淀川の夜空に咲く儚き美、天神祭の花火

夏の宵、知人宅のベランダから眺める天神祭の花火は、特別なものに思えます。熱気を帯びた大阪の北の街から少し離れた場所で、涼やかな風に吹かれながら花火が上がるのを見る瞬間は、夏の訪れを実感する、かけがえのない風物詩だと感じます。

夜空に打ち上げられるたび、大輪の華がパッと開いては、あっという間に消えていく。その儚くも鮮やかな散り際に、いつも心を奪われます。一瞬の輝きに全てを込めるかのように咲き誇り、そして跡形もなく消え去る。その潔さが美しく思えます。

芥川龍之介の『舞踏会』で、鹿鳴館の夜空にきらめいて消える花火を仏人将校がみて「我々の生（ヴイ）のような花火の事を」とつぶやきます。
ここで描かれた世界のように、鮮烈な印象を残しながらもはかなく消えていく。そのさまにとても感動します。

今年は、花火の一瞬の輝きに特に心を揺さぶられた気がします。早くから暑い日になったにもかかわらず、毎年変わらずに私たちの心に安らぎと感動を与えてくれる花火。そのはかなさの中にこそ、日本の夏が持つ奥深い魅力が凝縮されているのだと、改めて感じました。