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未来のスマホはどうなる?映画ライターが読み解く、名作SFに登場する“トンデモ“と”リアル“な携帯電話

未来のスマホはどうなる?映画ライターが読み解く、名作SFに登場する“トンデモ“と”リアル“な携帯電話

大川竜弥
ライター: 大川竜弥
自称・日本一インターネットで顔写真が使われているフリー素材モデル。神奈川県横浜市出身。ショップの店員や、Web制作会社でのディレクションとライティング、ライブハウスの店長、ザ・グレート・サスケさんのマネージャーなどの経験を経て、2012年からフリー素材モデルとして活動。日清・カップヌードルの広告モデルをはじめとして、テレビCM、Web広告等で活躍している。

はじめまして! 自称・日本一インターネットで顔写真が使われているフリー素材モデルの大川竜弥です。

幼少期からSF映画に親しみ、特に『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』に強い影響を受けた43歳。自宅の固定電話からはじまり、学生時代にはポケットベルやPHS、携帯電話を使用。大人になってからはiPhone 3GSを手にし、通信機器の進化をリアルタイムで体験してきた世代です。

今やスマートフォンは当たり前の存在となり、私たちの生活やコミュニケーションも大きく変わりました。では、これから先の携帯電話はどうなるのでしょうか?

今回は、SF映画に登場する「未来の携帯電話」をヒントに、これから実現しそうな携帯電話を想像してみることにしました!

SF映画は未来をどこまで当てられるか。“空飛ぶ車”と“FAX解雇”の違和感

お話を伺ったのは、ガジェットをこよなく愛する映画ライターの永井勇成(ゆうせい)さんです。

永井勇成(ゆうせい)
映画ライター

中高時代は毎日レンタルビデオ店に通い、大学時代はTSUTAYAと映画館でアルバイト。家電量販店に就職してガジェットに夢中になり、その後、映画館へ転職。iPhone修理店を営み、映画情報フリーマガジンでは編集長も務めた。映画とテクノロジーの狭間で揺れながら、今は会社員として生きている。

Web https://note.com/yousay
X https://x.com/wm_yousay

大川
今回のテーマは、SF映画に登場する「未来の携帯電話」をヒントに、リアルに実現しそうな携帯電話を想像する、というものです。僕、『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』が大好きなんです。空飛ぶ車やホバーボード、自動で紐が締まるシューズに憧れていまして……。ああいう未来が訪れたら、携帯電話ってどう進化するのかなって。

左から、空飛ぶ車、ホバーボード、自動で紐が締まるシューズ

ゆうせい
それ、実はかなり難しいテーマなんですよ。
大川
えっ、そうなんですか?
ゆうせい
あの映画が公開されたのは1987年ですが、作品で描かれたのは何年かご存じですか?
大川
2112年……とか?
ゆうせい
それ、ドラえもんの製造年ですね(笑)。正解は2015年。つまり、今より10年前を想像して描いた作品なんです。
大川
現実では、ホバーボードも自動で紐が締まるシューズも、まだ実現していないですね。
ゆうせい
自動で紐が締まるシューズはナイキが2015年に発表して、2016年にオークション形式で販売されましたが、一般化はしていません。
大川
知りませんでした! そんな前に出てたんですね。ぜひ一般販売してほしいです。

89足のうち84足は抽選販売、残りの5足は公式オークション形式で販売

ゆうせい
『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』も、実は“トンデモ描写”が結構多いんです。たとえば、未来のカフェのシーン。天井から吊るされた分厚いブラウン管テレビが出てきます。
大川
空飛ぶ車があるのに、テレビはブラウン管……違和感ありますね。

画面いっぱいに表示される「YOU’RE FIRED!!」の文字は、インパクト抜群

ゆうせい
あれは「レトロカフェ」という設定なので、わざとブラウン管テレビを使った可能性もありますが、極めつけは、マイケル・J・フォックス演じる主人公マーティのお父さんがテレビ電話で上司からクビを言い渡される場面。未来感はあるんですが、通知はFAXで紙が出てくるんですよ。
大川
「イトウ・T・フジツウ」っていう名前の上司でしたよね(笑)。
ゆうせい
そうそう(笑)。空飛ぶ車の時代にFAXでクビ通知、というギャップこそが、“トンデモ”たるゆえんなんです。
大川
なるほど、技術の描写にかなりのズレがありますね。

ゆうせい
1989年当時の人々の憧れから空を飛ぶ車やホバーボードが想像された。でも、約30年経った今も、それらは広く実用化されていません。
大川
今年の万博で空飛ぶクルマは披露されましたけど、できれば『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズでお馴染みのデロリアン風にしてほしかった!
ゆうせい
ですよね(笑)。一方で、「紙がなくなってペーパーレスが当たり前になる」なんて未来像は、当時誰も想像していませんでした。つまり、“何が想像できて、何が想像できなかったか”こそが、名作SF映画が“トンデモ”に見えてしまう理由なんです。

未来を描いたはずなのに? 名作SF映画に登場するトンデモ携帯電話たち

大川
テクノロジーの進化が人の発想を追い越して、名作SF映画の描写が“トンデモ”になってしまうんですね。
ゆうせい
そうなんです。でも、それも名作SFを見る楽しみのひとつ。描写のズレを探すのも面白いですよ。
大川
現代の携帯電話を忠実に描いた作品って、あるんですか?
ゆうせい
90年代から2001年までに公開された名作SF映画には、ほとんどありません。むしろ“トンデモ携帯電話”が登場する作品として、私は『デモリションマン』『フィフス・エレメント』『ザ・ワン』を挙げたいですね。

ゆうせいさんが、各作品に登場するトンデモ携帯電話を描いてくれました

大川
『デモリションマン』は、1993年に公開されたシルヴェスター・スタローンとウェズリー・スナイプスが共演する名作!iPad風のタブレットや自動車の自動運転もあって、技術の予見力はあるように見えます。
ゆうせい
舞台は2032年。たしかに先見性はありますが、携帯電話は分厚くてアナログ感たっぷり。タブレットは予測できているのに、なぜか携帯電話だけ大型のまま。謎です。
大川
機会があればスタローンに聞いてみたいですね。
ゆうせい
しかも、交通違反などの切符は紙のまま! この時代でもまだペーパーレス社会は想定外だったんですよ。

ゆうせい
私がもっとも好きな“トンデモ携帯電話”は、1997年に公開された『フィフス・エレメント』。舞台は2263年で、人体再生宇宙戦争が描かれてるのに、携帯電話だけ固定電話の子機そのもの。しかも、極太ストローみたいなアンテナ付き(笑)。
大川
携帯電話が一般的に普及したのは、90年代後半からと言われていますし……。当時の時点で未来の携帯電話を想像すると、ああいう形になるのも仕方ないかもしれませんね。
現代の携帯電話であるスマートフォンは、これほどまでに薄型化・小型化しているのに……

大川
恥ずかしながら『ザ・ワン』は未見です。どんな作品なんですか?
ゆうせい
2001年公開。ジェット・リーとジェイソン・ステイサムが初共演したSFアクションで、パラレルワールド(多次元宇宙)、今で言うマルチバースを舞台に“ジェット・リーVSジェット・リー”が展開される、中年男性歓喜の一作です。
大川
ジャッキー・チェンが双子設定で共闘する『ツイン・ドラゴン』っぽくて熱いですね!

ゆうせい
舞台設定は曖昧ですが、異次元転送や多次元宇宙捜査局など、未来感はたっぷり。ただ、携帯電話は2つの画面が飛び出すギミックこそあるものの、入力はポチポチ押すボタン式。タッチパネルの概念はまだ存在していなかったようです。
大川
2001年公開の映画でもボタン式……。やっぱり、未来を当てるのは難しいですね。

トンデモSFからリアルSFへ。未来描写に起きた変化

大川
スマートフォンは年々、薄型化・小型化が進んでいるのに、なぜSF映画は携帯電話の未来予想を外してしまったんでしょう?
ゆうせい
紹介した3本は、いずれも90年代から2001年までに公開された作品。当時は薄型テレビの普及前で、“画面が薄くなる未来”自体が想像しづらかったんだと思います。
大川
なるほど。iPhone 3Gが登場したのは2008年(日本では翌2009年にiPhone 3GSが登場)ですし、今のスマートフォンのような形状はまだ思いつかなかったのかもしれませんね。
ゆうせい
当時は、「メカっぽさ=未来感」という感覚も強かったと思います。進化には2種類あって、車が空を飛ぶような「機能追加型」と、スマートフォンのように形そのものが変わる「変化型」。後者の方が想像しにくいんです。
大川
言われてみると、車の見た目って、昔からそんなに変わってないですもんね。

ゆうせい
だからこそ、名作SF映画でもリアルな未来を描くのは難しい。私の中では、そうした“トンデモSF映画”の終焉が『ザ・ワン』で、“リアルSF”の幕開けが、2002年公開の『マイノリティ・リポート』です。
大川
『ザ・ワン』の公開が2001年でしたから、たった1年で大きな転換があったんですね。

『マイノリティ・リポート』のトム・クルーズを再現する、ゆうせいさん

ゆうせい
『マイノリティ・リポート』では、主演のトム・クルーズが、空間に浮かぶ画面を指で操作する描写が出てきます。今のARやVRに通じるもので、これ以降、SF映画はより現実味のある未来像を描くようになっていきました。
大川
技術と想像力のギャップが、ようやく埋まってきたということですか。
ゆうせい
そうですね。ただ、体感ですが、2000年代後半以降はSF映画そのものが減ってきた印象もあります。理由はおそらく、テクノロジーの進化が速すぎて、映画公開時には“もう現実”になってしまうからじゃないでしょうか。
大川
なるほど……。技術の進化は嬉しいけれど、SF映画ファンとしては、少し寂しいですね。

未来の携帯電話は劇的に変わる? それとも変わらない? 『アイアンマン2』『レディ・プレイヤー1』が示したリアルな未来像

ゆうせい
近年は『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』のように未来そのものを描くより、現実の延長線に未来のテクノロジーが登場するSF映画が主流です。その中で、比較的リアルな未来の携帯電話が描かれていると思うのが2010年公開の『アイアンマン2』。
大川
マーベルの人気作ですね! でも1作目や3作目じゃなくて、なぜ2なんですか?
ゆうせい
登場するスマートフォンが現実味のあるデザインなんです。本体は小型の液晶のみで、裏が透けているスケルトン仕様。タッチパネル操作が前提になっています。
大川
中身が透けて見えるスマートフォン、ワクワクしますね! 近い将来、実現するかも……という期待感があります。
ゆうせい
ズボンのポケットに入れたら割れそうですが(笑)。液晶を2枚重ねて透明に“見せる”技術なら、意外と現実的かもしれません。

ゆうせい
もう一本挙げたいのが、2018年公開の『レディ・プレイヤー1』。西暦2045年の荒廃した世界を描いたSF映画で、携帯電話は巻物のように収納できる薄型画面として登場します。
大川
あの棒状の端末ですね。スマートフォンより大きめだけど、コンパクトにできる構造は理にかなってる気がします。
ゆうせい
薄い液晶が実用化されれば、ポケットで割れる心配も減るし、かなり実現に近い未来像かもしれません。
大川
ただ、近年のSF映画にはVRゴーグルやBMI(※)など、もっと“別の形の携帯電話”も登場しますよね。それでも、ゆうせいさんがこの2作品を推す理由って?
※ブレイン・マシン・インタフェース(BMI)……脳と機械を直接接続し、思考や意図に基づいて情報の伝達や操作を可能にする技術のこと。

ゆうせい
いい質問です! VRゴーグルは面白いけど、常時装着するにはハードルが高い。メガネ型デバイスは、日常的にかけない人にとっては負担になるんですよね。
大川
わかります。スマートフォンは「持ち歩く」前提だけど、「身につける」のはちょっと別問題です。
ゆうせい
それに、iPhone 3G登場から17年経っても、スマートフォンの形自体はほとんど変わってません。車だって同じで、ハードの進化は意外と緩やか。この先も携帯電話の“見た目”は大きくは変わらないかもしれません。
大川
BMIは、身体への埋め込みという点でもハードルが高いですね。年齢制限とかも出てきそうです。
ゆうせい
でも、私は未来に期待していますよ。昔の人たちがペーパーレス社会を想像できなかったように、今の私たちが想像もしていない形の携帯電話が、きっと登場するはず。その日を楽しみに、健康に気をつけて長生きしたいですね(笑)。

「未来はまだ想像の途中」携帯電話も、映画も、進化を続ける

映画ライターのゆうせいさんへの取材でわかったのは、名作SF映画に登場する“未来の携帯電話”の多くが、現代から見るとどこかズレて見えるということ。

でもそれは、当時の技術や文化を前提に、限られた想像力で描かれた「時代なりの未来像」でもありました。

今では、薄型・小型のスマートフォンが当たり前になり、『アイアンマン2』や『レディ・プレイヤー1』のような端末も、技術次第で実現可能な段階に近づいています。

一方、メガネ型や体内埋め込み型といったデバイスは、心理的・文化的な壁から、すぐに普及するとは言いがたいのも事実。

ハードの劇的変化はなくても、携帯電話はソフトウェアや使い方の面で、これからも着実に進化を続けていくでしょう。

そしてたとえ“未来予想”が外れたとしても、SF映画は、私たちに「想像する楽しさ」と「進化への期待」を与え続けてくれる存在です。

携帯電話も、映画も、未来も。まだまだ、創造と進化の途中にあります!


撮影:すしぱく
イラスト:野田せいぞ
企画・編集:ヒャクマンボルト
監修:人間編集舎


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51 件のコメント
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おつかれさまです
スマホ好きにはたまらない番組です!
いつも楽しいコーナーありがとうございます((o(´∀`)o))ワクワク
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