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【プロが解説】iPhone水没時の応急処置と修理ガイド!データ復旧から予防策まで徹底解説
PC・ガジェット・AV機器などの解説や評価を行なうフリーライター。趣味は旅行・キャンプ・登山・海の沖のほうで泳ぐこと。
<目次>
フリーライターの湯浅です。
アウトドアでもスマホを駆使したいので、「濡らさないこと」「濡らしたあとの対処」はいつも気になっています。
とはいえ、うっかり水没させてしまうこともありますよね。
そこで今回は、iPhoneを水没させてしまったらどうすればいいか、スマホ修理のプロである藤山敏彦さんにお話を伺い、その情報をまとめてみました。

| スマホ修理王秋葉原店 店長 藤山敏彦さん これまでに5000台以上のスマホやタブレットなどを修理。さまざまなガジェットの修理を行うスマホのトラブル解決のプロフェッショナル。 |
なお今回は例としてiPhoneについてお聞きしていますが、Androidスマホの水没対策についても同様に考えていいでしょう。
1. iPhoneには防水性能がある!軽い水濡れなら慌てない
| 機種名 | 耐水性能 |
|---|---|
| iPhone 16 / e / Plus / Pro / Pro Max iPhone 15 / Plus / Pro / Pro Max iPhone 14 / Plus / Pro / Pro Max iPhone 13 / mini / Pro / Pro Max iPhone 12 / mini / Pro / Pro Max | IP68等級 (深さ6mまで、最長30分間) |
| iPhone 11 Pro / iPhone 11 Pro Max | IP68等級 (深さ6mまで、最長30分間) |
| iPhone 11(無印) iPhone XS / Max | IP68等級 (深さ4mまで、最長30分間) |
| iPhone 11(無印) iPhone XS / Max | IP68等級 (深さ2mまで、最長30分間) |
| iPhone SE (第2世代/第3世代) iPhone XR iPhone X iPhone 8 / Plus iPhone 7 / Plus | IP67等級 (深さ1mまで、最長30分間) |
Appleによれば、「iPhone 7」以降のiPhoneには防沫・耐水性能があります。その内容をまとめたのが、上記の表です。
ただし「してはいけないこと」として、主に以下のことが挙げられています。
・水泳
・入浴
・シャワーなど流れの強い水をかける
・意図的に水没させる
・「石鹸」「洗剤」「香水」など水以外の液体をかける
例外的に、以下のモデルは、「ソーダ、ビール、コーヒー、紅茶、ジュースなど、一般的な飲み物を誤ってこぼしてしまっても耐性がある」とされています。
iPhone 16 / e / Plus /Pro /Pro Max
iPhone 15 / Plus / Pro / Pro Max
iPhone 14 / Plus / Pro / Pro Max
iPhone 13 / mini / Pro / Pro Max
iPhone 12 / mini / Pro / Pro Max
iPhone SE (第2世代)
iPhone 11 / Pro / Pro Max
iPhone XS / XS Max
iPhone XR
そしてAndroidスマホの場合は、防水であればスペック表に「IPX4」や「IPX8」といった形式で防水性能が示されています。
これはJIS(日本産業規格)で定められた防水規格で、以下のような意味を持っています。
| IPX4 | あらゆる方向からの水の飛沫に対して保護する |
|---|---|
| IPX5 | あらゆる方向からのノズルによる噴流水に対して保護する |
| IPX6 | あらゆる方向からのノズルによる強力な噴流水に対して保護する |
| IPX7 | 水に浸しても影響がないように保護する |
| IPX8 | 潜水状態での使用に対して保護する |

| あくまでも日常的に使用しているスマホのトラブルを取り扱う修理エンジニアとしての意見ですが、上記表の防水性能が、スマホを使用している数年間、維持できるかは疑問に感じています。 実際に修理をご依頼されるお客様の中には、端末が水没したかさえ自覚がないような些細な水濡れで故障しているケースがあります。 購入後1~2年を超えると防水性能を実現しているシール材は劣化している可能性が高いため、過度に信頼することは禁物です。 一方で、小雨の屋外での使用、キッチンでの水はね、洗面台に落としてすぐ拾い上げた場合などの「軽度の飛沫・短時間の濡れ」には一定の安心感があります。そういった場合では正しい初期対応を取り、故障を免れるケースが多いと思います。 |
2. iPhoneが水没したか確認する方法
iPhoneが濡れてしまったとき、iPhoneが無事なのか不安になりますよね。ここでは、プロから聞いたiPhoneが水没してしまっているのか、無事なのか、を確認する方法を紹介します。
iPhoneのSIMスロット内には、「液体浸入インジケータ」があります。このインジケータは濡れると赤くなるため、ここが赤くなっていれば本体内に液体が侵入したことがわかるのです。
「本体内に水が入っている」ことをハッキリ確認できるのは、レンズ部分です。レンズは「スマホの内部を確認できる窓」。レンズを覆うガラスの内側に水滴が付いていたり、そこが曇っていたりしたら、内部に水が入っているということになります。
「電源が入らなくなる」「画面タッチができなくなる」といったことも起こりますが、それは水没以外が原因でも起こることなので、水没時は「液体浸入インジケータ」と「カメラのレンズ」の2点をチェックしてみてください。
3. iPhoneが水没したときに「絶対にやってはいけないこと」
iPhoneを水没させてしまったとき、なんとか回復させる方法はないかって考えますよね。ただし、以下のような行動はやりがちですが、絶対やってはいけません!
■振る
水分を抜こうとして振ってしまいがちですが、それくらいでは抜けないことが多いです。また、振ることでかえって水分が奥に入るリスクもあります。
■ドライヤーをかける
こちらも、風によって水分を奥に押し込んでしまう可能性があります。また、温めることでダメージを与えてしまうリスクも。
■乾燥を試みる
修理へ持っていくまでの間、自然乾燥させるのは仕方ないですが、「自然乾燥させる」「密閉容器に米や乾燥剤と一緒に入れておく」などの方法でiPhoneを復活させようとするのはやめましょう。
外見からでは、内部にどのくらいの水分が入っているのかわかりません。開けてみると中がビショビショになっていることもあります。そのような状態のiPhoneを乾燥させようと数日放置すると、部品の腐食が進むといったリスクが発生するためです。
■SIMトレイを開けて乾燥させる
SIM カードトレイを取り、空気の通り道を増やしても劇的な乾燥効果は得られないでしょう。むしろ、時間だけが経過し、その間に腐食やさび付きが進むリスクが高いため、SIMトレイを開けて乾燥させるのは推奨しません

| 乾燥は日単位でしか進みませんが、腐食・サビ・電食は分~時間で始まります。SIMトレイを開けたままの放置乾燥や、長時間の自然乾燥は、他の故障のきっかけを産むため注意しましょう。 水没してもすぐ修理に出せないような場合、修理に出すまでの間は、せめて「乾燥剤と一緒に密閉容器に入れる」といった対処をしておいてもいいのかもしれません。 |
4. iPhone水没時の応急処置
さまざまな対処方法がありますが、今回はiPhone修理のプロ藤山が「自分ならこうする」という方法を紹介します。
(1)外装の水分を拭き取る
それ以上の浸水を防ぐため、外装の水分を拭き取ります。
(2)バックアップを取る
もしiPhoneが動作している状態なら、すぐにバックアップを取ります。
水没した場合、動作していても次第に動かなくなることもあるため、時間との勝負です。もちろん、普段からバックアップを取っておくのがベストですね。
バックアップが取れたらiPhoneの電源は切っておきましょう。
(3) 乾燥剤と一緒に密閉容器に入れる
前提として、上記で解説した通り、自然乾燥で回復を待つのはおすすめできません。あくまで修理に出すまでの、一時的な対処法として取り入れるといいでしょう。
(4)修理に出す
お話ししたように、水没の影響は遅れてやってくることもあります。そのため、見かけ上は問題なく動作しているようでも、水没させてしまった場合にはなるべく早く修理店に相談したほうがいいでしょう。

| 対処法として「すぐに電源を切る」を推奨している人もいますが、私なら「すぐにバックアップをする」ようにします。 水没直後は動いたけど、その後全く動かなくなった…という事例を見ているので、まずは動くうちに、できることをしておくのがおすすめです。 「突然の出来事でバックアップの方法が分からない」という人は、大切な連絡先や写真だけでもPCに保存したり、メモしておいたりするのがよいかもしれません。 |
5. iPhoneが水没したとき修理代金の相場は?
Appleでは、液体による損傷の修理は「Apple製品1年限定保証」の対象になりません。そのため修理ではなく交換となり、本体価格がそのままかかってしまうこともあります。
ただし「AppleCare+」に加入していれば、12,900円で修理・交換可能です(モデルや地域によって多少変動することがあります)。
修理業者の一例として、今回解説していただいている「スマホ修理王」のWebサイトでiPhone 16が水没した場合の修理代金の目安を調べたところ「9,800円」と表示されました。
これはあくまで簡易シミュレーションであり、最終的な見積もりは異なる場合があるとのことです。
iPhoneの水没について、そのほかに気になることを藤山さんに聞いてみました。
6.1. 防水のiPhoneでも水没する?

| 防水性のあるiPhoneでも、「水没によるトラブル」が発生することはあるのでしょうか? |

| 実は、水没によってトラブルが発生したiPhoneをお持ち込みいただくケースは非常に多いのです。 アウトドアに特化した堅牢さをうたっているAndroidスマホでも、水没によってお持ち込みいただくことがあるくらい、スマホの水没トラブルよくあります。 |
6.2. そもそもどこから水が侵入するのか?

| なぜ、防水性をうたっているiPhoneでも水没トラブルが発生してしまうのでしょうか? |

| 多くの場合は、経年劣化です。iPhoneに限らずスマホの防水性能は、買った日から次第に劣化していくと考えてください。 特に、落下などの衝撃を与えて外装が緩んでいたり、画面が割れていたりするような場合には防水性能が大きく低下してしまいます。 |
6.3. 水没したiPhoneのデータ復旧は可能?

| 水没させてしまったiPhoneから、データを取り出すことはできるのでしょうか? |

| 水没させてしまったiPhoneをアップルストアやApple正規サービスプロバイダに持ち込んだ場合、同モデルの新品へと交換されることがほとんどです。そうなると、元のiPhoneのデータは取り出せません。 私達のような修理店では、まず端末の状態を見せていただいたうえで、「とりあえずデータを取り出すまでの間の延命」といった意味での修理をさせていただけることもあります。 |
6.4. 防水保護カバーに意味はある?

| iPhoneの端子を塞ぐカバー(キャップ)や、外装に貼って防水性能を向上させるという「耐水シール」などは、意味はあるのでしょうか。 |

| 効果があることもあるのでしょうが、先にお話ししたように水の侵入する経路はさまざまですから、一部を覆っても他から入ってくることがあり、そうなると入った水が抜けにくくなるというデメリットもあります。 防水ケースでいうと、格安の防水ケースをつけてプールに入り、結局水没させてしまったという事例もあったので注意が必要です。 |
6.5. 水抜きができる音源って意味ある?

| YouTubeやApp Storeで、「水抜きアプリ」というものがありますが、実際の効果はどうですか? |

| いわゆる水抜きアプリは「音を出した振動によって水分を抜く」という説明になっています。 これは「振る」のと同様、振動によって水分がさらに奥に移動するリスクもあるのでおすすめできません。 |
7. まとめ
私は
・防水性のあるiPhoneなら水没させても大丈夫
・iPhone内に水が入ってしまったら、すぐに電源を切って乾燥を試みる
と考えていました。しかし今回のお話では
・防水性のあるiPhoneでも水没トラブルは発生する
・iPhone内に水が入ってしまったら、すぐに電源を切るのではなくバックアップし、放置せず修理に出す
ということでした。
電源のオン・オフについては、内部に水が入った状態で使用を続けると、ショートなどによって本体の状態がより悪化する可能性があります。しかしそのリスクを冒したとしても、どうしても取り出しておきたいデータがある場合にはバックアップ作業のほうを優先したほうがいいこともあるのかもしれません。
乾燥作業についても、内部の水濡れ状況がわからない(いつ乾ききるかわからない)まま待つことで、トラブルが進行してしまうというデメリットはありますね。
それを考えると、私も水没したらすぐ「点検」の意味でも修理に出すようにしようと思いました。
今回のテーマ「iPhoneの水没」は、自分が今まで思っていたのとは違う、というかむしろ真逆のお話も多く、興味深かったです。

| iPhoneに限らずスマホは、あまり「防水性」を信じすぎないようにしましょう。 水をかけたり水に漬けたりしないほうがいいのはもちろんのこと、私は濡れた手で触ることも避けるようにしています。 特に長く使っている端末や衝撃を加えたことのある端末は水に漬けないほうがいいでしょう。そして万一水に漬けてしまったら、一見なにも起きていないようでも、いったん修理に出すことをおすすめします。 |
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