米国政治思想の乱立
米国では従来の「保守 vs リベラル」という単純な対立軸では捉えきれない、複雑な状況になっています。左右両陣営の内部で大きな地殻変動が起きています。この結果、米国政治は何も決められなくなるのではと恐れています。
新右派の登場
かつての保守本流(穏健な市場経済と伝統を重んじる層)は、より過激で新しい思想に圧倒されつつあります。その思想をいくつか列挙します。
ポストリベラル右派: 自由主義やグローバリズムがもたらした格差や社会の分断を批判する、新しい右派です。
ナトコン (National Conservatism): 国際協調よりも、自国の文化や伝統、国民の利益を最優先する国家主義的な保守思想です。
オルトライト:極右: 白人などの特定の人種の優位性を主張し、移民や多文化主義に強く反対します。
テック右派: テクノロジーの圧倒的な力によって社会問題を解決できると信じ、既存の政府や規制を軽視する傾向があります。
これらの勢力は、伝統的な保守派が守ってきた「穏健さ」や「エリート主義」を攻撃し、より大衆的で、時には排外的な主張を掲げることで支持を広げています。
「リベラル」の内部対立
一方、リベラル陣営も一枚岩ではありません。新しい左派勢力は、従来のリベラルを「生ぬるい」と批判しています。
批判の対象: 従来のリベラル(中道左派)は、市場経済やグローバリズムと協調的で、結果的に大企業や富裕層(エリート)を利するだけで、人種差別、性差別、貧困といった根本的な構造問題から目をそらしてきた、と見なされています。
新しい左派 (プログレッシブ): 彼らは、これらの構造問題を解決するため、より大胆な政策を要求します。
具体的には、アイデンティティポリティクス(人種やジェンダーなど、特定のアイデンティティを持つ集団の権利を主張する政治)を重視したり、富裕層への課税強化や社会保障の大幅な拡充を掲げる社会主義的な思想を掲げたりします。
このように、現代の政治は左右両陣営が内部からその姿を大きく変え、穏健な中道が空洞化し、より急進的でイデオロギー色の強い思想が影響力を持つ時代へと突入しているのです。
このうち米国新右派がトランプ支持層となっていますが、彼らは一枚岩でありません。互いに反発し合う可能性があります。
その萌芽はマスク氏の行動に現れているように思えます。
いずれ、米国の世論形成は困難となるのではと懸念しています。

