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イヤホンの使いすぎは難聴や外耳道炎を招く? 専門医に聞く「耳トラブル」を防ぐ方法
ライター/ウェブ編集。2001年からウェブコンテンツ業に企画・ディレクションとして携わる。2012年よりフリーライターに。女性向けコンテンツのほか、アプリ、旅行、生活、クルマ、働き方など様々な分野で執筆中。趣味は狛犬巡り。日本参道狛犬研究会会員。
コロナ禍以降、ぐっと利用機会が増えたオンライン会議。場所の移動がない分、隙間なく会議が続いてしまう人もいるのではないでしょうか。
一人暮らしの部屋などプライベートな空間なら、パソコンのスピーカーから音を流して対応することもできますが、周囲に人がいる空間ではイヤホンの利用は必須に。会議のみならず、周りの雑音をかき消すために常にイヤホンで音楽を流している……なんて人もいるでしょう。
長時間イヤホンを利用すると、耳にどんな影響を与えるのでしょうか?
そこで今回は、大阪大学医学系研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学助教の前田陽平先生に耳への影響について教えていただきました!
イヤホンの使いすぎでどんな問題が起きる?
まずは、耳の仕組みについて理解するところから始めましょう。
前田先生「耳は大きく分けて3つの部分から成り立っています。音を集めて鼓膜まで伝えるのが『外耳(がいじ)』、その音を増幅させるのが『中耳(ちゅうじ)』、音の信号を電気信号に変換するのが『内耳(ないじ)』です」
前田先生「イヤホンを使いすぎた場合に問題となるのは、その中でも特に外耳と内耳に関わるもの。起こり得るトラブルとして、耳の穴に対する刺激による外耳道炎(外耳炎)が考えられます。これはイヤホンに限らず、補聴器でも起こる問題です。もうひとつは音量の刺激で起こる難聴があります」
外耳道炎とは、外耳道が不潔な状態だったり、傷を作ったときに細菌が入ったりすることで炎症が起きる病気。主に痛みや腫れといった症状がみられ、ひどくなると聞こえも悪くなってしまうのだかとか。
もうひとつの問題である難聴には、主に3つのタイプがあります。
- 外耳から中耳の間に問題が起きる「伝音難聴」
- 内耳や脳が問題の「感音難聴」
- 上記の2つが合わさる「混合性難聴」
2の「感音難聴」には、突発性難聴や騒音性難聴、加齢性難聴、先天性難聴が含まれています。イヤホンで問題になるのは、騒音性難聴です。
前田先生「難聴のリスクは、音の大きさ×時間の組み合わせで変わってきます。小さな音なら長時間でも難聴のリスクは低く、大きな音なら短時間でもリスクが高まってしまうのです。音と時間の目安については、WHOが基準を公表しているのでチェックしてみてください」
難聴になると、必要な音が聞こえないため、コミュニケーションがうまくいかなくなったり、危険を察知する能力が低下してしまったりするなど、社会生活に支障をきたしてしまうことに。最近では、難聴による認知症のリスクも注目されているそう。
前田先生「外耳道炎は外耳道の表面から起きる症状なので、比較的気づきやすいのですが、難聴は自覚しづらいため見逃されがちです。一度傷めてしまうと元に戻らないので、難聴になり得る習慣がある場合は、早い段階で改めていただく必要があります」
前田先生によると、難聴は検診などで発見されるケースも多いとのこと。特に高い音域が聞こえづらくなっていくと言います。また、年齢とともに誰しも加齢性難聴といって、聴力は徐々に衰えていくものなのですが、若い頃から大きな音を聞き続けていると、もっと早くから聴力が下がってしまう可能性があるのです。
イヤホンだけでなく、補聴器のようにずっと耳に入れているアイテムが原因で起こりやすいのが外耳道炎です。避けるためにはどうしたらいいのでしょうか?
前田先生「外耳道炎リスクへの対処法としては、清潔にすることが第一です。耳に触れる部分をこまめに拭くほか、イヤホンのチップ部分を定期的に取り替えることでも、雑菌の繁殖を防ぐことができます。ほかに、骨伝導イヤホンなどのような、耳をふさがないタイプのものを使う方法もあります」
また慢性的にイヤホンを耳にいれっぱなしという状態を避けることも大切。
前田先生「補聴器はずっと耳に入れている必要があるため、外耳道炎が問題になりやすいのですが、イヤホンでも同じように慢性的に入れっぱなしでいると外耳道炎につながります。外耳道は傷めやすい部位なんです。例えば、腕には骨の上に脂肪や筋肉、皮膚があります。でも外耳道(厳密には骨部外耳道)は、骨の上に皮膚があるだけですから」
オンライン会議が終わったり、イヤホンの充電が切れたり、音楽の再生が終わったりしているにもかかわらず、そのまま耳につけっぱなしになっていた……そんな経験がある人もいるのでは? 外耳道炎予防のためにも、こまめに外すように心がけましょう。
難聴を防ぐためにできることは?
前田先生「周りがうるさい環境でイヤホンを使うと、どうしても音量を大きくしてしまいますよね。難聴リスクを軽減するためには、周りの騒音をカットするノイズキャンセリング機能を使うという選択肢もあります」
周りの雑音を減らすぶん、イヤホンの音を小さくする方法です。とはいえ、「そもそも聞いている音が大きいか小さいかなんて、自分ではよくわからない」という人もいるでしょう。そういう場合は、スマホのアプリを活用する方法も。
例えば、iPhoneの「設定」アプリ内にある「サウンドと触覚」では、「ヘッドフォンの安全性」という項目があります。これはiPhoneがヘッドフォンの音量を測定して、限度を超えたら音量を下げてくれるというもの。
プリインストールされている「ヘルスケア」アプリの中には、聴覚・聴力の大切さを伝える啓蒙記事も。
また、「ヘルスケア」>「ブラウズ」>「聴覚」と進めば、いつでも自分のヘッドフォン(イヤホン)音量が適正か、大きな環境音にさらされ続けていないかなども確認できます。
Androidも同様に、音量が大きすぎることを知らせてくれる端末もあります。
さらに、工事現場やライブ、クラブなどの爆音シーンでは、耳栓をするといった保護対策も大切なのだとか。大きな音を聞いた後は、静かなところで耳を休ませることも難聴の予防になるそうです。
こういった耳トラブルに対して、次のような「耳の穴に入れないタイプのイヤホン」を使用することで防止できるのでしょうか?
骨伝導タイプ以外の2つは、従来通り外耳から音を拾って聞くタイプですが、耳の穴に直接触れないのが特徴です。
前田先生「外耳道になにも入れないタイプのイヤホンは、外耳道炎リスクはありません。ただ、『大きな音で聞き続けると難聴リスクがある』という点は、どのタイプも同じです。周りがうるさいときに音量を上げすぎないように注意してください」
耳を密閉できないタイプで、かつノイズキャンセリング機能がついていないものは、周りがうるさいと音量を上げてしまいがちに。うるさい環境ではカナル型イヤホンのような密閉感の高いタイプで、かつノイズキャンセリング機能付きのものにするなど、環境にあったイヤホンをチョイスするとよさそうです。
外耳道炎の予防は「清潔さ」、難聴の予防は「適切な音量」がカギに。そして両方に共通するのが「装着時間」。
- イヤホンは清潔か?
- 適切な音量か?
- 長時間つけていないか?
この3点を意識したいですね。
ちなみに、聴力を検査できるアプリもあるので「最近耳が聞こえづらいかも」「難聴かもしれない」と少しでも不安のある人は、一度試してみるのもよさそうです。
聴力検査ダウンロードページ
アプリも活用しつつ、おかしいなと感じたらすぐに耳鼻科の診察を受けてください。日頃の心がけで、大切な聴力を守っていきましょう!
<取材協力>
前田陽平先生
2005年大阪大学医学部医学科卒業。日本耳鼻咽喉科学会認定専門医・指導医。日本アレルギー学会認定専門医・指導医。医学博士。市中病院勤務・大学院を経て現在大阪大学医学系研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学助教。雑誌取材・メディア出演多数。大学病院での専門領域は鼻副鼻腔疾患・アレルギー疾患・経鼻内視鏡手術など。市中病院でも一般耳鼻咽喉科医として診療している。耳鼻咽喉科領域や診療に関わる医療情報全般の情報について広くTwitter(フォロワー4.2万人)などで発信している。
https://twitter.com/ent_univ_
(編集:ノオト/イラスト:サンノ)
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それ以来、ずーっと言われている事ですが普通に使えば問題ないのです
耳が痛い!!
有難うございました。
注意喚起ありがとうございます
安心しました
大変参考になりました。
有難う御座います!