- mineoニュース
- ITガジェット
- 143
- 13
- 211
人と会わずに家で過ごす時間が増え、「本でも読もうかな」と思うものの、「読みたい本がない」「集中力が続かない」と挫折したことはないでしょうか。まとまった時間が取れなかったり、いつか読もうと積んだままの本=「積読(つんどく)」が増えて結局読まずにいたり……。
もっと自分に合った方法で、がんばらずに読書を楽しみたい! 今回は、『積読こそが完全な読書術である』の著者である永田希さんに、自分に合った「読み方」が見つかりそうなアプリを紹介・レビューしてもらいました。スマホやアプリを介した読書との付き合い方を探ってみましょう。
***
書評家の永田希です。仕事柄、たくさん本を読んでいることを期待されるので、日々その重圧と闘っております。そんななかで「積読」を肯定する書名の本を出すのには勇気が要りましたが、拙著の話は今回の本題ではありません。
いわゆるコロナ禍が問題になるよりも前から、世の中では積読とどう付き合うかが問われていました。問われていたというか「積読しちゃうこと」に悩んでる人がたくさんいました、というほうが妥当でしょう。そして、コロナ禍で在宅時間が増え、いよいよその悩みを口にする人が増えているように感じます。
悩むこと自体は悪いことではありません。どんどん悩んでいいと思います。でも、本との付き合い方はもっと自由でいいのではないでしょうか。肩の力を抜いて本と付き合えるようになる(かもしれない)アプリをご紹介します。
「本を読めない」と感じるタイミングにはいろいろありますが、「時間がない」ことが本を読めなくしているのではないかと考えています。あるいは、本を読んでいると時間を忘れてしまい、睡眠時間が削られてしまったり、消化するべき用事にかける時間がなくなったりしてしまうことが気になって本を読めない、という場合もあるでしょう。
これは「時間がない」というより「気持ちに余裕がない」のかもしれません。僕も本ばかり読んで霞を食べて生きているわけではないので、どちらの理由もわかる気がします。要するに「気が急いてしまう」のです。
この「気が急いてしまう」問題を解決する、とまでは言わないものの、そこそこ効果があって友人に勧めているのが電子書籍サービス「Kindle」の活用です。紙の本に魅力を感じ、Kindleアプリで本を読むことに抵抗がある人の気持ちもわかります。しかし、Kindleアプリならではの活用法、いやスマホならではの活用法としておすすめしているのは、「読み上げ」機能です。
正確には、KindleアプリではなくiOSの機能として、視覚障害者向けに「画面の読み上げ」というものがあります。この機能を使うことで、寝起きや食事中、家事の最中、移動時間などを「読書」にあてられるのです。
機械的な読み上げなので、ところどころ漢字の読み間違えや抑揚が不自然なところもあり、違和感があることは否めないのですが、これまで他のことをしていた時間を読書にあてられるのは非常に助かります。読みたい本を読む時間がなくて、読めないまま積み重なっていくうしろめたさが、他のことをしている時間に軽減されるわけです。
読み上げの速さは「0.5倍」「1.5倍」「2倍」に変更可。スマホの画面上に文字として表示されていれば読み上げてくれるので、Kindle以外にも、ブラウザアプリでブログやニュース、論文のPDFなども読むことができます。
もっとも、この機能にはユーザーの向き不向きがあるらしく、全く頭に入ってこない、という意見もよく聞きます。試してみて合わなければ残念ですが、適性がある人にとっては知らないともったいない機能です。
Kindle
iOS:https://apps.apple.com/jp/app/id302584613
Android:https://play.google.com/store/apps/details?id=com.amazon.kindle
iOSの読み上げの機械的な音声が気になるという方には、プロのナレーターや声優が本を読み上げてくれるアプリ「オーディオブック」がおすすめです。
一語一語をきちんとナレーターが読んでくれるので、読み間違いはほぼありません。また抑揚もつけてくれるので、紙の本を読む習慣のない人やラジオドラマ的に楽しみたい人には、iOSの読み上げよりもオーディオブックのほうが合うかもしれません。演劇やテレビドラマなどのように、当たり役やお気に入りのナレーターを見つけられれば、作品の魅力をよりいっそう味わえるようになるでしょう。
なお、「紙の本より『読み上げ』のほうが速く読めるか」と質問されることがあるのですが、1冊1冊を「速く読む」なら紙の本のほうが圧倒的に速いです。スマホでは、内容を表示するのにどうしても時間がかかりますが、紙の本の場合は数百ページ分が既に手元にあり、いわばダウンロードされた状態。読みたいページを開けば、内容を瞬時に「表示」できます。
電子書籍と紙の本とを単純に比較して、どちらが優れているかを議論することは、あまり生産的ではありません。それぞれの長所を見極めてうまく付き合うことが肝要でしょう。
オーディブック
iOS:https://apps.apple.com/jp/app/id379693831
Android:https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.audiobook.app
「読みたい本がない」人は、どうやって本の情報をキャッチするのでしょうか。テレビやSNSでよく見かける新刊や話題書が、必ずしも自分にとって面白い本とは限りませんよね。
この記事を書くにあたって、編集のMさんに勧められたアプリが「taknal(タクナル)」です。「今じわじわ流行ってきている」ということで、僕もさっそく使ってみました。
taknalは、アプリユーザー同士ですれ違うと、お互いのおすすめ本が通知されるサービス。都心に用事があって出かけたりすると、どんどん出会います、本と。
僕が「おすすめした本」に設定したのは、アルゼンチンの作家ホルヘ・ルイス・ボルヘスの『伝奇集』。選んだ本には、100字以内の感想を添えることができます。
そんな僕と、たとえば綿谷りさ『かわいそうだね。』を「おすすめした本」に設定している人とがすれ違うと、互いのタイムラインに「今日出会った本」として表示されます。
「出会った本」のなかで、気になった本はハートマークをタップすることで「読みたい」本として保存することができます。
この日は、1日で120冊以上の本を勧められました。いろんな人とすれ違っていると、世の中でどんな本が流行っているのかが見えてくるような気がしてきます。ここ数日だけ試してみた印象としては江國香織作品と、第2作目にして芥川賞を受賞した宇佐美りん『推し、燃ゆ』が多く読まれているみたいです。
僕が「出会った本」のなかから「読みたい本」に選んだのは以下の通り。以前に読んだことのある本も多数含まれていますが、これを機会に読み直してみるのもいいかなあと思いました。
外出自粛で書店に行く機会が減ってしまったり、もともと書店に通う習慣がなかったりすると、知らない本と出会う機会はなかなかありませんが、このアプリがあれば、少しはその代わりになります。「どの街でどんな本に出会えるか」が見えてきて、意外なほど楽しいので、ぜひお試しあれ。
taknal
iOS:https://apps.apple.com/jp/app/id1504408297
Android:https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.taknal.app
人類は、これまでたくさんの書物を生み出してきました。「本を読む」ことは、古来の賢人たち、あるいは言葉のエンターテイナーたちが紡いできた言葉の海に漕ぎ出すようなもの。そういった言葉の海には、無数の名著が「古典」として組み込まれています。
新刊を中心にそろえる多くの書店では、後継に退いてしまってなかなか触れ合うことのできない古典の数々。そんな古典へのアクセスを提供してくれるのが、オンライン図書館として運営されている「青空文庫」です。
Safariなどのブラウザでも容易に開ける青空文庫ですが、スマホだとかなり読みにくい。そのため、青空文庫内の作品を読むためのアプリがいくつか公開されています。今回取り上げたいのは「Voicepaper(ボイスペーパー)」というアプリ。
このアプリのメイン機能は、DropboxやGoogle drive、Evernoteなどのファイルの音声読み上げです。しかし、アプリ画面右下にあるダウンロードアイコンをタップすると「青空文庫」の選択肢があります。これをタップすると、作家名などで検索をかけることができます。
より細かく検索するなら青空文庫のサイトが便利なのですが、サクッと読みたい作品を探して読むだけならば「ボイスペーパー」のほうが簡単なのです。これで「いつか読もう」と思っていた古典を「消化」するのも悪くないでしょう。
5分から1時間で読み上げを自動停止する機能もついているので、毎朝5分だけずつ古典を読んでいく、というような習慣を生活に取り入れることもできます。
Voicepaper
iOS:https://apps.apple.com/jp/appid1273954643
世の中には日々、大量の書物が新しく刊行されています。特にビジネス書はよく売れるので、刊行する版元も手を替え品を替え、さまざまな切り口で企画を立てます。渾身のキャッチコピーが本に巻かれ、帯に刷られ、読者としては目移りして困ってしまう事態に。
ビジネス書を読みたいけれど、どれを読んだらいいのかわからない人におすすめなのは、選りすぐりのビジネス書の要約を掲載しているサービス「flier」のアプリ。その道のスペシャリストが本を読み解き、ときには解説も交えた「要約」が、2000タイトル以上そろっています。
政治経済やファイナンス、時間管理などカテゴリ(キーワード)でも本を探せるし、Kindleのように読み上げにも対応。『夜と霧』や『82年生まれ、キム・ジヨン』など、話題になっているから気になっているけど本文をいきなり読むのは重そう…という小説作品も要約されています。
flier
iOS:https://apps.apple.com/jp/app/id1022261165
Android:https://play.google.com/store/apps/details?id=com.flierinc.flier
2021年1月末から、招待制の音声SNS「Clubhouse(クラブハウス)」が日本で大いに話題になりました。リアルタイムでおしゃべりするサービスは、ただでさえ時間の足りない僕たちからますます時間を削り取っていくサービスのようにも思えます。
しかし先日気がついたのですが、読んでいてなかなか頭に入ってこない難しい本を読むときに、Clubhouseを使って誰かの話し声を適当に聞き流していると、不思議と読み進められるのです。
読書をするときにその本が難しいと感じるのは、その本に書いてある内容に読者が親しんでおらず、何が書いてあるのかを理解することができないからです。そういうときに、一文一文をしっかりと読み解いていく向き合い方もあります。
しかし、そういう読み方をするのには時間もかかるし、何より労力が要ります。Clubhouseを聞き流しながら、本の内容をきちんと読み解かずに流し読みすることで、ひとまずそこに書かれている内容に慣れていく、という方法も悪くないかもしれません。
Clubhouse
iOS:https://apps.apple.com/jp/app/id1503133294
ここまで、音声読み上げを勧めつつ、読書にまつわるお悩み解決に役立つアプリを紹介してきました。スマホが登場する前から、読書のコツはさまざまに提唱されてきました。今回ご紹介したアプリは、新しいやり方で「本を読む」方法として提案するものです。
人間と書物の付き合いは長く、その人その人ごとの「読み方」があるはずです。自分らしい「読み方」を模索するのも読書の楽しみ方のひとつなので、その参考にしていただけたら幸いです。
すごく興味深く拝読しました。
自分自身の本の好みの世界観も広がりそうで
入れてみようと思います。
機会があれば一度やってみたいな
就寝時とか使うと便利そうです。
優先順位は
文字>動画を字幕倍速>音声
という感じです。文字も欲張らずに余分なところカットして概要になってれば一番ありがたいし、小説や動画よりも漫画が最も時間効率も吸収率も高いです。
その通りですね。そんなことは実際に朗読を聞いてみればすぐわかる事なのに、どうしてこういう紹介になるんのか不思議です。
そもそも書き言葉には同音異義語が多く、漢字の組み合わせを見ないと判断できない事も多くありますし、知らない言葉を音だけで理解するのは不可能なこともあります。
例えば音だけのメディアであるラジオ放送の多くが対話の形になっているのは、そうすることで冗長性を増して理解しやすくしているのだと思っています。
漫画や図版の多い本はそういうところの良い所を組み合わせているので、理解しやすく効率的だというのは実にもっともです。
そう考えるとそこに、動画や音声も組み合わせることが出来れば、更にハイパーリンクで注釈もつけ放題なら、もっといいことになりますが。
日本語ユーザーの市場規模を考えたら仕方のないことかもしれません。