トランプ関税が引き起こす日本の苦境 不況と賃金停滞を甘受する未来か
トランプ氏の保護主義的な関税政策の着地点は見通しにくいものの、悪い方向に向かいそうです。かつては、トランプ関税に市場が動揺すれば、アメリカが政策を見直すだろうという期待もありました。
しかし、現実は異なります。その後の株式市場は回復し、ドルレートも安定しているように見えます。この背景には、保護主義の負担がアメリカと他の国々、特に日本のような貿易依存度の高い国との間で不均等に配分されているという認識があるからです。
経済原理によれば、大国よりも小国の方が貿易から得られる利益が大きいとされますが、裏を返せば、保護主義の負担も小国の方が大きくなります。
アメリカのような大国は、貿易依存度が小さく、国内生産で多くの需要を賄えるため、関税で貿易が制限されても国内生産への切り替えが比較的容易です。その負担は限定的です。
一方で、日本のように輸出依存度の高い小国にとって、関税による貿易制限は経済全体に大きな打撃を与えます。アメリカにとって関税政策は、国内生産拡大という政治経済的なメリットを持つため、長く続くかもしれません。
ここで最も懸念されるのは、対米直接投資の動きです。関税の壁によってアメリカ市場へ製品を輸出することが難しくなれば、日本企業は米国内で生産・販売することで、あの巨大なアメリカ市場へのアクセスを確保しようとするでしょう。
多くの日本企業にとって、関税の壁によってアメリカ市場での売上を諦めるより、コストをかけてでも現地に投資し、アメリカ国内の需要を確保する方が合理的な選択肢となるからです。
しかし、これは日本にとって非常に深刻な影響をもたらします。
まず、日本の雇用環境への悪影響が避けられません。日本企業が海外、特にアメリカでの生産を拡大するということは、これまで日本国内で行われていた生産活動の一部が海外に移転することを意味します。これにより、日本国内の製造業の雇用が減少し、関連産業にも波及する可能性があります。
製造拠点の海外移転は、単に工場がなくなるだけでなく、研究開発や管理部門といった高付加価値な仕事が海外にシフトするリスクもはらんでいます。
次に、日本経済全体の景気への悪影響です。国内生産が縮小し、雇用が減少すれば、消費も冷え込み、日本経済は長期的な低迷に陥る可能性が高まります。企業が国内への投資を控えるようになれば、新たな成長の種が育たず、賃金も上がりにくい状況が慢性化するでしょう。
まさにこれは、アメリカが自国の利益のために、貿易相手国の経済を犠牲にする近隣窮乏化政策の一種であると言えます。アメリカは関税という手段で輸出を阻み、代わりに自国への投資を促すことで、雇用や生産能力を自国内に囲い込もうとしているのです。
そして、日本のような貿易依存度の高い国は、その負担をより大きく強いられるのです。
もしこの状況が続くならば、日本企業はアメリカ市場への依存度が高いがゆえに、関税を負担するための価格引き下げやアメリカ現地への投資拡大を甘んじて受け入れざるを得なくなるでしょう。
その結果、日本経済は、輸出の縮小、国内雇用の減少、賃金の停滞、そして全体的な景気の悪化という、厳しい不況を甘受せざるを得ない未来に直面するかもしれません。
この厳しい現実を直視し、政治も企業も、この持続する保護主義という新たな世界経済の潮流にどう対応していくかを、真剣に考え、行動していく時が来ています。


という意見もあるのですが、自公政権にはムリでしょうね。