チケット交換の話
ローマのテルミニ駅から徒歩10分程のところにローマ歌劇場がある。
ここの最上階(所謂天井桟敷)は立見席となっていて格安でオペラを鑑賞できる。
若者や通とみられる老人が多く服装も普段着で良いが下層階のボックス席や平土間とは行き来できないようになっている。
建物の側面に専用の入り口がある。
立見席のチケットを入手しその入り口付近で待機していると、若い女の子が来てチケットを交換してくれといってきた。
話を聞くと彼氏と一緒にオペラを見る約束だったが彼氏は立見席のチケットを買い彼女はボックス席のチケットを買っていたので一緒に観られない。
それでチケットを交換したいとのことだった。
ボックス席のチケットは10000円はするだろうと思われる、対して立見席の値段は1000円位である。
どう考えても私の方に利がある。
スリ、ひったくり、悪質バーの客引きに出会ったのは全てローマであったことを考えると何か裏があるのではないかと考えたが思いつかない。
チケットを見たが日付も合っており本物のようである。
私のチケットを取り上げるためにわざわざ偽物のチケットを作る時間や技術を持っているとも思えないし、その必然も全くない。
交換することとして「チケットの差額はいかばかり支払えばよろしいか?」と訊いたら、お金はいらないと想像していた通りの返事であった。
その後私は正面玄関から入って舞台を45度の角度で見下ろす3階のボックス席に着いた。
演目はプッチーニの『マノンレスコー』で幕が進むにつれて状況は悪化し終幕では(当時フランスの罪人の流刑地であった)アメリカの荒野で飢えと渇きと寒さの中で絶望的な最期を迎えるというやるせない 悲劇中の悲劇であるが、それでもプッチーニの音楽は甘美で芳醇な香りに満ちていた。
指揮者がタクトを置いた後も場内は余韻を味わうかのように静寂を保っていたが暫くして万雷の拍手が起こった。
カーテンコールでは圧倒的にブラーヴァの方が多かった。
私の中では20年に一度体験できるかどうかの好演だった。
席を譲ってくれた女の子に感謝しつつ日付の変わった真夜中に満ち足りた気分に浸りながらホテルまで帰った。
一度はボックス席で観たいです💓
>> K33 さん
ボックス席はゆったりと観劇できるので感激も一入です。この時のような幸運がない限り私には縁のない場所です。
>> ホットウォーター さん
プッチーニのオペラは「タイトルロール良ければ全て良し」というのが多いですが、この時は他のソリスト、合唱、オーケストラも非の打ち所がないパフォーマンスでしたので今でも鮮明に覚えています。>> blue777 さん
なるほどそういう見方もありますね。
9000円得するか、1000円損するかの話ですからどっちを選ぶか迷うことはないということですね。
勉強?になりました。
>> hijiake さん
もちろん闇雲にOKするのではなく>チケットを見たが日付も合っており本物のようである。
ここまで確認出来れば勝率は高かったと言えるでしょう。
あとはいくら損するかを考えれば1,000円なら騙されても少額であると言えますね。
>> Series7000 さん
そうですね。数十人屯ってる中で私を選んでお声掛けして頂けたのも御仏のお導きだったと思います。
私は他人に悪いことをしたことは一度もありません。
困っている人たちにはそっと手を差し伸べ助けてきました。
いつも誠実な信仰心を持って祭壇に昇りました。
いつも誠実な信仰心を持って祭壇に花を捧げてきましたからね。
ん?
トスカのパクリじゃん
仏様でもねぇーし