アリス殺し
原作の「不思議の国のアリス」はなんだか不気味で苦手だった。不思議の国の言葉で言うときっとわたしは「まとも」だったから不気味に感じたのかもしれない。不思議の国は頭のおかしな人達が住人として国を作っているからだ。
小林泰三作「アリス殺し」は憧れる先輩にすすめて貰った作品です。3年近く前に働いていた職場で私の指導をしてくれていた先輩。それから実際に作品にであって手を取るまで長かった、楽しみにしていました。
ミステリ好きには堪らない、小林泰三の世界。何作か読んでいたので「絶対に忘れないぞ」と意気込んで伏線らしき登場人物や言葉など気に留めながら読み進めていたのに最後の最後、種明かしにたどり着くと「ああ…っ」と悔しい呻き声を出してしまった。毎度のことだけれど、その悔しさと作り込まれた物語の謎、謎を隠すための世界の複雑さに読みおわった後もクラクラする。まずこの作者の頭の中はどうなっているんだ?と思うほど登場人物の作り込みが凄い。ページに対する会話が、占める割合が多い。ほぼほぼ「これはいらないのでは?」と思うようなやりとり。不思議の国の住人は頭がおかしいからだ。同じような会話が続く。けれどそのやりとりが面白い!!人物のキャラクターと作者の言葉遊びの巧みさが飽きさせないのかもしれない。そしてその会話の数々に埋れている伏線を見落としてしまう。「楽しい!面白い!」が謎解きを邪魔してくる。
完全に世界に引き込まれて身を任せてしまう。
小林泰三の作品はディズニーランドみたいなのだ。頭の中で計画していた「パークのまわりかた」を入場すると忘れさせるワクワク昂る衝動に身を任せるしかなくなる。
それでもなんとか頭を回転させて推理するもそれを上回る展開になるから私に勝ち目はなかった。
更にはこの作品の特徴の1つにある、夢の世界と現実世界という設定にも頭を使わなくてはいけなかったので完全にキャパオーバーだった(これがまたとても面白い!)作者の頭の中は本当にどうなっているんだろう、人物の書き分けと世界の書き分け、物語も謎も組み込んでいかなくちゃいけないし、しかもその全てが魅力的で読む手も止まらなかった。凄く好き。それもさることながら、残虐なシーンもとても生々しく描写も細かくかつ不思議の国ではポップに仕上げていて読み応えがあった。現実世界では人の汚い風態やらリアルなパワハラの様子までまさに『底辺の人間』を活字であらわすのが得意だなあと改めて思いました。過去作でセピア色の凄惨のなかの「ものぐさ」という作品の部屋の中や心理描写が凄く細かでまるで映像を見ているかのように想像が安易にできた。今回もそれで読む手が止まらなかった。
『原作が大好き』な人にはすすめられないほど世界観やキャラクター、細々とした原作のエピソードがトリックに使われているほどこの作品は不思議の国のアリス。私はその不気味さの中で血の匂いがこびりつくほど人が殺されるこの作品がお気に入りになりました。
ビルがキャラクターの中でお気に入り。間抜けで自信がなくて、それ故に純朴で悩ましげで愛らしい。
最後の最後に出てくる女王の殺し方がとてもポップ。原作の不気味さが増し増しに感じられた。
お疲れ様です。
地上に降りた最後の天使…
そのアリスじゃない
それ堀内孝雄のソロ(^^;
職業病の水銀中毒者の帽子屋と発情期のウサギが出てくるのですから。
どちらも、慣用句があるくらいぶっ飛んだキャラだったりします…。(汗)