アップル新本社ビルは理想郷かジョブスの墓廟か

円盤のようなアップル新本社ビルが完成しましたが、この工事費が推定50億ドル（約5,500億円）ということです。
https://wired.jp/special/2017/apple-park/

巨額過ぎてピンとこないと思いますが、今話題の新国立競技場が約1,500億円、日本一高いビル阿倍野ハルカスが約1,300億円、複数の建物の集合体である六本木ヒルズが約2,700億円なので、これらを全部まとめて建てられるだけのコストということになります。

デザイン的には、スタンフォード大学のメイン・クワッド（緑の中庭を囲む回廊付きの低層建物群）のイメージから始まり、クローバーを膨らませたような形（上のスケッチのほぼ中央、プロペラ案と書かれている）に収斂していったそうです。

ところが、ジョブズが息子のリード君にこの案を見せたとき、「上から見たら男性の性器みたいに見えるだろうね」と言われたことから急遽変更となり、最終案のリングに至ったということです。

しかし、結果として辿り着いた「円」という完全無欠の形が持つ固さ、融通の効かなさ、全てが同質で均質な空間の繰り返しになりがちなこのデザイン(↑)に対して、「リングのレイアウトは柔軟性に欠ける」という批評もあり、建築評論家は「退化したコクーン」と呼んでいるようです。

グーグルの新本社ビル(↑)などは、「製品の開発状況に合わせて容易に移動できる軽量なブロック状の構造からなる」のに対して、アップルのリングは「未来の労働条件に対応できない時代遅れのモデル」と批判する都市デザインの研究者や、「従来型の建築としては素晴らしい作品だと思うが、テック業界における本社ビルのデザインの潮流とは真逆だ」と言う建築家も多く、前世紀の遺物的な扱われようです。

これに対しフォスターは、「このビルはスティーブ・ジョブズの情熱から生まれたものだ。緑に覆われた豪華な風景の中に美しいオブジェクトが立っているというアイデア。内部には12,000人がいる。まさにユートピアそのもののヴィジョンだ。」と語りますが、それってジョブスの墓廟だという意味にもとれますね。

つまり、現代のピラミッドもしくはタージ・マハール(↑)なのだと…