新品で購入するより安く、思い思いの使い方ができる「中古スマホ」。mineoなどの格安SIMが普及してから、一層の広がりを見せています。
スマホの利用が一般的になった2010年代。激動ともいえるこの10年間で、中古スマホ市場では、どんな機種が売れ、どんな機種が消えていったのでしょうか?
今回は、中古スマホ販売業界の大手である「イオシス アキバ中央通店」副店長の高野裕太さんに、中古スマホ市場から見た10年間を語っていただきました。
浸透した中古スマホ市場
——昔は「スマホを買うなら新品」という風潮があったように思います。最近は様子が変わってきたのでしょうか。
海外ではもともとSIMカードと端末を別売りしていたんですが、そういった買い方が、やっと日本にも浸透した感じです。iPhoneで言えば2010年から2019年までで、当社の販売台数が100倍になりました。
————すごいなあ、それだけ中古市場が当たり前になったと。
おかげさまで、当社も全国9店舗まで増やすことができました。ただ、都会では「売って買い替える」というサイクルが根付きましたが、スマホ買取店の少ない地方ではまだそこまでなので、その格差をどう埋めていくかが今後の課題の1つですね。
▲2016年発売、arrows NX F-01J(富士通)
————同じ時期に買い取られたような機種が、何台も売られていますね。
これは法人のお客さまが使っていた端末です。法人のお客さまは2~3年で社用スマホの入れ替えをするので、定期的にこういった大量買取の案件がきます。
————少し古い機種を買う人は、どんなふうに使っているんでしょうか?
サブのスマホとして使う方や、お子さん用に買う方が多いですね。あとはドライブレコーダーや監視カメラにしたり、防水・防塵対応機種ならお風呂でテレビを見たり。
▲日本では2019年発売、Galaxy A7(サムスン)。筆者も所有
————最近は、新品での価格が2~4万円前後と安く、性能はそこそこの「ミドルレンジ」と呼ばれる機種が人気と聞きました。
そもそも、海外ではミドルレンジがもともと売れ筋なんですよ。
————そうなんですか?
総務省の改善命令で「実質0円」をウリにした購入プラン【※1】がなくなってきて、日本でも売れ線はミドルレンジになってきました。あとは格安SIMの認知度が上がって、今までなんとなくハイエンド機種を買っていた人が、「自分の使い方だと、そんなに性能はいらなかったんだ」と気づいたのかもしれません。
※1 スマホ端末の購入代金に応じて毎月の使用料金を割引く仕組み。通信料金の高止まりや新規事業者参入の観点から、2016年に総務省が「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」を示した
iPhone 対 Android
————iPhoneとAndroidでは、どちらの売れ行きが好調ですか?
販売台数的には、昔からだいたい6対4の割合でiPhoneが人気です。おいしい商材が多い時は、一時的にAndroidの勢いが勝る時もあります。
————中古市場での価格変動の特徴はありますか。
AndroidはOSのバージョンアップのサポート期間が2年ほどなので、その後に値崩れしやすいです。なぜかというと、各キャリアの専用アプリを最新OSに対応させなければいけないので、メーカー側にそのコストがかかるんですね。
——だからサポートが終わるのが早いと。
iPhoneは自社のもの以外に、基本的にはプリインストールアプリがないので、5年ぐらいOSのアップデートができます。
————そう考えると、iPhoneは強いですね。
そうですね。ただ、Androidはそれぞれ特徴のある機種が多いので、iPhoneにも引けを取らずファンがいる印象です。
国内メーカー 対 海外メーカー
——国内メーカーと海外メーカーの勢力図は、この10年で変わりましたか?
はい。海外メーカーではもともと人気のAppleとサムスンに加えて、HUAWEI(ファーウェイ)、OPPO、ASUS(エイスース)、あと最近話題のXiaomi(シャオミ)の機種がどんどん売り上げを伸ばしています
——海外メーカーのスマホが受け入れられるきっかけは何だったのでしょう。
元々トップメーカーであるAppleとサムスンを除けば、ASUSのZenFone(ゼンフォン)シリーズの登場じゃないでしょうか。2014年に初の国内版であるZenFone 5が発売され、このあたりからスマホに「コスパ」の概念が出てきました。
——そんなに前から。
▲2014年発売のZenFone 5(ASUS)は16GBモデルで、26,800円+税とは思えない高性能で人気だった
後発でHUAWEIがそのクオリティの高さで人気を博して。デュアルカメラ【※2】が搭載されたP9の発売時には「HUAWEIのスマホはどこですか」って、スマホ市場に詳しくないお客さまも来るようになったんですよ。
※2 背面にある2つのカメラ。広角カメラと望遠カメラからなる。
——海外メーカーの強さの理由はどこにあるのでしょうか。
世界中にスマホを出荷していますから、大量生産する分、安くできるんです。性能も良いのですが、以前の日本のユーザーは、価格が抑えられた機種に対して「安かろう悪かろう」のイメージがあったようで。
——偏見があったんですね。
はい。ですが、そのイメージも払拭されて、ここ数年の中古市場は完全に海外メーカーが優勢です。特にいまよく売れているのは、OPPOのReno3 AやReno Aですね。
▲人気機種のひとつ、OPPO Reno A
——ちなみに、日本のメーカーに逆襲の気配はないですか? 正直、私4年くらい国産スマホは買っていないのですが……。
激戦のミドルレンジ戦線でがんばっているのはAQUOS senseシリーズ。年々高級感や機能がバージョンアップしています。あとはやはりソニーですね。最新のハイエンド機Xperia 1 IIも評判が良く、元々のお客さまの期待値も高いので、ミドル戦線に本気で加われば一気に覇権を取れる可能性があります。
特に売れた機種は?
——この10年で、特に売れたスマホは何ですか?
iPhone 6です。前モデルのiPhone 5sからドコモが販売に参入し、他社発行のSIMカードを使うことができるSIMフリー版端末も発売。画面サイズも大きくなりましたし、当時は中国がiPhoneの第一次販売国ではなかったので、iPhone 6を爆買いするお客さまもいました。
——いろんなタイミングがハマったんですね。
——Androidではどうですか?
2014年に発売されたドコモのXperia Z3 compact SO-02Gが印象に残っています。性能も良かったので飛ぶように売れました。
——私もこの機種は愛用していました。サクサク動いて使いやすくて、コンパクトで。
1機種だけで1日分の売り上げを稼いでくれるほど人気でした。この機種をきっかけに格安SIMを使う人も増えたと思います。
売れなかった「ガラホ」
——逆に、意外と売れなかった端末はありますか?
ガラケーとスマホのいいとこ取りを狙った「ガラホ」【※3】ですね。
※3 スマートフォン用のOSを搭載した、高機能なフィーチャー・フォン(ガラパゴスケータイ)
——面白そうな端末でしたけれども。
ガラホは基本的に4G回線での契約になるので、ガラケーより料金が高くなるんですね。安さを理由にガラケーを使い続けている層が、あまり乗り換えなかったんですよ。
▲2014年発売、P-01G(パナソニック)は連続待受時間約750時間と長持ち
——なるほど。ちなみにガラケーもまだ置いてありますね。
需要がゼロになったわけではないので、取り扱いは続けています。ただ2014年ごろから機種が集まりにくくなって、2016年ごろから取り扱う量が目に見えて落ちました。あとは各キャリアが3G停波のスケジュールを発表したのもあり、「そんなに必死でガラケーにしがみつく理由がない」という人が一気に増えました。
——LINEなどができなくなったのも大きいですしね。
中古スマホでもカメラ性能は外せない
——中古スマホに求められる機能は、この10年で変わりましたか?
そう変わらないです。中古に求められるのはいつも「安くて、そこそこいい」なので。
——やはりコスパ優先ですか。人気の機能は、おサイフケータイ【※4】あたりですか?
※4 FeliCa(ICカード)が埋め込まれた端末で使える機能。読み取り機にかざすだけで支払いができる
と、思うじゃないですか。実は、おサイフケータイを重視される方の絶対数って、そこまで多くないんですよ。もっと求められるのが、防水・防塵機能です。
——へえ!
防水・防塵機能って、日本ではガラケーのときから当たり前にありましたよね。これ、実は海外にはほとんどなかったんですよ。
——知りませんでした。
例えば、iPhoneに防水機能がついたのはiPhone 7から。GalaxyでもS5からです。国内機種は、それより古い機種にも防水・防塵機能がついています。
——海外メーカーの対応は意外と遅かったんですね。
「防水・防塵機能を付けると、原価が1万円変わる」なんて話もあるくらい、コストがかかるんだそうです。ただ、スマホの技術競争がエスカレートした現在では、どのハイエンド機種も防水・防塵機能が付いています。ミドルクラスでも、各社とも販売に力を入れている機種には付いていますね。
——勝負機種には付けていると。
ちなみに、安さを最優先で求めるお客さまでも、カメラ性能だけは外せない人が多いですね。
——思い出を残すには大切ですからね。
一番大きいのはSNS全盛時代になったことです。「映えなくてもいいので、ある程度キレイに撮りたい」というニーズがあります。「カメラは良くて当たり前」っていうラインになってきちゃってるんですよね。
——人間の欲望には際限がないですね。
バッテリー持ちも重要です。SNSをやっていると、バッテリーがすぐ減りますから。
中古au端末はmineoに救われた?
ちなみに、mineoさんがauの回線を使う格安SIMを出すのは画期的なことだったんですよ。それまでは「格安SIM=ドコモ回線」だったので。
——えっ、そうなんですか?
auの中古端末は、ドコモに比べるとものすごく安かったのですが、格安SIMが使えるようになってからは価格差がかなり縮まりました。それだけ需要が増えたので。
——マイネ王のライターが言うことでもないかもしれませんが、mineoのおかげと(笑)
そうですね! その後は他社のサービスも登場して、au回線を使った格安SIMの認知度がさらに上がった印象です。
▲ソフトバンクは3Gケータイなら1,280円のものも
ちなみに、当社ではソフトバンクさんの端末が一番売れにくいんですよ。対応している格安SIMが少ないですし。
——へええ。
そもそも、ソフトバンク自体がiPhone以外にそこまで力を入れていないので、端末が出回らないんです。だから同じAndroidの機種でも、ソフトバンクの端末だとかなり安く購入できますよ。
——確かに店内の商品を見比べると、ドコモ端末で2万2,800円のXperia XZ1 SO-01Kが、ソフトバンク端末だと6,980円ですね。
どこの中古スマホ販売店でも、ドコモが圧倒的に売れているはずです。次にau、かなりの差があってソフトバンク、という順でしょうね。
これから売れるのはどんなスマホ?
——ちなみに、コロナ禍で売れるようになった中古スマホはありますか?
圧倒的にiPhone 7とiPhone 8ですね。みなさんテレワークのカメラ用に買っていきます。
——なぜその2機種なのでしょう。
まだしばらくはiOSのアップデートから外されないでしょうし、ほかの作業もできるスペックの上に、価格も手ごろですから。
——今後はどんなスマホが売れるのでしょうか?
やっぱりiPhoneの二、三世代前の機種でしょうかね。Androidの現行のミドルクラスぐらいと同程度の性能と価格で、まだまだ使えますから。あと、しばらく5G【※5】対応機種は伸び悩むかもしれません。
※5 第5世代移動通信方式。通信データの高速化・大容量化が可能になるほか、多数の端末に同時接続できる
——まだ、使えるエリアが少ないですもんね。
そうですね。基地局の整備が必要なので、特に地方ではまだつながらないでしょう。5Gが普及するには、LTE【※6】以上に時間がかかると思います。
※6 Long Term Evolutionと呼ばれる、3Gを高速化させた通信規格。4Gを指す場合もある。
——まだ普及への道のりは長そうですね。
ただ、状況に合わせていつかミドルクラスでも5G対応の機種が発売されるはずです。これまでの経験上、iPhoneが5Gモデルを出せば、それがひとつのきっかけになると思うんですけどね。
◇
iPhoneが日本で初めて発売されたのが2008年。そこからスマホが普及して約10年経ったいま、中古スマホ市場は世の中に浸透し、勢いを増しているようです。
中古スマホの用途は「子どもに持たせる端末」「ドライブレコーダー」「監視カメラ」「お風呂でテレビ鑑賞」など、さまざま。
みなさんの家に眠っているスマホも、なにかいい活用の仕方があるかも?
※画像の商品価格は変動している場合があります。
取材協力:株式会社イオシス
編集:ノオト
端末実質0円も、大手三社が格安SIMや中古市場の活用などへのユーザー離れを防ぐ為にやってたんですね。
最近はSIMフリーの新品が増えましたね
勉強になりました。
ありがとうございます😊
今後の中古市場も要注目ですね。
また一つ勉強になりました。ありがとうございます。
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#マイネ王6周年おめでとう!