- 244
- 21
- 207
充電中のスマホが発火! スマホ事故ワースト5と、未然に防ぐポイントを聞いた
大阪府出身。日々エッジの効いたネタを探し続けるフリーライター。得意ジャンルはサブカル、テレビ、音楽、現代アートなど。デイリーポータルZ 新人賞2017で佳作。自称・無料イベントマニア。
「スマホから突然火が出た」「モバイルバッテリーが爆発してケガをした」というニュース、みなさんも一度は目にしたことがあるでしょう。もともと不良品だったのでは?と思いがちですが、必ずしもそうとは限らないようです。一体なぜ、どんな理由で事故が起きてしまうのでしょうか。
そこで今回は、製品事故に関する情報を集めて調査し、事故を未然に防ぐための注意喚起や啓発活動を行っている「独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)」の吉津兼人さんにお話を聞きました。
スマホやモバイルバッテリー、ACアダプターなどで発生しやすい事故のパターンと原因は? 使用中のNG行為は? 今すぐできる対策方法もあわせて紹介します。
スマホよりモバイルバッテリーのほうが多い! 事故件数の傾向
——まず、スマホ関連製品の事故について、全体の傾向を教えてください。
NITEが製品事故として受け付けた件数は、下記のとおりです。
数字をみると2017~2018年あたりがピークで、その後は変動があるものの一定数をキープしている状況です。2012年以降の合計では、スマホが247件、モバイルバッテリーが399件となっています。
ただし、ユーザーから直接NITEに事故の報告が入るシステムではなく、国に報告された重大製品事故報告の通知や製造・輸入事業者、消防署、消費生活センターなどから報告が入る形になっています。国内で起きているすべての事故を把握しているわけではありません。
——事故件数は、スマホよりモバイルバッテリーの方が多いんですね。
あとは、ACアダプター(タブレット端末用、スマホ用)も384件となっています。ただこれは大手メーカーのACアダプター(タブレット端末用)で、ケーブルの保護が弱かったため中の電線がスパークする事故が大半を占めています。リコールを行い製品回収もされています。
——特定のメーカーの製品で同じような事故が多発したため、全体の件数も多くなったということですね。
接続端子に異物が付着して発火! スマホの意外な事故
——スマホの事故は、具体的にどういう事象が多いのでしょうか?
スマホで集計したワースト5は下記のとおりです。
1. 充電中の異常発熱・発煙・発火 99件
2. 異常発熱・発火・焼損(充電時以外) 80件
3. 充電中の充電ケーブルとの接続部の過熱 36件
4. バッテリー交換中の発火 9件
5. 低温やけど 9件
(※受付段階の数値のため、変動する可能性あり)
——「充電中の異常発熱・発煙・発火」が一番多いんですね。
火が出るだけでなく、白い煙が吹き上がる、破裂するなど、いろんなケースがあります。スマホ特有の事故でいうと、「充電ケーブルとの接続部の過熱」ですね。充電ケーブルとスマホのコネクター部分に「塩分を含む液体」が付着し、そのままケーブルを挿して充電したため、短絡してしまったのです。
——お菓子やジュースをこぼして、それが接続端子部分に付着したまま充電したら異常が発生した、と。
水やジュース、ペットの尿、細かいゴミなど異物が付着した状態で接続すると、異常発熱や発煙が起こるおそれがあります。実際の事故はマイクロUSB Type-B端子で発生しましたが、ライトニングやType-Cでも発生する可能性はあるでしょう。
——ほかの原因で多いものは?
リチウムイオン電池の異常ですね。現在ほとんどのスマホは、リチウムイオン電池を使用しています。その電池に何らかの不具合があると、異常発熱して発火するのです。ただし、激しく燃えてしまうことが多く、原因を特定することができません。
——完全に燃えてしまうから、製造上の不具合だったのか、ユーザー側の過失によって異常が起きたのか、原因究明が難しい、と。
その通りです。ユーザーにヒアリングして、「海の中に落としたことがある」「地面に落として強い衝撃を与えてしまったことがある」と正直に言っていただけることもありますが、燃えすぎて「原因不明」とせざるを得ないケースが多いですね。
高温の車内に放置して発火! モバイルバッテリーの事故
——モバイルバッテリーは、どういうシチュエーションでの事故が多いのでしょうか?
モバイルバッテリーによる事故の発生事象は下記のとおりです。
● 充電中の異常発熱・発火・焼損 149件
● スマホなどに接続して使用中(放電中)の異常発熱・発火・焼損 56件
● 保管中の異常発熱・発火・焼損 52件
● その他、使用状況不明(異常発熱・焼損) 111件
(※受付段階の数値のため、変動する可能性あり)
スマホ本体と同様、充電中の事故が多くなっています。
——「モバイルバッテリーからスマホへ充電中」より「モバイルバッテリー本体へ充電中」の事故のほうが多いんですね。
はい。これはスマホと同様で、リチウムイオン電池の内部に何らかの異常が発生して事故になるケースが大半です。
他には、高温の車内に満充電状態のモバイルバッテリーを放置したため膨張し、さらに車外に持ち出す際に地面に落として白煙と炎が噴出した事故もあります。
衝撃に弱い! リチウムイオン電池が燃える理由
——そもそも、なぜリチウムイオン電池が燃えてしまうのでしょうか?
リチウムイオン電池が激しく燃えることを「熱暴走」といいます。その原因は、「内部短絡」「外部短絡」「過充電」「外からの加熱」の4つです。短絡とは、いわゆるショートですね。このうち一番多いのは内部短絡です。
さらに内部短絡の要因を分析すると、「外部からの衝撃」「異物混入」「製造不良(巻きズレ)」の3パターンとなります。リチウムイオン電池に外部から衝撃が加わると、絶縁するセパレーターを突き破ってしまい、正極と負極がショートして異常発熱するのです。また、製造工程中に何らかの異物が入り込むと、充放電を繰り返すうちにどんどん大きくなり、ショートします。製造不良(巻きズレ)が要因となることもあります。
——もし異物混入や製造不良だったとしても、購入した時点では外から見て異常があるかどうか分からないですよね。
はい。なので、きちんとしたメーカー品を購入し、なるべく落としたりぶつけたりしないように気をつけてください。
犬のかみつき、睡眠時の低温やけど、コネクターの変形……意外な事故例
——ほかに、スマホ関連で変わった事故の例はありますか?
リチウムイオン電池を搭載したモバイルルーターに犬が噛みつき、内部短絡して焼損した事故が2件起きています。スマホやモバイルバッテリーでも、同様の事故が起こる可能性はあります。
あとは、バッテリー交換時の事故です。メーカーの認定していない修理業者に交換を依頼したところ、作業中に燃え出す事故が5件発生しています。へらを挿入してバッテリーに強い力が加わったため、内部短絡が生じて出火したようです。
——非認定の安い修理業者だと、そういうことも起こりえるわけですね。
ご自身でバッテリーを交換し、火が出た事故もあります。スマホをポケットに入れて歩いていたら、突然火が出てズボンに着火し、手足をやけどしたのです。
——めちゃくちゃコワいですね。原因は何だったのでしょうか?
自分でバッテリー交換できるタイプのスマホだったのですが、メーカーが認めていない非純正のバッテリーパックを使っていたため、事故が起きました。インターネットでは「互換バッテリー」と称して販売されています。この事故も、リチウムイオン電池の内部短絡による異常だと思われます。
あとは低温やけど。頬にスマホの形で低温やけどの跡がついている写真を見たことがあります。充電中のACアダプターが太ももに接触したまま寝てしまい、低温やけどしたケースもありました。
——充電中の熱で低温やけどすることもあるのですね。
温度が低くても、長時間触れていると低温やけどになります。下の表を参考にしてください。
45℃だと「温かくて気持ちいい」くらいの温度ですが、長時間接触していると皮膚の奥深いところまでやけどするため、なかなか治らなかったり重症化したりすることもあります。ご注意ください。
——冬場はとくに気をつけないといけませんね。
充電ケーブルによる事故もあります。内部のコネクターピンが変形し、ショートやスパークが生じて樹脂が焼損したと考えられます。手で戻したとしても内部は変形したままなので、折れ曲がってしまったら使用しないでください。
事故を起こさないためには? ユーザーができる対策方法
——「バッテリーが膨張している」「スマホが熱い」といった話をよく聞きます。使用上の注意点を教えてください。
バッテリーは、充電・放電を繰り返して性能が劣化していくと、中に入っている電解液からガスが発生して膨張します。膨張したからといってすぐ火が出るわけではありませんが、早めに交換したほうがいいでしょう。無理に押し込もうとして事故になったケースもあります。
使用上の注意点としては「充電しながらスマホを使わない」、「暑い場所や寒い場所で充電・保管しない」、「満充電にせず、20~80%の間で使う」、「短い充電を繰り返さない」などですね。
——それって、バッテリーを長持ちさせる方法と同じでは?
はい。「劣化防止の対策をすること」と「膨張を防ぐこと」は、ほぼイコールだと言っていいでしょう。ひいては、事故を防ぐことにもつながります。
——なるほど。ただユーザーとしては、どこまでが正常の範囲内で、どこから異常なのかが判断しづらい気もします。
「外装がはずれるほど膨らんでいる」「外装のケースが溶ける」「焦げる」「白だったものが茶褐色になる」「煙が出る」といった、温度以外の変化を目安とするといいでしょう。
——最後に改めて、事故を起こさないためのポイントを教えてください。
ポイントをまとめると、次の4つになります。
●スマホやモバイルバッテリーに衝撃を与えない。「お尻のポケットに入れたまま座る」「地面に落とす」など外部からの衝撃が加わると、異常発熱につながるおそれがある ●「充電できない」「充電中に以前よりも熱くなる」「外装が変形している」「バッテリーが膨張している」「不意に電源が切れる」などの異常が出た場合は、すぐに使用を中止する ●ネット通販で購入する場合は、「販売元の情報がきちんと明記されているか」「日本語表記がおかしくないか」「他の製品と比較して、極端に安価ではないか」などをチェックする ●非純正バッテリー(互換バッテリー)は、純正品に比べて事故のリスクが高い |
ネット通販で製品を購入する場合は、「販売元の連絡先が書いてあるか」を必ずチェックしてください。実際にNITE職員が販売元に電話をかけてみたところ、「つながらない」「外国語で喋り続けて何を言っているのかわからない」といったケースもありました。そうなると、事故があっても保証してくれない可能性が高いでしょう。
——電話番号が書いてあっても、安心はできませんね。
使用中の注意点は、「落とさない」「ぶつけない」「ケースに入れる」「膨張したバッテリーを無理に押さえつけない」「スマホやACアダプターを肌に接触させたまま寝ない」「コネクターが折れたら使わない」などですね。
あと、これは家庭外の話ですが、リチウムイオン電池を搭載した製品がごみ収集車で圧縮され、火災となる事故が増えています。付近の住宅への延焼や清掃局員のケガなど、大きな被害につながります。お住まいの自治体の廃棄方法に従い、絶対に一般ごみやプラスチックごみとして捨てないでください。
「自分は大丈夫」と思っている人も、普段の行動を見直そう
「スマホをお尻のポケットに入れたまま座る」「モバイルバッテリーを地面に落とす」など、普段なにげなくやってしまっている行動が事故の原因になるかもしれないと聞き、改めてコワいなと思ってしまいました。「自分は丁寧に扱っているから大丈夫」という人も、油断してはいけません。
NITEの公式YouTubeチャンネルには、注意喚起のための動画(再現実験映像)が多数掲載されています。またX(旧Twitter)やインスタグラムでも情報を発信しているので、事故を防ぐためにもチェックしておきましょう!
●YouTubeチャンネル
●X(旧Twitter)アカウント
●Instagramアカウント
取材協力・資料提供:独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)
編集:ノオト
- 159
- 7
- 388
- 152
- 18
- 175
夏にPCの内蔵バッテリーを交換しましたが、バッテリーが膨らむとかは初期不良だけど使ってみないとわからないと言われました。
幸い良品にあたりましたが、怖いですよね。
家電量販店に処分をお願いしたところ無料で引き取ってくださいました。
破裂しないで良かったです。
注意して行いたいです。
勉強になりま〜す
安物のバッテリーが膨らんでパンパンになっていたことがあります、
受電後しばらく放置してたら徐々に膨らんでました。
くわばらくわばら
>> よっちおじさん さん
横からコメント失礼します。>後、たまに電源をオフにして充電する方がおられますが、保護機能が働かないので
Xperia 1ⅣのSoftBankオンラインマニュアルでバッテリー項目を読むと、「いたわり充電」は『「常時」に設定すると、本機の電源を切った状態で充電をしても、いたわり充電を利用できます。』とあります。
以降のシリーズ機種の10Ⅳや5Ⅴでも、スマホの電源オフでの充電でも「いたわり充電」は機能すると表記されています。
私が実際に使ったARROWS We(FCNT製)でもバッテリーケアメニュー(上限85%で充電停止)は、本体電源をオフにした充電で機能しました。
おそらく、Android 12 で機能が付与されているのだと思います。
全てのスマホがそうだとは言いませんが、本体電源オフでも保護充電機能は働きます。
USB-TypeC 接続の充電は、スマホ本体と充電器がCCチャンネルで通信して急速充電を行えるのか判断して、電圧と電流を細かく調節して充電しています。
気を付けたいです!参考になりました。