米国株式市場にとっての朗報と、その裏に潜む懸念
米国の中央銀行である連邦準備理事会(FRB)が、量的引き締め(QT)を近く停止する可能性がありそうです。
これは、短期金融市場における資金の逼迫を未然に防ぐための措置とされており、金融市場にとっては朗報です。
QTとは、FRBが保有する米国債などの資産を売却したり、満期を迎えた債券の再投資を控えたりすることで、市場から資金を吸収する政策です。
FRBは2022年6月からQTを開始し、段階的に資産の圧縮を進めてきました。しかし、最近のパウエル議長の講演では、準備預金が十分な水準に近づいていることを踏まえ、QTの停止を示唆する発言がありました。
実際、FRBは2025年4月から国債の圧縮ペースを月間最大250億ドルから50億ドルへと引き下げており、QTの減速は今回で2度目となります。これは、2019年に短期金利が急騰したような市場の混乱を避けるための予防的措置とされています。
このような政策変更は、米国債の需給改善につながり、金利の低下を促す可能性があります。実際、QT停止の示唆を受けて長期金利は低下し、株式市場は上昇するなど、投資家の期待が高まっています。
市場参加者の間では、2026年1月にはQTが完全に停止されるとの見方も広がっており、債券市場にも好影響が及ぶとされています。
しかし、このような金融緩和的な動きには副作用もあります。
QTを停止すれば、FRBのバランスシートは巨額のまま維持されることになり、過剰な資金供給が続く可能性があります。その結果、株式市場にはさらなる上昇圧力がかかり、すでに史上最高値圏にある米国株がさらに高騰することも考えられます。
このような状況は、いわゆる「バブル」の形成につながる恐れがあります。実体経済との乖離が進めば、将来的な調整局面、暴落のリスクも高まることになります。
また、過剰な資金供給はインフレの再燃を招く可能性もあり、金融政策の舵取りは一層難しくなるでしょう。
米国株式市場にとって、QT停止は好材料であり、短期的には安心感をもたらします。しかし、その裏には慎重な判断が求められる課題も潜んでいます。
投資家としては、目先の上昇に浮かれることなく、冷静な視点を持ち続けることが重要です。市場の熱狂に流されず、長期的な視野で資産形成を考える姿勢が、今こそ求められているように思えます。

