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入力ボタンなし・おしゃれな「スマホ専用テプラ」が人気に スマホ連携文具の需要をキングジムに聞いた

入力ボタンなし・おしゃれな「スマホ専用テプラ」が人気に スマホ連携文具の需要をキングジムに聞いた

村中貴士
ライター: 村中貴士
大阪府出身。日々エッジの効いたネタを探し続けるフリーライター。得意ジャンルはサブカル、テレビ、音楽、現代アートなど。デイリーポータルZ 新人賞2017で佳作。自称・無料イベントマニア。

「テプラ」と聞くと、会社の総務部に置いてある、キーボードが付いた事務機器を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。しかし最近は、おしゃれなデザインの「スマホ専用テプラ」が登場し、人気を集めています。

いったいなぜ人気なのか? どのように使っているのか? 昔と比べて進化した機能やデザイン、使い方について、株式会社キングジムの稲葉大力さんと井上彩子さんにお聞きしました。あわせて、スマホと連携できるデジタル文具も紹介します。(取材はオンラインで実施しました)

▲株式会社キングジム 広報室 稲葉大力さん(左)、同 開発本部 電子文具開発部 井上彩子さん(右)

オフィスから家庭用へ広がる テプラの変遷

――テプラは私も会社員時代によく使っていました。初期のテプラから現在までの変遷について教えてください。

稲葉さん
1985年に、社内で電子機器商品を作る「Eプロジェクト」が発足しました。当社は、書類を入れるファイルを主に取り扱うメーカーなので、「メイン商材である厚型ファイルの背見出しに、きれいなラベルが貼れるとよいのでは?」と考えたのがテプラ誕生のきっかけです。

初号機の発売は1988年で、キーボードではなく、ダイヤル式で入力する形でした。ちなみに当時のEプロジェクトのリーダーが、現社長の宮本です。

▲初代テプラ「TR55」

――テプラは30年以上の歴史があるんですね。機能はどのように進化していったのでしょうか?

稲葉さん
漢字や絵文字など、入力できる文字の幅が広がりました。リボンやマグネットシートに印字できるタイプ、強粘着など、カートリッジの種類も増えています。また、かつては単体で作成するラベル機器だったものが、パソコンと接続できるように進化しました。
井上さん
「パソコンの中にあるデータを活用して印字したい」というニーズが徐々に大きくなってきたんです。
▲パソコンと接続できる「テプラPRO SR5900P」

――なるほど。では、家庭用のテプラはどのような経緯で登場したのでしょうか?

井上さん
実は家庭用のお手軽なモデルも、約20年前から販売していました。転機となったのが、2013年に発売した「ガーリーテプラ」です。それまではお子さんの入園・入学時の名前付けなど、手間を省きたい目的でテプラを使う方が多かったのですが、「自分のために楽しく、かわいく作る」シーンを提案できないかと企画しました。

かわいいフォントや絵文字を搭載し、ラッピングやアクセサリー作りでの使用を提案したところ、「テプラでこんなことまでできるんだ」と認知されていきました。

――その流れが、現在の「スマホ専用テプラ」につながるわけですね。

▲ガーリーテプラ「テプラPRO SR-GL1」


専用アプリに特集記事を配信して、新たな使い方を提案

――スマホ専用テプラは2種類あるようですが、どこが違うのでしょうか?

井上さん
「テプラ」ブランドには、感熱式という印刷方式を使ったお手軽モデル「Lite」と、業務用としても使える熱転写式の「PRO」があります。まず先にLite規格の「LR30」、そのあとにPRO規格の「MARK」(SR-MK1)を発売しました。

▲テプラLite「LR30」 本体価格は6,800円(税別)

▲テプラPRO“MARK” SR-MK1 本体価格は15,000円(税別)

――感熱式と熱転写式、どう違うのでしょうか?

井上さん
感熱式は、レシートに近いイメージです。短期間の用途であれば十分な性能がありますが、長期間貼りっぱなしや屋外で使うシーンにはやや厳しいかもしれません。一方、熱転写式は印字品質が良く長持ちするので、家庭用から業務用まで幅広く使えます。

お手頃価格でカジュアルに使うLiteモデルと、業務用まで幅広く使えるPROモデル、それぞれ順調に売れており、ニーズに合わせて購入していただいているようですね。

▲テプラPROの印刷例。細かい文字や絵など、高精細な印刷ができる

▲専用のカートリッジを使えば、リボンやマスキングテープにも印刷が可能

――スマホ専用端末ということで、アプリから操作するそうですが、どのように印刷するのでしょうか? アプリの使い方を教えてください。

井上さん
Liteは、アプリを立ち上げるとすぐラベル作成できるようになっています。シンプルな操作性ながら、画像の挿入や似顔絵を作って遊べる機能など、スマホならではの楽しい機能も搭載しています。

▲テプラLiteアプリ画面

井上さん
MARKは専用アプリ「Hello」を使います。アプリを立ち上げると、入力画面ではなく、その月の特集記事が出てきます。テプラでかるたを作ってお子さんと遊ぶ企画や、ブランドロゴのようなおしゃれなラベルを作ろうといった企画など、さまざまな使い方を提案しています。

ご家庭の場合、「入園・入学時の名前付け」と「部屋の整理整頓」が2大用途なのですが、用が済んだ後は「テプラで何か作ろう」という気持ちがなくなってしまうんですね。そこで、「MARKを使えば、こんなラベルが作れるよ」と、楽しい読み物で使い方のコツを配信しようと考えました。

写真をめくるだけで「こんなことにも使えるんだ」「作ってみたいな」と、暮らしの変化を想像してもらえるようなコンテンツを用意しています。

▲MARK専用アプリ「Hello」の画面

――入力画面ではなく、使い方の提案から始まるのですね。

井上さん
テプラを使い慣れている方は、ビックリされるかもしれません。ただ、家庭用として購入する方は、「初めてテプラを使うので、どんなことができるのか分からない」とおっしゃる場合も多いんです。記事や写真でテプラの魅力を発信できるのは、スマホだからこそ。アプリの開発はユーザーさんとのコミュニケーションを重点的に考えました。

2~3月の入園・入学シーズンは名前付け特集、クリスマスシーズンはラッピング特集など、季節に合わせて「こんなふうにテプラを使うと、暮らしがもっと楽しくなるよ」と提案しています。

▲キッチンやリビング、デコレーションなど、カテゴリーごとにテンプレートが用意されている

――ほかに何か便利な機能はありますか?

井上さん
「一括作成」の機能を使えば、複数枚の編集ができます。例えば調味料のラベルを作るとき、今までなら「塩」と入力して印刷したあと、一旦消して「しょうゆ」と繰り返して入力する必要がありました。Helloアプリでは、同時に複数種類のラベルを編集して、まとめて印刷できます。

あとは、浄水器のフィルター交換や賞味期限など、印刷したラベルに日付や時間を紐づけてスマホのアラーム通知ができる「タイムラベル」機能もあります。

▲「タイムラベル」機能を使えば、忘れがちなフィルター交換時期や賞味期限をアラームで知らせてくれる


女性だけでなく、男性ユーザーにも好評

――人気の理由については、どのように捉えていますか?

稲葉さん
発売当初、当社のSNSで「スマホ専用テプラ出ました」と発信したら、かなりバズったんですよ。

井上さん
片付け術や整理整頓ブーム、マスキングテープを使ったデコレーション、手軽にできるDIYの高まりなど、世の中の流行や需要にマッチしたのかなと思っています。最近はハンドメイドサイトで自作の商品を販売する方が増えていますよね。値札やラッピング包装に使える点も人気の理由かもしれません。

本体の大きさやデザインについても良い反応をいただいています。

――いずれもテプラっぽくないデザインですよね。こだわった点はありますか?

井上さん
たしかに、従来のテプラは「会社の備品」のイメージが強いですよね。

LR30は手のひらサイズで、簡単に持ち運べるサイズになっています。MARKは暮らしに溶け込むデザインを追求したいと考え、プロダクトデザイナーの柴田文江さんに協力をお願いしました。リビングに置いてあってもなじむようなデザインになっています。あとは女性だけでなく、男性も手に取りやすいコンセプトで考えました。

▲MARKはベージュとカーキの2色

――今までの話から考えると、女性ユーザーが多いのでは?

井上さん
30~40代の主婦の方、子育て世代が中心ですが、MARKは意外と男性ユーザーの割合も多いんですよ。

「暮らしを豊かにするラベル」というコンセプトでいえば、男女の差はあまりないと思っていて。男性も趣味のグッズやアウトドア用品のパーツなど、整理整頓する機会はあるはずですよね。インテリアにこだわっている方も多いので、家庭=女性と決めつけず、どんなお客様にも合う色を選びました。

あとは素材感ですね。機械的な印象にならないように、陶器の花瓶やお皿のような質感、ライトの光り方、ロゴの太さ、曲線など、細かい点にこだわってデザインしました。

――いろいろなテプラの活用シーンをアプリ上で提案されていますが、実際のユーザーはどのような使い方をしているのでしょうか? また、どんな意見・感想が寄せられていますか?

井上さん
SNSを見ていると、お子様が書いたイラストや文字、画像を挿入している方が多いですね。あとは、化粧品のパッケージを写真で撮って、詰め替え用のボトルに貼っている方もいます。

MARKは今までの家庭用にはなかった高精細の印字ヘッドを搭載しているので、「こんなにきれいに印刷できるんだ」といった感想が届いています。アプリについては、「毎月テンプレートや絵文字が増えるのが良い」と喜んでいただけているようで。新しいテンプレートを追加すると、「作ってみたよ」とインスタグラムに投稿してくださる方もいますね。

――機能が拡張できる点は、スマホアプリならではのメリットですね。

井上さん
「もっとこんな加工がしたい」など、具体的な要望もいただいています。スマホ画面は小さいので、ピンポイントで操作しにくいですよね。Illustratorなどデザインソフトを使いこなしている方からすると、もの足りない部分があるかもしれません。

ただ、多機能にしてしまうと逆に操作が難しくなってしまう可能性もあるので、バランスを見ながら使いやすい形を追求していきたいと思っています。

▲お子さんが描いた絵など、画像を挿入して印刷できる


スマホが進化しても、手書きの良さは残るはず

――キングジムでは、テプラのほかにも、スマホと連携して便利に使えるデジタル文具を販売していると聞きました。

稲葉さん
「ポメラ」と「ブギーボード」ですね。ポメラはテキスト入力専用機なのですが、専用のQRコードリーダーアプリを使うと、ポメラで入力した文章をスマホに移せます。

また、いま販売している「DM200」にはWi-Fi機能を搭載しており、「ポメラSync」機能を使えばiPhoneの標準メモアプリと同期が可能です。スマホ側で文字をいじればポメラ側のデータも更新され、相互で編集できます。ただしスマホ連携機能はiPhone、iPadのみで、Androidは非対応なのでご了承ください。

▲ポメラ「DM200」。文章をスマホへ転送できる(iPhone、iPadのみ対応)

――「ブギーボード」はどのような製品ですか?

稲葉さん
付属のペンで書き、ボタンを押すだけでパッと消える電子メモパッドです。ブギーボード専用のアプリを使うと、書いたメモをスマホで撮影してデータ管理できます。

ブギーボードは黒い板に緑色の文字が出る仕様ですが、アプリで読み取ると白地に黒文字で表示されます。

▲電子メモパッド「ブギーボード」

――普通の紙に書いたようなイメージになるわけですね。

稲葉さん
そうですね。あとは、アプリ側で読み取ったデータの一部分を消したり、文字を追加で入れたりすることも可能です。商談中のメモやタスク管理、図形やイラスト、ご家庭のメモツールとしてもお使いいただけます。

――スマホ対応文具は、今後も増えていくのではないでしょうか?

稲葉さん
以前、書いた内容をスマホで管理できるノート「SHOT NOTE」を販売していたんですが、スマホでできることが増えてきたため、需要が減って販売終了になってしまいました。

井上さん
カメラアプリで台形補正できるなど、スマホの機能がどんどん進化しているので。スマホ関連商品は本当に流れが速く、難しいですね。

——以前はSHOT NOTEの機能に魅力があったけど、スマホの進化によって必要なくなってしまった、と。

井上さん
そうなんです。ただ、スマホで何でもできるとは言っても、「子どもが書いた文字や絵を印刷したい」という要望はなくならないはずです。

デジタルとアナログの境界線って、意外とあいまいだなと感じていて。すべてデジタルがいいわけではなく、「やっぱり手書きがいい」という場面は残るでしょう。商品開発もなるべく柔軟に対応していきたいですね。

事務用品のイメージからおしゃれに進化したテプラ

筆者が会社員時代に使っていたテプラは、黒い本体でキーボードが付いているタイプでした。黄、赤、青色など原色のラベルにポチポチ手入力していましたね。正直なところデザイン性は低く、分かりやすさ勝負の印象でした。

それが今やスマホで入力でき、デザインもおしゃれ。片付け術のブームや手作りグッズの個人販売など、時流に乗って家庭用テプラの人気が出たという話も納得です。

お手頃価格の「LR30」と、高精細な印字ができる「MARK」。本体がなくてもアプリは下記URLから無料でダウンロードできるので、気になった方はアプリ画面で使い方や機能を確かめてみてください。


テプラLite アプリ
iOS版ダウンロードページ
Android版ダウンロードページ

Hello -「テプラ」PRO用アプリ
iOS版ダウンロードページ
Android版ダウンロードページ


<取材協力・写真提供>
株式会社キングジム
https://www.kingjim.co.jp/


(編集:ノオト



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238 件のコメント
1 - 38 / 238
最新紙情報アップ〜アッぷぅ〜沢山あるのですね。
知らない世界〜世界広ッ❣️
参考にさせて頂きます。ありがとうございます😊
スマホ専用とは、今どきな感じですね。デジタルツールでありながら手書きイラストなどもできちゃう所がチョベリグ!
新しく情報提供、ありがとうございました。参考にさせて頂きます。
テプラって何気に便利ですし、利用箇所が多いもの。職場のみならず、家庭用で且つスマホ連動と言うの画期的であり、スマートかと思いました。
むか〜しのテプラは便利に使っています。

以前はビデオテープに、今は使う頻度は減りましたがそれなりに😄。
うちにはテプラとネームランドが計4台あるのですが
あまり活用できていません。(^_^;)
スマホ専用テプラは 使いやすそうで いいですね♪
ハードウェアはいいものだと思いましたが、アプリの評価はよくないですね。スマホで使えるが売りならばアプリもよくしたほうがいいと思います。
稲葉さんと井上さん顔似ているのは気のせい?
テプラは昔から気になっていましたが、よく知らないままでした。
今回の記事を読んで、スマホ対応を含めて興味がわきました。
ありがとうございました。
すごい、仕事などや趣味で使う人があるならいいかもですね。
😊
参考にさせて頂きます。
「スマホ専用テプラ」面白そうですですね。ちょっと調べてみます。情報ありがとうございます。
昔のテプラはよく使ってましたが、今のは知らなかったです。随分と進歩したものですね。メーカーがキングジムさんであれば、安心ですね。私も使ってみたくなりました。
スマホ連携文具のテプラがあるとは知りませんでした。キングジムもすごいですね。コンパクトで使いやすそうですね。
スマホ専用テプラ・・・ 
そういうのがあることを知りませんでした。
便利で楽しそうですね😊👍
退会済みメンバー
退会済みメンバーさん
ビギナー
爺〜爺〜の頃と変わったね〜?又良くなったと言って良いのか?爺〜の頃はこの中でも入学前日瞼をコスリコスリ・・・?
退会済みメンバー
退会済みメンバーさん
ビギナー
会社のかな変換などが昔のタイプライター状態で打ちづらくてイライラしていました。 これはいいっ!拍手ーー
テプラが好きです
ダイモはもっと好きです
古いテプラでダイヤル回してポチポチ打ってた覚えが。
テプラ愛用してます。スマホ専用も手軽で良さそうですね。ブギーボードも気になっているのですがまだホワイトボードを使ってます。
欲しい!!
メモするとき、普通に付箋で貼ってるがこんなおしゃれなのだといいな
テプラの初期モデルは少しだけ使用していました。テプラの進化素晴らしいですね。
スマホ対応モデルの存在は知りませんでした。
ありがとうございました。
それにしてもキングジムという会社素晴らしいですね。ウォッチし続けたいと思います。
これいいなぁ😆欲しいです😁
テプラPROがテプラliteの価格になってくれれば買いなんだが(笑)
机の上にあると、ずーっと色々と印刷してそう(^.^)
古いテプラをずっと 使っていますが、あたらしいの欲しくなります。wifiが、ない場所でも使えるのでしょうか。
テプラすごく進化してるんですね!印字デザインもおしゃれになってるし、スマホのアラーム通知が出来るとか、本体の見た目も可愛い♪
こういうの活用して整理整頓とか上手に出来る人になりたい(笑)
テプラ、すごい進化していますね!こんなにもかわいいシールが、自分で作れるとは!?一家に一台欲しいかも~
会社で古いテプラを使ってますが、なかなかなか壊れないんですよね!
今はすごく進化しているんですね
稲葉大力さん
ダイリキ?
テプラ以前の時代には、ダイモって名前のタイプライター的なモノがありました。ラベリングや備品整理が苦手な私ですが、テープに文字が打てるのはなんだかワクワクしたことを記憶しています。
直接関係ないですが、カセットテープに英文字レタリングするシールみたいな奴も一時期使っていました。自分の管理下で収まっていく達成感みたいな感覚なんでしょうね。
久しぶりに文房具が大好きだった事を
思い出しました✨
テプラ懐かしいです♪随分と進化していたのですね。楽しく読ませていただきました♪
テーブルにある時はコンパクトに見えましたが、井上さんが持っている画像を見て、デカッと思ってしまった、、失礼。
時代に合わせて進化してたんですね〜!オシャレ!😲
Amazonほしい物リストにスマホ専用テプラありました.
今回の記事は役立ちました🐰🖨👍
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