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中期計画は過去の遺物 長期目線が拓く日本企業の未来と株主リターン

かつて日本企業=長期志向、米国企業=短期決算型と言われた時代がありました。終身雇用と株式持ち合いに支えられた日本企業は、長期的な視点で構造投資や雇用維持が可能でした。

一方、米国企業は四半期ごとの利益を追うショートターミズムが批判されることもありました。

ところが近年、この構図が逆転しつつあります。日本企業は株主価値を優先し、利益率向上のためのコストカットと短期成果の追求にシフトしてきました。

その象徴が、多くの企業が策定する3カ年の中期経営計画(中計)です。毎年のように形式として中計をつくることが業務化し、戦略の思考装置というよりは、ステープラーで数値を束ねる儀式と化している現状があり、中計未達の企業は7割以上にも上ります。

このような状況の中、興味深いデータが明らかになってきました。多くの日本企業が3カ年程度の中計を公表する一方で、実は10年以上の長期目線で経営に取り組む企業の方が、利益の伸び率が圧倒的に高いというのです。

直近5年間の平均営業利益伸び率を比較すると、1~6年の中期視点の企業が平均18%の伸びに留まるのに対し、10年以上の長期視点の企業は平均52%と、圧倒的な高成長を記録しています。

短期的な目標達成に囚われがちな中計は、将来の成長に不可欠な投資の手控えを招く可能性があると指摘されています。
それに対し、長期目線を持つ企業は、新規事業の種まきや戦略的投資、不採算事業からの撤退など、最適な事業ポートフォリオを構築するのが巧みです。

彼らは、短期的な利益目標に縛られず、持続可能な成長と社会貢献という本質的な企業価値向上を目指すことで、結果的に大きなリターンを生み出しているのです。

中計の発表は、必ずしも株価上昇に繋がるとは限りません。むしろ、発表後に失望売りが見られ、株価が下落する企業も半数以上に上るなど、高リスク低リターンのイベントになりつつあります。

これに対し、長期目線の経営に舵を切った企業からは、株価が大きく上昇する事例が見られます。これは、短期的な数値目標の達成に終始するのではなく、長期的な視点で社員の成長を促し、事業の変革を進めることで、真の企業価値向上へと繋がっていることを示唆しています。

特に、知識集約型産業においては、社員の成長が事業の成長に直結するため、数年の中計では戦略を真に浸透させるには短すぎるとの認識が広がっています。

このような状況を受け、中計病からの脱却を目指し、中計を廃止する企業も現れ始めています。これは、数年先の目標に固執せず、変化の激しい時代に機動的に戦略を打ち出し、より大きな社会課題の解決や企業としての存在意義(パーパス)に基づいた経営へと軸足を移そうとする動きと言えるでしょう。

トランプ後の世界情勢など、不確実性の高まる現代において、企業にはより長期的なビジョンのニーズが高まっています。

これは、かつて短期志向と批判された米国企業がパーパス経営やステークホルダー資本主義を掲げ、長期的価値創造へ軸足を移している構図とも重なります。

日本企業が短期的な成果だけでなく、持続可能な成長と社会貢献という長期的な視点を持つことは、投資家にとっても、より安定した、かつ大きなリターンを期待できる要素となりつつあります。今後、長期目線にシフトする企業がさらに増え、日本企業の新たな成長の姿が見えてくるかもしれません。

ここで述べた傾向や考え方は、特定の株式の購入を推奨するものではありません。株式投資は価格変動リスクを伴い、元本割れする可能性もあります。投資判断は、必ずご自身の責任において、十分な情報収集と分析を行った上で、慎重に行ってください。


1 件のコメント
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 株主も選挙の有権者も多種多様で、短期、中期、長期の各視点で行動する人が多数いる事を前提に、自分なりに考えて行動を選択しましょう。

 若い人には会社の子育て支援策や行政の子育て政策だろうか。
 若くない自分には年金政策や財政が気になる。
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