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マンホールの撮影が社会貢献に! 位置ゲーム「鉄とコンクリートの守り人」大反響の理由に迫る
大阪府出身。日々エッジの効いたネタを探し続けるフリーライター。得意ジャンルはサブカル、テレビ、音楽、現代アートなど。デイリーポータルZ 新人賞2017で佳作。自称・無料イベントマニア。
マンホールの写真を集めるアプリが話題になっているのをご存じでしょうか? その名も「鉄コンクリートの守り人」。ゲームとして楽しみながらインフラの老朽化を発見する新しい発想で、「社会貢献にもつながる素晴らしい取り組み!」と高い評価を得ているようです。
「鉄とコンクリートの守り人」の運営を行うNPO、Whole Earth Foundationの栗原さんに、開発のきっかけや遊び方、インフラへの効果、ユーザーからの反響について聞きました。
マンホールを撮影・レビューする位置情報ゲーム
——「鉄とコンクリートの守り人」とは、どういうゲームなのでしょうか?
プレイヤーがマンホール蓋を撮影し、ダメージの状態を投稿することでポイントや特典を得る「社会貢献型」の位置情報ゲームです。ゲーム性を生かしながら、写真の投稿やレビューによって、マンホール蓋の情報収集や劣化状況を画像から判別しています。
——アプリを開発したきっかけや経緯について教えてください。
マンホールを含む多くのインフラ環境は、高度経済成長期から急速に整備が進みました。しかし近年はインフラが老朽化しており、しかも整備するための人員や財源が減少する「インフラクライシス」が懸念されています。
そこで、市民の力で効率よくインフラを守っていけるプラットフォームができないかと考え、「鉄とコンクリートの守り人」をつくりました。
私たちは「インフラ管理を民主化する」というビジョンを掲げています。自分たちの街をどうやって良くしていくか、そこにゲーミフィケーションの要素を取り入れたんです。
——ビジネスというより、社会貢献の意味合いが大きいのでしょうか?
発端はそうですね。いまは市民が主体的にインフラを管理していく仕組みをつくり、普及させていく段階です。とはいえ、資金がなければ活動できないので、今後は売上についても施策を講じていくつもりです。
Amazonギフト券がもらえるイベントも開催
——ゲームの遊び方について教えてください。
基本的な機能は3つです。
1. マンホールを撮影・投稿する
2. 写真をレビューする(投稿されたマンホール蓋のひびやさび等、状態を確認・評価する)
3. 鉱脈からとれるTUB(砂金)を集める
アプリでは、ユーザーごとに見た目も生まれた日も異なる相棒のイヌが付与されます。街中には砂金があり、イヌと一緒に掘ってTUB(つぶ)を集めるとレベルが上がっていきます。
また、マンホールの撮影数やレビュー数が多くなると、ランキングの上位に入ります。そのあたりは一般的なゲームと同じ楽しみ方ですね。ただ、それだけではなかなか広まっていかないので、定期的に「マンホール聖戦」というイベントを開催しています。
イベントへの参加は、アプリをダウンロードしたあと、公式TwitterのフォローとGoogleフォームへの登録をすればOKです。毎月何らかのイベントを開催しているので、Twitterでご確認ください。
——イベントは、開催地以外の人は参加できないのでしょうか?
いえ、他の地域でも参加でき、Amazonギフト券がもらえる賞も用意しています。賞は2種類あって、1つは撮影・投稿数が多い人が表彰される「上位賞」、もう1つは「くじ」です。上位の人だけが賞品をもらえる形だと、「ちょっとだけ参加したい」という人のモチベーションがなくなってしまいますよね。そこで、1枚投稿した人でも賞品が当たる可能性のあるくじを用意しました。たくさん投稿すれば、当選する確率も上がります。宝くじと同じ仕組みですね。
——「レビュー」とは、具体的に何をするのでしょうか?
例えば、Aさんが撮影・投稿したマンホールの写真を、Bさんが見て「正しく撮影されているか」「劣化しているか」等を判断・チェックします。なぜレビューが必要かというと、投稿しているのはあくまで一般の方なので、判断を間違える可能性があるからです。
多くの人が同じ判断をしたら、正しいといえる確率が上がりますよね。レビューは、複数の目でチェックすることで、マンホールの状態をなるべく正確に捉える仕組みなんです。
——レビューでも賞がもらえるのでしょうか?
はい。写真の投稿と同じく、ランキング形式で表彰されます。もし「マンホール聖戦」の対象地域が関東だった場合、福岡の人が参加できないと面白くないですよね。レビューであれば、全国どこでも、家の中にいてもプレイできます。
——地図にはグレーや黄色、緑色の印が表示されていますね。どういう意味でしょうか?
グレーはまだ誰も撮影・投稿されていないマンホールで、黄色は投稿されているけどレビューはされていない状態、緑色はレビューも完了している状態です。
東京都内では、すでに多くのマンホールがレビューまで完了しています。でも全部緑色になると、撮影するものがなく楽しめないので、定期的にグレーに戻す作業をしています。
例えば、最初に撮ったのが1年前の写真だと、それはもう古い情報ですよね。インフラのデータを集めるプラットフォームとしては、常に新しい情報がアップデートされることが理想です。データは蓄積しつつ情報を更新するため、ゲーム上は一旦リセットして再度撮影・投稿してもらえる仕組みにしています。
老朽化したマンホール4基を発見、交換できた三島市
——「マンホール聖戦」のイベントは、どのように開催されているのでしょうか?
イベントには「自主開催」と「自治体とのコラボレーション」の2種類があります。自治体との共催では東京都渋谷区、石川県加賀市、静岡県三島市で実施しました。渋谷区では約1万基のマンホールを3日間でコンプリートしたことで話題となり、それを知った三島市からオファーをいただくなど、良い流れができていますね。
——イベントの効果はありましたか?
加賀市は約8千基、三島市は約1万基のマンホールが2日間でコンプリート、全ての情報が集まりました。三島市からは「老朽化したマンホール4基を交換することになった」との報告を受けています。
——リアルな実績につながっているのですね。
従来のマンホールの定期点検では、年単位の時間とそれに相当するコストが掛かっていました。マンホール数が1万基だとすると、状態をチェックするだけでも多大な労力がかかります。
ところが「マンホール聖戦」のイベントではたった2日間、しかも市民の力で100%コンプリートできた。その社会的インパクトはかなり大きく、メディアにも取り上げられ話題となりました。
自治体とのコラボでは、市民が団結して「地域のインフラを良くしていこう」という意識が高まるため、結果が出やすいし盛り上がりますね。「今までマンホールなんて気にしたことがなかったけど、インフラの老朽化が問題だと知り、日常的に確認する習慣がついた」という声も聞いています。
——アプリ内に表示されているマンホール位置は、自治体から入手しているのでしょうか?
はい。しかし、まだ全国の情報が入っているわけではありません。マンホール位置が表示されてない場合は、自分で撮影して位置情報をプロットすることもできます。
——ひと口に「マンホール」といっても、いろんな種類がありますよね? すべてが対象となるのでしょうか?
「下水道だけ」と思っている人が多いのですが、消防や通信系、電気、ガスなども対象となります。また、アプリ上で入力するのは「写真の投稿」と「状態のレビュー」だけなので、マンホールの種別を見分ける必要はありません。
日常生活の中で「これは何のマンホール?」と気にすることはないですよね。ところがゲームに参加すると、「これは通信系」「これは消防だ」と分かるようになります。自治体ごとにデザインが違う「カラーマンホール」があったり、種類も豊富だったりするので、特殊なマンホールを見つける楽しみもありますよ。
プレイヤーは、遊びながらも社会的な意義を感じている
——どういう人がプレイしているのでしょうか?
主婦が多い印象ですね。あとは家族連れでお子さんと一緒に参加してくれている人やカップル、小学生とか。自治体とのコラボの際には小学校と連携し、普段は学校内だけでしか使えないiPadを外に持ち出して撮影してもいいよ、となったケースもあります。
あとは先日、マンホール聖戦で上位入賞した女性にお話を聞く機会があったのですが、街のインフラを守っている「地域愛」が根源にあると強く感じました。
——賞品を目当てにプレイしているわけではない?
その女性は「始めたきっかけは、自分の地域で起こった冠水なんです」と話していました。大雨のときに、マンホールから水が噴水のように吹き出した光景を目の当たりにして、インフラの老朽化を肌で感じたそうです。
がたつきやすり減りがあるマンホールを見つけたときに、「これは撮影しなきゃ」という気持ちで投稿している人は多いですね。自分がインフラを守っているという意識が、参加へのモチベーションにつながっているのではないでしょうか。従来は行政に任せるのが当たり前だったけど、「ゲームを楽しむだけで地域のインフラが守れる」「自分にもできることがあるんだ、と考えるきっかけになった」という声もいただいています。
——ゲームとして楽しみながらも、社会的意義を感じている人が多い、と。
私たちはよく「社会価値」「経済価値」という話をしています。社会価値は、インフラを守ってくれたことに対しての「ありがとう」「がんばったね」という評価。経済価値は、賞金1万円などのお金です。
鉄とコンクリートの守り人では、2つを合わせた「社会経済価値」を提供したいと思っています。ゲームとして遊びつつ、インフラを守ることに貢献したら、表彰されたりインセンティブが与えられたりする。そんな世界を構築しようとしています。
——ある意味、社会的な実験でもあるわけですね。最後に、今後の予定を教えてください。
インフラの老朽化は、マンホールだけではありません。ガードレールや電柱、道路標識などたくさんあるので、対象範囲をマンホールから広げていきたいと考えています。インフラ関連のものって、だいたい鉄かコンクリートでできていますからね。
——なるほど、それでアプリ名が「鉄とコンクリートの守り人」なのですね。
「写真を撮る」「位置情報を特定する」「レビューを入力する」、この3つの機能があれば、ほとんどのインフラを対象にできます。まずは国内で定着させて、いずれは海外にも展開していきたいですね。
いまはまだ過渡期なので、Amazonギフト券というお金っぽいものを提供していますが、NFT【※】を使えばやり方次第でインセンティブに変えていけるかもしれません。今後はさらにユーザーへ還元する仕組みも実装していきたいなと思っています。
※ 非代替性トークン。所有者が明確で、替えがきかない暗号資産のこと。
インフラについて考えるきっかけとなる“位置ゲー”
筆者も実際にプレイしてみて、「街の中には、こんなにたくさんのマンホールがあるのか!」と驚きました。と同時に、「普段は気にしていなかったけど、こういうインフラによって生活が支えられているんだな」と気づかされるきっかけにもなりました。
街を歩きながら、ゲームとして楽しみながらインフラ整備へとつながる「鉄とコンクリートの守り人」。「位置ゲー×社会貢献」という新しい取り組みに大きな可能性を感じました。アプリはすべて無料で使えるので、気になった人はぜひダウンロードしてみてください。
鉄とコンクリートの守り人
https://game.guardians.city/
<取材協力>
Whole Earth Foundation
https://ja.wholeearthfoundation.org/
編集:ノオト
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マンホールも、ただの蓋だと思っていました。
マンホールの蓋が外れていて、そこに落ちたら
大事故になります。
想像したら、とてもこわいです。
災害時の夜間、避難するとき。
怪我するか、死ぬかも、しれない。
>> Manamizuki さん
面白い!気になっていたから記事でもう一度見れて嬉しいです😆
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#マイネ王9周年おめでとう!
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