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スマートウォッチの原型は70年代のカシオ? Apple Watchにできることの多くを実現していた多機能時計の歴史
ライター: 辰井裕紀
ローカルネタ・ガジェット・卓球が好きなライター。過去に番組リサーチャーとして秘密のケンミンSHOWなどを担当。
ローカルネタ・ガジェット・卓球が好きなライター。過去に番組リサーチャーとして秘密のケンミンSHOWなどを担当。
Apple Watchの登場で、大きくスターダムにのし上がった「スマートウォッチ」市場。しかし、実はスマートウォッチの原型は1970年代からあります。
その時代をリードしたのはカシオで、中でもデータバンクシリーズは1984~1997年まで約340種類が登場し、時代を彩りました。
その機能は電卓、時刻表管理、音声録音、写真撮影、光通信、紫外線や運動強度の計測など……モデルによってたくさん。今Apple Watchがこなす機能の多くを30~40年前から実現していたそうで……!?
さらに映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の主人公、マーティが身に着けており、世界でも人気を博していたとか……!?
そんな、Apple Watchなどに至るスマートウォッチの前身「多機能時計」の正体と、その歴史的価値をカシオへ直々に聞きました。
撮影にやってきた樫尾俊雄発明記念館。記事にある多機能時計はここで撮影している。見学者歓迎とのこと(完全予約制)
話を伺うのは、カシオ計算機株式会社・松沢晃一さん。デジタル多機能時計シーン全盛期に技術者として関わった、同社で数少ない生き証人の一人です。
松沢さん曰く“時計のエンジンとなる部分”にあたる「モジュール」を、1,000以上開発。1991年の入社から30年以上、時計づくりに関わってきました。
多機能時計たちがどんどん生まれた理由
お、これはなんですか?
右が1974年発売のカシオトロンで、世界初のオートカレンダーを搭載。左の1976年発売のX-1が世界初の世界時計・ストップウォッチ・カウンター・デュアルタイム【※】付きの時計です。
※ホームタイム(居住国などメインで見たいエリアの時刻)とは別に、他国の時刻を表示できる機能
※ホームタイム(居住国などメインで見たいエリアの時刻)とは別に、他国の時刻を表示できる機能
50年前に、これだけの機能が付いた時計があるとは……! なぜ作られたんですか?
もともとカシオはデジタルメーカーで、腕時計サイズにどんなテクノロジーを搭載して世に貢献できるか、何が面白いかを追求していたんです。
今でも社名は「カシオ計算機」ですもんね。
数々のバラエティに富んだモデルは、なぜ商品化できたんですか?
当時は開発が主体の会社で、開発者が作ったものを営業に売るスタイルだったんですね。いろいろなアイデアマンから、多様でユニークな商品が生まれていきました。
自由闊達な社風だったんですね。
社長審議会で企画のプレゼンが通れば、どんどん時計を開発できました。自分の仕事を自分で作る仕組み。これは創業に関わった「樫尾四兄弟」からの流れがあったと思います。
腕時計からピポパ音を受話器に流し電話をかける!
1984年発売でデータバンクシリーズの1号機、「CD-40」が世界初の情報を保存できる腕時計として、電話番号を10件保存できたと聞きます。どんな背景から生まれたんですか?
外回りのビジネスパーソンをターゲットに、重要な相手先の電話番号が手元ですぐわかれば便利だと、発案されたと思います。ヒットしてからは徐々に登録できる電話番号を増やしました。
当時、「電話」がどれほど大事だったかがわかりますね。
電話といえば、ダイヤルしなくても電話をかけられる、1987年発売の「フォーンダイアラー」は話題になりました。
なんですか、それは?
時計の電話帳からプッシュホンのトーン信号、いわゆるピポパ音を時計から流して、それを電話の受話器に聞かせると電話できました。
すごい! 手でダイヤルする手間もないんですね。これは売れましたか?
そんなに売れなかったと思います。
……すごい商品が必ず売れるとも限りませんからね。
ほかにも、携帯電話の着信をバイブレーションで通知する、1998年発売のVCL-100とか。
まさに今のスマートウォッチの進化を先取りしたアイテムですよね。
1982年にはすでに「手書き文字認識」があった!
とくに印象的だった時計はありますか?
インパクトがあったのはタッチパネル内蔵時計です。左のJanus Reed Sensorは1982年発売で手書き数字を認識して計算ができて、さらに1984年発売のDB-1000は、電話番号を手書き入力できました。
ええ、40年前にそんなことが!?
今で言うスマホのタッチスワイプみたいなものが当時できていたわけです。
太陽系の惑星を正確に計算した「星占い時計」
私が作った中で記憶に残っているのは、ホロスコープ占いウォッチ。西洋占星術を使った占いの時計です。自分のいる場所から見た太陽系の惑星の位置を全部計算して、運勢を表します。
……すごい方向にハイテクですね。
ホロスコープ占いウォッチを作る際は、占い師さんに半年ぐらい師事しました。
ええ?
はい、占い師さんの弟子になって、占いを勉強したんです。
そこまでやる!?
あと、テレビのリモコンになる「腕リモ」はヒットしましたが、その後に出した「学リモ」が印象的でした。学習機能の付いたリモコンウォッチ。
学習機能?
赤外線のリモコンを、時計側にコピーするんです。その信号でエアコンを動かしたり、車の鍵を開けたりできました。
おお!! すごい! 今でも売ってほしいような……!?
昔のリモコンは赤外線の仕組みが単純だったんです。でも今は信号の種類が多かったり、セキュリティで守られていたりするので、作れなくなりました。
時計同士で対戦する「サイバークロス」?
あとこの時計、やたらゴテゴテしていますね……!
これは時計同士で対戦できる「サイバークロス」です。
なんですか、それは!?
小学校高学年向けに出ていたシリーズでして。第1弾は1994年に出て、これは第2弾。相手の攻撃を振動で知らせる機能が付いています。
左のデカいのはその装置なんですね。
あとはテレビのリモコン機能もあったり、子ども用電子手帳とつながって会話ができたりします。団地に住む子ども向けに体験会をやって、彼らの意見を商品に活かしました。
当時は子どもが多く、マーケットも大きかったですからね。
デジタルガジェットが流行りやすい時代でもあったので。塾に持っていくと、みんなに注目されたようです。
その中でも、とくに人気のあったモデルはなんですか?
高度や気圧、方位などを測るセンサー系がよく売れました。たぶん、「見えないものを見られるから」興味を引いたんだと思います。
ちなみに、僕はApple Watchを使っているんですが、他の機能も、すでにカシオさんが数十年前にできていたことがいっぱいありますよね……!? 携帯電話への着信とか、IC録音とか。
そうですね。特許を取っているものは出願から20年経てば、どこでも使えるようになりますから。時計型では我々が先輩なので、カシオの時計も調べていたと思いますけどね。
Appleさんが「具体的にこんな感じで参考にした」みたいな話はありますか?
公にはないんですが、おそらくカシオファンは多かったと思いますよ。
かつて多く機能を載せた時計が難しかったワケ
多機能系時計は、単独の機能に特化したものが多いようですが、さまざまな機能を一つにまとめるのは難しかったんですか。
はい、いろいろ入れると必然的に大きくなってしまいますから。あと時計のLSI(大規模集積回路)のプログラム容量が小さかったので。
オールインワンのスマートウォッチは難しかったんですね。ただ、今のスマートウォッチよりもすごく電池もちがいいと聞きますが、なぜですか?
スマートウォッチはカラー画面やタッチパネル、ハイパワーのCPUなどで、消費電力が大きいんです。逆にデータバンクなどはあまり電池を使う処理をせず、省電力デバイスを自社でカスタムして開発していますから。10年以上電池が持つ最新モデルもあります。
え、今もデータバンクは作られているんですか?
新製品はほとんどありませんが、多くはもともとのモデルの色を変えるなど、リデザインして出しています。
実は「大ヒット」ではなかった
バック・トゥ・ザ・フューチャーでも主人公がカリキュレーターモデルを使用していましたが、当時のカシオの多機能時計って世界的な人気があったんですか?
ファンはいましたが、そこまで人気はないです。人気があれば、おそらく今も続いていますから。
ええ?
もともとデジタル時計のマーケットは時計全体の2割ほどでした。デジタルの中ではシェアは高かったのですが。
こんな先進的なシステムが……時代が早すぎたんでしょうか。
機能を他のガジェットに取って代わられたのが大きいです。ケータイが出てきたら、もう電話帳はそこに入りますから。
電話帳機能がウリだったデータバンクには痛手ですね。
さらに、カシオの開発スタンスも、ブランドやラインナップなどを意識するようになり、アナログ市場への展開も進めていきました。電波時計やソーラー、Bluetoothなどの普遍的な機能を追求し、時計の質感も高めています。
「何言ってんだよ、日本製が最高なんだぜ」
当時の多機能時計を作っていた技術やノウハウは、今どう活かされていますか?
開発のやり方が大きく違うので直接つながってはいませんが、電力を少なく抑える技術やスイッチの構造、デザインエッセンスなどは活かされていると思います。
バック・トゥ・ザ・フューチャー3で、カシオのカリキュレーターシリーズを着けた主人公のマーティ(マイケル・J・フォックス)は、「何言ってんだよ、日本製が最高なんだぜ」と語っていました。今も日本製は最高と言えると思いますか。
きめ細やかな開発および品質は、やっぱり日本製は優れていると思います。カシオも部品はほぼ日本製ですし、プレミアムモデルなどはは日本で組み立ても行います。
これからも「日本製が最高なんだぜ」と思える物づくりに、ぜひ期待させてください。
編集:ノオト
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251 件のコメント
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今はチープカシオ使っています。
高額ではなく、変わった腕時計⌚︎を数点保有はしています
デジタル表示時計より、🕰️⌚︎がお気に入りですね!
Casio F91W(1989年〜)
https://ja.wikipedia.org/wiki/Casio_F91W
(ノζ ◡ ᵔ ξ)
高価格帯は手が出ませんが、魅力的な商品が多いです。
カッシオ♪
個人的には電卓付きの時計が欲しかったです。
機能は全く使いませんが、デザインが好きでたまに付けたくなるんですよね。
パチ屋の景品に いっぱい並んでたなぁ🤗
昔、財津一郎さんが裸でCMしてました。
50年以上前に買ったデジタル時計、アメリカ物。本体はさすがにないが、取説があった。アラームはもちろん、カレンダー機能もあるが、閏年には対応していない。今年はずれますね。
高度計などがついた時計などを持ってました。懐かしいですネ。
勉強になる
ってかこんな機能が昔からあると分かるとワクワクしますね!
お疲れさまでした
長持ちですね。
G-SHOCKも映画でキアヌが身につけていたDW-5600シリーズをオフで利用しています
ガラス面が液晶ガラスになっていて、アナログ盤の上に電話番号を表示できて気にいってました。
関数電卓はカシオとシャープだけど。
HEX電卓は数万円するテキサスインスツルメントしかなかった時にCASIOが2万円位で出してくれた。
会社の先輩にさそわれて数人で名古屋の大須で買った。