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10円分の通話で、親に感謝の気持ちを伝えられるのか?

10円分の通話で、親に感謝の気持ちを伝えられるのか?

たかや
ライター: たかや
1993年生まれ。ライター。記事の撮影はスマホのカメラを使うことが多いので、スマホがないと生きていけない。

ライターのたかやです。

誰もがスマホを所持する現代では、公衆電話を使う機会は滅多にありません。しかし、通信障害などでスマホが使えなくなった場合、公衆電話が助けとなるはず。

しかしそんなとき、もし手元に10円玉が1枚しかなかったら……?

僕たちは常日頃から「公衆電話の短い通話時間の中でも、相手にメッセージを伝え切る練習」をしておく必要があるんじゃないでしょうか。

そこで、こんな企画を考えてみました。

公衆電話10円分の通話で伝えられる、「大切な人への感謝のメッセージ」を考えてみよう!

両親への感謝のメッセージを作ろう

両親です(母は顔出しが恥ずかしいそうなので加工しています)

私事で恐縮ですが、僕の父は今年の夏に60歳を迎え、もう少しで定年退職をします。そして母も昨年、長年勤めた仕事を退職しました。

息子としては、そんな両親に、これまでがんばってくれた感謝の気持ちを伝えたいんですよね。ちょうどいい機会なので、この企画を利用します。

NTT東日本のサイトで調べてみたところ、僕の住んでいる東京から実家のある長野まで発信する場合、10円分の通話時間は8秒(午前8時〜午後7時)。

そして一説によると、人が1分間に話せる文字数はおよそ300字前後なんだとか。

つまり、今回は8秒なので、40文字程度の感謝のメッセージを考えれば、通話時間内に伝え切ることが可能と予測できます。

とは言え、これまでお世話になった両親には、伝えたい気持ちもそれはもうたくさんあります。

たった40文字に収めるのはあまりにも難しい…。

それに、欲を言えば、ちゃんと両親の心にも響かせたい…!

コピーライターにアドバイスをもらおう

そこで、ひらめきました。コピーライターにアドバイスをもらえばいいんじゃ…?

コピーライターといえば「短い文字数で、相手の心に響くフレーズを考えるプロ」。

つまり、コピーライターの方に、メッセージを作成する上でのアドバイスを聞けば、解決への道筋が見えるかもしれません! そこで……

コピーライター・土田さんの登場です。

土田 充康(つちだ・みつやす)
コピーライター/プランナー
長崎県出身。大学で材料科学科を専攻。卒業後デジタルエージェンシーを経て、コピーライター事務所「コトバド」を立ち上げ、フリーのコピーライターとして活動。“伝えたい”を抱いているすべての方々の手助けをすべく、広告やブランディングのコミュニケーションを通じて、さまざまなモノやコトに対する企画や制作を提案している。
「コトバド」HP:http://cotobad.jp/
Twitter:https://twitter.com/mitsuiroism

たかや
今日はよろしくお願いします!
土田
よろしくお願いします!
たかや
今回、土田さんにお声がけしてもよかったのでしょうか…?
土田
どうしてですか?
たかや
僕のような素人が想像する「コピー」って、街中の看板やポスターに書かれてるメッセージとかなんですよ。
土田
たしかに、多くの方がイメージするのは、そういったものかもしれません。
たかや
今回のような特定の相手(両親)だけに伝えるメッセージって、「コピー」とは離れてますか…?
土田
そんなことはないですよ! コピーの基本って、「誰に(=ターゲット)」に「どんな想いを伝えるか(=テーマ)」なんですよ。
たかや
じゃあ、今回はターゲットが「両親」で、テーマが「感謝を伝える」と考えてもいいと?
土田
その通りです。広告を考えるときは、「伝えたい相手を1人に絞った方がいい」と言われているんです。つまり、今回はターゲットが「お父さん」「お母さん」とすでに1人ずつに絞られていますよね。むしろ、コピーを作る工程に近しいので、アドバイスできることもあると思います!
たかや
おお、それならよかったです!

父へのメッセージを考えよう

たかやが事前に考えてきた「父への感謝メッセージ案」

たかや
実は、事前にメッセージ案を考えてはみたんですよね。でも、やっぱり素人なので、なんかイマイチで…。
土田
どれもいい線いっていますよ!
土田
たとえばこの2つは、たかやさんとお父さんの関係が気になる文章です。いいですね。
たかや
ひぇ。恐縮です…。
土田
このメッセージにはどんな意味を込められたんですか?

たかや
僕、いま29歳なんですけど、親父が30歳のときに長男である僕が生まれて、つまり「父」になったんですよね。でも、僕はフリーライターで収入も不安定だし、結婚も遠い夢だし…。親父が同じ男としてしっかりしている分、どうしても親父の人生と僕の人生を比較してしまうというか…。
たかや
……すみません、初対面の土田さんに、こんな生々しい話。
土田
いえいえ! そんなことないです。キャッチコピーでもそうなんですが、一番大切なのは「これは絶対に言いたい」を伝えることなんです。
たかや
ほう…。
土田
コピーは「上手い事を言わなければいけない」って思われがちなんですが、そうじゃないんです。別に、ストレートな言い回しでもいい。回りくどくなって、読み手に気持ちが伝わらなかったら本末転倒ですからね。
たかや
たしかに…。これとかいま見返したら「狙いすぎてて、コシャクだな~」って思います。恥ずっ。
土田
もちろん、そういったことも大切ですよ。でも、極論を言えば、コピーは狙いすぎず、自分の感情をそのまま書くだけでもいいんです。

たかや
たしかに、この2つは自分の本音がかなり出てるかも。
土田
ただ、このままだと「ごめん」で終わってしまっているので、ポジティブな方向に持っていきたいですね。
たかや
「親父みたいな大人になれなくてごめん。でも、近い内に六本木のタワマンに引っ越すぜ。センキュ」みたいな感じですかね。
土田
たぶんですが、嘘じゃないですか。
たかや
はい。
土田
無理して大げさなことは書かなくてもいいんです。これはJARO(日本広告審査機構)のCMで言われていたことなんですが、コピーも、「ウソ・大げさ・まぎらわしい」表現は避けた方が気持ちが伝わりやすいんですよね。
たかや
なんかそれ、いろんな表現に通じますね。
土田
たとえば、子どもから近況を教えてくれるだけでも親はうれしいハズ。親を安心させるのも、一つの「感謝」ですからね。「魔女の宅急便」のコピーって有名じゃないですか。
たかや
「おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。」ですね。あのコピー大好きです!
土田
あのコピーも親へ向けたメッセージですが、キキの自立した姿が伝わる一文ですよね。
たかや
なるほど。直接的な感謝のフレーズを使わなくてもいいのか。

土田
あと、コピーで良いフレーズを考える上では「ターゲットがコピーを見るタイミング」を想像することも大事です。
たかや
タイミング?
土田
たとえば、電車の中吊り広告って、ターゲットは20~30代の社会人ですよね。そして、その人たちが広告を見るタイミングは通勤の時間じゃないですか。
たかや
あ~。「月曜から会社行くのダリ~」って憂鬱な気分で通勤している社会人に「そうだ 京都、行こう」みたいなコピーが目に入ったら、心にぶっ刺さりますもんね。
土田
今回の場合に当てはめると、たかやさんのお父さんはもうすぐ定年退職されるんですよね。一つの仕事を最後まで勤めたとき、どんな言葉をかけられたらうれしいのか?を想像すればいいんです。
たかや
なるほど。僕もライターとしてこれまで何回も記事の企画を考えてきましたが、読んだ人のタイミングまで考えたことなかったかも…。普通に勉強になります…!
土田
それに、たかやさんは「ごめん」と負い目を感じているかもしれませんが、お父さんも絶対に応援してくれてるので大丈夫ですよ。
たかや
土田さん、優しすぎませんか…。

母へのメッセージを考えよう

たかやが事前に考えてきた「母への感謝メッセージ案」

たかや
母のほうはどうでしょう?
土田
コレとかいいですね。感謝の言葉って、これからも良好な関係を築くための意思表示でもあるじゃないですか。子どもに頼る親、親のために何かしたい子…そんな親子の日常が浮かんできます。やっぱり情景が浮かぶコピーっていいですよね。
たかや
なるほど。僕、ポカリの「『一本しか売ってなかった』と好きな子に嘘をついた。」ってコピーがめちゃくちゃ好きなんです。あれも甘酸っぱい青春のシーンを想像できます。
土田
やはり、言葉だけで状況を伝えられるのが一番良いコピーですよね。ターゲットの頭の中に情景が浮かんでいる=伝わっているってことですからね。
たかや
なんか今回の話、モノを書く職業の自分としても、だいぶ勉強になる…。
土田
この、「ズレてる連絡」ってどういうことですか?
たかや
うちの母、LINEが毎回、変なんですよ。

たかや
例えば、これは我が家のグループLINEの様子です。母は「毎月~」と言ってますけど。べつに、我が家にそんな習慣はこれまで一度もないし。
土田
楽しそうなお母さんですね。
たかや
それでも僕も一応返信はするんですが…

たかや
いや、なんなの!? 意図が読めん!
土田
すごく楽しそうなお母さんですね。

土田
最後に、大御所のコピーライター・谷山雅計さんがおっしゃっていた、コピーの書き方の工程もお伝えしておきます。

➀散らかす(たくさん書く)
➁選ぶ(伝えたい相手の視点になる)
③磨く(表現や言い回しを考える)


土田
基本的に、コピーライターはこの工程を踏んでいるはずです。ちなみに、初心者の方は、③から始めるそうです。
たかや
うっ…耳が痛い…。コピーに限らず、僕も記事の企画とかはいつも③ばっかやっちゃうかも…。
土田
たかやさんも両親へのメッセージを考える上で、まずはたくさん書いてみると、良い案が浮かんでくるかもしれません。
たかや
なるほど…!
土田
もちろん、たかやさんの中で「これを言いたい」が見つかれば、それを優先してください。
たかや
はい!
土田
何か困ったら、僕にもいつでも相談してくださいね!
たかや
土田さん、マジで良い人すぎません?

たくさん考えてみた

そんなわけで、土田さんから大変タメになるアドバイスをいただけました。土田さんも、まずはたくさん書くのが大事と言っていたので、もう少しメッセージを考えていきます。

もう反射のごとく、思いついたら片っ端から入力していくんですが…。なかなか自分の中で「これだ!」というメッセージが見つかりません。

う~~~~~ん…! なんか違う…!な~~んか、違う…!

土田さんは「本音を伝えるのが大事」と仰っていたけど…。自分の本音を見つけるって、それはそれで結構むずかしい。やっぱり、どうしても「良いことを言わねば」が邪魔してしまうというか…。

母へのメッセージもたくさん考えました。

考えているうちに、自分の「絶対に言いたいこと」を見失ってしまったし、だんだん「感謝のメッセージ」でもなくなってきてるし…。このときの僕、なにがあったんだよ。

そんなこんなで、最終的に……

約500案考えました。

なんていうか…。たぶん、僕が生涯で親へ伝える感謝の言葉、今回で全て出した気がする。

も~~~~~~充分だろうよ!!!

そして約500案の中から、「自分が本当に伝えたいメッセージ」をそれぞれ1つずつ選び、言い回しや語句を微修正し(「言葉を磨く」作業)…

ついに両親への感謝のメッセージが完成しました!

両親に感謝のメッセージを伝えます

いよいよ両親に電話をかけます

まずは父親から

プルプルルルルルルッ……

親父と公衆電話で通話をする。小学生以来です。

約30年前。長男である僕が生まれ、「父」になった親父。

そこから一家の大黒柱として、長として、奮闘してくれた親父。

真面目でしっかり者だからこそ、正直、息子の僕は負い目を感じていました。

いつだって、僕は父の影を追っていました。

親父のようなちゃんとした大人にはまだなれていないけど…。

本当は、親父が還暦を迎える前に、僕も親父に胸を張れるような人間になりたかったけど…。

それでも、父に、この言葉を伝えたい!

ガチャ

親父「はい」

これが、散々悩んだ末の、僕が10円分で父に伝えたいメッセージです。

僕が親父に対して抱える劣等感や、同じ男として抱く尊敬の気持ちを1、2行目で。

そして、3行目の「俺も、頑張るね」に「親父、お仕事頑張ってくれましたね。お疲れ様」の意味を込めました。定年まで働いた人間が言われてうれしい言葉って、やっぱり「頑張ったね」だと思うんですよね。

…いやまぁ、ありふれた言い回しかもしれません。

それでも、父と息子なんだから、ゴチャゴチャ言わずにストレートな言葉が一番なハズ!

まだ少しだけ秒数に余裕もあるはずなので、親父のレスポンスも待ってみます。

果たして、息子が本気で考えたメッセージに、父はなんと応えてくれるんでしょうか。

電話の向こうで大号泣しているかもな。

父の返答や、いかに…!?

親父「……………」

親父「………どうも〜?」

…ブツッ(ここで通話時間終了)

ツー… ツー… ツー… ツー…

どうも〜?

あっコレ、アレだ。その場しのぎで使う「どうも~?」のやつ。

とりあえず、どんな相手だろうと波風立たせない処世術だ。

急いで、ネタバラシ。今度はちゃんとスマホで親父に電話をします。

電話の内容がきちんと伝わっていたか確認したところ、

「言ってることは全部わかった」
「でも、相手が誰なのか分からないうちに通話が終わった」
「それはそれとしてありがとうね」

とのこと。

次に母にかけます

プルルルルルル…

母さん…! 母さん…!

大人になった今でも、直接言うのは恥ずかしいけど…。

お腹を痛めて産んでくれて、本当に感謝してるよ…!!

僕にとっての母の存在は、母親であると同時に、友だちのような存在であり、頼れる相談相手でもあり…。

僕が反抗期のころには、かなり喧嘩もしました。

いつもどこかズレていて、突発的に謎の行動をする母さんだけど…。

そんな性格も、息子としてやっぱり愛おしい。

母「……もしもし?」

これが、悩みに悩んだ末の、母に伝えたいメッセージ…!

仲の良い友だちに送るような、同時に、愛しい母に送るようなメッセージにしました!

ただ、先ほどの父の反応を踏まえると、実の息子といえど、電話越しの相手って結構わからない?

い、いや…!そんなことはない! 信じてる、俺は母さんのこと信じてるから…!

母「………はい?」

ブツッ(ここで通話時間終了)

やっぱ無理か~。

その後、母にも急いでネタバラシしました。

「声だけだと誰だかまったく分からなかった」
「そういう企画なのね」
「ありがとマッチョ」

とのこと。ありがとマッチョて。

まとめ

そんなわけで、公衆電話の短い通話時間内で大切な人にメッセージを送ってみる企画いかがだったでしょうか。

両親ともに一発で伝えることは無理だったんですが…。それでも、両親への感謝の気持ちにここまで向き合えたのは初めてだったのでよかったです。

もちろんスマホのほうが便利に決まっていますが、もしものときに備えての練習という意味でも、皆さんもよかったらやってくださいね。

そして今回協力いただいた、土田さん、ありがとうございました! 取材の後にも、何度もアドバイスをいただたり、本~当に助かりました!

お詫び

実際に電話をかけてみて「8秒って思ってたより長いな」と思ったんですが、8秒は僕の勘違いで、実際は15.5秒でした。

親のスマホに電話をかけたんですが、ケータイへの発信の場合は相手との距離は関係なく、一律15.5秒の通話が可能だそう(公衆電話→固定電話への発信だと8秒)。

そうとわかっていれば、もっと親が号泣するようなメッセージが作れていたのに……!

というわけで、次回は「妹弟への感謝の言葉を考える編」があるかも…!?(ないかも)。

編集:ノオト


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258 件のコメント
209 - 258 / 258
いい企画ですね。
あーー。これはしっかりと号泣できるやつやんー。
すてきな企画ですね!
いますぐ両親に連絡してみます!
色々と考えさせられました。良い企画です。ありがとうございます。
公衆電話使う機会減りすぎてますね
読んだあと 公衆電話探して電話しちゃいました
素敵な企画でした✨
おもしろいですね、
公衆電話なんて何年使ってないだろう…
いい企画ですね。 
最近は通話よりLineで済ましがちですもんね
いい企画ですね!面白いです!
とても面白い企画でした!
退会済みメンバー
退会済みメンバーさん
ビギナー
いいね
いい機会をもてましたね☺
考えに考え抜いた文章に涙が出ました、特にお父様への気持ち。

だったんですが、オチで吹き飛びました"笑

やっぱり情報量って多くても少なくても大変ですね"笑
とてもいい企画で良かったです。今まで感謝の言葉を言ったことがないので考えさせられました。ありがとうございます。
500案も考えたんですね……
とてもいいアイデアですね!
めちゃくちゃ考えててすご!!
確かdocomoだっけ?なら公衆電話からメールも送れたきがする
おもしろかったです🥹
良い企画ですね😌ありがとマッチョ、面白い😊
k
kさん
レギュラー
500案!感謝がすごいです!ご両親に選んだ言葉も素敵でした。8秒って短いんですね…
公衆電話が見つからない(ΦωΦ)
ちょっと涙💧でました
10円では厳しいので 30円で企画して
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