株価は5万円台に、しかし国債需給は緩む
10月17日、日経によると、政府が発行する国債に十分な需要が集まらないリスクが浮上しています。25年度に銀行や生命保険など民間の投資家向けに供給する国債の金額は61兆円と前年度より45%増える見通しだそうです。
日経平均は50,000円台突破と高い水準にまで到達しましたが、この報道をみると今の季節と相場を重ねてしまいます。
国債に十分な需要が集まらないリスク・・単なる債券市場の話ではないのです。私たちの資産形成にも深く関わる、大切な示唆に満ちています。
かつては日銀が大きく支えていた国債市場で、これからは民間が前年度を超える量を引き受けることになるとどういうことになるのでしょうか。過去にはもっと多くの国債が民間に消化された時期もあります。
しかし、当時と今とでは、経済の環境がまるで違います。今はインフレが進み、国債を保有すると実質的に価値が目減りしてしまっています。
このままでは、誰も国債を買いたがらなくなるかもしれないのです。そうなれば、国は国債を売るために金利を引き上げざるを得なくなります。
金利が上がれば、株式市場には逆風が吹きます。
今の株価水準は、そうしたリスクを十分に織り込んでいるとは言い難いとおもえます。
プライム株式市場全体の益利回り5.66%から国債利回り1.675%を引いた3.985%が株式のリスクプレミアムです。
ここで、インフレ率3%のときに、合理的な投資家の求める国債利回りは、利ざや0.5%を確保するとして3.5%となります。
つまり、国債を難なく消化するためには計算上、現在の利回り1.675%から1.825ポイントの上昇が必要です。
国債を買ってもらうために金利が1.825ポイント上昇し3.5%に達した場合、リスクプレミアムが一定と仮定すると、3.985%を加えた7.26%が妥当な益利回りとなります。
この益利回りでEPS(株価/PER:50512.2/18.05)=2798.5円を割ると、妥当な株価は38546円となります。
現在から考えると24%ほどの下落です。もちろん、市場は生き物なので一時的に上昇することもあるでしょう。しかし、根本的な環境の変化を考えると、長い目で見れば調整局面に入る可能性の方が高いように思えます。
国債利回りが3.5%になるという想定はおかしくおもえるかもしれません。しかし、国債の需給が緩む状況で、今のような利回りで推移するとは思えません。
秋の陽は、夏の輝きを失い、次第に弱まっていきます。相場の熱気も、いつまでも続くものではありません。今は堅調に見える市場でも、いつ風向きが変わるかわかりません。浮かれすぎず、冷静にリスクを見つめながら自分の投資と向き合う時と思えてなりません。

