ブッダのことば 6 破滅
ある時師は、サーヴァッティーのジェータ林〈孤独なる人々に食を給する長者〉の園におられた。その時、一人の容色麗しい神が夜半を過ぎた頃、ジェータ林をくまなく照らして、師のもとに近づいた。師に敬礼して傍に立った。その神は師に詩を以て呼びかけた。
「我らは〈破滅する人〉の事をゴータマにお尋ねします。破滅への門はなんですか?師にそれを聞こうとして我らはここに来たのですが」
師は答えた
「栄える人を識別する事は易く、破滅を識別する事も易い。理法を愛する人は栄え、理法を嫌う人は敗れる」
「よくわかりました。おっしゃる通りです。※
これが第一の破滅です。先生!第二のものを説いてください。
破滅への門は何ですか?※」
「悪い人々を愛し、善い人々を愛する事なく、悪人のならいを楽しむ。これは破滅への門である」
「※第三のものを説いてください。※」
「睡眠の癖あり、集会の癖あり、奮励する事なく、怠りなまけ、怒りっぽいので名だたる人がいる、これは破滅への門である」
「第四のものを説いてください」
「自らは豊かで楽に暮らしてるのに、年老いて衰えた母や父を養わない人がいる、これは破滅への門である」
「第五のものを説いてください」
「バラモンまたは、道の人、または他の、もの乞う人を、嘘をついて騙すならば、これは破滅への門である」
「第六のものを説いてください」
「おびただしい富あり、黄金あり、食物ある人が、一人美味しいものを食べるならば、これは破滅への門である」
「第七のものを説いてください」
「血統を誇り、財産を誇り、また氏姓を誇っていて、しかも己が親戚を軽蔑する人がいる、これは破滅への門である」
「第八のものを説いてください」
「女に溺れ、酒にひたり、賭博に耽り、得るにしたがって得たものをその度ごとに失う人がいる、これは破滅への門である」
「第九のものを説いてください」
「おのが妻に満足せず、遊女に交わり、他人の妻に交わる、これは破滅への門である」
「第十のものを説いてください」
「青春を過ぎた男が、ティンバル果のように盛り上がった乳房のある若い女を誘き入れて、かの女についての嫉妬から夜も眠られない、これは破滅への門である」
「第十一のものを説いてください」
「酒肉に荒み、財を浪費する女、またはこのような男に、実権を託すならば、これは破滅への門である」
「第十二のものを説いてください」
「クシャトリヤ(王族)の家に生まれた人が、財力が少ないのに欲望が大きくて、この世で王位を獲ようと欲するならば、これは破滅への門である
世の中にはこのような破滅のある事を考察して、賢者、優れた人は真理を見て、幸せな世界を体得する。」

