電気代がマイナスになれば、日本の電力事情は好転する
夏の晴れた日は太陽光発電にとって理想的です。しかし、晴れた日の昼間に太陽光パネルが大量の電気を生み出すと、供給が需要を上回り、電力の安定性を保つために、せっかく発電した電気を一時的に止めてもらう出力抑制という調整が行われます。
これは、発電事業者にとっても、エネルギーの有効活用という観点からも、もったいない状況です。
この課題を解決するための一つのヒントが、ヨーロッパなどで見られるネガティブプライス(マイナス価格)という制度にあります。
これは、電力の供給過剰な時間帯に、電気を使うと逆にお金がもらえるという仕組みです。ヨーロッパでは、豊富な再生可能エネルギーの導入と需要の減少が重なることで、実際にこのような価格が発生することがあります。
日本でも、電力供給が余剰になる時間帯に電気代がマイナスになるという仕組みを導入できたらと思います。
マイナス価格がもたらす需給調整の可能性として、この制度は、電力システムにおける需給調整のあり方を根本的に変えるでしょう。
ブルームバーグNEFのレポートによれば、太陽光発電の導入が顕著な国々では、ネガティブプライスの発生が今後も増えることが予測されています。これは、電力市場がより柔軟な需給調整を求めている兆候でしょう。
具体的には、ネガティブプライスが導入されれば、以下のような変化が期待できます。
消費者行動の変化: 天気の良い昼間に電気を使うことが経済的なメリットになるため、電気温水器や蓄電池の充電、洗濯乾燥機などの家電をこの時間帯に集中して使う家庭が増えるでしょう。
企業活動の変化: 工場や商業施設なども、電力需要の大きい作業を価格の安い時間帯にシフトさせることが可能になります。
スマートグリッドの進化: VPP(仮想発電所)やAIを活用した電力管理システムが普及し、電気の需給バランスをより効率的に、かつ自動的に調整できるようになります。
これにより、これまで強制的に行われていた出力抑制は、市場の力によって自然と解消に向かう可能性があります。つまり、誰かに負担を強いることなく、太陽の恵みを最大限に生かしながら、電力の安定性を保つことができるのです。
電気代がマイナスになるという考え方は、おかしなものと思われるかもしれません。しかし、これは、海外では現実に起きている現象であり、電力システムが再生可能エネルギーの大量導入に対応するための、一つの進化の形でしょう。
豊かな太陽光資源を無駄にすることなく、私たちの暮らしや産業の活性化に繋げるために、この柔軟な価格メカニズムの導入について、真剣に議論する価値があるのではないでしょうか。
ブルームバーグNEF「欧米で頻発する電力のマイナス価格とは何か? 再生エネとの深い関係を考察」など参照。
なお、預金金利がマイナスになれば、消費回復はもっと早かったと思っています。



現在はマイナスにこそなりませんが、0.1円までは下がります。上のグラフは今年6月8日の電力市場価格(東北地方)ですが、朝7時から15時までずっと0.1円でしたよ。

ただし、この安い市場価格の恩恵を受けるためには、契約方式を固定料金から市場連動料金に変更しないといけません。東電はじめ大手電力会社は全て固定料金なので、新電力の中から市場連動料金の会社を探して契約し直す必要がありますが、市場連動料金の対象はほとんどが法人契約です。
それと、市場連動料金のデメリットは、太陽光発電が弱くなる夕方以降とか雨や雪の日には電気料金が高騰するリスクがあるということです。
上のグラフは今年8月6日の電気料金ですが、雨の日で昼間もあまり安くならず、夕方の需要が高まる時間帯には40円近くまで高騰しました。
こうしたリスクを許容して市場連動型に移行する法人がどれほどあるか、ですね。
(ちなみに、私が代表理事をしている法人は今年から市場連動型に変更しました。)
>> Dark Side of the Moon さん
九電管内を念頭に置いています。ご指摘の危険性はそうでしょう。そのために、蓄電池で電気をためておけばと思えます。
蓄電池の普及にも寄与するのではと考えています。管内はしばしば出力抑制をしていました。
そうですか。市場連動に変更ですか。先物も併用されているのでしょうね。
>> sawa875 さん
確かに、マイナス価格の時に蓄電して夜間に使うというのはありですが、蓄電池を備えている家庭のほとんどはソーラーパネルを載せているので、昼間に過剰発電してしまった余剰電力を蓄電するので精一杯なケースが多いようですね。また、マイナス価格になる電力を蓄電するためだけに蓄電池を導入するほどにはマイナス価格の時間帯は多くないようです。(特に真夏や真冬はほとんどゼロ)
それと、将来的には供給サイドが十分な容量の蓄電池を備えることで販売価格の安定化を目指すようになると思いますので、マイナス価格がいつまで続くかは不確定です。(蓄電池価格は今後大きく下落していくものと予想しています。)
>マイナス価格の時間帯は多くない
そうであってほしいです。ただ、投稿では太陽光発電に限りましたが、自然エネルギーは今後どんどん増えそうです。九電管内は地熱もあるし、風力発電もいくつか計画されていると聞きます。
>マイナス価格がいつまで続くかは不確定です
確かにそのとおりです。蓄電池価格がどうなるかも分かりません。個人の意見としては下落してほしいですね。
マイナス価格による利益がどの程度あるかなとは思います。ただ、電力価格のマイナスは実現すれば経済全体へのメリットが大きいことには変わりはないでしょう。
>> sawa875 さん
>自然エネルギーは今後どんどん増えそうです。私もそうなることを期待しています。
ただ、それがマイナス価格で販売するということになると、自然エネルギーをさらに導入しようとする意欲に結びつきにくのではないでしょうか?
安くなる蓄電池をフル活用して賢く参入していって欲しいと思います。