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あの“謎の記号”はナニ？「SDカード」の賢い選び方を聞いた

ITガジェット

2025.10.30 11:00

ライター: 辰井裕紀
ガジェット・ローカルネタ・卓球が好きなライター。過去に番組リサーチャーとして秘密のケンミンSHOWなどを担当。

かつて、数え切れないほどのデータメディアが乱立していた時代がありました。

しかしそれらはほとんど淘汰され、現在主流なのは「SDカード」で、microSDカードも含めればほぼ独占状態です。

それにしても……なぜSDカードが残ったのでしょうか？

そして、漫然とSDカードを使う私たちは、「SDカードを最大限に生かす使い方」を意外とわかっていないのでは？　

その答えを聞くため、データメディアの専門メーカーであり、家電量販店から100円ショップまで、その商品をよく見る磁気研究所さんにお邪魔しました。

前回の取材記事から約2年半ぶりのご登場

同社の顧問品質管理部門掌理の奥川隆生さんと、秋葉原の本社にあるデータメディア専門店・MAGLABショップ店長の大谷和広さんに話を伺いました。

どれを選べばいい？　SDカードの種類

SDカードの種類や選び方を教えてもらえますか。

まず、容量範囲によって規格が4種類に分かれています。

実際に4K動画を扱う場合は128GB以上のSDカードが望ましい

古いガジェットだと「SD or SDHCしか使えない」ものもありますよね……！

はい、形は一緒だけど、それぞれ規格が違うんですよ。下位互換性はあるけど上位互換性はないので、古い規格のSDカードは新しい機器で使えますが、新しい規格のSDカードは古い機器で使えないこともあるわけです。

用途別の種類もいろいろあると聞きます。

スタンダード、高速対応、プロ対応、耐久性に優れたもの、業務向けなどの種類があります。ただし、普通にスマホやカメラで写真を残したいくらいなら、弊社が100円ショップにも卸しているようなスタンダードなもので問題ございません。

DAISOなどで見かけるこのmicroSDカード。スタンダードなタイプは転送速度が控えめで機能がシンプルだが安い

一般的な用途では全然問題はないと思いますし、だいたいのことには使えます。

これはドライブレコーダー・防犯カメラなどに適したモデルですか？

はい、ドラレコなどは繰り返し録画に強いSDカードを使っていただくのがベストです。

繰り返し録画に強くないタイプで、ドラレコなどを使うとどうなるんですか？

酷使されて不具合を起こす可能性が上がります。防犯カメラやドラレコは、いざというときにデータが残っていないとダメなので。

ドライブレコーダーは、エンジンをかけたときに書き込みを始めるので、すごく書き換え回数が多いんです。繰り返し録画に強いタイプは少し高額ですが、ドラレコなどで使うなら絶対おすすめです。

あと、「軍事向け」とか「X線や圧力に耐える」とかのタフなSDカードってありますけど、どう違うんでしょうか？

磁気研究所「SLC採用高耐久 microSDHCカード」の説明の一つ

正直どこまで効果があるかは直接確かめられませんが、本当に会社の大事な資料を残したいとかだったら、使っていいのではないかと思います。

データ復旧ってすごくお金かかりますよね。

弊社（磁気研究所）の場合はデータが読めないSDカードの診断料が1万円、復旧できそうな場合はプラス2～3万円、合計3～4万円ほどです。なお、100％復旧できるわけではありません。

それを支払ってもデータを復旧できる保証はないと。耐久性があるSDカードを使えば、「お守り」にはなるわけですね。

SDカードに書いてある謎の記述の意味

ちなみに、SDカードといえばパッケージに何やらマークがいっぱい書いてあるのが気になるんですが……

手始めに、この「視力検査みたいなマークに『10』が入ったもの」って何でしょうか？

最低転送速度を表す「SDスピードクラス」です。C2、C4、C6、C10とあって、例えばC2 なら2MB/秒以上、C10は10MB/秒以上の速度になります。最近の製品では「C10」が多いですが、C10だと写真撮影に加え、フルHD動画などにも使えます。先ほど言ったスタンダードなタイプにも「C10」はあります。

ごく一般的な使い方なら十分なわけですね。あと、この「鍋みたいなものに『1』が入った記号」ってなんですか？

こちらも最低転送速度を表す「UHSスピードクラス」です。これは「U1」という表記になりますね。U1が10MB/秒以上、U3が30MB/秒以上の速度で、この2種類です。U3にもなると、高速連写や4K動画撮影が可能になりますよ。4K動画でもカクつかずになめらかな動画が撮れます。

さらに、この「V30」というのは何ですか？

こちらも、最低転送速度を表す「ビデオスピードクラス」です。映像用の規格ですね。V6、V10、V30、V60、V90と5種類あって、V30は30MB/秒以上（4K動画向け）、V90は90MB/秒以上（8K動画向け）になります。

あと、この「Ⅰ」は何ですか？　「Ⅱ」もあった気がします。

「バスインターフェース規格」です。SDカードと機器間の転送速度の規格で、これは「UHS-Ⅰ」の意味です。「UHS-Ⅱ」からプロ仕様ですね。

SDカードってUHS-Ⅰは裏の金の接点が1列なんですが、UHS-Ⅱ以上は2列になるんですよ。

左がUHS-Ⅰで右がUHS-Ⅱ[https://commons.wikimedia.org/wiki/File:SD_cards,_classic_and_UHS-II_connector.jpg?uselang=ja （photo by RaphAstronome）]

左がUHS-Ⅰで右がUHS-Ⅱ（photo by RaphAstronome）

本当だ！　あと、A1とA2があるのも気になりますね？

これは最低処理速度を表す「アプリケーションパフォーマンスクラス」と言って、スマホのアプリなどをどれだけ快適に動かせるかというランクですね。

A1は読込速度1500 IOPS以上、書込速度500 IOPS以上。A2は読込速度4000 IOPS、書込速度2000 IOPS以上。数字が高いほど速度も上がる

スマホゲームでも違いが出ますか？

例えばネットゲームでも、A1よりA2の方がなめらかに動作して、読み込みが速いんです。常に通信しながらやるゲームだと、安定してゲームができます。ロード時間が普通5秒かかるのが1秒で済むようなイメージです。A2に対応した機器に限りますが。

ゲーマーにとってはA2の方がいいわけですね。

はい。モンスターハンターとかも、モンスターを追いかけてマップが変わるときなどの読み込み時間が短くなります。あと、メディアを扱う端末の性能でも変わるはずです。microSDカードに対応するAndroid端末でもマシンパワーはピンキリですから。ゲーミングスマホだと、かなりの性能を発揮できます。

microSDカードの意外な弱点

小回りの利くmicroSDカードの方が世界的に売れていると聞きますが、SDカードにメリットはあるんですか？

SDカードの方が強度的には圧倒的に壊れにくいです。あの大きなサイズだと、たわみとかに強いので。

あとmicroSDカードは端子も面積も小さく、接触不良が多くて。

確かに読みづらくなるときがありますね。

microSDは薄くて湾曲しやすく、接点につけられずに認識できなくなることもあります。薄いから、人間の目で見てもわからないレベルで曲がっていることもあります。

まっすぐ入れずに、ずれてスロットに入れたときもダメージがありますよ。

そんなに？　「アダプターがあれば、どっちでも使える」と思ってmicroSDカードを買うことも多いですが、SDカードの方が衝撃に強いならそちらを買おうかな？

SDカードスロットしか使わないのなら、SDカードをおすすめします。ただしmicroSDのみ対応している機器も多いので、使い回すならmicroSDカードですね。

SDカード使用時・購入時にこれだけは気をつけろ！

SDカードを使う上での注意点やポイントなどはありますか？

まず、新品のSDカードの使用機器に合わせて「フォーマット（初期化）」してください。互換性と安定性が向上します。

やっぱりあの「フォーマット」ってやっておいた方がいいんですね……！（注：初期化するとデータが消えてしまうので、最初にやるのが鉄則）

あとはホコリのあるところでの使用は、なるべく避けてください。機械にメディアを差すときにホコリが入ると機械が壊れます。

僕の部屋、結構散らかってるんで掃除しなきゃ……！

目に見えないホコリなどを巻き込んで、接点からエラーが出て、カメラとかが壊れる可能性もあるんですよ。

ニセモノSDカードを買わないために

磁気研究所のサイトに「弊社製品の模倣品・転売品に対するご注意」というページがありますが、偽物のSDカードを買わないためにできる買い方は何ですか？

異常に安いものはNGですね。あとは「バルク品」に気をつけること。

その「バルク品」ってよく聞くんですけど、なんですか？

パッケージのない、ケースに入っているだけの商品です。名のあるメーカーが直販している場合は大丈夫ですが、あやしい店が売っているバルク品は粗悪なものも多く要注意です。

磁気研究所のMAGLABショップでもバルク品はある。製造元が出すバルク品は安心

あと、SDカードの中にこっそりmicroSDカードが入っているケースもあります。SDカードより、microSDカードの方が安いので、そうするわけです。中を割ってみると初めてわかります。

質の悪いmicroSDカードを入れて、無理やりSDカードとして高く売るんです。

何ともダークな世界。

あと、Amazonなどであやしい店が販売しているものは、有名メーカーの名前が書かれていても、実は見た目だけ似せた粗悪なコピー品かもしれません。有名メーカーが商品として扱えずに処分したものを、どこかで安く買って出している可能性もあります。

くわしくない人は大手家電量販店とかで買ったほうが無難ですね……！

はい、ちゃんとしたパッケージのものを、ちゃんとしたところで買ってください。

なぜSDカードだけが残ったのか

他のデータメディアが消えていったなか、SDカードはなぜ生き残ったんですか？

まず90年代に「コンパクトフラッシュ」などが出てきて、容量も大きくなって、書き換えやアクセスも容易になったんですが、さらに小さくなったのが「SDカード」だったんです。

左がコンパクトフラッシュで、右がメモリースティック

コンパクトフラッシュは、今から考えると大きかったですね。

はい。逆にSDカードはコンパクトで、対衝撃性があり、形状が変わらないとかでいろいろ優れていて、みんな飛びついたわけですね。

あと、たくさんのメーカーがSDカードを出していましたよね？

販売・流通に多くの取り扱いメーカーが参入しました。開発はパナソニック、サンディスク、東芝の3社が行い、さらに仕様などの情報を公開する「SDアソシエーション」という組織によって、たくさんの企業がSDカード規格を採用しやすくなりました。

開発から普及まで、いろいろな企業が参加できる体制が整っていたんですね！　他にも「メモリースティック」などがありましたけど、なぜ遅れを取ったんですか？

メモリースティック（ソニー）やxDピクチャーカード（富士フイルム／オリンパス）などは、逆に他のメーカーへの採用が広がっていかなかったんです。

たしかに、メモリースティックをソニーの機器以外で使った覚えはありませんでしたね……！

ただ、メモリースティックやコンパクトフラッシュなどは少しは残っています。メモリースティックはソニーのゲーム機で使えたのである程度普及しましたし、コンパクトフラッシュも昔のカメラの需要などで現存します。

そうなると、一番売れているデータメディアは、やはりSDカードですか？

繰り返しで使えるデータメディアとしては、SDカードは圧倒的なシェアです。ハイエンドカメラに使われるCFexpressカードなどを除き、今はもうそれしかないくらいです。

SDカードの時代は……「続く」？

今後もSDカードの時代は続くと思われますか。

続くと思います。唯一の対抗馬であるクラウドストレージに少しシェアを取られるとは思いますが、大容量化の技術向上で10TBのカードなども当たり前になるとみられますし、機器には基本的には物理的なストレージは必要なので。

ストレージにデータを上げるとしても、カメラの中にあるのはSDカードですから。カメラなどが劇的に進化して、撮った写真をすぐクラウドに上げられるようになったら、カードは廃れてくると思うんですけど、その可能性はほぼありません。

さらに、「SDUC」という次世代規格のSDカードができれば、128TBまでデータが入ります。

そこまでいったら、クラウドストレージを使わない選択も出てきますね。サブスクは支払いが積み重なりがちだし……！

あとは基本的にSDカードって壊れますから。何十年も安全に保存できるものではないので。ぜひとも大事なデータはハードディスクやブルーレイディスクなど、他の手段でバックアップしてください。

おそらくしばらくは残るということで……安心してSDカードを買いますね！

編集：ノオト

どれを選べばいい？ SDカードの種類