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祇園祭 山鉾の方向転換方法

河原町通りを巡行する月鉾


京都の祇園祭に行ってきた。

16日は宵山見物。
17日は山鉾巡行見物の予定であったが生憎の雨で暫くはホテルでテレビ中継を見ていた。
これでは埒が明かないと意を決して現場へ行くことにした。 
雨の中粛々と巡行は進んでいた。

巡行の最大の見せ場である辻廻しを見るにつけ自動車大国である日本の山鉾にどうして舵取装置が付いていないのかいつも不思議に思っていた。

祇園祭は京都だけでなく日本全国に数多くある。
その他に曳山、山車といったものもありこれらの車軸は全て固定されていてそのままでは直進しかできないので方向転換するには何らかの工夫が必要である。 

調べてみるといろいろと方法があったのでいくつか紹介する。

あA.PNG

先ずは本家京都の山鉾

地面に割り竹を敷き更に水を掛けその上に車輪が乗るように移動し引綱を引いて方向転換する。
車輪を横方向に強引に引っ張るので車輪に大きな負荷がかかる。

祇園祭事故  .PNG

実際に昨年の鶏鉾では車輪が破損して巡行を取り止めている。
積年の負荷が重なり接合部に緩みができていたのが偶々顕在化したのであろう。

山鉾の方向転換久喜市提灯祭り.PNG

久喜市の提灯祭り

これも割竹を利用したものであるが数本の割竹を2本の桟木に固定して板状にしたものを山車の前に付いている梶棒を少し持ち上げて前輪の下に置く。
方向転換の推力は梶棒に取付いている10人程の人力である。
京都の割り竹を地面に敷く方法よりは合理的である。


一番手っ取り早いのは山鉾を持ち上げることであり京都の祇園祭りでも「山」と呼ばれるものの殆どはこの方式である。
本来「山」は全行程担いで回る舁山であったが車輪を付けることによって曳山となり辻廻しの時だけ担ぐようになった。
これを進化というか退化というか...
地方の祭りでは担ぎ手が集まらず御神輿をトラックの荷台に乗せて巡行する例があるがそれよりはましか。

(博多の祇園山笠では今でも全行程担いでいる。
というか担いだまま走っている。
それだけでなくタイムを競うレースでもある。)

山鉾の方向転換知立市知立まつり.PNG

知立市の知立まつり

前輪や後輪を持ち上げて2輪の状態で回す。
この方法は簡単であるので各地の祭りで見られるが重い(大きい)山車には向いていない。

亀岡祭合体.PNG

亀岡市亀岡祭

心棒で支えて方向転換する。
京都市の隣の亀岡市の亀岡祭では京都の山鉾を一回り小さくしたような山車で巡行している。

上図左側の赤枠で囲まれた心棒は普通は斜めに収納されているが辻廻しの時心棒の上部を引っ張ると垂直に立つ(上図右側)。
そこを中心として回転する。
祭りのくじ改めの後その場で一回転し山車の側面の懸装品を披露するのが習わしになっている。

山鉾の方向転換川越市川越祭り.PNG

川越市の川越祭り
山車の中心をジャッキで持ち上げ全車輪が浮いたのを確認して方向転換する。
この方法では車輪を持ち上げることなく一人で作業できジャッキが心棒の代わりになるので最もスマートで最終的な方法であると思う。

山鉾の方向転換伊賀市上野天神祭り.PNG

伊賀市上野天神祭り

前輪を上げその中間に横向きの小車輪を置き方向転換をする。
小車輪は山車に内蔵してあり逆ジャッキの方法で前輪が浮き上がるまでハンドルを回す。

七尾市の青柏祭り
ここの山車はでか山と呼ばれ京都の山鉾よりも巨大である。
小口20㎝角で長さ8m程の梃子棒を差し込んで前輪を上げその中間に横向きの小さな車輪を取り付けることで方向転換する。


以上幾つかの方法を見てきたが今となっては各々が様式となり伝統となり固定化されているが参加人員の減少高齢化に伴い改善は必須であろう。
川越祭りのジャッキ使用は賛否はあったと思うが祭り存続のためには究極最善の選択であったといえる。

京都の祇園祭にしても割り竹を敷いての辻廻しは道路が舗装された60年程前に始まったに過ぎない(それまでは車輪の重みで土に沈んで樹皮が剥け滑り易くなる柳の木が使われていた)。
今のやり方に固執せずもっと滑りやすい部材に変える等の改善はあって然るべきと雨の中黙々と作業を進めるご苦労を見て思った次第である。





10 件のコメント
1 - 10 / 10
ヨーロッパの馬車だと、両輪の軸がつながってないので、簡単に方向転換できるんですよね。
祇園祭・山鉾巡行の辻回し。
地元の放送局・KBS京都のTV中継で観たことがあります。
非効率な方法かもですが、これもまた祭りの魅力だと思いました。
時間をかけて少しづつ方向を変える様子を見ていると、部材や環境は違えど同じような手法や同じような役割分担を守って伝えていくことが大切なのかな、と。

また祇園祭といえば鱧(ハモ)。
湯引きした鱧を美味しくいただく時候でもあります。
hijiakeさんは召し上がりましたか?
こんな感じの自在舵を取り付ければ楽なのに、といつも思っています。(まあ、それでは盛り上がらないでしょうけど)
https://ameblo.jp/kintoukai-hayashiren/entry-10337047289.html
今回紹介されていない方向転換の究極奥義、それは…
岸和田だんじり祭りの「やりまわし」。

割竹でチンタラ動かしたり、戻し車やジャッキのような小細工なんて一切無し!
ノリと勢いだけでコーナーを一気に攻める!
時には勢い余って民家の屋根をブッ壊すこともあるけどね。
祭りやし、まあええやん。(いいのか?)

大阪の岸和田だんじり祭りは山車を使った祭礼の
「頭文字D」(イニシャル・ディー)です!

<岸和田だんじり祭り 岸和田市公式ウェブサイト>
https://www.city.kishiwada.lg.jp/site/danjiri/yarimawashi.html
hijiake
hijiakeさん・投稿者
ベテラン

>> Nul さん

>非効率な方法かもですが、これもまた祭りの魅力だと思いました。

私も否定するつもりはありませんが辻廻しによって前のグループは先に行き後ろのグループは閊えてしまい祭列が分断され見物していても何も通らない時間が増えたと感じます。
高齢による単なるイラチかもしれませんが30回程見物して過去と比較して得た個人的感想です。

鱧はスーパーで売っているパックされたものはたまに買いますが祇園祭と関係付けて食したことはありません。
鰻は今日(土用の丑の日)のために一匹購入済みです。

コメントありがとうございました。
hijiake
hijiakeさん・投稿者
ベテラン

>> Dark Side of the Moon さん

要は前輪を独立させれば自在に方向転換できますが仰る通り盛り上がりには欠けますね。
それに鉾の重さ10トン以上、車軸長が約3メートル程の物を自在に動かすには梶棒も10メートル位は必要だと思います。

コメントありがとうございました。
hijiake
hijiakeさん・投稿者
ベテラン

>> Nul さん

岸和田のだんじり祭りも好きで略毎年行っていてその迫力に圧倒されています。
スピード命のやり廻しは別格で9月の祭りに行った際改めて投稿するつもりでしたので今回は割愛しました。

コメントありがとうございました。
hijiake
hijiakeさん・投稿者
ベテラン

>> weqtio さん

そうですね
独自に自在に動く前輪に馬を繋げば馬を左右に向かせるだけで馬車の進行方向も自ずと変わるようになっています。
日本に入って来なかったのは鎖国や既に2輪の牛車が普及していた影響もあったのかもしれませんね。

コメントありがとうございました。

>> hijiake さん

前輪も後輪も左右の軸がつながっていないので、内輪差の抵抗を受けずにするっと曲がる。
hijiake
hijiakeさん・投稿者
ベテラン

>> weqtio さん

前輪も後輪も車体に固定されていますので車体=車軸になっていて4輪とも相互に同じ車軸に繋がっていると理解していました。
再考してみます。

コメントありがとうございました。
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