真夏の夜の怪列車

2006年8月のある夜、三重県津市のJR名松線。
普段この時間は列車が通らないのに踏切が鳴っている。
不審に思って外に出た住民の目に入った、驚きの光景が！

ライトを点灯せず、車内が真っ暗な1両の列車がゆっくりと進んでくる！
運転席を見ると、運転士がいない！
車内にも誰も乗っていない！
反対側の運転席にも、運転士がいない！
列車のエンジンは止まっている！
「無人列車だ！」

列車は上り坂に差し掛かると今度は後退し、
やじろべえのように行ったり来たり！

これ本当の話です。

JR東海が赤字路線である名松線で、無人無動力運転の実証実験をしたのではありません。

名松線の松阪発最終列車が、終点家城駅に到着し、列車は家城駅夜間滞泊。
この日、列車に手歯止めを装着せずに留置したことに加えて、夜間滞泊中に空気圧が抜けてブレーキが緩んだことから、列車が無人のまま下り坂を走行した事故です。
幸いなことに踏切が降り、車や人との衝突はありませんでした。

地元の新聞では「真夏の夜の怪列車」見出しがついたり、ワイドショーでも放送されました。
この当時の記事を思い出して怪談風に書きました。この頃私は、津市内で勤務してましたので、職場でこの事故は話題になっていたのを覚えてます。

一度だけではありません。
2009年4月、名松線で同様の事故が発生。
中部運輸局からJR東海へ警告書の行政指導がありました。
再発防止策として、家城駅での夜間滞泊をやめて松阪駅まで列車を回送しているようです。

2009年事故の際、朝日新聞記事
https://www.asahi.com/travel/rail/news/NGY200904190014.html