掲示板

労働分配率の低下とグローバル化の関係

私たちが会社で働いて、その会社がたくさん利益を上げたとき、その利益のうち、どれくらいがお給料として分け与えられるか、生活にかかわる大切な問題でしょう。

会社が生み出した価値(利益など)の中から、働く人たちのお給料(人件費)として支払われる割合のことを労働分配率といいます。会社が焼いたパイのうち、従業員に切り分けられる分、と考えると分かりやすいかもしれません。

最近、この従業員の分のパイが、だんだんと小さくなっている、というデータが発表されました。

2024年度の労働分配率は53.9%で、これはなんと51年ぶりの低い水準だそうです。その一方で、会社が貯めているお金(内部留保)は、同じ時期に636兆円と過去最高を記録しています。特に、大きな会社ではこの分配率が36.8%と、さらに低くなっているのが現状です。

もちろん、2025年の春には平均で5.25%という高い率でお給料が上がったという明るいニュースもありました。しかし、それでもなお、この分配率全体の低下を押しとどめるまでには至らなかったのです。

こんなことが起きている大きな理由の一つに、会社のグローバル化があります。

今の日本の会社は、日本国内だけでなく、海外にも工場や支店をたくさん持っています。そして、そうした海外の拠点からも、たくさんの利益を上げています。その海外で稼いだお金も、もちろん会社全体の利益として計算されます。つまり、会社のパイ全体は、海外からの利益のおかげで、とても大きくなるのです。

しかし、ここで気をつけることがあります。その海外で得た利益は、日本国内で働いている従業員が直接生み出したものではありません。そのため、会社としては海外で稼いだ分を、日本の従業員のお給料にたくさん上乗せするのは難しいと考えがちになります。

結果として、パイ全体は海外のおかげで大きくなったのに、日本で働く従業員に分けられるパイの大きさはあまり変わらない、ということが起こります。

すると、全体に対する割合で見たとき、従業員の分のパイは、以前よりも小さく見えてしまいます。これが、会社の活動が世界に広がるグローバル化が進んだことで、労働分配率が下がってしまう、という仕組みなのです。

もちろん、会社側にも将来何かあったときのために、お金を貯めておきたいという考えがあります。それはそれで大切なことです。しかし、会社が上げた利益が、もっと働く人たちのお給料に回り、そのお給料でみんなが買い物を楽しむようになれば、経済全体がもっと元気になるはずです。

経団連も、会社がたくさんのお金を貯めていることについて、こう説明しています。もしもの時、たとえば大きな不景気が来ても、会社が倒れず、みんなのお給料を払い続けるためには、ある程度の貯金は必要ですと。確かに、私たちが安心して働き続けるためには、会社の経営が安定していることも欠かせません。

しかし、その同じ団体が、こうも言っています。でも、ただ貯めているだけではいけない。その利益を使って、働く人たちのお給料をしっかりと上げていくことも、社会から強く求められてい企業の役目ですと。

つまり、会社自身も、利益を蓄えることと、それを使ってみんなに還元することの、両方が大切だと分かっているのです。

会社の稼ぎ方が世界規模に変わってきた今、その利益をどうやって働く人たちと分かち合っていくのか。会社の未来のための蓄えと、今を生きる私たちの生活を豊かにするお給料の、ちょうど良いバランスを見つけることは、これからの日本にとって、とても大切な宿題なのだと思います。


2 件のコメント
1 - 2 / 2
グローバル企業は世界各地に子会社が有り、そこにも従業員がいる。

 世界各地の子会社授業員に対する、労働分配率はどうなっているのだろうか。?
 世界共通の労働分配率なのか、現地の事情に合わせて子会社ごとに大きく異なるのか。 ?

Screenshot_20250720-203349_2.png

(画像)
日本における労働分配率の決定要因分析
https://www.rieti.go.jp/jp/publications/nts/21j006.html
「これらの結果は、日本企業の労働分配率を上昇させるためには、研究開発投資の促進、産業ロボットやAIなどの新たな技術開発やその利用を支える高等教育や労働者の再教育支援の拡充、そして非正規雇用から正規雇用への移行支援などの政策の必要性を示唆している。」
コメントするには、ログインまたはメンバー登録(無料)が必要です。