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一人でカップ焼きそばを食べながらSNSを見ていたら、すごく悲しい気持ちになってしまった。InstagramやFacebookには、「濃いメンツで飲んでまーす」「いつメンで焼肉!」といった言葉と共に、写真が投稿されている。その写真に写るおいしそうなご飯とキラキラした笑顔。
対する私は、カップ焼きそばに納豆を入れた全くインスタ映えしないご飯をむさぼり食っている。納豆焼きそばはおいしいけど、濃いメンツに囲まれながら食べる納豆焼きそばのほうがきっとおいしいはず……。
SNSには、膨大な量のご飯の写真が投稿されている。その中でも一番私の心をえぐるのは、“匂わせ写真”だ。
匂わせ写真とは、ご飯を撮っているように見せかけて、一緒に食べている誰かの存在を“匂わせる”写真のことだ。遠回しに幸せをアピールする、SNSにおける高度なマウンティング・テクニックである。と、暗い部屋でご飯を食べている私は感じている。
誰と食べているかは決して明かさない。しかし、確実に誰かがいる。写真に写っているのが恋人なのか、ただの友だちなのか。投稿日は今日、つまり休日。タグ付けされている店は表参道にある。デートか。デートならデートってハッキリと言ってくれ。そのほうがこっちも楽だから……。
投稿された写真の考察が止まらない。かといって、「彼氏?」となれなれしく聞ける仲でもない。
匂わせ写真とは、見る側の想像力を掻き立てる写真なのだ。なんだそれ、アートじゃないか。もしかして、匂わせ写真ってアートだったのか。
私も匂わせ写真を撮影してみたい。でも、誰かとご飯に行く予定は全くないし、行く気すらない。じゃあ、作るしかない。匂わせ写真が撮れるマシーンを……。
倒置法を使ってかっこつけてみたものの、どうやって作ろう。いない人をカメラに写すには……やっぱりハリボテを作るしかない気がする。
例えば、ハリボテの向かいに鏡を置いて、その鏡に映ったハリボテを撮影するのはどうだろうか。間にお皿やコップを置けば、鏡に映ることで2セットあるように見える。すげえ。なんか今日は頭が冴えている日だ。何を言っているか分からないかもしれないが、ひとまず私を信じてついてきてください。
木材を組み合わせ、フレームを作る。設計とかはよく分からないので、女の勘で工作を進めていく。
鏡を板に貼り付けて……。
2つの板を向かい合わせに取り付ける。びっくりするかもしれませんが、この状態がほぼ完成形です。
フリー素材の中から、匂わせたい対象となる人物を選ぶ。僭越ながらムキムキな方を選ばせていただいた。
男性を板に貼り付けさせていただく。モデルの方に申し訳ない気持ちになる。
鏡を正面から撮りたいので、ハリボテのほうにカメラ穴をあけた。あんまり考えずに作り始めたのに、特にトラブルもなくトントン拍子で工作が進んでいく。匂わせの神が私の味方をしているのだろうか。ありがと……。
匂わせマシーンが完成した。
仕組みは簡単。男性の写真を貼り付けた段ボールには、穴があいている。写真面の裏側の穴に、スマホのカメラレンズの位置が合うようにセットする。そして、段ボールと鏡の間に一人分のご飯を配置。ご飯が鏡に映ることで、カメラ越しには二人分のご飯があるように見えるのだ。
夏休みの自由研究感のある見た目になってしまった。でも、いいんだ。私は人生が夏休みみたいなもんだからさ……。
これは、お昼ご飯に食べる予定の豚しゃぶサラダ。この写真をInstagramにアップしたところで、せいぜい“2いいね”くらいだと思うが、匂わせマシーンを使えば、“20億いいね”は軽く付く写真が撮影できるはず。
これが撮影した写真だ。
こ、これは。
手前味噌だが、かなりの匂いが漂ってくる写真が撮れたぞ……。「ボディメイク中のため糖質を控えている恋人。そんな彼を思ってサラダを作ったの。記念にパシャリ」という写真にしか見えない。本当は、コンビニで買ってきたサラダをこのまま食べたら悲しさが増すので、お皿に移しただけなのに。
匂わせマシーン最高!
インスタに投稿するシミュレーションをしてみよう。
この写真、“200億いいね”が付くレベルだぜ……。
そして、不思議なことに、彼と一緒にご飯を食べた記憶が、頭の中で作り上げられていく。この写真を見ていると、彼が豚しゃぶサラダを「うまいうまい」と食べる映像が浮かんでくるのだ。
私、大丈夫ですかね? このマシーンによって精神が崩壊しないだろうか。
カメラ穴に気づかれたら台無しではあるが、きっとみんな気づかないよね。
でも、なんだろ。この穴をじっと見ていると、人間の中にある深淵に吸い込まれそうになる……。危ない。
撮影風景を引きで見ると、なんだか物悲しさが増した。でも、偽の記憶で人生とSNSを充実させるためにも、匂わせマシーンを活用していくぜ。
私は気づいてしまった。男性の写真を変えることで、さまざまな匂わせができるということを。
フリー素材サイトを駆使して、いろいろな男性の写真をコピーしてみた。この世のフリー素材モデルの数だけ、私は匂わせ写真を作ることができる。
半裸のモデルを見つけたので、「これだ!」と叫びながらダウンロードボタンを押した。
匂いの元が裸になるだけで、かなりの想像力が掻き立てられる。これを深夜に投稿したらどうなっちゃうんだろう……。最近はInstagramで「親しい友達限定」の投稿ができるようになったのだが、限定で投稿することで、さらに意味がでてくるぜ……。
まじまじ見てると、「オムライス」の言葉もなにかの隠語なんじゃないかとか思い始めてしまった。自分で作った匂わせ写真に、自ら狂わされている。
お金持ちだ。円マークを宙に浮かせている。そこに「ありがと」の文字、そして二つのワイングラス……。
自分で撮影したけれど、意味が分からない。“お金持ちとワインを飲んでる”ことを匂わせたかったのだが、“円マークを宙に浮かせるマジシャンとワインを飲んでる”ようにしか見えない。なんだろ、なんか違った。全く匂ってこない。無臭。無臭の写真だ。
匂わせ写真を撮るのは、かなり難しいことが分かってきた。ネットで見かける匂わせ写真は、スキルとセンスの賜物だったんだな。
こ、これは……カー◯ィじゃないか……!
どう考えても、カー◯ィとワインを飲んでいるようにしか見えない。アルコールを飲むイメージはないけど。
全世界の「濃いメンツで飲んでまーす」という文言と共に、飲み会の写真をアップする方たちよ。カー◯ィ以上の濃さはないだろう。思い知ったか。
私は、一体なにをしているのだろう。人生ってなんだろう。こんなことをしている時間があれば、フットサルとかバスケで友だちを増やしたほうがいいんじゃないだろうか。
……でも、友だちの数や恋人の有無よりも大切なものはたくさんある。匂わせマシーンを作ることは、その中には入らないけど……。
カービィの口から覗くカメラの闇に吸い込まれそうになるぜ……。
匂わせ写真を夢中になって撮影していたが、これは沼のようなものだ。一度入ったら抜けられなくなってしまう……。
モデルによっては無臭の写真になることもあったけれど、でも、このマシーンの可能性は無限大である。あんなこともこんなこともできそうだ! 具体的にはあんまり浮かばないけど!
そして、半裸とオムライスの写真をインスタグラムに投稿してみたものの、誰からも反応がなかった。もしかして、匂いが届かなかったのだろうか……。それともみんな私に興味がないのかな……。
ちなみにカップ麺は、匂わせマシーンをつかったところで、カップ麺の哀愁を保ったままだった。私も、カップ麺のように何にも惑わされずに生きていきたい。
(編集:ノオト )
リアルに香水か何かの匂いがするのかと(^_^;)
匂わせマシーン……よく思いついたもんだなー。
と、感心しました。
一枚目の写真の腕毛にビックリしたけど
こういうことだったんですね♪
お疲れ様です。(笑)
いつかリアルな王子様✨が現れらといいですね(^-^)
結構良いですね!!本当に相手が居るみたい!でも半裸のは……。
仕事中ながらしっかり笑わせて頂きました♪
ご馳走さま。
次は"風"じゃない写真撮れる発明をお願いいたします(恋人募集中)
文字の配置などを工夫すれば、まるで超...まではいきませんが、完全アリバイ工作ですね。
アリバイ...といえば、大阪・梅田の阪神百貨店にあった「アリバイ横丁」を思い出すのは、きっと...私だけではない...ハズ。
これ、グラスに上手にストロー刺して撮ると2本のストローで恋人飲みしてるようにできるかも(^_^;)
友達おらんのか???
あとはカメラ穴ですよね。拡大するとバレちゃうから。
ダンガリーシャツ着たメンズ写真のボタン穴の一つのようにしたらどうですかね。
アレンジをいろいろ考えるのも楽しいですね(^^)♪
そういう私は一切写真を投稿しないので匂わせも必要ないのですが(^^;
この執念は、どこから来てるんですか?
会社で見てしまって笑いこらえるの必死でした。
こんなの思いつくなんてなかなかのツワモノですね(笑)