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事件は身近な場所で起きている――防犯アプリ「ガッコム安全ナビ」で分かった治安情報の傾向とは

事件は身近な場所で起きている――防犯アプリ「ガッコム安全ナビ」で分かった治安情報の傾向とは

村中貴士
ライター: 村中貴士
大阪府出身。日々エッジの効いたネタを探し続けるフリーライター。得意ジャンルはサブカル、テレビ、音楽、現代アートなど。デイリーポータルZ 新人賞2017で佳作。自称・無料イベントマニア。

連れ去りや暴行、強制わいせつなど、子ども・女性を狙った犯罪は後を絶ちません。「自分の身は自分で守る」とよく言いますが、実際のところ、どう対策すればいいのでしょう?

そんななか注目されているのが、防犯アプリ「ガッコム安全ナビ」。全国の事件・事故の情報を地図上から確認できるサービスで、痴漢や不審者、詐欺、声かけなど31種類の事件がアイコンやアバターで表現されており、だれでも直感的に使えるのが特徴です。開発元であるガッコムの代表取締役社長・山田洋志さんに、アプリの使い方や犯罪の傾向について聞きました。

家の近くや通勤・通学ルートにも不審者情報が

——「ガッコム安全ナビ」とは、どういうサービスなのでしょうか?

全国の自治体や警察から配信される事件・事故情報を、地図やアバター、アイコンで直感的にわかりやすく確認できる、無料の治安情報サービスです。事件・事故の多いエリアや時間帯、傾向などを認識していただき、利用者や家族の安全・安心を守る目的で運営しています。

——なぜこのようなサービスを作ったのでしょうか?

もともと当社は、学校教育の情報を掲載するサイト「ガッコム」の運営からスタートしました。学校の情報といっても、学校に対する評判を集めた口コミサイトではなく、「先生は何人いるか?」「教科書は何を使っているのか?」「校庭は土か芝か?」などの基礎情報を提供しています。いわば“学校版の帝国データバンク”で、どの学校に進学するか、客観的なデータをもとに選べるサービスを目指しています。

ガッコムを運営していく中で保護者から多く寄せられたのは、「周辺の治安状況も知りたい」という意見でした。そこで、実際の事件情報を掲載し、どこが危険な場所なのか可視化するサービスを提供しようと考えたんです。「ガッコム安全ナビ」は2016年にWeb版 からスタートして、2018年にiOS版 、2019年にはandroid版 アプリを公開しました。いまWeb版は月間100万人以上にご利用いただいており、認知度も上がっています。

——Web版とアプリ版には、どのような違いがあるのでしょうか?

Web版では、ユーザーの現在地や生活環境に合わせた情報の配信ができないんですよ。しかしアプリであれば、「マイ条件」機能でエリアや事件種別、時間帯など、気になる条件を設定できます。さらに、事件が発生した際にお知らせしてくれる「プッシュ通知」もアプリならではの機能です。

——不審者や治安情報は、どこからどのように集めているのでしょうか?

警察や自治体が一般向けに発信している情報を収集しています。事件詳細の中に「警視庁 メールけいしちょう」など、必ず出典元を明記しているので、ご確認ください。

——アプリは全国どこでも使えるのでしょうか? また、地域によって情報の反映に差はありますか?

北海道から沖縄まで、全国どこでも使えます。ただし、情報発信に力を入れている警察や自治体もあれば、そうでないところもあります。また、情報発信していても弊社が把握しておらず、まだ対応できていない市町村もあるので、反映される速度や情報量はエリアによって差が出る可能性もあります。あくまで公的に発信された情報をアプリへ反映させているので、その点はあらかじめご了承ください。

——ユーザーによる投稿機能もあるそうですね。

アプリで投稿できるのは、注意看板、落書き、破損、不安な場所の4種類。客観的な情報だけに限定しているのは、いたずらや間違いを防ぐためです。

不審者情報って、すごくセンシティブな問題ですよね。何をもって不審者と言えるのか、判定するのは非常に難しい。警察では、市民から報告を受けた際に「事件性があるのか、ないのか」の調査や判定を行っているようです。その判断を、警察の代わりに我々が行うのは難しいでしょう。

ですので、ユーザーには「もし不審者や声かけなどに遭遇したら、まずは警察に報告してください。適切な情報であると警察が判断すれば、我々のところにも情報が届いて掲載されます」とお伝えしています。とはいえ、ユーザーからは「警察に言うほどでもないけど、注意喚起的にアプリで投稿したい」といったご要望もいただいており……。今後、不正な利用をうまく排除できる仕組みができれば、投稿内容を拡大していきたいと考えています。

▲住んでいる地域や事件種別など条件を設定できる「マイ条件」や、プッシュ通知、ユーザーによる投稿などさまざまな機能がある

下半身が肌色……痴漢や公然わいせつをアバターで表現

——他の防犯アプリと比較して、工夫されているポイントがあれば教えてください。

特徴としては4つ挙げられます。まず1つ目は情報量ですね。全国30万件以上の事件を掲載しており、ここまでの情報を取り扱っているスマホアプリは他にないと思います。

2つ目は速報性。警察の発表は事件発生から数時間後、場合によっては翌日になる場合もあります。それを受けて我々が編集し掲載するのですが、なるべくタイムラグが発生しないようなシステムを組んでいます。

3つ目は、検索性と絞り込みの精度。掲載情報には不審者の特徴やエリアごとにタグをつけているので、例えば「青い自転車の不審者」と検索すればすぐに表示されます。また、学区や時間帯などさまざまな条件で絞り込めるので、必要な事件だけを抽出することが可能です。

4つ目は視認性。アバターやアイコン、グラフなどを使って、視覚的にわかりやすく表現しています。

——どんな人が利用しているのでしょうか?

利用者は30代がメインです。男女比は女性がやや多いのですが、男性にも使ってもらっているのが意外でした。想定しているユーザー層は「お子さんを持つ母親」と「一人暮らしの女性」なので、そうした方への認知度をもっと高めていきたい、と考えています。

——個人だけでなく、防犯活動を行っている団体にも広がりつつあるようですね。

例えば、防犯活動を行う民間団体さんからは、「安全ナビで事件が多い場所を確認し、パトロールのコースを決めている」とのご報告をいただいています。あとはPTAや自治会の方から、「安全ナビを紹介したい」と問い合わせをいただく機会も増えているので、お役に立てているのかなとは思います。

——ユーザーからはどんな感想が寄せられていますか?

多くの方が、「自分の生活区域でこんなにたくさん事件が起きているとは思わなかった」とおっしゃいますね。女性やお子さんは、危険な目や怖い思いをした経験が比較的多いかもしれません。しかし男性はそれほど遭遇する機会がないし、あまり意識しないでしょう。「まさか、家の近くでこんな事件が発生しているなんて……」という感想は多く寄せられます。

アバターについて言及されることも多いですね。抽象的でありながら特徴を捉え、かつ見た人が不快にならないようにするにはどう表現すればいいか。その点はかなり苦労しました。

▲服装、髪型、持ち物など、1000種類以上の特徴や色を組み合わせ、アバターで表現している

物をあげる声かけ  1位はお菓子、2位はお金

——――サービスを運営していく上で、事件・事故のデータが蓄積されているかと思います。治安情報に関する傾向などあれば教えてください。

下記のグラフは、物やお金をあげる声かけの統計データです。「お菓子をあげるから……」という声かけは、昔も今も変わらず多いことが分かります。一方、「お金をあげるから○○しない?」という声かけも多いですね。

▲物・お金をあげる際の声かけ内容をまとめたグラフ。対象は大人も子どもも含めており、1位はお菓子、2位がお金となっている

声かけにもいろんな種類があります。「連れ去ろうとする」「個人情報を聞き出す」などもあるなかで、意外と多いのが「卑猥な声かけ」です。

下記の図は、卑猥な声かけがどの部位を対象としているかを示した分布です。「お尻を触らせて」「下着を見せて」「手を握らせて」といった声かけが多くなっています。

▲「卑猥な声かけ」の対象となる体の部位。1位は尻・下着、2位は手、3位が口となっている

発生時間を調べることで見えてくる傾向もありました。子ども被害は登下校時、痴漢は夕方から深夜にかけて、ひったくりは午前中が多い、などの結果が出ています。

▲子ども被害、痴漢、のぞき、ひったくりの発生時間分布(グラフの一番左が0時、一番右が23時)

PTAや町内会で集めた情報をオープンに

——犯罪に遭わないようにするには、どうすればよいでしょうか。気をつけるべきポイントを教えてください。

一般的には、人通りが多い道路から人気のない路地に入った、まさにそのときが危険だと言われています。痴漢や声かけをしようとする犯罪者の観点で考えれば、人目につくところで犯罪は起こしませんし、まずは人通りが多いところでターゲットを探すことが多いようです。その後、人がいない場所へ行くのを見計らって犯行におよぶ……といった流れですね。

それ以外にもさまざまな要素があり、どの場所が危ないかを見つけることは、専門家でもそう簡単なことではありません。とはいえ、家の近くや通勤・通学途中にも「この道を曲がった瞬間が危ない」など、気をつけるべきスポットがあるはずです。

アプリを利用すれば、どこで事件が多いか、どこが危ないかが一目でわかるので、生活範囲における危険な場所をあらかじめ把握しておいてください。その場所はなるべく通らない、通る場合はいつも以上に注意するなど、対策をしてもらえればと思います。

——ガッコム安全ナビが目指すところ、今後の予定などあればお聞かせください。

自治体との連携を広げていきたいですね。最近は独自にアプリを作ったり、治安情報をシェアしたりしている自治体も増えているようです。でも、わざわざお金をかけて新たなシステムを作るよりも、安全ナビに情報提供していただければ、すぐに掲載できますから。うまく使っていただければありがたいです。

また、PTAや町内会なども独自に情報を集めていますよね。ところが、せっかく集めたその情報は、親御さんや町内会メンバーへの周知だけで終わっており、未就学児の母親や一人暮らしの女性には伝わりません。安全ナビを活用することで、治安情報をもっとオープンにシェアできる状況にしていきたいと考えています。

警察および市民からの情報を合わせ、治安情報のインフラサービスとして、犯罪被害防止に少しでも貢献していきたいですね。

事件は身近な場所で発生している

筆者もアプリをダウンロードして使ってみたのですが、想像以上に事件が多く、驚きました。声かけ、公然わいせつ、ひったくりなど……普段なにげなく歩いている道でも、事件は発生しているのです。

また、女性や子どもが被害に遭う頻度は、男性が想像する以上に多いことも改めて認識できました。アプリは無料でダウンロードできるので、まずは身近な場所や通勤・通学ルートを検索してみてください。


(編集:ノオト

取材協力:株式会社ガッコム




169 件のコメント
1 - 19 / 169
画期的なアプリだと思います。
このアプリで犯罪が減ると良いですね。
こどもがいる身としては期待します!
こういう感じのアプリはこれからの時代には必要になりますよね。
本当は犯罪が無くなることが一番なんですけどね。
危険性の高い場所がすぐに分かるのが良いですね。
凄いアプリですねぇ👏
危険な場所がわかり、犯罪の抑止に繋がるといいのに😊
小さいお子さんをお持ちの方は、活用出来そうですねっ👍
犯罪のない世の中になるといいですね♥️
退会済みメンバー
退会済みメンバーさん
ビギナー
素晴らしいアプリですね!しかし田舎では・・・・(^^;
とても良いアプリだと思います。

ただ時系列がわかりにくく、古い事件も同じ表示に見えますので新しいものと数年前
の事件は分けた方がいいかと・・
「事件は身近な場所で発生している」
う~ん、ナイスなコピー👏

「事件は現場で起きている」を彷彿とさせる名文句になるといいですね(#^^#) ガンバレー☆彡
一覧で地域の情報を見られるのはいいですね! 内容や種類や時期等で情報の取捨選択が細かく設定できるようにアップされていくことを期待します。
住んでいるところが田舎で商店街も閑散としていて、子供を見守る一般の人もだんだん減っていく現状ではこういうアプリを有効に活用するのも一つの手段かもしれません。
子どもは地域でまもらないとね
非常に参考になります。早速アプリをインストールしました。
普段はDigiPoliceを使っているのですが、こちらの方が分かりやすく見やすいですね。
ただユーザー登録手順がめんどくさいです。登録時点で脱落する人も多いのでは?と感じます。
基本は親が登録して、子供はそのログイン情報を使うのでしょうか?
子供のメールアドレスを必要とするなら「何のために?漏洩対策は?」と、逆に不安にさせてしまうシステムかとも思いました。
すごい!すごい!
これはとっても助かりますね!
物をあげる声掛け、それぞれの犯罪の時間帯、
勉強になりました。
良さそう。使ってみます
こんなアプリあったんですね!
ちょっと使いたいかも!
これは凄いですね。
使ってみたいと思います。
大阪であれば、大阪府警が配信している『あんまちメール』の不審者情報等も反映させることが出来れば。
地方の田舎に住んでますが、うちの近所の情報まで出るのであれば利用してみたいと思いました。
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