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4500種類ものモデルを誇る「G-SHOCK」ってどんな腕時計? CASIOに直接聞いてきた
気さくで明るいライター・編集者。サンリオなどかわいいものが好き。
ライターの神田(こうだ)です。読者の皆さんは腕時計を着けていますか?
私はタフで無骨でかっこいい、CASIOの「G-SHOCK」を愛用しています。
落としてもぶつけても壊れないし、カラーリングも多彩で、自分の好きな色を選べるのも魅力です。そしてお値段もリーズナブル。多少雑に扱っても大丈夫という点が素晴らしく、仕事に欠かせない相棒です。あまり派手すぎるのは好きではないので、主張しすぎず目立たないというのもお気に入りポイント。
車の整備士をしている父親が昔から仕事のときにG-SHOCKを着けていて、すごくかっこよかったんですよね。高校生のときに借りて背伸びしたり、お下がりをもらったりと、私にとって昔から縁がある時計でもあります。
せっかくなのでそろそろ2本目が欲しい……。だけど、どんなバリエーションがあって、自分に合うものをどう見つけていいかわからない……。
というわけで、CASIO・羽村技術センターにやってきました。
羽村技術センターはCASIO製品の全般的な基礎研究、そして製品開発と設計を行っている場所。そして何と言ってもG-SHOCKが生み出された歴史的な場所です。まさに総本山と言ってもいい場所に来れるなんてライター冥利に尽きるかも……。
今回ご対応いただいたのは、時計BU商品企画部 第一企画室室長の泉 潤一さん。
- あらためてG-SHOCKとはどんな時計なのか?
- 最近はどんなG-SHOCKが展開されている?
- いちばん珍しいG-SHOCKは?
などたっぷり伺っていきます!
神田 昔から好きでG-SHOCKを使っていますが、あらためてG-SHOCKはどんな腕時計なのかを聞かせてください。
泉 G-SHOCKは1983年に「タフネス」をベースにして誕生した時計です。初代開発者の伊部菊雄(いべ・きくお)が、親からもらった金属製の腕時計をふとした拍子に落として壊してしまい、そこから「落としても壊れない時計を作れないか」と開発がスタートしたんです。
2023年で40周年を迎え、今では4500種類以上のモデルが登場しています(2024年3月末時点)。
神田 私は物心ついたときからG-SHOCKに触れているので、時計って落としても壊れない丈夫なものって思ってましたが、そんな開発秘話があったとは……。
泉 開発当時の世の中はデリケートな薄いメタル製のアナログ時計が主流で、G-SHOCKのような樹脂製のデジタル時計は異色でした。伊部が消防士や工事現場などで肉体労働をされる方を見て「この人たちにも着けてもらえるような丈夫な時計を作ろう」という思いもあったそうです。
神田 では1983年に世に出て、そこから一気に広がったのでしょうか?
泉 いえ、実は発売当初は思った以上にまったく売れず……。サイズの大きさや樹脂素材などの珍しさもあってか当時はお店の隅っこに置かれるような形で鳴かず飛ばずでした。
神田 そうだったんですか!?
泉 日本国内では、ほとんど注目されませんでしたね。その一方で、アメリカでは大きな注目を集めました。G-SHOCKをアイスホッケーのパック代わりにしたCMプロモーションや、G-SHOCKを巨大トラックに踏ませてタフネスさを検証するテレビ番組で取り上げられたんです。
そこからアメリカで人気を博し、スケボーなどストリートカルチャーを好む若者に評価された流れがあります。そして80年代後半から90年代にかけて日本にもアメリカのストリートカルチャーが広まり、ある種逆輸入のような形でG-SHOCKが日本でも評価され始めたんです。
神田 丈夫な腕時計がない時代だったから、いきなり大注目になったのかと思ったらそうした経緯があったんですね。
泉 また、G‐SHOCKはレッドやイエローといったカラーバリエーションを当時から積極的に展開しました。腕時計といえばだいたいシルバーかゴールドの金属製だったので派手な色は目を引き、だんだん皆様に広く知られるようになりました。たとえば中の機構が見えるスケルトンモデルなんかもありましたね。
神田 懐かしい……! 実家にありました!
なぜG-SHOCKは壊れにくいの?
神田 先ほどトラックに踏ませても壊れなかったと聞きましたが、G-SHOCKはなぜそんなに丈夫なんでしょうか。
泉 それは、内部の構造に秘密があります。衝撃を吸収するゴム素材と固いフレームを5段階で組み合わせ、時計の心臓部(モジュール)を浮かせることで大きな衝撃にも耐えられる仕組みになっているんです。
泉 伊部はこの構造に行き着くまでに非常に苦労したそうです。
神田 ちなみにどのような試行錯誤を……?
泉 これを見てください。
神田 「名探偵コナン」に出てくる爆弾?
泉 いえ、初代G-SHOCKの試作機のレプリカです。最初は壊れやすい部品を守るために緩衝材でぐるぐる巻きにして、会社のトイレの3階の窓から何度も落下実験を重ねていたそうです。
神田 トイレに「G-SHOCK誕生の地」って刻まれててもいいくらいだ……。
泉 3階から落下させても壊れなくなるまで試作機を補強していったら、最終的にソフトボールくらいのサイズになってしまったんです。
神田 ソフトボール大の腕時計、面白いけど着けたくはないですね。
泉 それで「このままでは実装できない」と考えた伊部は、5段階でモジュールを守る構造を試みたのですが、毎回どこかひとつだけ部品が壊れてしまう。どうするか頭を悩ませた伊部は、息抜きに会社近くの公園へ出かけてベンチに座っていると、ゴムまりをついている子どもがいたんです。
それを見て「ボールの中にモジュールが浮いている構造にすれば衝撃が吸収されるのでは」とひらめき、5段階衝撃吸収構造と中空構造を組み合わせ、現在の耐衝撃構造に行き着いたというわけなんです。
神田 これは聖地巡礼がはかどりますね。今の話を聞くとG-SHOCKが丈夫な理由がすごく腑に落ちたんですが、開発時にはどのように強度を検証するのでしょう?
泉 羽村技術センターの中で、品質保証部が様々な試験を行っているんです。試験項目の総数は200項目ほどあり、製品のコンセプトに合わせて、1モデル当たり100項目ほどをピックアップして実施しています。中には、G-SHOCK専用の試験機も用意されていますよ。
神田 100項目も! たとえばどんな試験内容なんでしょう。
泉 落下試験や防水試験、振動試験、ベルトを布でひたすらこすり続けて耐摩耗性や色落ちなどを見る地味な試験などたくさんあります。G-SHOCKの中でも特に過酷な環境を想定して作られた「マッドマスター」シリーズでは、防泥・防塵性能を検証するためにわざわざ遠くから粒子の細かい砂を取り寄せて水に混ぜ、そこに時計を沈め、水中でボタン操作し続けるなんて試験もあります。
泉 実はこの試験機も、わざわざ自社で開発したものなんです。
神田 えっ! わざわざ試験機まで開発してるんですか?
泉 そうなんです。世間一般の標準的な試験には、販売されている汎用的な試験機が使われているんですが、我々G-SHOCK開発チームは一般的な耐久試験を超えてさらにタフな商品を作りたいため、自社で試験機を開発し、社内独自の品質基準を設定しています。
泉 世間一般で認証される強度基準がこのあたりだとすると……
泉 G-SHOCKチームの求める基準はここです!
一般的な強度だと物足りないので、自分たちが満足行くタフネスさを追い求めています。だから品質保証部のメンバーはどうG-SHOCKを痛めつけてやろうかと心から楽しみながら強度試験をしていますよ。
神田 自社製品への愛がすごすぎる!
泉 そうやって何度も検証を重ねて、試験で壊れてしまうものはまたさらなる改良を施して……と、トライアンドエラーを繰り返すことでG-SHOCKのタフネスさが成り立っているんです。
G-SHOCKにはどんなバリエーションがある?
神田 ちなみにG-SHOCKにはどのようなモデルラインアップがあるのでしょう。自分はいつも着けてるモデルくらいしか知らなくて。
泉 現在のG-SHOCKは大きく分けると、
- プレミアムラインの「MR-G」
- 異素材との融合をコンセプトにした「MT-G」
- 強く美しい金属をコンセプトにした「FULLMETAL」「G-STEEL」
- 陸海空とさまざまな用途に合わせたアウトドア向けの「MASTER OF G」
- 心拍センサーなどを搭載したスポーツ向けの「G-SQUAD」
- サーフィンなどのアクティビティ利用に応える「G-LIDE」
- 女性向けの「WOMEN」
など、さまざまなラインアップを展開しています。
神田 こんなに種類があったんですね! 私はG-SHOCKといえば樹脂製のイメージでした。
泉 今でもそういう方は多いので、これを機会にぜひいろんなモデルを知っていただきたいです。たとえばこのモデルなんかは人気ですよ。
神田 めちゃくちゃかっこいい! フルメタルで重厚感あってすごくリッチな気分……。
泉 こちらは1983年に誕生した最初のモデル、いわゆるオリジンモデルをベースにしたフルメタルシリーズです。最初のモデルの意匠をそのままに、ケースやバンドをメタルにあしらいました。ソーラー充電システムを備え、スマートフォンと接続して時刻調整もできます。もちろんG-SHOCKの強度はそのままです。
神田 RPGで最初に手にした武器を鍛えると作中の最強武器になるようなアツいストーリーだ……。
泉 実はこのフルメタルシリーズが大変人気で、昔からG-SHOCKを知っている方を中心にお客様の層がかなり広がっている実感があります。
神田 確かにかっこいいけど今まで安価な樹脂のものを使っていたから、8万以上する金属製のものだと逆に壊れやすそうで扱うのが怖い気持ちもありますね……。
泉 そうおっしゃる方は多いです。樹脂に比べて金属は重いので、落としたときの衝撃が全然違うんですよ。だからフルメタルシリーズ用に衝撃を吸収する構造を新たに考え、何度も検証を重ねてタフネスさはそのままにスタイリッシュになっています。
神田 他にも、見どころのモデルはありますか?
泉 最近ではバイオマスプラスチックなど環境に配慮した素材を使い、タフでエコロジーなG-SHOCKづくりにも力を入れているので、そちらもチェックいただきたいですね。
泉 他にもG-SHOCKはゲームやアニメ、ファッションブランド、芸能人やアスリートの方などとさまざまなコラボモデルも出しているので、そちらもチェックするとお気に入りが見つかるかもしれません。
いちばん珍しいG-SHOCKは?
神田 G-SHOCKは4500種類以上出ていると伺いましたが、その中でも特に珍しいモデルってあるんでしょうか。
泉 それで言うと周年モデルですかね。G-SHOCKでは5年に1回、周年記念モデルを作っています。40周年を迎えた2023年には6つのテーマをラインアップし、オリジナルの刻印を刻んでいるんです。周年モデルは再生産されないので、大変スペシャルなG-SHOCKになっていますね。
神田 これはコレクターにはたまらないですね……。
泉 35周年には特にユニークな周年モデルを打ち出しました。金無垢G-SHOCKです。
神田 純金で作られたG-SHOCK!?
泉 そうなんです。35周年にちなんで全世界で35本、770万円で販売しました。それも完売してしまって。もちろん耐衝撃の検証をしっかりクリアしています。
神田 売れてるんだ……。
泉 あと、この金無垢G-SHOCKは保管用ケースもこだわっていて。実は南部鉄器で作ったんです。
泉 CASIOのマザー工場が山形にあるのにちなんで、伊部が「日本を感じさせるものにしたい」と、このためにわざわざ職人さんにお願いして金型も起こしてもらって。
神田 もし自分がG-SHOCK買って箱開けて南部鉄器に入ってるのを見たら、予想外すぎて笑っちゃうかも。
泉 南部鉄器は、もちろん本来の用途としてお湯を沸かすのにも使えます。元々プレミアムラインの「MR-G」のほうで南部鉄器のプレートを採用していて、そこから着想を得ました。
神田 時計はもちろん、ケースにもこだわりがすごい……!
泉 そこは我々が大事にしている部分なんです。ユニークな発想と、他社がやらないようなことを商品に落とし込むのが我々の仕事だと思っていて。お客さんの「ワオ!」という驚きを意識して商品づくりをしています。
以上、泉さんにG-SHOCKの歴史から構造の秘密、バリエーションや珍G-SHOCKまでたっぷりお伺いしました。
他にも、記事に書ききれなかった豆知識も教えていただきました。
- 過去のモデルと復刻モデルを比べると少しずつ違う箇所がある
- 昔のモデルと現在のモデルでは、部品の関係でライトの光り方が違う(昔は豆電球みたいな光り方だったが、途中から青っぽく光るELバックライトに変更、最近ではLEDライトを採用している)
- 泉さんは「DW-5600C-1」のような型番の名付け親
今まで何気なく着けていましたが、より自分の持っているG-SHOCKに愛着が湧きました。それにしても、4500種類以上もあると2台目をどれにしようか迷ってしまう……。
いや〜、このフルメタルモデルかっこよかったな……。なんか腕にのせた瞬間にかなり馴染む感じもしたし。
仕事をがんばっていつかは手に入れたい! それではこのへんで!
編集:ノオト
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昔、イルカクジラモデルとか流行りましたね!
最近どうなってるのか気になります。
ありがとうございます!
凄い腕時計なんですね。
種類も多く有り、5段階で衝撃吸収を始めて知りました。
CASIOと云えば、3機種買い替えで、プロトレックを、愛用してます。
気圧変化も分かり便利です。
最後迄、お読み下さった方から、抽選で◯◯名に、フルメタルモデルをプレゼントします。
と、無かったのが、超!残念!
私は、長年WAVECEPTERを愛用しています。
自宅には、イッパいCASIOの時計があります。
今でも愛用しています。
2台目も欲しいですが
種類が多すぎて
決めきれません(^^;;
愛用の時計はメタリックのBaby-Gです。
本当に丈夫で長持ちで大好きです。
これからも応援させていただきますので頑張ってください🤗
いまはスマートウォッチを使っているので、まだ使えるのにお蔵入り
久しぶりに使おうかな。
お気に入りを修理に出してかれこれ一昔になりそうです。
廃盤の部品を試行錯誤してくれている街の時計屋さんの頑張りにも感謝してます。
腹時計歴が続行中なので…そろそろ丈夫で長持ちする良い時計一つ欲しいですね。
🐬🐳🐬も健在なのでしょうか〜?あったよね😉🌊🤟
ゾウが踏んでも壊れない筆箱のことも思い出したりして😆
スマホを持っていたら時計はいらないか、と不調になった時計を直さずに来てしまいましたが、さっと見られる腕時計があった方がやはり良いのでは?と最近思うことが増えています。
G-SHOCKを今度お店で見てみようかな。
最近、またすばらしいデザインが多く、興味を持ち始めました。
mineo特製の緑色のG-SHOCK出ませんか?
ブランディング成功の良い見本だ。
時計よりもむしろそちらに興味がある。
日頃腕時計⌚︎をしないのですが、面白い・興味が湧いた腕時計を幾つかは持っていますが、使ったことがないですね
今のG-SHOCKはBluetooth対応もあったり、様々なバリエーションがありますね。
確か、八村塁選手が出ているG-SHOCKはオシアナスラインだったような気がします。
映画「スピード」でキアヌ・リーブスが身に付けていた通称スピードモデルの一番安いタイプをプライベートでは愛用しています。加水分解しやすいのが難点ですがそれ以外は気に入ってます
ベビーGがいいですね
健康管理のためにpixelウオッチかなと思ったけど、この記事を見て考えが変わりそうです。
陸海空と様々な用途に合わせたアウトドア向けの「MASTER OF G」や心拍センサーなどを搭載したスポーツ向けの「G-SQUAD」などが気になりました。
コラボモデルとても楽しみです。
CASIOはメロディアラームしか使ったことない(*>_<*)ノ
G-SHOCK 5230 電波ソーラー、1/7本中で使用しています〜。(・・)
親父に高校入学祝いで貰ったG-SHOCK G500D、タフソーラーも電波もない時代の時計ですが、電池交換2回くらい交換した程度で今でも日常使いで現役です。
石鹸でゴシゴシ洗ったりして防水防塵でもアカンやろって環境でも、樹脂部品が剥げたりしてボロボロに見えるだけで元気に稼働してます。
壊れたらもっといいG-SHOCKに買い換えようとは思ってますが、全く壊れる気配がないのでまだ買い換えられません(笑)
>> 人生かけてmineo契約 さん
勿体ないので使ってあげてほしい!!とは思いますが、記念のものって中々使えないですよね^^;mineoに通じるものを感じます。
確かに壊れにくい。
学生時代、BABY-Gを使ってました。
透明感のあるバント部分が、好きだったけど、汗とかのせいか、黄ばんてきて、かなしかったなぁ。
今は、細くてかさばらないスマートウォッチ。
でも、G-SHOCKは気にして見ちゃう。
欲しくなってきました!
持ってる
自分はと言えば、非常に汗かきで、ベルトの類を腕に巻くのが苦手なので、ここ10年以上、腕時計は装着していないですが。