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モバイルバッテリーから掃除機まで! Ankerに製品開発の工夫を聞いてみた

モバイルバッテリーから掃除機まで! Ankerに製品開発の工夫を聞いてみた

ミノシマタカコ
ライター: ミノシマタカコ
ライター/ウェブ編集。2001年からウェブコンテンツ業に企画・ディレクションとして携わる。2012年よりフリーライターに。女性向けコンテンツのほか、アプリ、旅行、生活、クルマ、働き方など様々な分野で執筆中。趣味は狛犬巡り。日本参道狛犬研究会会員。

毎日スマホを使う上で、欠かせないのがモバイルバッテリーや充電器。オンラインショッピングや店頭などで、このロゴを目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。

ユーザーが価格や機能面をシビアに比較するため、競争の激しいモバイルバッテリーや充電器などのスマホ周辺機器。数あるブランドの中でも、安定した機能の高さからファンも多いのが、チャージングブランドの「Anker」などを日本で展開するハードウェアメーカーのアンカー・ジャパンです。

アンカー・ジャパンが設立されたのは、2013年のこと。当時主流だった、中国製品に対する「安かろう悪かろう」というイメージをどのように脱却し、日本国内で知名度と信頼を得てきたのでしょうか。気になる躍進の理由をアンカー・ジャパン代表取締役CEOの猿渡歩 (えんど あゆむ) さんに伺いました。

猿渡歩さん

中国で創業、Amazonでの販売に特化

——Ankerはどのように始まったブランドなのでしょうか。

猿渡さん
当社を立ち上げたのは、米シリコンバレーのGoogleで働いていたスティーブン・ヤンです。製品をスピーディーに開発・製造できるという理由から、2011年、中国の深センで創業しました。

当時は、アメリカなどでオンラインショッピングが一般にもかなり浸透し始めた頃。Amazonは様々なメーカーの製品がユーザーによって比較・購入される場になりつつありました。グローバル展開を狙うAnkerは、当初から店頭販売ではなく、Amazonを中心としたオンライン販売に焦点を絞って充電関連製品の販売を始めました。

現在も、関連するカテゴリでシェア1位を取り続けることに徹底的にこだわっています。

——この戦略は、日本で事業を展開しているアンカー・ジャパンでも成功したと聞きます。

猿渡さん
そうですね。2013年の日本法人を設立した当初の売上は約9億円でしたが、2018年には100億円を突破。2020年には、約212億円という実績を作ることができました。成長率は昨対比約60%、これはグローバルの中で最も高い成長率です。

グローバル全体でも継続的に成長しており、Ankerグループは設立からおよそ10年で、米国・日本・欧州を中心に、世界100カ国以上で展開するハードウェアメーカーになりました。

実は独特?「日本」というマーケット

——アンカー・ジャパン設立時から現在まで、世界の市場と日本の市場の違いはどこにありましたか。

猿渡さん
「製品に対する評価の厳しさ」ですね。日本のユーザーは『すべてに不備がない』のが当たり前で、厳しくストレートな評価をする方が多くいらっしゃいます。製品自体が優れていたとしても、改善点が1つでもあれば星を減らして評価する人が多い。そのため日本は星の数を高めるのが最も難しいマーケットとして認識しています。

製品カテゴリによっては、米国に比べて日本での評価は平均して0.5ほど低くなる傾向も。品質に厳しい目を持つ日本のユーザーの期待に応えて信頼を獲得し続けていくことは、簡単ではありませんが必要不可欠です。グローバルでも日本のサービスレベルに合わせた製品を展開することで、世界中のユーザーに満足していただけると考えています。

——発売当初は、コストと性能のバランスの良さが評価される一方で、「中国のメーカーで価格が安い」からと品質に対して漠然としたマイナスの先入観を持つ人もいたそうですね。イメージによる逆境の中、どのように信頼を獲得していったのでしょうか。

猿渡さん
Amazonのレビューはもちろん、個人ブログやメディアのレビュー記事に目を通し、ユーザーが何に対して不安、不満に思っているかを徹底的に把握しました。さらに信頼の醸成に向けてカスタマー・サポートは創業時より内製化にこだわり、お客様の声に基づいて製品の改善を図ったりという地道な工夫を重ねました。

いまやスマホ充電器だけじゃない 広がるAnker製品

スマホ周辺機器の開発からスタートしたAnkerグループですが、最近ではスマホグッズだけでなく、暮らしをより豊かにするアイテムをそろえるように。

現在は、スマホの充電器などチャージングブランドの「Anker」に加え、2016年にはスマートホームブランド「Eufy(ユーフィ)」を設立。そのほか、オーディオブランドの「Soundcore(サウンドコア)」、スマートプロジェクターブランドの「Nebula(ネビュラ)」の合計4ブランドを展開しています。

最近ではどんな製品が人気なのでしょうか。各ジャンルのおすすめを教えてもらいました。

○ USB急速充電器:Anker Nano ll 65W

Anker独自の急速充電の技術「Anker GaN ll」を搭載した小型USB充電器。65Wの高出力で、一般的な5W出力の充電器に比べて最大3倍速く充電できる。ノートPCからスマートフォンまで様々な製品の充電に便利。(税込3,990円)

○モバイルバッテリー:Anker PowerCore Fusion 10000

USB急速充電器とモバイルバッテリーを兼ね備えたAnker PowerCore Fusionシリーズの最上位モデル。充電器とバッテリーが一体となっているので、バッテリーを別途充電する手間が省ける優れもの。(税込4,790円)

○充電器:Anker 623 Magnetic Wireless Charger (MagGo)

iPhoneと完全ワイヤレスイヤホンを同時に充電できる、マグネット式の 2-in-1 ワイヤレス充電ステーション。ホワイトやブラックだけでなく、ブルーやパープルなどのカラーバリエーションがあり、最新のiPhoneとのコーディネートを楽しめる。(税込7,990円)

○ケーブル:Anker PowerLine lll Flow USB-C&ライトニングケーブル

内部の銅線をグラフェン(炭素原子が結びついたシート状の物質)で覆い、外装にはシリコン素材を使ったケーブル。3層構造になっているため、しなやかで絡まりにくいのが特徴。(税込2,190円)

○ワイヤレスイヤホン:Liberty Air 2 Pro

Anker独自のウルトラノイズキャンセリングを搭載。アプリ上でカスタマイズできるイコライザーなどの機能を充実させながら、価格はリーズナブルに抑えているそう。(税込1万2,980円)

○スピーカー:Soudcore 3

最大16Wで迫力のサウンドを楽しめるBluetoothスピーカー。水回りやキャンプでも安心して使えるIPX7対応の防水性能が付いている。連続再生時間は最大24時間。(税込5,990円)

○掃除機:Eufy RoboVac G10 Hybrid

リーズナブルなのに高性能なロボット掃除機。アプリ上で掃除の開始・終了やクリーニングモードの変更など掃除機を操作できる。吸引だけでなく、フローリングなどの水拭きができる「モッピングモード」を搭載しており、1台で2役をこなすハイブリッドモデル。(税込2万6,800円)

○モバイルプロジェクター:Nebula Capsule II

Android TV 9.0を搭載するモバイルプロジェクター。家でも外でもこれ1台で最大100インチの大画面でエンターテインメントを楽しめる。動画なら最大3時間 、音楽なら約10時間連続再生可能というバッテリーも魅力。(税込5万9,800円)

ユーザーの声で製品をすぐに改良

——製品の幅を広げるAnkerグループですが、ユーザーの信頼を得る“地道な工夫”のひとつに、先ほどもお話いただいた顧客サポートの徹底が挙げられます。

猿渡さん
カスタマーサポートは「最も顧客の意見に接している部門」です。ここでのユーザー体験がブランドの評価に直接つながると考えています。カスタマーサポートに連絡するユーザーの大半は、不満や不便を感じて連絡していることが多いため、そこでのやり取りがブランドの印象として残りやすい傾向があるのです。

カスタマーサポートの対応次第では、良い体験ができた/もう二度と買わないと、ブランド自体の評価に直接つながります。そうした個々のユーザー評価が日本だけでも年間数十万件に積み重なり、ブランドに対する信頼が形成されると考えています。

カスタマーサポートでユーザーからいただいたご意見は、分析して機能改善や開発に活用し、できるだけ早く製品をアップデートします。早ければ、1~2カ月で改良版が出荷されることもありますね。

——1~2カ月とは、かなり短期間ですね。

猿渡さん
こんな例もあります。スピーカーの新製品を企画していた際、Amazonのレビューやカスタマーサポートに寄せられる日本のユーザーの声を分析しました。海外ではパーティー用のスピーカーも人気がありますが、日本のユーザーから求められるのは「生活に馴染みやすいデザイン」や「持ち運ぶ際の機能性」なんです。

こうしたご意見を参考に、Bluetoothスピーカー「Soundcore 3」を開発し、人気製品になりました。

——使いやすさと性能、両方を維持しながらスピード感を持って改良を重ねていく。どんどん商品が良くなっていく点も、ユーザーに支持されている大きなポイントだと感じました。

日本のユーザーが注目する「モバイルバッテリーの重さ」

——ユーザーの声によって、国内と海外の違いを感じた事例は、ほかにもあるでしょうか。

猿渡さん
「人の声から、ベストアンサーをつくる」という姿勢を徹底したことで、シビアな価格競争とは別軸で、日本のユーザーに求められている製品がどんなものか見えてきました。

モバイルバッテリーの例で言いますと、日本では大容量であってもコンパクトさが求められる傾向が強いですね。

日々の持ち歩き用のほか、地震などの災害に備えてモバイルバッテリーを購入する人もいますから、製品が重すぎない・大きすぎないことが重要です。そういった需要に応えたのが、2016年に発売した「Anker PowerCore 10000」。日本市場の独自性を本社の開発チームに説明し、主に日本市場向けに開発しました。

Anker PowerCore 10000

——特定の市場向けに製品を開発するというのは、よくされていることなのでしょうか。

猿渡さん
基本的には、製品は中国で企画・開発され、世界各国で同じものを販売しています。ですが、こういった日本のユーザー特有のニーズは、本社の開発チームにフィードバックしていますね。日本市場は他の国よりも完璧さが求められるので、製品開発はもちろん、パッケージや取り扱い説明書も不備がないよう心がけています。

このようにお客様の信頼を少しずつ積み重ねてきた結果、モバイルバッテリーや充電器といった周辺機器であっても「Ankerというブランドで選ぶ」という新たな価値を提供できるようになりました。

直営店をオープン、広がる販路

——Amazonでの販売からスタートしたAnkerですが、2018年に直営店をオープン。国内での販路を広げています。オンライン販売が強みなのに、実店舗で販売を始めたのはなぜですか?

猿渡さん
ECサイトで製品を購入する方は、欲しい製品やテクノロジーに対して一定の知識を持っていることが多い印象です。機能や性能を理解したうえで、製品仕様を比較検討されています。一方で、実店舗ならガジェットに明るくないお客様にも丁寧に説明して、製品の魅力を伝えられます。

Anker Store 渋谷パルコ店

——今後開発したいジャンルや商品について教えてください。

猿渡さん
Ankerグループには、ハードウェアを通じて人々の生活をスマートで豊かにするというコーポレート・ミッション『Empowering Smarter Lives』があります。特に明確に次のブランドのジャンルを決めているわけではありませんが、我々が持つノウハウで生活をスマートに豊かにするために何が作れるかを追求したいです。

——コロナ禍のおこもり生活やキャンプ人気、防災意識の高まりなど、最近のトレンドに応える製品も考えているそうですね。

猿渡さん
キャンプや防災が注目され、ポータブル電源の需要が高まっているので、PowerHouseシリーズは今後も注力したいと考えています。また、自宅で過ごす時間が増えていることから、エンタメを楽しめるグッズとしてスマートプロジェクターブランド『Nebula』の製品もご好評いただいています。

——これまでのAnkerへのイメージはモバイルバッテリーなどの充電関連機器が中心でしたが、それは古いイメージだと気づきました。サポートや改良、製品開発など、「選びたくなる」より魅力的な面がファンを広げている理由なのですね。

Anker PowerHouse ll 800

取材するまでモバイルバッテリーのイメージが強かったAnkerグループ。ユーザーの声をもとにスピーディーに開発し、“かゆいところに手が届く”商品を出し続けてきているからこそ、これからも「あっ!」と驚くような、便利な新商品に期待したいですね。

取材協力:アンカー・ジャパン

※記事内で紹介した製品価格は2021年11月現在のものです。

(編集:ノオト


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234 件のコメント
1 - 34 / 234
物作り日本は素晴らしいと思います。
Ankerのモバイルバッテリーや充電器を愛用しています。
Ankerについて書かれた本を読んだことがあるので、今回の記事の内容の一部は知っていました。
本を読んでAnkerの会社としての姿勢に関心したので、モバイルバッテリーを買い、最近はイヤホンも購入しました。

日本製への信頼は持ってはいますが、日本の会社のものは高価だったり、IT関連以外でも、会社によってはサポートセンターの体制に疑問を抱いたりしています。
Ankerのように商品の改善が早い面など、日本の企業も見習ってほしいところです。
Ankerさんは、よくAmazonで商品見ますね。実店舗も福岡の天神地下街にあります。
いつか入ってみて、製品を見てみたいと思います。バッテリー🔋使っています。
Ankerさんのモバイルバッテリーやスピーカーなど愛用してますが、クオリティが高く、気に入ってます!
いろんなメーカーの物を持ってるけれど
軽くて小さくてカラー展開が豊富なら
イロチ買いしてしまう。きっと
アンカーの充電器使ってますよ。
退会済みメンバー
退会済みメンバーさん
ビギナー
Ankerはスピーカー使ってますが アプリで自分の好みに音質変えられるが気に入っています。
Anker製品はバッテリー、ヘッドホン、ワイヤレスキーボードをAmazonで購入しました。基本的にはシンプルな仕組みの製品ばかりですが全て使い勝手が良く安定しているので満足しています。ちょっと品質に疑問のある中国製ですがAnkerは別格の認識があります。この記事を読んでその理由が少し分かりました😃
USB急速充電器とモバイルバッテリーを兼ね備えた商品、5000の方が家に色違いで3つあり、使っています。旅行の時にもめちゃくちゃ便利です!容量10000のもあるんですね~ 記事、参考になりました。
今年のAnker直営店の
福袋買いにいきましたが
気温0度の中
販売1時間前に並んだのに😭😭
買えなかった😭😭
初めて しりました 安くて いいものが、あるのは いいですね
>>Amazonのレビューはもちろん、個人ブログやメディアのレビュー記事に目を通し、ユーザーが何に対して不安、不満に思っているかを徹底的に把握しました。さらに信頼の醸成に向けてカスタマー・サポートは創業時より内製化にこだわり、お客様の声に基づいて製品の改善を図ったりという地道な工夫を重ねました。

は、運営事務局さんの
『mineo・マイネ王の進展は、このアイデアファームが大きな役割を担っているとも感じております。
アイデアファームの有無及び運用面を含めて一つ一つ良いものにしていきたいと思います。』
と同じ理念ですね。

私も、Anker製品はamazonでの評価も信頼して、多数愛用していますよ🤗
ANKERさんにはいつもお世話になっています。充電コード、バッテリー、イヤホンetc.....と生活に欠かせないものになっています。ちょうど昨日ANKERさんのバッテリーをもう1つ買いました。これからもいい製品待ってます!
私も最近はほとんどankerを使ってます。
良い製品をどんどん出してください。
Nano II 65Wは予約して購入しました。リモートワークが当たり前の時代において、ACアダプターのサイズはかくあるべき、という哲学も感じます。Ankerの製品はモノづくりに真っ直ぐな感触があって、技術系の仕事をする身としては共感しまくりですね。
我が家は冷蔵庫も洗濯機も中国企業が作ったものです。中国製が安かろう悪かろうの時代は終わりました。Ankerもそのうち今よりももっとよく知られた企業になるでしょう。一般店頭に並ぶ日も近いと思います😉😉😉💕💕
Ankerさんのモバイルバッテリーにはいつもお世話になってます。
これからも利用させて貰います🎵
Ankerさんってあまり聞きなれないんだけど、mineoさんのグッズにもあったような。
今はスマホの手帳ケースに挟める超薄型小型のモバイルバッテリーを使っているんですがAnkerさんからも同様の商品が開発されれば検討してみたいです(^o^)/
情報ありがとうございます。
製品開発の工夫!
了解です。
無印良品で取り扱いのモバイルバッテリーは使っています😊。

特に高性能は必要としないので、ほどほどのを選びました😁。
Anker製ジャンプスターター機能付きのモバイルバッテリー持ってます。冬のはじめにバッテリーがあがってしまったのですが見事エンジンをかけることができました。実際にかかるまでは少し不安でしたけど、正直助かった…
Ankerさんの充電器は安心して使えてます。
これからも良い商品お願いします。
Ankerさんのカスタマーサポートの思想は、ぜひmineoも参考にして欲しいですね。

>カスタマーサポートの対応次第では、良い体験ができた/もう二度と買わないと、ブランド自体の評価に直接つながります。

これ本当にそうですからね。
Ankerさんのロボット掃除機Eufy使ってます!
どの製品もコスパいいですよね!
安くて良い物を安心して使用出来ると助かります。
良いモノは、ほっと出来る心にも繋がっていますね🍵🍡
好きなメーカーです!参考になります
最近はACアダプターに力を入れてはりますね。

Type-C to lightningケーブルがiPhoneに同梱されはじめてすぐに20WのACアダプターを2,000円以下で出さはったスピード感はすばらしいです。

一部のセブンイレブンで購入ができるのも良いですね。
Anker製品、興味が湧きました。
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