冷笑から当たり前になるEsg投資
香港の運用会社の方と昼食を共にしました。話題がESGに及ぶと、その人は苦笑いしながら「最近は石油危機で石炭も石油もフル稼働ですから、ESGは風前の灯火だと言われます。顧客の前で口にすると、wokeだと冷笑されることもあります」と話しました。確かに欧米では反ESGの政治的圧力が強まり、メディアの記事数も激減しています。
しかし彼女は続けました。「表面は静かですが、水面下ではむしろ資金が集まっています」。国連の責任投資原則PRIの署名機関は5,261、運用総額は約140兆ドルに達し、世界の株式時価総額に匹敵します。日本でも2023年以降、国民年金基金連合会などが新たに署名し、むしろ増加していますと指摘するのです。
印象的だったのはリターンの話です。「当社日本株ESGポートフォリオは昨年、TOPIXを1.8%上回りました。理由は単純で、エネルギー価格高騰時に省エネ技術を持つ企業が選ばれ、気候リスク開示が進んだ企業は調達コストが下がったからです」。
これは日本の年金積立金管理運用独立行政法人GPIFの最新報告とも一致します。日本株のESG運用の多くがインデックスを超過しているのです。
彼女は「ESGはもはや理念ではなく、開示義務という制度です」と強調しました。
日本では2027年3月期から温室効果ガスの開示が義務化され、国際サステナビリティ基準審議会ISSBは自然資本の基準作りを進めています。ふくおかフィナンシャルグループのように、ESG評価で貸出金利を下げる銀行も出てきました。
冷笑されるのは、ESGが流行語だった時代の名残です。実際には、語られなくなったからこそ、当たり前のリスク管理として根付いています。石油危機で化石燃料が見直されても、長期のエネルギー安全保障を考えれば、資源を持たない日本や香港こそ代替技術への投資は不可欠です。
香港の投資家の話を聞いて、ESGは死んでいないと確信しました。むしろ騒がれなくなった今が、静かに仕込む時期なのです。

