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14年前に発売された日本初のAndroidスマホ「HT-03A」を使ってみた【iPhone 3Gとの比較あり】

14年前に発売された日本初のAndroidスマホ「HT-03A」を使ってみた【iPhone 3Gとの比較あり】

辰井裕紀
ライター: 辰井裕紀
ローカルネタ・ガジェット・卓球が好きなライター。過去に番組リサーチャーとして秘密のケンミンSHOWなどを担当。

スマートフォンOSの2大巨頭、iOSとAndroid。

そのうち日本で初めて発売されたiPhoneが、2008年発売の「iPhone 3G」であることは知れ渡っています。

しかし「Android日本初のスマホ」はどうでしょうか……? スマホ好きの筆者も、恥ずかしながら知りませんでした。それは台湾のメーカーHTCとドコモがタッグを組み、2009年7月に発売した「HT-03A」です。

当時鳴り物入りの「グーグルフォン」として登場するも、あまりヒットせず。

Androidスマホが日本人に大きく浸透するのは、2010年4月発売のXperia SO-01B(ソニー・エリクソン)のヒットまで待つこととなります。

片や日本初Androidスマホ、HT-03A。それほど売れなかったためか、中古市場にもなかなか流れていません。

筆者も市場に出るのを待った末に、「ほぼ未使用品」をYahoo!オークションでやっと見つけて購入。価格は約15,500円と、14年前のスマホにしてはやや高額でした。

まだ契約できる「3G回線」

Android日本初のスマホをつなぐ電波は、今をときめく5Gではもちろんなく、4Gでもありません。3G(FOMA)回線です。

実はこの3G回線、HT-03Aの販売元であるドコモではすでに新規契約を終えています。ですが、ドコモの3G回線をまだ新規契約で利用できる、身近な存在がありました。そう、mineoです。

筆者の近所にある、mineo渋谷にてDプランを契約完了。mineoの動作確認済み端末には入っていませんでしたが、ネットワーク設定ページは存在し、セッティングを済ませると無事3G回線につながりました。

※OSのサポートが終了した古いスマホはセキュリティの脆弱性があり、ウイルスに狙われやすいため使用は控えましょう。今回は細心の注意を払いながら検証しています。

メニュー画面

このスマホ、下に何やら見慣れないものが付いています……何でしょうか?

物理キーを押せば一発で主要な機能にアクセスできて、ガラケーのような直感的な操作が可能

数々のボタン類と、真ん中には自在に動かせるトラックボールまで付いていました。

思えば黎明期のスマートフォンには物理ボタンがつきもので、こちらの一台にはひときわ多い数が備えられています。

ガラケーで育った当時の僕らには、いわば「物理キーがなければ安心できない性質」がありました。たくさんのキーが操作性と安心感をもたらしたはず。

「ドロイド君」をタップしてAndroidの歴史が始まる

ここでHT-03Aを、手持ちのiPhone 3Gと並べてみました。

HT-03Aは画面が3.2インチ。3.5インチのiPhone 3Gより、さらにコンパクトです。今では画面が大きい機種の多いAndroidですが、日本初登場時はむしろ小さい画面でした。

なお重さもHT-03Aが約123g、iPhone 3Gが133gとさらに軽量です。しかし厚さはHT-03Aが約14mmと、12.3mmのiPhone 3Gより分厚くなっています。

いざ、この2台を起動させてみました。

起動途中から4倍速で再生
起動途中から4倍速で再生

今では見ない崩し文字のような「Android」のロゴがなかなかかっこいい。1年前に発売されたiPhone 3Gよりも若干早く立ち上がりました。

ちなみに少し時を戻して、最初のセットアップ画面がこちら。今も残るイメージキャラ「(通称)ドロイド君」をタップしてすべてが始まる、元祖機らしい演出です。

さらにその後はチュートリアルが続きます。初めてAndroidに触る日本のユーザーにもわかりやすい導入。

なつかしの「トグル入力」方式

現行のAndroidと同様に、入力はソフトウェアキーボードで行いますが、驚いたのは現在主流の「フリック入力」ができないこと。かつてのガラケーと同様に、何度も同じキーを押す「トグル入力」の仕様です。

いざ触ってみると、操作は最新機種とくらべてワンテンポ、いやツーテンポ待たされる印象。「流れるような操作」とは行かず、何か操作をする際は「待つ」という動作を意識的に入れる必要があります。

なお、Androidのバージョンは1.5。HT-03Aは1.6までアップグレードされましたが、なぜかソフトウェアを更新できません。このまま初期状態で使うしかなさそう。

なおトラックボールや各種物理ボタンの使い勝手は、実家に帰ったような安心感。メニューボタン長押しでキーボードが登場するギミックもいい感じです。

画像

「ガッツ石松の公式サイト」くらいしか開けない?

このHT-03A、3G回線ながらも最大7.2Mbpsが出る「FOMAハイスピードエリア」に対応しているのですが、回線速度はかなりの遅さです。

現代の感覚だともはや常用は難しいレベルですが、ここはがんばってブラウジングしてみましょう。

当時のブラウザを立ち上げると、まずGoogleのサイトはちゃんと機能します。Googleはもはや「古いデバイスのお助けマン」な立ち位置です。

しかし結論から言うと、人気サイトのほとんどにアクセスできませんでした。Yahoo!Japan、Twitter、ウィキペディア、さらには我らマイネ王など、以下のようなメッセージが出てこれ以上進めません。

そんな中でFacebookはログイン可能。特定のページは表示できるも、大部分のページが表示できませんでした。

このほか、mixiは崩れながらもログインページを表示できるものの、ログインはできず。Instagramはロゴだけが現れて、そこから先には進めませんでした。

スピードテストも使えるサイトが見つからなかった

YouTubeは個別のアプリがありますが、今や何も表示されません。検索も使えませんでした。

しかし、それでも無事接続できるサイトがあります。この機種が発売された2009年当時から、構造が変わっていないと見られる古くからのサイトたちです。

たとえばかつて一世を風靡したテキストサイトの代表格である「侍魂」や、ガッツ石松さんの公式ホームページはすんなりと表示されました。

「オートフォーカス」が活躍するカメラ

ここで、スマホの花形機能「カメラ」を試してみましょう。再びiPhone 3Gに登場してもらい、画質を比較します。

iPhone 3Gは200万画素で固定フォーカスですが、1年発売日が新しいHT-03Aは320万画素かつ、オートフォーカスで強化されています。

操作画面はどちらも極めてシンプルで、「とにかくシャッターボタンを押すだけ」です。

右上のシャッターボタンを押すだけ

それでは、渋谷駅の周辺で撮影した作例を見てみましょう。

中央の描写はiPhone 3Gも健闘するが、周辺の描写はHT-03Aの勝利

スッキリとおいしそうに写すHT-03A

クッキリ写すHT-03AとモヤがかかったようなiPhone 3G

これは両方とも甲乙つけがたいデキ

iPhone 3Gはピントが合っている一部分のみ、HT-03Aと互角の描写を見せますが、それ以外はHT-03Aの快勝でした。

いわゆる「全体にピントが合っている」感じの、スマホっぽくて使い勝手のいい写りを見せてくれるHT-03A。さすがオートフォーカス搭載機といったところでしょう。

もっとも、iPhoneはこのときすでに次のバージョンであるiPhone 3GSが出ており、そちらには300万画素およびオートフォーカス搭載のカメラが付いていました。

ちなみにギャラリーページはこんな感じ。「共有」をタップすると、見慣れないサービス名が出てきます。

Picasa?

「Picasa」はGoogleが2004年に買収し、2016年にGoogleフォトに統合されるまで存在したサービスであり、現在は使えません。

じゃあGmailは使えるのかと思ったら、Googleアカウントのログイン画面で正しいパスワードを入れたり、新しいアカウントを作ったりしてもログインできず、断念しました。

なんらかのメッセージが出てGoogleアカウントにログインできない

これに伴い、Google Play ストアの前身である「Androidマーケット」などのサービスも使用をあきらめることになりました。

Googleマップの挙動が違う

ここで、肝心かなめの「地図」を使ってみましょう。中身は泣く子も黙る「Googleマップ」です。

ただしバージョンが古いため、クリックで店名の詳細が出てくる機能などは使えません。正直これがないだけでけっこう不便です。

しかし、ちょっと違った挙動で機能してくれます。たとえば「ラーメン」で検索すると……

こんな感じでお店のリストが登場。「地図を表示」をタップすると、近くのお店が吹き出しつきで順繰りに紹介されます。

店の情報表示。クチコミなど詳細情報はなく、SNSリンクもほとんど機能しない。情報を知りたければブラウザ検索か電話をかけるしかない

そして地図上でルートと距離が出て、行き先を指し示してくれます。「現在地」はぬるぬると表示されるよりは、数秒おきに位置が表示される感じでした。

ガイドのおかげでお店についたものの、営業時間外。

すっかりラーメンの口になっていたが、隣の松屋でライスと豚汁での夕食を平らげた

通話性能と意外な強み

3G回線のスマホといえば、気になるのが通話性能。この記事を書いているのは2022年12月28日なので、もうすぐ帰省する予定の実家に電話をかけてみました。

独特の「電話声」という感じの響きで、自然な音声とはいいがたいです。少しガサガサしている感じ。

現在の音声の転送方式にはかなわない音質でしたが、受話器から聞こえる親の声と相まって、なつかしい気分になりました。

このほか、現在地からケータイをかざした上空にある星座や、自分が端末を向けた方角にあるランドマークを表示するアプリ「ポケット羅針盤」も内蔵されています。

ポケット羅針盤。スマホを向ける方角で見える星座や角度が変わる

もうおわかりだと思いますが、HT-03Aは2023年の今、まともに使えるスマホではありません。

しかし、手に取った途端に感じる、なつかしいときめき。2大OSの一角の長い道のりが、ここから始まったと思えば一興です。

ちなみに、HT-03Aで使える3G回線。いまだに山岳地帯などへき地で強さを発揮するともいわれており、登山をする人は確保しておいて損はないかも。

ドコモのサービスエリア。ピンクの部分は3G(FOMA)回線ならつながる場所

筆者はライターという役得で、Androidの初号機に触れた喜びをいつまでも忘れないようにします。


編集:ノオト


【2023年4月24日 15:00 追記】
一部画像に誤りがあったので修正しました。
【2023年4月24日 19:00 追記】
文章の一部に誤りがあったので修正しました。


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354 件のコメント
55 - 104 / 354
面白かった。何となく、頑張れ、more かなあ。
レアですね!面白い企画ありがとうございます
頑なにガラケーを使っていたあの頃。
スマホ使いがブイブイ言わせている中、ガラケーをパカパカ言わせていました(笑)
オフラインアプリが使えるWindowsMobileを仕事に使っていた。
通信料が高額だったからね。
こんなコンディションで残っているなんて凄いです。

>> canbe_cx13 さん

カッコいい👍
キーボード付タブレット版で再販したら買うかも?
阿部寛のホームページが開けるかどうかを試していただきたかった。
スマホデビューが2021年な自分だと、「へぇ〜、記事執筆から掲載まで4ヶ月かかるんだ」と違う部分に関心が向いてます。
「安全な接続を確立できませんでした」は、TLSのバージョンや証明書の更新で接続できないのでしょう。
httpでつながるサイトなら表示できるかと思います。
HT-03Aは最初の設定にSIM挿して通信しないと進まない仕様で、しかもAndroid 1.6にするとMVNOのSIMだと初期設定もその後の利用もできないはず。
Android 1.5では初期設定もMVNOのSIMで初期設定できたんですか。はじめて知りました。
14年前はガラケーでした。妻は携帯電話すら利用していませんでした。歴史を感じますね。
mineoでも3Gとしては契約できないはずで、LTE契約だと3Gでも通信できる仕様なだけでは?
それはドコモ本家との契約も同じで、LTEで新規契約したSIMでも3G機にSIM挿して使えます。
Windows Phone
BlackBerry
Symbian OS
KCP+

過去の携帯電話、スマホ用のOSがiOSとAndroidの前に散って行きましたが
革新的なOSが出てこないですかね


組み込み用OSのTRON発祥の日本から画期的なOSを期待します
https://king.mineo.jp/reports/27643
この頃はアプリ探すのとroot取って軽くして使わないと固まってましたよね
コンパクトですね。動きは遅そうだけど。
とても懐かしいな〜と思いました。10年後には、今のスマホもあんなんだったね、と懐かしく振り返るかもしれませんね。
あの子
ドロイド君っ名前があったんですね!懐かしい
ドコモの赤箱は懐かしい。
レアな情報ありがとうございます。大変勉強になります。
電話だけならガラケーが使いやすかった、保留メロディーも出せたしね!
まだ、ガラケー使ってます
支持されない新しい物理的構造は、気をつけないと、BALMUDA phone に代表されるように、致命傷となりますから、それを見極める事が、売る側も買う側も大事だと思いますよ(⁠✿⁠^⁠‿⁠^⁠)
どんな業界でも、売れない原因、売れる要因は必ず有りますよね🍀ナンチャッテ🥳
レトロな感じが良いですね👍
初めてのスマートフォンは、PanasonicのP-01Dだったと思います、HTML言語やJAVAscript等が、今とは違うのだろうと思いました。
古い端末でも、稼働しているのが驚きです。
温故知新、レトロな機種も当時の流行が見え隠れしたりして楽しいですね。
先人たちの知恵の積み上げの上に今の快適さがある事を改めて認識しました。
トラックボール内蔵は今見ると斬新ですね!
なんか懐かしい気持ちになりました^_^
私は植木屋を生業としているのですが、iPhone 3Gを購入した当時、SoftBankの和解販売員に「え?!植木屋さんがiPhoneですか!?」とビックリされました。

周りにもiPhoneやAndroid、Windowsフォンを使っている人はおらず、変わり者扱いされた物でした
懐かしさを覚えつつ、そういえばこんなだったな〜と、僅かな時間ですが感慨にふけりました。ありがとうございます。
この頃だとスマホより京ぽんやWILLCOMがいいと思って使ってたときかなw
Windows Mobileのスマホもお願いします。
EMONSTER(S11HT)なら持っています(もう、電波が飛んでないけど)。
エリクソン端末は辛うじて覚えています。
それよりトラックボールが懐かしい〜BlackBerryを使っていた頃を思い出しました。
私が一番最初に買ったスマホは、mineoがauSIMしか出していかった頃似買ったシャープのSHL23です Android4.2.2
2年ちょっと愛用して、バッテリーが保たなくなって機種変しましたが、まだ持ってます

ただ、Android歴はもっと古くて、アキバで買った中華タブレットで、バージョンは1.6でした
つ
さん
レギュラー
テストするwebページ、そこはガッツ石松で無くて阿部寛のホームページでしょ?
(おやくそく)
私の初スマホは、Xperia UL(SOL22)でした。
だいぶデビューが遅かったと思います。
山岳地帯へ行くのに古い機種勧めてるみたいになってるけど、5G機種でなければ、4GのドコモSIMで普通に3G使えるけど。
もう14年前だなんて〜😯
スマホになってからはそんなに
変わってないと思ってたけど、
進化してますね。
14年前にスマホなんてあったんだ
9年前に初めてスマホを手にしてから、もうすでに3機種目を愛用中。ものすごく性能がアップしているなと思います。
スマホが出てもう10年以上がたっている事に驚き。最初は記事にも書かれていたソニーエリクソンでした〜。
ガジェット好きとしては当時欲しかった機種です。
今のスマホはどんどん大型化が進んでいますが、小さいのに魅かれるんですよね。
このサイズ感、ほぼ Rakuten Mini(こちらも販売終了) なんですね。

ところで、
アップデートできない…ってそりゃそうでしょ。期限とっくにすぎてますから~残念w
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