経済の波を読み解く ベナーサイクルと次のリセッション
社会や経済には、上がったり下がったりする波があるように感じられます。景気が良くなったり悪くなったり、物の値段が上がったり下がったりという波です。
この経済の長期の波を予測しようとした理論の一つに、有名なコンドラチェフサイクルがあります。
それ以外にベナーサイクルというものがあるので紹介します。
ベナーサイクルは、19世紀のアメリカの農夫、サミュエル・ベナーが1884年に発表した経済の変動サイクルに関する予測モデルです。彼は、農産物の価格や景気変動を長年観察し、独自の法則性を見出しました。
ベナーサイクルが示すのは、主に以下の3つの経済のフェーズです。
儲かる時期(Prosperity): 経済が好調で、投資やビジネスがうまくいきやすい時期。
安価な時期(Cheapness): 物の価格が下がり、景気が低迷する時期。この時期の終わり頃に投資をすると良いとされることもあります。
不況の時期(Hard Times / Panic): 経済が最も厳しい不況に陥り、金融的な混乱やパニックが起きやすい時期。
ベナーは、これらのフェーズが一定の周期で繰り返されると予測しました。特に、不況の時期が訪れるサイクルを重視し、過去のデータを元に、将来の経済の転換点を予言しようとしました。
彼の予測は、農業サイクルや信用サイクル、さらには特定の惑星の運行など、様々な要素を結びつけたものとされています。現代の経済学とは異なる視点から生み出された、ユニークなサイクル論と言えるでしょう。
ベナーサイクルから考える次のリセッションはいつか
ベナーサイクルは、その発表以来、様々な解釈や更新が試みられてきましたが、現代の経済予測ツールとしては、あくまで歴史的なパターンやアノマリー(経験則)の一つとして認識されています。
しかし、過去のサイクルの解釈を試みる一部の論者や投資家の間では、ベナーサイクルを現代に当てはめて次のリセッション(景気後退)時期を予測しようとする動きがあります。
公開されているベナーサイクルのチャートや解説に基づくと、例えば2019年がパニック(不況)の年と指摘されていたり、2023年を高い時期、
そして2026年頃を再びパニックの時期と予測するような見方もあります。
もちろん、これはあくまで一つの歴史的なサイクル論に基づく予測であり、現在の複雑な世界経済や地政学的なリスク、技術革新といった要素を考慮に入れた現代経済学的な予測とは異なります。経済は様々な要因が絡み合って動くため、特定のサイクル論だけで未来を正確に言い当てることはできません。
しかし、歴史を振り返ると、経済には確かに周期的な浮き沈みがあることも事実です。ベナーサイクルは、そのような経済の波を意識し、将来への備えを考えるための一つの視点を提供してくれるかもしれません。
私たちは、来るべき経済の変動に備えるため、このような歴史的な教訓やパターンを参考にしつつも、最新の経済データや専門家の分析にも目を向け、多角的な視点から状況を判断していくことが大切でしょう。
ベナーサイクルが示唆する次の波がいつ来るにせよ、常に変化に対応できるしなやかな経済と社会を築いていくことが求められていると言えるでしょう。
なお、ベナーサイクルに注目するある投資家の意見によれば、2028年のアメリカ大統領選挙に影響が出るタイミングで景気後退が起こると見ているようです。
リセッション確率が高い時期をあらかじめ知っておくことで現金比率を高めるなどの事前準備が可能になかもしれません。

