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スマホは除菌できる? 専門家に「効果的な掃除方法」を教わった
編集者・ライター。高等学校教諭一種免許状(国語)保有。京都大学大学院博士課程指導認定退学(博士論文準備中)。研究活動のかたわら、教育系書籍やメディアコンテンツの取材・執筆・編集に携わる。専門分野はICT教育・STEAM教育。趣味はゲーム。
今や、私たちの日常生活に欠かせないスマホ。友人とコミュニケーションをとったり、仕事の情報収集をしたり、マンガやゲームを楽しんだりと、何かにつけてはスマホを操作する自分に気付くことがあります。
そうなると、ふと気になるのが「スマホの衛生面は保たれているのか?」という疑問。感染症対策として、マスク着用や手洗い・うがいは徹底しているものの、スマホは特に除菌せずに触っている人も多いのではないでしょうか。
一方で、電子機器に対して、水やアルコールで手入れするのは危険な気もします。最近では「紫外線(UV)除菌」をうたう機器もありますが、実際効果はあるのか怪しいところ……。
今回はこうした疑問を解消すべく、公衆衛生学の専門家である和歌山県立医科大学の森岡郁晴教授に、スマホの衛生状況や除菌の仕組み、正しい手入れの仕方について聞いてみました。
スマホは清潔?! 使用者の衛生意識が大事!
――屋内外至るところに持ち運ぶスマホ。あまり意識しないようにしているのですが、実はすごく汚れているのではと不安で……。専門家としてスマホの衛生面をどう見ていますか?
結論から言うと、スマホは比較的、衛生面が保たれやすい機器だと考えています。2013年にスマホや銀行のATM、駅の券売機、コピー機などのタッチパネルを有する機器の衛生状況を調査しました。その結果、スマホのタッチパネルに付着する細菌類の数は比較的少なかったんです。これについて考えられる理由としては、大きく2つあります。
1つは、個人・少人数利用のため。不特定多数が使うATMなどと違い、スマホはふつう自分だけが操作するツールです。したがって、他者からもたらされる細菌やウイルスが付着するリスクが、そもそも低いのです。
もう1つは、抗菌素材が普及したため。最近のスマホは画面に抗菌素材が使われていたり、抗菌フィルムが貼られていたりすることが多いです。そうした点でも比較的、スマホは衛生面が保たれやすいのでしょう。
――そうなんですね! スマホは比較的清潔であると聞いて、まずはひと安心です……!
ただ、スマホ特有の衛生問題もあって。それは持ち運びが簡単だからこそ、使用者の衛生意識が低くなりがちなことです。
いくら自分1人しか使わず、抗菌フィルムが貼られているからといって、不衛生な場所に置いたり、汚れた手で触ったりしていては意味がありません。ところが、現代人にとってスマホはもはや「人体の延長」。片時も離さず、「汚いかも」と意識すらしない人が大半ではないでしょうか。
すると何が起こるかというと、トイレで用を足しながらスマホを操作し、手は洗ってもスマホはそのまま食卓へ持っていって、食事をしながらまたスマホ……。こういう状況になるんです。しかも、ATMの画面や券売機とは違い、スマホ(の電話機能)は顔に近づけて使うこともある。こんなふうに、身近すぎて衛生意識が低くなってしまうんです。
――うっ……確かに。私もスマホを操作しながら、お菓子をつまむことがあります。気づかぬうちに、不衛生な使い方をしている面は大いにありそうです。
はい。それに今後の話を進める上でも先に解説しておきたいのですが、細菌とウイルスは別物です。
細菌はいわば一つの生命体です。エサ(手の脂、食べ物のカスなど)があれば、自らの力で増殖します。ですから、細菌対策で注意すべきは、ボタンなどのすきま。タッチパネル自体は除菌できても、細かなボタンのすきまで勝手に増殖していることがありますから。
一方のウイルスは、自力では増殖できません。人間の細胞などに入り込み、健康な細胞を壊して増えるんです。つまり、体内に入れさせなければ、勝手に増えることはありません。また、一般的なウイルスは画面に付着しているだけなら、紫外線などの影響で3〜7日で死滅します。そのため、手洗い・うがいなどを徹底し、スマホを口や鼻などの粘膜に近づけないように心がけることが大事です。
クリーニングクロスやアルコール、紫外線……。それぞれの除菌効果を探る!
――では、次にスマホを衛生的に保つ方法を聞いていきます。たとえば、クリーニングクロスでの乾拭きって効果はあるのでしょうか?
一定の効果は見込めますね。クリーニングクロスで乾拭きすれば、細菌のエサとなる表面の汚れが取り除かれます。そのため、細菌が繁殖しにくくなる環境を作れると言ってよいでしょう。
ただ、見落としがちなのが、クリーニングクロス自体の汚れ。とくにメガネ拭きなどは繊維が細かいため効果は高いですが、奥の方に汚れが詰まると、そのまま残る可能性があります。そうしたクリーニングクロスで拭いてしまうと、除菌どころか、汚れを塗り広げていることになりかねません。クリーニングクロス自体を清潔に保ったり、適切に交換したりすることが大切です。
――それでは、コロナ禍になって身近な存在となったアルコール除菌はどうでしょう? アルコールティッシュなどでスマホを拭くのは効果的な気がしますが。
アルコールには、細菌やウイルスのタンパク質を変質させて毒性を失わせる効果があります。そのため、ただの布で拭き取るよりも、アルコールティッシュで拭き取る方が効果は高くなります。
ただし注意したいのが、アルコールの濃度。除菌目的の場合、アルコール濃度が70%以上あることが望ましいとされています。これよりも濃度が低いものは、その分、効果も限定的になります。
また、スマホやフィルムの素材によっては、アルコールで塗装が剥がれたり、素材が劣化したりする可能性があります。必ず取扱説明書を確認してから、使用するかどうか判断しましょう。
――なるほど。市販のアルコールティッシュのパッケージには、よく「99%除菌」という文言が書かれていますよね。このように書かれているものは、基本的には安心して使ってもいいのでしょうか?
うーん、難しいところです。というのも、実はアルコールティッシュなどは、「同じ場所は二度拭かない」というルールで除菌効果を測定しているそうで。一方向に、「川」の字のように拭いていくわけですね。しかし実際には、「己」の字のようにジグザグに、かつ、一度拭いた場所も拭いていく人が多いのではないでしょうか? その使い方では、「99%」よりも当然パフォーマンスが落ちるでしょう。
このように、市販の除菌グッズでは、日常的な使い方と異なる状況において測定した数値が使われていることが少なくありません。だからといって効果がないとは言いませんが、「アルコールティッシュで拭いたから100%安心」と油断してはいけません。
――最近ECサイトでは、紫外線を使った除菌機器をよく見かけます。なんとなく、うさんくさいイメージがあるのですが、紫外線除菌って効果があるのでしょうか……?
原理的には効果はありますね。紫外線を受けると細胞の核酸はダメージを受け、増殖できなくなります。つまり、いま付着している細菌が死ぬわけではないけれども、これ以上増えなくなる(毒性が消える)のです。
ただ、紫外線除菌はくせもので。というのも、懸念されているとおり、市販商品の中には効果が疑わしいものもあるからです。
紫外線にはUV-A、B、Cの3種類がありますが、十分な除菌力があるのはUV-Cのみとなります。UV-Cの紫外線を放射するには、一定以上の出力が必要なのですが、数千円と不思議なほど安い製品も多いです。
こうした製品が本当に『除菌』できるほどの出力を備えているのか、安全性が担保されているのかは、いささか疑問です。購入するのであれば、値段はもちろん、本当に信頼できる製品・メーカーなのかを慎重に検討してからのほうがよいでしょう。
1日1回は手入れを! 専門家おすすめの掃除方法
――クリーニングクロス、アルコール、紫外線と3つの方法による除菌効果を聞きましたが、森岡さんおすすめの掃除方法はありますか?
私は次の3点での掃除をおすすめしています。
①タッチパネルを石鹸で洗う
②アルコールを染み込ませた綿棒で、ボタンまわりを拭く
③スマホケースを水で洗う
最近のスマホは防水性能が上がっていますから、以前よりも『水気のあるものでお手入れする』ハードルは下がっています。電源部やボタン部に水分が流れないように注意しながら、もっともよく触るタッチパネル部だけに石鹸を垂らし、清潔なクロスで拭き取るとよいでしょう。1日1回でもお手入れしておけば、細菌やウイルスが口に入るリスクを下げられると思います。
それから、ボタンまわりが汚れていると、細菌が繁殖しやすくなります。時々でかまわないので、アルコールを染み込ませた綿棒でお手入れをするとよいでしょう。
また、スマホケースも汚れが付着しやすいもの。可能であればビニール素材のものを選ぶなどして、水洗いできるのがベストです。お手持ちのスマホに合わせて、できる対策をしていただければと思います。
スマホを清潔に保ちつつ、基本の手洗いを徹底しよう
マスク着用や手洗い・うがいなどの感染症対策はしている一方で、意外と忘れがちなスマホの衛生面。いろんなところに持ち運ぶ私たちの生活を考えると、ある程度スマホが不衛生になるのは避けられないものです。
長引くコロナ禍でさまざまな感染症対策に気を配るのは大変ですが、1日1回のスマホのお手入れもぜひ心がけてみてくださいね。
(編集:ノオト )
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防水機種ならもっと清潔に使えそうなのですが...(;・∀・)
大晦日に考えてみます(笑)