ぎると鬱になる人が急増するそうです。

それを知る彼らは盛大に飲めや食えやと、その哀しさをいっとき忘れるのです。そう、『ミッドサマー』という映画も公開されていました。

観ていないけれど、あの異様に明るい夏至の夜の不気味さは、まさにこの二面性を描いていたのでしょう。

その昔、深夜ドラマで岩井俊二が『夏至物語』を撮ったそうです。「オムレツ」の前、91年頃の作品です。そこには海砂利水魚の上田が出ていた。このことを知っている人は少ないでしょう。それでも、夏至はこうして個人の記憶にも刻まれていくのです。

そして古代の遺跡もまた、夏至の太陽を祝ってきました。アステカ、神々の都テオティワカンではピラミッドに向かって一直線に日が落ちる。チチェン・イッツァでは蛇が影を落とし、ストーンヘンジでは昇る日がヒールストーンと祭壇を結びます。

日本でもいわゆる「レイライン」、太陽の通る軌道とともに鹿島神宮から高千穂を結ぶ一筋の線で、古代の人々は夏至を祝ったのです。別に日本に限らず、「北半球」ならほぼ同日に夏至を迎える。その意味では、じつに国際的な日なのですね。

そういえば、シェイクスピアの『真夏の夜の夢』も、メンデルスゾーンの序曲も、今この瞬間に頭に浮かびます。
妖精たちが躍る不思議な一夜——夏至の夜は、現実と幻想の境界が曖昧になる。あのいたずら好きのパックのように、今年の夏至も何かをひっくり返してしまうのでしょうか。

南極ではその逆で、なんと1ミリも太陽を拝めない日となる。もっとも太陽の下にありながら、同時にサウダージ(郷愁)を感じる——それが夏至という日です。今年は、6月21日に迎えました。

今日くらいがずっと続いてください。そう願わずにはいられないのですが、それでもこの日が来て、過ぎていくからこそ、私たちは季節の移ろいを感じ、生きている実感を持つのかもしれません。

陽は極み されど影あり 夏の至り
テオティワカン チチェンの蛇よ ストーンヘンジに
鹿島高千穂 つなぐ光道 パックは笑う


14 件のコメント
1 - 14 / 14
https://www.linderabell.com/entry/koyomi/rise_set/Geshi
実は、日の入りが一番遅い日は、6月末頃なんですよね。
日の出が一番早い日は、6月初旬なんですよね。
地域(緯度)によって異なりますが。

前に調べたスレ貼っておきます。
https://king.mineo.jp/reports/63029
>>もう昼が短くなっていくなんて、なんとなく腑に落ちません。

昼が短くなっても暑さが増してゆくこの数ヶ月が私には憂いです。

>> さと さん

根室が東京よりも日の入りが遅いなんてビックリです

(AIの回答)根室は東京よりも東に位置するため単純な経度差では日の出も日の入りも早くなるはずですが、夏至の時期は北寄りの早い時間に太陽が昇り、日の入りも遅くまで沈まないよう北へ傾いた軌道をとるため、結果として東京と同じ19時頃まで日の入りがずれ込みます。なお、日本で最も日の入りが遅いのはさらに西にある与那国島などではなく、夏至の時期は北海道(稚内など)の各地となります。
sawa875
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>> 及時雨 さん

暑さと寒さのどちらが耐えがたいかですね。

IMG_0566.jpeg

地軸が傾いているので、夏は太陽が真西から沈むのではなく、太陽が北よりの西の空から沈みます。

ですので上の図のように、日没がいちばん早いのは経度の高い方(東)とは限らず、北側が少し早い斜めになってるんですよね。

だから経度の高い根室より経度の低い東京の方が、日の入りが遅くなるみたいです。

https://www.nao.ac.jp/faq/a0111.html
夏至を迎えた今日この日。

そういえば
「陽極まれば陰となり、陰極まれば陽となる」
というコトバもありますね。

あとしばらくすれば半夏生。
田植えもそろそろ終わりです。
陽から陰に変わっていく自然のリズムに合わせるように
今のうちからカラダにいいものを食べて元気良くお過ごしください。

ちなみに関西では半夏生の時期、タコが有名ですよ。
信じられないかもですが、大阪湾でもタコが獲れます。
「蛸地蔵」というお寺があるくらいタコとの縁が深いのです。

でもタコは食べたいけど、値段がねえ…。( ;∀;)
sawa875
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>> Nul さん

夏至。はれてきました。何となく心騒ぎます。

蛸地蔵・・・かつて難波ー和歌山線の南海の駅にあると聞きましたが、いまはどうなんでしょうか。
sawa875
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>> さと さん

科学的に解明するとそうなるのでしょうね。なかなか面白いです。
古代の人も意識していたのでしょうか。
> 田植えの時の目処とした地域がありました。

ビオディナミ農法と似ていますね。
この農法だから美味い🍷になるなどとは、全く思っていませんが、信者さんは少なくありません。
私はこれを、標準化とSDGsの一手法とみることで、納得できないけれど無理に納得しています💦
https://ja.wikipedia.org/wiki/バイオダイナミック農法
sawa875
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>> p928gts さん

シュタイナー教育のシュタイナーに何となく考えが似ていると思いました。同一人物なのですね。

一時期はこの教育がベストと思いましたが、難解な神秘的ともいえる思想が教育の役に立つのかなとは思います。

>> sawa875 さん

>蛸地蔵駅

さすがよくご存知ですね。
南海本線・蛸地蔵駅は今でも昔ながらの風情を残しつつ現存し利用されています。
詳しいサイトがあったのでご紹介。

<大阪文化財ナビ>
https://osaka-bunkazainavi.org/bunkazai/蛸地蔵駅

>> sawa875 さん

猛暑も酷寒も耐え難いですね。
sawa875
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>> 及時雨 さん

ああ!確かに…
sawa875
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>> Nul さん

関空に行く際に、見かけたような記憶があります。大阪だから、たこに関係があるのかなと。
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