「暗黙の債務」と年金積立金 追記あり 高市総裁の純債務論の考察
高市次期?総理が主張する「総債務から資産を差し引けばよい」という考え方が注目を集めています。それについて投稿しました。
https://king.mineo.jp/reports/321292
しかし、資産の中に年金積立金などを含めることには重大な問題があるという点をもう少し説明してみます。
なお、政府のいう資産、負債の概念が、一般で使われる概念と微妙に違うので、誤解を招くかもしれません。
公的年金制度が抱える「暗黙の債務」の存在を踏まえれば、この議論は財政の実態を過小評価する危険性をはらんでいます。
年金積立金は政府の「純資産」ではありません
年金積立金は、将来の年金給付のために現役世代が拠出した保険料を原資として形成されたものであり、政府が自由に使える資産ではありません。
これは、企業の退職給付引当金と同様に、将来の支払い義務に対応する拘束された資産なのです。したがって、年金積立金を政府の純資産として扱い、総債務から差し引くことは、財政の実態を歪める行為です。
賦課方式で運営される日本の公的年金制度は「暗黙の債務」抱えています。
これは、積立方式であれば存在していたはずの積立金と、実際の積立金との差額として定義されます。
制度発足時に負担を免れた老齢世代への給付分や、将来世代が負担するべき年金給付分が、理論的には「債務」として存在するのです。
厚生労働省の2019年財政検証によれば、この暗黙の債務は1110兆円に達しており、GDP比で約200%に相当します。
これは、政府が公式に発行している国債とは別に、年金制度を通じて将来世代に課している負担であり、実質的には「隠れた国債」とも言えます。
年金にはマクロ経済スライド制度があります。年金額の伸びを物価や賃金の伸びよりも抑えることで、年金財政の均衡を図る仕組みです。
しかし、デフレ下ではこの制度が発動できず、2004年から2019年までの15年間でわずか2回しか発動されませんでした。その結果、暗黙の債務は690兆円から1110兆円へと1.6倍に膨張したのです。
年金制度の構造的問題と制度運用の限界が、将来世代に対する負担を増大させているにもかかわらず、年金積立金を「資産」として総債務から差し引くことは、財政の持続可能性をも過小評価することにつながるのです。
結論としては、年金積立金は財政上の資産から除外すべきなのです。
高市多分次期総理の「総債務から資産を引けばよい」という議論は、財政の健全性を評価する上で一つの視点かもしれません。
しかし、年金積立金を資産に含めることは誤りです。
年金積立金は将来の給付に充てるために拘束された資産であり、暗黙の債務という見えない負債を相さいするものではありません。
追記
理解不足でしたが、現在の年金制度は、賦課方式年金に一部の積立金を保有する「修正賦課方式」なのだそうです。
この投稿の説明をもっと理解するために、やさしい順に列挙すると、
https://www.mhlw.go.jp/nenkinkenshou/manga/05.html
https://www.nikkeicho.or.jp/new_wp/wp-content/uploads/201504nenkin.pdf
https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=4635
を読むとよいでしょう。
また、国の財務書類ガイドブック」32(3. (1) ⑧)における説明では、
(年金支払義務の負債非計上と「公的年金預り金」の負債計上)
公的年金である厚生年金及び国民年金については、・・・企業年金のように積立方式が法定されているものではないことから、企業会計における退職給付の会計基準をそのまま適用することは適当ではないと考えられます。
とされています。つまり、年金積立金は債務ではありません。
追記2
隠れ債務の基本計算式: 隠れ債務 = 完全積立金 − 実際の積立金
完全積立金とは、将来の年金給付の現在価値(PV)
完全積立金 = Σ(B_t / (1 + r)^t)
B_t:年金給付額(年額)、r:割引率、t:給付年数
モデルケース:
前提:年金給付額=年間250万円、給付期間=20年、割引率=1%
PV = 250 × Σ(1 / (1 + 0.01)^t) ≈ 250 × 16.35 = 約4,087万円
加入者数:1,000万人と仮定
完全積立金 = 4,087万円 × 1,000万人 = 約408.7兆円
実際の積立金(仮定):300兆円
隠れ債務 = 408.7兆円 − 300兆円 = 約108.7兆円


高市さんは、積極財政を推し進めるために
国債増発の余地はあるんだよー
と言いたいのでこういう理屈を持ち出したのでしょう。
麻生さんが積極財政派ではないので、どこまで積極財政がやれるのかが注目ですね。
>> 及時雨 さん
大まかに言えばそうですね。>国債増発の余地はあるんだよー
年金債務・・法律上はないですが・・を考えればありえないのですが。
民間ではそう考えます。しかし、国は資産とします。説明したとおりです。
退職給付引当金は、ずばり、俺の積み立てたものを俺が受け取るために預けている金、だから債権と結びついた債務です。
日本の年金の仕組は、積立貯蓄ではない、どちらかというと賦課制なので債権債務の関係が成り立っていない。俺が納めたものを生来俺が受け取るという性質のものではなくて、仕組としては保険と同種のものです。
「みんなで或るリスクに備えて金を出し合ってプールし、そのリスクに当たって困った人にプールした金から給付をする」という保険の仕組にのっかっているものなんですよ。
年金の想定するリスクは、ずばり長寿。長生してしまうと早死にするよりも金がかかってしまいますから、その長生きリスクに備えた保険なんですよ。
この保険を受け取る権利は、債券ではないんですよね。
一応持ち分である以上資本であり、経営主体からすると資産ではあるんです。で、リスクに直面した人に払い出すものは費用であって、債権債務はまた別次元のものなんですよ。
なお、債券と債権を混同しています。
そのひとつ前のコメントでは、 年金積立金全体約126兆円を負債総額としています。負債ではなく、政府の資産です。そう定義されているので、私の独断ではありません。
そのうえで、政府の純資産として総債務から差し引くことはおかしいという説明です。
「暗黙の債務」抱えています。
これは、積立方式であれば存在していたはずの積立金と、実際の積立金との差額として定義されます。
2004年から2019年までの15年間でわずか2回しか発動されませんでした。その結果、暗黙の債務は690兆円から1110兆円へと1.6倍に膨張したのです。
暗黙の債務が増えた理由は厚生年金(13%→18%へ)および国民年金保険料(13000円→17000円)の負担が増えたことが主な理由です。2004年から2017年に保険料がアップしたので、積立方式だった場合、積立額がアップしたことから計算上の暗黙の債務が増えたということです。
また積立方式だと仮定して暗黙の債務を算出されてますが、実際は積立方式でないのに暗黙の債務を算出しても意味がないのではないでしょうか?毎年の年金保険料は年金生活者に支払われているため、現役世代の年金保険料が上ったり給与が増えたら計算上、暗黙の債務が増えますから。
だから2004年から2017年に年金保険料率がアップしたのを、2019年時点で積立方式だと仮定して計算し直したら1100兆円に増えたんじゃないですか?
>> 金の微糖 さん
間違いではありません。暗黙の債務とは、改めて検索した結果によれば、将来支払う年金総額と、現時点で積み立てられている積立金との差額と定義されています。
私が書いた、
将来世代の保険料でまかなうべき将来の給付が、もし積立方式であれば本来積み立てられるべき積立金との差額として存在します。
も同じ意味となります。
現在は賦課方式なので、積立方式と異なり、個人の積立金が直接年金支払いに使われるわけではないため、財政上の債務としては明示されないのです。
このように、積み立て方式では、企業年金にみられるように年金債務の存在は明らかな一方、賦課方式には、このような債務が存在しないようにみえます。
しかし、この見方は正しくないということを書いたのです。
また、暗黙の債務の規模については、少し前の資料ですが、厚生労働省が2019年8月下旬に公表した「2019年財政検証」から計算できます。
財政上の資産、債務と一般で理解されている資産、債務の使い方が微妙に違うのです。
年金財政は複雑なので、理解するのが難しいですね。
>> sawa875 さん
厚生労働省が2019年8月下旬に公表した「2019年財政検証」から計算できます。どんな計算されました?
>> 金の微糖 さん
以下を参照してください。http://www.kazumasaoguro.com/20200111economist.pdf
>> 金の微糖 さん
露骨な表現をすれば、年金支払額を減らせなかったからです。年金支払額は年々増えますから。>> sawa875 さん
読みました。筆者である小黒一正さんが計算してみた数字と書かれてますが、計算式は不明ですね。
04年、09年、17年、19年の各年度で年金保険料収入が増えてるから、積立たとすると積立額が増えるから、小黒さんの書かれている隠れ債務が増えるのは尤もです。
いまの厚生国民年金保険料は年間収入は39兆円くらいに増えますから。
>> sawa875 さん
入れ違いになりました。公的年金の年間収支= 年金給付 – 保険料 – 国庫負担= 56.7兆円 – 39.6兆円 – 13.4兆円
= 赤字額3.7兆円
3.7兆円の赤字を運用益でまかなって黒字だという記事もあります。
GPIF資料↓
https://www.gpif.go.jp/gpif/faq/faq-2020.html
>> 金の微糖 さん
CHAT GPTに聞きました。隠れ債務の理論的定義: 賦課方式 = 完全積立方式 + 暗黙の債務(隠れ債務)
隠れ債務の基本計算式: 隠れ債務 = 完全積立金 − 実際の積立金
完全積立金とは、将来の年金給付の現在価値(PV)であり、以下の式で表されます:
完全積立金 = Σ(B_t / (1 + r)^t)
B_t:年金給付額(年額)、r:割引率、t:給付年数
モデルケース:
前提:年金給付額=年間250万円、給付期間=20年、割引率=1%
PV = 250 × Σ(1 / (1 + 0.01)^t) ≈ 250 × 16.35 = 約4,087万円
加入者数:1,000万人と仮定
完全積立金 = 4,087万円 × 1,000万人 = 約408.7兆円
実際の積立金(仮定):300兆円
隠れ債務 = 408.7兆円 − 300兆円 = 約108.7兆円
この108.7兆円が、制度発足時に給付を受けた世代の分を含む「暗黙の債務」であり、将来世代が負担することになると小黒氏は主張しています。
実際の推計(小黒氏による): ケース3(実質GDP成長率0.4%)では、隠れ債務は約1110兆円、GDP比約200%とされています。
債権も債務も無い、今の老人たちの受け取ってる金の出どころは、その老人たちが若い時分に納めた金ではなく、今の働き手が将来のためと或る意味騙されて徴収される金ですよ。
ネズミ講だから債権も債務も準備金としてのプールも無い。だから、国家のような公機関か特に認められた社団かでもないかぎり、認められない。私的なネズミ講は、認めると経済構造破綻しますよ。いや、賦課式の年金も大概ヤバいんですけどね。
>> sawa875 さん
ありがとうございます。年金給付額250万円は
実際には国民年金で平均67万円、厚生年金で175万円となってます。
250万円を平均給付額とするのが多すぎませんか?
>> 金の微糖 さん
年金はもらっていないので、その感覚がありません。mineoの年金受給者はどれくらいもらっているのでしょうね。中央値はもっと低いのですかね。
モデルケースで夫婦2人で276万円と聞きますが。
>> sawa875 さん
わたしも貰ってないので分かりませんモデルケースの夫婦で276万円なら
1人平均138万円となりますね。
まぁ平均は計算したら出ますが
遅くなったので寝ましょう。
>> sawa875 さん
年金支給額56.7兆円/年金受給者4051万人=139.9万円≒140万円が平均です。一人暮らしだと140万円、夫婦で280万円が平均となります。高齢者世帯は一人暮らしも多いので生活は厳しいでしょうね、単身高齢者世帯に生活保護受給が多いのも頷けます。
いまの年金制度で1人で年金250万円貰うには40年間働いたとして生涯平均年収775万円、総収入で3億1千万の給与所得が必要ですね。厚生年金保険料は会社負担含めて総額5673万円。独身なら250万円を20年間で5000千万円、奥さんが居て40年間専業主婦なら国民年金満額で+80万円とすると330万円、20年間で6600万円ですから。
>> sawa875 さん
20年積立金残高150兆円だったのが24年には260兆円に
先日みた記事では300兆円になり
米国からGPIFの米国資産を売却し、ドル売り円買いにより過度な円安の修正を要望されてるのことでした。
年金積立金は資産運用してるので収益率によりGPIFの予想将来残高も全く異なり、運用収益率が今後平均2%以上なら、年金支払い赤字額を払っても黒字になり増えていきます。
積立金は預り金で負債ともいえますが国庫拠出金が基礎年金部分の1/2つまり年13兆円強あり、これは04年時点だと年金積立金が枯渇する恐れからの拠出金増額でした。しかし現実には04年時87兆円だった積立金が現状約300兆円に増えているため、この20年間で200兆円以上を拠出した国有財産と捉えることもできなくはありません。